XYサトシinアローラ物語   作:トマト嫌い8マン

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なんだかんだと言われても、覚えられないあの名乗り!

今回全く関係ないですけどね


熱いバトル、君に決めた!

「手伝うぜ!えーと、」

「カキだ。だが、手伝いなど無用だ」

「そうだよ!危ないよ、サトシ!」

「そういわずに、一緒に戦おうぜ!」

「はぁ。好きにしろ。ただし無理はするなよ。出てこい、バクガメス!」

 

カキと名乗った少年が投げたボールから赤い体のポケモンが現れた。気合いを入れるかのように、口から炎を吐く。

 

「バクガメス?ほのおタイプのポケモンなのか?」

「ほのおとドラゴン、二つのタイプを持つ。俺の相棒だ」

「よーし、俺はピカチュウ・・・は今回はお休みな」

「ピッカァ!?」

 

すっかりやる気満々になっていた彼の黄色い相棒は、お休み発言にかなり驚いた表情を向けた。

 

「せっかくあいつが帰ってきたんだ。久しぶりに一緒にバトルしたくてさ」

「ピーカ」

「ありがとな、ピカチュウ。それじゃあ、久しぶりに!君に決めた!」

 

サトシの投げたボールから一体のポケモンが現れた。深い青色の体、ピンク色のマフラーのような舌、細められた目、凛としたたたずまい。腕を組んで現れたそのポケモンは目をカッと開き、戦闘態勢をとった。

 

「コウガッ!」

 

 

「こいつは・・・」

「かっこいい~」

「水タイプの・・・ゲッコウガ」

「ゲッコウガ、確かみずとあくタイプの両方を持っているしのびポケモン。代表技はみずしゅりけんで、素早い戦いが得意なポケモンだったはずです」

「サトシがさっき受け取ったのは、ゲッコウガだったんだ」

 

ゲッコウガの登場にマオたちは驚きを隠せずにいた。まだ何もしていない、そこに現れただけだというのに、彼女たちにはなぜかわかった。このゲッコウガは、強いと。

 

「なんスカ、そのポケモン。このあたりじゃ珍しいじゃねぇか」

「兄貴、こいつもいただいちゃいましょう!」

「いいわね、それ」

「やれるもんなら、やってみろ!行くぜ、ゲッコウガ。久しぶりのバトルだ。気合入れていくぞ!」

「コウガ!」

 

 

「へっ、ヤトウモリ、ベノムショック!」

「ヤング―ス、かみつく!」

「ズバット、きゅうけつ!」

 

開始の合図もなしに、三人の指示にあわせて9匹のポケモンが攻撃を始めた。しかしそれに驚くことはせず、

 

「ゲッコウガ、いあいぎり!」

「コウッ」

 

即座に出されたサトシの指示に、ゲッコウガは対応した。自慢のスピードをいかしながら接近、ベノムショックを難なくかわし、ヤトウモリ三匹をあっさりと弾き飛ばした。そのスピードには敵も味方も驚かされる。

 

「なっ、速い」

「よしっ、いいぞゲッコウガ。また速くなったんじゃないか?」

「コウガ」

 

一方残りのヤング―スとズバットたちはバクガメスに攻撃を仕掛けていた。が、その背中の甲羅に攻撃が当たったと思った瞬間、大きな爆発で吹き飛ばされていた。

 

「えっ、カキ?今のはなんだ?」

「バクガメスの甲羅の棘は、刺激を受けると爆発するんだ」

「へぇ~。バクガメス、お前すごいな!」

「ガメ~ス」

 

裏表のないその称賛の言葉に、バクガメスも喜んでいるようだ。そのことにカキは驚く。自分の相棒が、自分以外のトレーナーに対してこうもうれしそうな表情をするとは。隣のトレーナー、サトシと呼ばれていたが、何か特別なのだろうか。

 

「くそぉ!はじけるほのおだ!」

「ゲッコウガ、みずしゅりけん!」

 

素早く繰り出されたみずしゅりけんはヤトウモリのはじけるほのおをいとも簡単に打ち消し、そのまま決まった。

 

「後は俺たちに任せろ。いくぞ、バクガメス!」

 

カキの言葉に反応するようにバクガメスが気合を入れる。二人の心に呼応するように、カキの腕についていた鉱石が強い輝きを放つ。

 

 

「これって、メガシンカ?でも、姿は全然変わらないし」

「まさか・・・あいつ、あの技を!?」

「技?」

 

「俺の全身!全霊!全力!全てのZよ!アーカラの山のごとく、熱き炎となってもえよ!」

 

まるで舞を踊るかのように、カキがポーズを決めると、その腕の鉱石から光があふれ、バクガメスの体へと注ぎ込まれた。そしてそのカキと同じように、バクガメスもほぼ同時に同じような動きをしていた。

 

「喰らえ!ダイナミックフルフレイム!」

 

バクガメスの口から巨大な炎の塊が放たれる。大きな爆発が起こり、煙で視界が遮られる。少ししてから煙が晴れると、小さなクレーターの中で、スカル団のポケモンが戦闘不能になっていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「覚えてろ!」

 

捨て台詞を残しながら、スカル団は逃げるように帰っていった。

 

「カキ、今のって、何?」

「あぁ、あれは、」

「Z技だよ」

 

バクガメスの放った技の威力にサトシが呆然としていると、いつの間にか近づいていたククイ博士が話しかけてきた。その後にマオやリーリエたちも続いて駆け寄ってくる。

 

