ちゅーわけで、サトシvsグラジオです
技とか手持ちとか勝手に考えてるところ多々あります、はい
朝、サトシのクラスメートたちがサトシを見て何やら話している。
「今日のサトシ、なんか機嫌良くない?」
「鼻歌も歌ってるしな」
「リーリエ何か知ってる?」
「えーと、実は……」
カクカク シキジカ メブキジカ
「「「「ええっ!?」」」」
「謎のルガルガン使いが!?」
「リーリエのお兄ちゃん!?」
「しかも朝バトルしてたって……」
「何何、どういう状況なの!?」
「わたくしも詳しいことは実は知らなくて……」
みんなの視線を受けているサトシはというと
「ふーんふんふーん♩ふふふふふふーん♪」
誰がみても明らかすぎるくらいにご機嫌だった。
無理もない。中断し、またいつかに持ち越しになるかと思ったバトル、それを今日のうちにちゃんとできるように約束してもらえて、本当に嬉しいのだろう。
無駄に鼻歌がうまいのはもはやご愛嬌。
サトシの上機嫌は授業中も、昼休みも衰えることがなく、放課後まで続いたのだった。
放課後、ククイ博士の家に帰ったサトシは、驚くことにさっさと宿題に取り掛かり、終わらせていた。いつもなら夕飯後や、寝る少し前までやらないはずのサトシの行動に、ククイ博士も驚いている。
午後6時半、特訓に行くと言って、サトシは家を飛び出していった。サトシの様子が気になっていたリーリエは、クラスメートに連絡を入れ、そっとその後をつけてみることにした。サトシが向かう先はいつもの海岸線。本当に特訓するだけなのだろうか。疑問に思いながら後をつけると、海岸線を通り過ぎ、その少し先、スクールの方向へと伸びる道へとサトシが向かって行く。
「こんな時間に、スクールに行くのでしょうか?」
謎が深まるばかりのリーリエ。気づかれないように気をつけながら、尾行を再開する。道を少し登ったところで、サトシが誰かに手をあげるのが見えた。その先の人物の姿までははっきりとは見えない。ただ一瞬だけ、自分と同じ、白に近い金髪が見えたような気がした。
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「グラジオ!」
自分の考えが当たっていたことに喜びながら、サトシはグラジオの元へ駆け寄った。
「ちゃんと分かってたみたいだな」
「あぁ。あの時、すれ違ったのが、最初だもんな」
彼らが来たのはカメックスとバトルした広場、ではなかった。殆ど何も目印となるものはない、ただの道。ここで彼らはすれ違ったのだ。お互いの名前も素性も何も知らない、ほんの偶然の邂逅、そのことをお互いに覚えていたのだ。
「では、場所を変えよう。バトルするにも、ここではな」
「オッケー」
二人がやって来たのは、近くの公園だった。公園の端の方に、町を見下ろし、海が見渡せるポイントがある。月が辺りを照らすその光景を見て、サトシは思い出す。
「そういえばここ、俺がカプ・コケコからZリングをもらった場所だ」
「ここがか?」
「あぁ」
アローラ地方に来て最初の夜、サトシが初めてスクールのみんなと出会い、Z技を知ったあの日。それほど時は経っていないはずなのに、すでに懐かしい。
「カプ・コケコも見ていてくれるかもな」
「そうだな。では、行くぞ」
「ああ!」
距離を取り対峙する二人。その様子を陰に隠れながら、クラスメートたちが覗いている。カキは来られなかったものの、マオ、スイレン、マーマネが合流していた。
「あれがリーリエのお兄ちゃん?」
「確かに、強そう」
「なんだかすごいバトルになりそうだね」
「はい……」
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「使用ポケモンは三体、交代制でいいか?」
「オッケー。それじゃ、ピカチュウ、君に決めた!」
