というよりカントーのロコンはなんかサトシに懐いてましたね
レギュラーのポケモンにニックネームがあるのは初?
ある朝、サトシがアイナ食堂でのご飯を済ませて外に出ると、不思議な光景があった。アマカジがタワー状のパンケーキを皿に乗せ、頭の上にそれを乗せながら走り回っているのだ。その様子をマオは片手にストップウォッチを持ちながら見守る。
「マオ、これって、」
「ごめん!今は話しかけないで」
「あ、はい」
真剣そうな表情で言われたサトシは口を噤んでしばし待った。アマカジは頭に乗せたパンケーキを落とすことなく、スピードを上げていた。
「ゴール!うんうん、いいタイムだね。これなら今回のレース、いいとこまで行けそうだよ!」
「マージー」
どうやら終わったらしいので、サトシは声かをかけてみる。
「なぁ、今のって何?それに、レースって言ってたけど」
「そっか、サトシは知らないよね。今度、ポケモンパンケーキレースっていう大会があるんだ」
「パンケーキレース?」
「簡単に誰でも参加できるから、サトシも出てみたらいいんじゃないかな?」
「それってどんな大会なんだ?」
「えっとね、」
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後日、サトシはククイ博士とリーリエと一緒に買い物に来ていた。サトシもピカチュウもモクローも、標準よりも食べるため、買い出しの時はいつも大荷物で手がいっぱいになる。卵を連れているリーリエ以外の二人は両手でやっとの量の食材を持っていた。
「少し休憩していくか。ここのパンケーキ、すっげえうまいぞ」
「はい」
「パンケーキ!?しますします!」
少しおしゃれなパンケーキの店に入った三人を出迎えたのは一人のウェイトレスだった。
「いらっしゃいませ、ククイ博士。そちらの二人は?」
「こんにちは、ノアさん。こっちの二人は俺の生徒だよ。ついでに居候でもある」
「サトシです!こっちは相棒のピカチュウ」
「リーリエです」
「よろしくね。それにしてもピカチュウね、ちょっと懐かしいな」
「へっ?」
「おーい、こっちに来て」
ノアが声をかけると宙をまるで滑るように飛び、一体のポケモンがやって来た。オレンジの体に黄色い頬袋、長い尻尾はサトシもよく知るそれだ。しかし、そのポケモンはサトシの知っているのとは少し違う姿だった。
「ライラーイ!」
「この子が私のパートナー、ライチュウよ」
「ライチュウもリージョンフォームがあるのか」
『アローラのライチュウは、エスパータイプも持ってるロト』
「エスパー能力を利用して、サーフィンするかのように空を飛べるんですよ」
「へー、すごいな。あれ?」
店の奥、壁に貼られていたポスターがサトシの目に入った。そこにはノアとライチュウがパンケーキを乗せた皿を手にしながら写っていた。
「あれってポケモンパンケーキレースのポスターですか?」
「サトシ、お前知ってたのか?」
「マオが練習してるとこに偶然、その時に教えてもらったんです」
「せっかくですから、サトシも出てみたらどうですか?自由参加のはずですし、ルールも簡単ですよ」
「いいんじゃないかしら。私も出てるし、とっても楽しいわよ」
「ノアさんは前回大会の優勝者、ぶっちぎりだったんだぜ」
「そうなんですか?良かったら、色々教えてください!」
「もちろん!でもその前に、」
いつの間にかライチュウがパンケーキを三人分持って来ていた。きのみのソースがかかっているそれはとても美味しそうな香りがした。高さもかなりある。
「当店自慢のパンケーキ、ご賞味あれ。ちなみに大会で使われるパンケーキもこの高さよ」
「こんなに!?よーし、まずは食べるぞ!いっただっきまーす!」
甘酸っぱいきのみのソースがたっぷりかかったパンケーキにサトシもピカチュウも目を輝かせながら頬張った。ふわふわのパンケーキにソースが染み込み、クリームと合わさってサトシ好みの甘さだった。苦笑するククイ博士とリーリエをよそに、サトシは山盛りのパンケーキをあっという間に食べ終わっていた。
