まぁリーリエの設定からして違うから仕方ないんですけど
帰宅途中にジェイムズと呼ばれた初老の男性に出会ったサトシ。リーリエとジェイムズに促されるままに車に乗り込み、彼らがたどり着いた先は
「ここは、わたくしが以前住んでいた家です」
「えっ、ここに?」
「はい」
広い敷地の中の豪邸。ここにリーリエは住んでいたと言う。喋り方が丁寧だったのも、家柄のためだったのだろうか。そんなことを考えながら、サトシはリーリエに案内され、彼女の自室だった場所へ向かった。
広いその部屋は清潔に保たれていた。大きな棚、本棚にソファ、いくつかのぬいぐるみに化粧台、テーブル、そして大きなベランダ。こんな広い部屋に住んでいたのか、と驚くサトシ。
テーブルに座り、出されたお茶を飲むサトシは、ソファ座っているリーリエとジェイムズさんの会話を離れていながらもしっかりと聞いていた。ジェイムズさんは、リーリエの家の執事だったのだ。
「よくぞご無事でいらっしゃいました。失踪したと聞いた時はこのジェイムズ、死ぬ程心配しましたぞ」
「ごめんなさい、ジェイムズ」
「何があったのですか?」
「それが、わたくしもよくは覚えていないのです。気づいたらあそこから逃げ出していて。それに、ポケモンにも・・・お母様には、わたくしのこと」
「伝えておりません。お嬢様がいなくなったのには何か深い理由があるのではないかと思いまして。それに、兄君のこともありますし」
何やら深刻そうな話をしている二人の様子を見ながら、サトシは今聞こえた情報を整理していた。リーリエは家出をしたということ、そしてその原因がリーリエのお母さんにあるかもしれないということ、兄がいること、そしてお母さんとのことが原因でポケモンに触れなくなってしまったということ。ちらりと部屋を見渡したサトシは、一つの写真を見つけていた。その写真には、幼いリーリエと兄、お母さんらしき人と一緒に写っていた。写真の中の幼いリーリエの腕の中には、ヨーテリーが抱きしめられていた。
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「ともかく、お嬢様。どうぞこの家へお戻りください。母君のことは気になさらずに。私どもでお嬢様をしっかりとお守りします」
「ジェイムズ・・・ですが、わたくしは」
「あっ、バタフリー!」
突然響いた声に驚く二人。サトシがベランダを見ていた。そこには野生のバタフリーがやって来ていた。笑顔を浮かべてその様子を見るサトシ、リーリエはソファから立ち上がり、サトシの方へ向かった。ジェイムズさんもそのあとに続いた。
「ここの庭は広いですから、こうして野生のポケモンがよく遊びに来るんですよ。ほら、下にも」
ベランダから庭を見下ろすと、そこにはたくさんの遊具が置いてあり、様々な野生のポケモンが遊んでいた。
「ジェイムズ、ポケモンフーズは残っていますか?」
「いつでもお使いできるように、私どもでご用意してあります」
それを聞いたリーリエは、大きな棚を開けた。服が入っているのかと思いきや、中にはそれぞれにラベルが貼られている様々なポケモンフーズが入っていた。そのうち一つ、バタフリーと書いてあるのを手に取り、リーリエは中身を皿に移した。
「もしかして、ポケモンごとに違うフーズを用意してあるのか?」
「ポケモンも種類やタイプごとに最適な栄養バランスや、味付けがありますから。もちろん個体差はあるかもしれませんけど」
そっと差し出されたそのフーズをバタフリーは美味しそうに食べだした。
「やっぱりすごいな、リーリエ」
「いえ、その。ありがとうございます」
再び庭に目を戻すサトシ、ふと遊具が置いてある場所の奥にも何かがあるのを見かけた。
「あれって、バトルフィールド?」
「はい。あちらの手入れも欠かさず行っておりますゆえ、いつでも使用可能です」
「サトシ、よろしければ使ってみますか?」
「いいのか?あっ、でも相手がな〜」
「その点に関しては心配無用ですぞ」
「えっ?」
「僭越ながらこのジェイムズ、サトシ様のお相手をさせていただきましょう」
「ジェイムズはここで働く人の中で一二を争うの実力者なのです」
「そうなんですか?よろしくお願いします!」
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バトルフィールドに立ちながら、ジェイムズは相手の少年のことを観察していた。どこにでもいそうな少年、現在リーリエのクラスメートにして、一緒に下宿しているとのこと。ポケモンが大好きなのはその仕草や表情からも見て取れる。けれどもそれだけにしか見えない。バタフリーを見たときの反応や、ポケモンたちが遊ぶ様子を眺めるとき、お茶と共に出したお菓子を食べている様子から見ても、年相応、あるいは更に幼いそれだ。
リーリエに何があったのかはわからないが、奥様との間で何かあったのだろう。であれば自分はリーリエが安心できるように守るのみ。雇い主は奥様であれど、守ると決めたのは彼女なのだ。
しかしリーリエはこの屋敷に戻ることをためらわれている。奥様のこと、そして自分たち使用人のことを考えた上でのことだろう。もしも戻らないのであれば、今彼女と共にいるというこの少年がリーリエを守れるものでなければならない。それを確かめて見たいとも思ったのだ。
サトシと呼ばれた少年はモクローを出して来た。まだゲットして日が浅いのか、風格はあまり感じられない。しかし彼の隣のピカチュウは違う。何やら纏っている空気、雰囲気がモクローとは異なるのがわかる。彼はそれほどのポケモンを、実力を持っているのだろうか。
「頼みますぞ、オドリドリ!」
自分の自慢のパートナーを繰り出す。手加減するつもりはなかった。このバトルで、彼を見極めるためにも。
「手加減無しでお願いします、ジェイムズさん」
「こちらこそ、お手柔らかに頼みますぞ、サトシ様」
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モクローのこのはをかわして、めざめるダンスを放つオドリドリ。メレメレ島のオドリドリはでんきタイプ、電撃がモクローに命中する。今のを躱せなかったところから察するに、モクローはスピードがそこまでないようだ。たいあたりを繰り出して来た相手に対抗して、こちらはおうむ返しを指示する。全く同じ動きで衝突する二匹。両者弾かれて後退する。それを見ながらも再びたいあたりを指示するサトシ。同じようにおうむ返しを指示、再び激突する二匹。さっきの繰り返しでしかない。しかし、
「今だ、モクロー!おうむ返し返し!」
サトシの指示に答えるようにモクローが力を込める。体格で優っているオドリドリが勢いよく吹き飛ばされた。そのことにジェームズは驚きを隠せなかった。モクローの脚力は確かに強い。しかしまさかそれを利用してこちらの攻撃を正面から受け止め、あろうことか弾き飛ばすとは。モクローならばできると信じた彼もそうだが、その気持ちに応えようと、躊躇わずにそれを実行したモクローのトレーナーへの信頼。聞けばこのアローラ地方に来てからまだそんなに時間は経っていないとのこと。短い時間でこれほどまでに信頼関係を築き上げられるとは。
気づけばジェームズは純粋に彼とのバトルを楽しんでいた。攻撃を繰り出しては躱し、また激突する。オドリドリも久しぶりに高まるバトルを楽しんでいるようだ。
「キャアァァ!」
突然リーリエの悲鳴が聞こえた。一瞬戸惑いや驚きで動きが止まった。と、玄関へ向かって走る人影が見える。サトシだった。先ほどまでバトルフィールドで対戦していたはずの彼は、その声を聞いた瞬間に駆け出していた。
あぁ、ストックがほぼ尽きてきた
更新のペースを遅らせるか、あるいは・・・