「ピッカァ!」
「駆けろ!月光の使者、ブラッキー」
「ブラッキ!」
最初のポケモンは、長年のパートナー対決。気合十分のピカチュウに対し、ブラッキーは冷静に状況を見ている。
「行くぜ、ピカチュウ!でんこうせっか」
「迎え撃て、でんこうせっか!」
高速の体当たりで激突する両ポケモン。素早さも威力もほぼ互角で、その衝撃に互いのパートナーの近くまで後退させられる。
「アイアンテール!」
「ピカ!チュー、ピッカァ!」
「かわせ」
飛び上がり、振り下ろされた一撃をバックステップでかわすブラッキー。地面に攻撃が当たった衝撃で、土煙が舞い上がる。
「そのまま正面にエレキボール!」
「シャドーボール!」
土煙を突き抜け、電撃の球がブラッキー目掛けて襲いかかる。咄嗟に同等の威力の技を打ち出すブラッキー。二つの攻撃は互いに相殺し合うが、既に攻撃が近くまで迫っていたこともあって、ブラッキーは大きく体勢を崩される。
「行っけぇ、でんこうせっか!」
「ピッカァ!」
間髪入れずに突撃するピカチュウ。体勢を立て直す前の攻撃には流石に対処できず、ブラッキーの胴体に、ピカチュウの体当たりが決まる。
弾き飛ばされ、一度地面で跳ねるブラッキー。しかしそれを体勢を立て直すことに利用し、綺麗な着地を決める。
「あくのはどう」
「10まんボルト!」
同時に放たれた攻撃は、二体の中央で衝突し、爆発する。
「でんこうせっか!」
先ほどのサトシとピカチュウ同様、目くらましからの連続攻撃を支持するグラジオ、駆け出したブラッキーはピカチュウ目掛けて突っ込む。
「飛び上がれ!」
ブラッキーと接触する直前に、ピカチュウはジャンプで攻撃をかわした。驚き動きを止めるブラッキー。
「アイアンテール!」
無防備になったブラッキー目掛けて、ピカチュウが硬度を高めた尾を振り下ろす。決まった!そうサトシは思った。
「とっておきだ」
「何!?」
ブラッキーの体に力が溢れる。一瞬でピカチュウの尾の軌道をかわしたブラッキーの攻撃がピカチュウに決まった。落下の勢いで自身の攻撃力を高めようとしたピカチュウだったが、その力を逆に利用されることとなってしまった。
弾かれたピカチュウは地面に叩きつけられる。土煙が晴れると、そこには目を回してしまったピカチュウがいた。
「よくやったな、ブラッキー」
「ブラッキ」
「お疲れ様、ピカチュウ」
「ピーカ」
それぞれのパートナーを労うサトシとグラジオ。その様子を見ている四人は、信じられないという顔を浮かべている。
「あのピカチュウが負けるなんて」
「僕も信じられないよ。確かにZ技を使っていなかったけど、」
「ブラッキー、強い」
「お兄様、本当に以前とはまるで別人のようです」
ポケモンバトルの修行に出ると言っていなくなったグラジオ。ブラッキーがまだイーブイだった頃から今までずっと修行していたとしたら、果たしてどれほどの努力を重ねてきたのだろうか。
「じゃあ次だな。行くぞ、白き鉤爪、ニューラ!」
「ロコン、君に決めた!」
互いに二体目のポケモンを繰り出す。まだまだ白熱しそうなバトルに、手に汗を握るマオたち。二回戦目の火蓋が切って落とされる。
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「れいとうパンチ!」
「でんこうせっかで迎え撃て!」
互いに接近し攻撃を繰り出すニューラとロコン。しかし体全体を叩きつけるロコンの方に分があったようで、ニューラは後退させられる。ほのおタイプのロコンには、こおりタイプの技による大きなダメージは見られない。
「ひのこだ!」
「コォン!」
「きりさく!」
「ニュ!ニュー、ラ!」
ロコンの吐き出した炎の塊を、ニューラは鋭い爪を使い切り裂いた。しかし相性の悪さは如何ともし難いのか、少しばかり顔をしかめている。