「ご馳走様!とっても美味しかったです」
「それは良かった。それにしても、本当に美味しそうに食べるのね」
「ありがとうございます。それで、パンケーキレースのことなんですけど、」
「そうね。もうすぐ私のシフトが終わるから、それまで待っててくれる?その後からならちゃんと教えてあげるから」
「はい!」
先に戻ることにした博士とリーリエの二人とは別れ、サトシはノアと共にレースの練習を始めた。しかしこのレース、ピカチュウが出場することになったが、手を使えないぶん、皿とパンケーキのバランスを保つのがなかなか難しいようだ。一方ライチュウは空を飛べるため、安定した状態で皿を運んでいた。
「いいタイムよ、ライチュウ。今年もバッチリね」
「お疲れ、ピカチュウ。よくやったぞ」
「初めてとは思えないバランス感覚ね。パンケーキタワーも全然乱れてないし。よほど体のバランスの取り方がうまいのね」
感心したように呟くノア。事実その通り、バランス感覚がかなり高いのだ。空中で受け身を取ることができたり、そのまま反撃に繋げたり、自分より大きなポケモンの背中に乗った時も振り落とされないようにしたり、尻尾だけで立ち上がったりと、サトシのピカチュウはそんな経験をしている。それによってだいぶん無茶な体勢でも問題なく行動できるようにもなっているのだ。
「これだけできれば上出来ね。当日を楽しみにしてるわ」
「はい。俺もです」
サトシは改めてちゃんとお礼を言ってからノアと別れた。ちなみに避けられない運命なのか、ピカチュウとライチュウがお互いにライバル心むき出しで、頬から電気をバチバチと出していた。
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そしてパンケーキレース当日、会場には多くの人が集まっていた。マオやスイレン、カキにマーマネ、さらにはオーキド校長まで参加しに来ていた。テレビ局もこの大会を放映するらしく、かなりの規模のものだ。
観客席にはククイ博士とリーリエの二人が座っていた。今回は応援に回るとのこと。サトシたち五人のやる気が入っている様子を見て、リーリエも次はこの子と参加してみたいと、腕の中の卵をそっと撫でた。
「サトシ君」
「あ、ノアさん!おはようございます」
「おはよう。準備はバッチリ?」
「もちろんです!優勝狙って頑張ります!」
「あら、なかなかいい気合いね。これは私たちも負けてられないわね。それじゃあまた後でね」
「はい!」
ひらひらと手を振りながら別れた、ノアは少し離れた場所をスタート位置にするようだ。俄然やる気が出て来たサトシの肩をポスンとマオの拳が軽く叩いた。
「マオ?どうかした?」
「べっつにー。私がレースのこと教えてあげたのに、サトシがいつの間にかノアさんと仲良くなって、しかもつきっきりで練習を見てもらったことなんて、気にしてないよーだ」
「えっ、いや、あれはたまたま会っただけで」
なんだか拗ねた感じのマオに、自分が去年の優勝者から練習を受けたことが原因かと思い焦るサトシ。実際にはそれは半分、残りはまた別の理由なのだが。
「えっと、ごめんな」
「ふふっ、冗談だよ。頑張ろうね」
「あぁ!」
トレーナーたちがスタートに並び、合図と共に飛び出した。ポケモンパンケーキレース、最初のゾーンはトレーナーのみでパンケーキを運ぶ。途中の障害を乗り切ってパートナーの待つ場所まで走らなければならない。普段なら走ることでは負けないだろうサトシだったが、パンケーキを崩さないようにするため、スピードが出せずにいた。それでも先頭集団にいるあたりはさすがとしか言いようがない。他にもカキとノアが先頭集団にいる。少し遅れてマオ、スイレン、オーキド校長が来ていたが、残念、マーマネは平均台でバランスを崩し、失格となってしまったのだ。
「なかなかやるわね、サトシ君」
「ノアさんこそ、流石です」