「Z技?」

「あぁ」

「流石カキ!やっぱり強いな~」

「サトシもすごかったよ!」

「ゲッコウガ、かっこよかった」

「あんなに速いポケモン、わたくしも初めて見ました」

「へへっ、ありがとう。ゲッコウガも、よくやったな」

「コウガ!」

「ところでククイ博士、Z技って?」

「Z技は、アローラ地方に伝わる、特別な技なんだ。この地方には4つの島があり、それぞれの島に、守り神のポケモンがいる。島めぐりという儀式に参加し、ある試練を達成したもののみが、Z技を使えるようになるんだ」

「守り神のポケモンに島めぐり、そしてZ技か!」

 

初めての地方に初めてのポケモン。確かにサトシはそれに対してワクワクしていた。しかし一つだけ不満があるとすれば、この地方にはジムもポケモンリーグもまだないということだった。それはつまり、自分が大好きなポケモンバトル、チャレンジしていくあの感覚はこの地方では味わえない、そういうことだと思っていた。しかし今の話を聞いたサトシの心は燃えていた。

 

「二人とも、メガトンパンチ級にいいバトルだったぜ!」

「へへっ、ありがとうございます」

「サトシはバトルが好きみたいだな」

「はい!ポケモンマスターを目指してます!」

 

ポスン、とサトシの頭に何かが落ちた。見てみるときのみだった。そのきのみにサトシは覚えがあった。アゴジムシを見失った時に自分たちの頭の上に振ってきたものと、まったく同じものだったのだから。ふと顔を上げたサトシは、森のほうへ飛んでいくポケモンの姿を見つけた。

 

「なんだ、あのポケモン?」

 

「ん?」

 

「どこ?」

 

すぐに森に隠れてしまったためか、その姿はほかのみんなには見えなかったようだ。

 

「何も見えないけど?」

「さっき飛ぶポケモンがいたんだ。黄色くて、鳥みたいで、それから頭にオレンジ色の・・・そう、とさかみたいなのがあって、」

 

サトシの話を聞くうちにみんなの表情が変わっていった。もう何度目かわからない驚きの表情を浮かべる博士たちにサトシは首を傾げた。

 

「それって、まさか」

「カプ・コケコ・・・」

「メレメレ島の守り神、カプ・コケコを見たのですか?」

「守り神?・・・さっきの島めぐりの?・・・あのポケモンが・・・」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その晩、ハナコたちと一緒にホテルのレストランで食事をしながら、サトシは考えていた。ポケモンスクールのこと、Z技のこと、島めぐりのこと、そして守り神のこと。

 

「何か面白いことでもあったの?」

「えっ?」

 

突然かけられた言葉にサトシはハッと顔を上げる。そこには優しい笑顔を浮かべたハナコが、何かわかっているような表情でサトシを伺っていた。

 

「だって元気に疲れてるもの」

 

母にはすべてお見通しのようだった。へへっ、とサトシは目いっぱいの笑顔をハナコに見せる。これだけでもう、なんとなくサトシが言い出すことがわかってきているあたり、伊達に長い間サトシをいろんな地方へ見送り続けていないのだろう。

 

「ケーコー!」

 

 

 

突然響く鳴き声。

 

「今のは!?」

 

サトシが空を見上げると、空を何かが横切るのが見えた。もしかして。そう思ったサトシはピカチュウとともにその影を追いかけて走り出していた。

 

 

 

 

誰もいない公園、その中で海を見渡せる展望スペースとなっている場所に、そのポケモンはたたずんでいた。その青い瞳は、まっすぐにサトシとピカチュウを見据えていた。

 

「島の守り神・・・カプ・コケコ」

 

一歩ずつ、ゆっくりと、サトシはカプ・コケコに近づいて行った。

 

「なぁ、どうして俺だけに?なんか言いたいことでもあるのか?」

 

その問いにカプ・コケコは答えず、代わりに手に持っていたものをサトシの前に差し出した。黄色の鉱石がはめ込まれた白い腕輪。ちょうどカキが持っていたものに酷似していた。

 

「これって・・・俺に?」

 

サトシは問いかける。カプ・コケコはじっとサトシを見つめると、小さくうなずいた。それを見たサトシは白い腕輪、Zリングへ手を伸ばした。サトシの手が触れると、まばゆい光がZリングから放たれ、リングを装着するのを見届けたカプ・コケコはどこかへ去っていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

翌日、サトシはテレビ電話をしていた。相手は、

 

「ありがとうママ、俺がこっちに残りたいって言った時に、すぐに許してくれて」

『母親ですもの。そう言いだすんじゃないかと思っていたのよ』

 

あの後、サトシはママと話し合って、このアローラ地方に残ることにした。島の守り神が、どうして自分にこのZリングを渡してくれたのかはわからない。けれども、それに意味があるのなら、自分の目で確かめてみたい。そう思ったサトシはククイ博士の了承を得て、彼の家に下宿させてもらうこととなった。そして、

 

「じゃあ、俺もう行くね!ポケモンスクール、今日からなんだ」

『いってらっしゃい』

「いってきます!」

 

そう。サトシはポケモンスクールに通うことになったのだ。新しい地方で、新しい仲間とともに。今までの旅とは少し違う、新しい冒険が始まろうとしている。

 

「ピカチュウ、ゲッコウガ。学校まで競争だ!」

「ピッカァ」

「コウガ!」

「よ~い、どん!」

 

その一歩を、サトシは踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

余談だが、この光景を目撃した他の生徒たちが、ゲッコウガやピカチュウと同等のスピードで駆け抜けていくサトシを見て驚き騒いだのは、また別の話。

 




ゲームでも大活躍しましたよ、ゲッコウガさんは

私も大いに助けられました

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