「素早い動きで撹乱しろ」
「ニュラ!」
ロコンの周りを走り出すニューラ。その素早さに、ロコンは戸惑い、右へ左へと顔を行き来させる。
「ロコン、落ち着け。チャンスは必ずある」
「そのままあくのはどう」
ロコンの正面で止まったニューラは、両手に集中させていたエネルギーをロコンにぶつける。大きく仰け反り、倒れるロコン。しかしなんとか立ち上がる。
「大丈夫か、ロコン?」
「コォン」
「ニューラ、もう一度撹乱しろ」
再び走り出すニューラ。今のロコンでは、そのスピードに追いつくのは難しそうだ。
「そうだ!ロコン、自分の周りにほのおのうず!」
「何だと?」
全くわけのわからない指示にグラジオが驚く。一方ロコンはサトシの言うように、自身の周囲を炎で覆い隠す。ニューラも驚いているものの、グラジオの指示通りに、ロコンとほのおのうずの周りを走り様子を伺う。手を出そうにも、下手なことをしては自分がダメージを負うことになる。そう考え、様子見を決め込んでいたのがまずかった。
「ロコン、はじけるほのおを真上に!」
「何!?ニューラ!」
ほのおのうずの内側で、小さな火の塊が弾ける。それによってほのおのうずも弾け、周りに火の粉が降り注ぐ。攻撃の機会を伺うため、あまり離れずにいたニューラにも炎が降り、動きが止まってしまう。
「ロコン、ほのおのうず!」
「くっ」
続けさまに放たれたほのおのうずが、今度はニューラを内側に閉じ込める。これでもう素早さに惑わされることもない。
「行っけぇ、ロコン!ひのこだ!」
「コォン!」
打ち出された炎は、ほのおのうずを突き破り、今度こそ命中した。その衝撃で後ろに弾かれたにニューラはほのおのうずにもあたり、さらなるダメージを受けた。
グラジオの足元で止まったニューラは目を回し、戦闘不能になっていた。
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「ロコン強くなったね〜」
「あんな風に技を繋げるなんて」
「サトシらしい」
これで互いに一勝ずつ。次の三体目のバトルで勝敗が決まる。
「行くぜ、ゲッコウガ!」
「コウッ!」
「来ました、ゲッコウガ」
「ならやっぱりお兄さんはルガルガンかな?」
サトシ(と隠れて見ているクラスメートたち)の期待するような目を向けられながら、グラジオは一つのボールを手に取る。それを見た時に、サトシは首を傾げる。確かルガルガンが入っていたのはハイパーボールのはず、だがあれは違う。別のポケモンが出るのだろうか。
「行くぞ、ヌル!」
投げられたボールから飛び出したのは、サトシが見たことがないポケモンだった。
四足歩行していながらも、前脚は昆虫の、後脚はトカゲのそれにも見える。尻尾はまるで魚の尾びれで、頭にはトサカのようなものが見える。しかし何よりも異様なのは、その頭部だ。完全に隠すほどの兜のような仮面を被ったそのポケモンは、今までに見たどんなポケモンとも異なって見える。
『???データなし、あのポケモンについてのデータが、僕の中にないロト!』
「えっ、じゃあ、あのポケモンは一体?」
少し離れて見ていたクラスメートたちも、声を抑えながらではあるが、驚愕していた。ルガルガンが来ると思いきや、全く見たことのないポケモンが登場したのだから。
「何何、あのポケモン?」
「あんなポケモン見たことないよ」
「リーリエ、知ってる?」
「いえ、わたくしが読んだどの本にも、あのポケモンらしい記述はありませんでした……」
答えるリーリエの表情は硬い。彼女は戸惑っていた。知らない、聞いたことも見たこともない。そのはずだというのに、何故知っている気がするのだろうか。
「来い」
「まぁ、どんなポケモンかは、バトルすればわかるな。ゲッコウガ、いあいぎり!」
「コウッ、ガ!」