ノアは走るのが格段に速い訳ではない。しかし彼女は上手かったのだ。全く崩れる様子のないパンケーキからもわかるように、彼女は完全にバランスを保つコツを掴んでいる。それ故、他の参加者よりも楽に運べている。サトシはその後ろにはついてるものの、差は少しずつ開いていた。
そのまま彼らは第二のエリアに到着した。ここからは、トレーナーがパートナーを乗せたトロッコを引っ張るのだ。ここでパートナーが少し重たいトレーナーたちは苦労していた。カキもバクガメスをパートナーにしたため、一歩進むのにも苦戦していた。
一方サトシはノアとの距離を縮められはしなかったが、あまり離されずに追いかけていた。
「ピカチュウ、この後はお前一人でゴールまで走ることになる。俺は先に行って応援してるからな。頑張れよ!」
「ピカ!」
そして第三エリアに入ったライチュウとピカチュウはそれぞれパンケーキを持ち、ゴールへ走り出したのだ。
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幾つものアクシデントが重なり、多くの出場者が失格になっていく中、ライチュウ、ピカチュウ、オーキド校長のパートナーであるネッコアラ、そして不思議な姿のキテルグマが優勝争いを繰り広げていた。
「ピカ!ピカピカピカッ!」
やや余裕な様子のライチュウに負けられないとピカチュウが加速する。それを見たライチュウもまた加速した。抜いては抜かされ、抜かされは抜いて。激しいデッドヒートレースになっていた。
「いっけぇ、ピカチュウ!」
「やるわね。ライチュウ、頑張って!」
観客もその激しいレースに盛り上がるなか、後ろの方から猛スピードで追い上げる影があった。出場していたキテルグマがピカチュウたちに追いつきそうな勢いで走って来たのだった。そのまま二体を追い抜き、ゴールへ向かうキテルグマ。優勝は決まった。
かと思いきや、突如現れたもう一体のキテルグマが強烈なラリアットをかましたのだった。突然崩れ始めるキテルグマ。正体は機械仕掛けの着ぐるみだったようだ。もう一体のキテルグマは中に乗っていたポケモンたちと、観客席にいたトレーナーを掴むとどこかへ走り去って行った。あっけにとられる観客、そしてピカチュウとライチュウ。暫くボケーっとしていると、二体のそばを一つの影が通り過ぎた。慌てて駆け出す二体だったがもう遅い。
『優勝はネッコアラです!ピカチュウとライチュウは同時に飛び込み二位、なんと予想外の展開!』
特性、ぜったいねむりを持つネッコアラは、周囲の動揺なぞなんのその。マイペースに走り続けた結果、優勝したのだった。まるでどこかの童話のような展開ではあったが、会場は大いに盛り上がり、レースは終わった。
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表彰台に並ぶ三人、一位のオーキド校長が真ん中に、同着二位のサトシとノアがその両側に、パートナーと共に立った。サトシたちは知らなかったが、この件ですでにサトシはアローラ全体から大きく注目されることとなったのだ。以前ラッタ退治に貢献した少年が、今度はテレビで映ったのだから、それも無理はない。
「サトシ君、楽しかったわ」
「俺もです。ピカチュウも、楽しかったか?」
「ピカ!ピカピーカ」
「ライラーイ!」
お互いの健闘を讃えるかのように、ピカチュウとライチュウは握手を交わした。いいライバルができて、ライチュウも嬉しそうだった。
「またうちのお店にも来てね。サービスするから」
「はい!ありがとうございました!」
パートナーに習って握手をする二人。ノアはこの年下の少年に不思議な魅力を感じていた。あそこまで身体の使い方が上手いピカチュウ、そしてそのトレーナー。彼らがいたから、久しぶりにこんなにワクワクするレースができた。
「こちらこそ、ありがとう」
その感謝の意を込めて、ノアは精一杯の笑顔でサトシに返した。
その様子を見ていた人たちのうち、約3名が少し不機嫌になっていたのはまた別の話。
赤いロコン、サトシ大好き〜だったなぁ
でもそれ見てたらタケシ思い出したなぁ
次回、シロン誕生回!