飛び上がり、手に握った光の刃を振り下ろすゲッコウガ。しかしグラジオも、ヌルと呼ばれたポケモンも動く気配がない。ヌルの頭に、刃が激突する。
「なっ!?」
声をあげたのは誰だったか。サトシとゲッコウガの瞳が驚愕で見開かれる。振り下ろされた刃を受けたというのに、ヌルは動じることなく、ゲッコウガを見据えているのだ。
「その程度では、ヌルの拘束は解けないな。ブレイククロー!」
驚きで動きが止まったゲッコウガの腹部に、前脚による攻撃が炸裂する。怯んだゲッコウガにヌルの追撃、シザークロスが炸裂する。
「ドラゴンクロー」
「つばめがえし!」
更に攻撃を加えようとするヌルだったが、ゲッコウガのつばめがえしで前脚を弾かれ、逆に強烈な蹴りを二発食らってしまう。頭の仮面が重いのか、素早さでは圧倒的にゲッコウガが勝るようだ。
「みずしゅりけん!」
「トライアタック」
両手を使い投げられた二つのみずしゅりけんと三種類のタイプの複合技がぶつかり合う。
威力は互角のようで、ゲッコウガとヌルは互いのことを見据えている。
ここからが本番、サトシがゲッコウガとともに全力モードに突入しようとしたその時、
『!!!サトシ、もう門限の時間ロト!早く帰らないとまずいロト!』
「ええっ!?もうそんな時間!?」
なんとも空気の読めていないタイミングで、ロトム時報が発動してしまう。時間を確認すると確かに、既にだいぶん遅い時間になってしまっている。
隠れている彼女たちも、
「やっば、あたしも帰らなきゃ!」
「私も」
「わぁっ、やばいやばいやばい!」
「みなさん、静かに!サトシたちに気づかれますよ、って……あ」
わちゃわちゃしていた彼らのことを、グラジオとサトシがしっかりと見ていた。
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「みんな!?」
「リーリエ!?」
「あ、サトシ、お兄様……こ、これはその」
「もしかして、ずっと見てたのか?」
「あの……はい」
「ごめんね〜、なんだか気になっちゃって」
「ごめん」
「いや、別に怒ってないけどさ」
怒った様子も、呆れた様子もないサトシ。サトシとしては別にみんながいるのは構わないのだ。ただ、グラジオがリーリエがいると戦いにくいと言っていたから言わなかっただけで。
ため息をつき、ヌルをボールに戻すグラジオ。
「サトシ。残念だが、今日はここまでだな」
「そうみたいだな」
「次こそは、全力でお前と戦いたい。俺も、ヌルもな」
「わかった。じゃあまた今度だな」
「じゃあな、リーリエ」
「えっ、あのっ!お兄様!?」
リーリエの引き止める声をスルーして、グラジオはブラッキーとともに何処かへと行ってしまう。結局、またバトルは中断となってしまったが、サトシはなかなか満足していた。
「じゃあみんな、帰ろうぜ」
帰り道、グラジオについて話していたサトシとリーリエの話題は、いつの間にかヌルと呼ばれたポケモンのことについてに変わっていた。
「ヌル……あのポケモンは、一体?」
「わからない。でも、あれは全力じゃないことだけはわかった」
「全力ではない……ですか?」
「ああ」
サトシはグラジオの言葉を思い出す。
『次こそは、全力でお前と戦いたい。俺も、ヌルもな』
それはつまり、ヌルにはまだ上があるということだろう。秘密はあの拘束具になっている仮面にありそうだ。今回のバトルでは、自分たちの全力を見せることはできなかったが、またいずれ戦う時には、お互いの全力を見せ合いたい。そう強く願うサトシだった。
今回は決着をつけません、すみません
それなりにグラジオを強いライバルとして描きたいと思ったら……
アランやショータと違って、完全に同格スタートのライバルって感じで描くつもりなので
サトシゲッコウガvsヌルは、またいずれ
ちなみに鼻歌はOKのサビ部分ですね笑