XYサトシinアローラ物語   作:トマト嫌い8マン

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いやぁ……オリジナル回です、はい
なっげー、自分で言うのもあれだけど

今回は色々とフラグやらなんやらを立ててみます

ルザミーネのキャラ強烈だったなぁ
あとザオボー許すまじ笑




強さの誓い。唸れ新たなZ技!

その日、朝食を摂りながら朝のニュースを見ていたサトシたち。メレメレ島でのいろんな出来事やイベント、グルメなど、あらゆる情報を得られるため、サトシよりも、情報収集を趣味とするロトムやリーリエが好んで見ていた。

 

『今朝のニュースです。昨日、メレメレ島の空にヒビが入っているように見えたとの報告が新たに上がっています。今月に入って既に5件目のことです。未だ詳しい理由はわかっておらず、現在研究科による分析がされています』

 

「空にヒビ?」

「ええ。サトシが来る前にも、ここまで頻度は高くなかったですけど、何度かそういうお話はありました」

『非科学的ロト』

「いや、とも言えないさ。なんて世の中には空間を司る、神のようなポケモンもいると言われてるからな」

「神様……ポケモンがですか?」

「ああ」

 

空間を司る神のようなポケモン。この話題が出た時サトシは口がいっぱいだったため話せなかったが、ある意味幸いだったのかもしれない。なんせ彼は、件のポケモンと一度ならず4度ほど実際に会ったことがあるのだから。

 

「さて、そろそろ出る時間だな。サトシは遅刻しないようにな」

「わたくしにお任せください!ちゃんと時間はチェックしてますので」

「そりゃ頼もしいな。じゃ、俺は準備があるから、先に行ってるな」

 

ククイ博士が手を振りながら家を出る。慌ててご飯を詰め込み、サトシが先に支度を済ませていたリーリエとともに家を出たのは、その少し後のこととなった。

 

 

 

二人が登校してみると、スクールでも今朝のニュースで話題は持ちきりだった。

 

「空にヒビなんて、あり得ないと僕は思うけどなぁ」

「でも、ポケモンならありえる!もしかしたら、パルキアに会えるかも」

「パルキアかぁ……また何か大変なことに巻き込まれたり……ないよな」

「無い無い。そんな簡単に伝説のポケモンには会えないってば。まったく、スイレンはすぐそういうこと言う」

「てへ♪」

「だが、確かに強いポケモンの仕業かもしれないな。もしそうなら、俺もバトルしてみたいぜ」

「あの、皆さん……今何かとても重要なことを聞き流してしまった気がするのですが……?」

「えっ、そうだっけ?」

「いえ……気の所為だったのでしょうか?」

 

兎も角、新しい出会いがあるかもしれないと、みんなは胸を躍らせていた。放課後、みんなであちこちの目撃情報を当たって見ようと決めたサトシたち。早く放課後にならないかなぁ、なんてサトシは想いを馳せながら、今日も元気にスクールの授業に参加するのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

さてさて、待ちわびていた放課後。サトシたちが校門前に集合している。

 

「目撃情報が多かったからな。二人ずつに分かれて行動するのはどうだ?」

「おっけー!それじゃあどうやって班分けしようか?」

「僕はカキと行こうと思うんだ。データとして目撃情報の場所は特定してあるし、遠い場所から攻めようかなって」

「じゃあ、何かあった時のために、俺、カキ、スイレンはばらけてた方がいいな」

「えっ?」

「カキはわかるけど、どうしてスイレンまで?」

「スイレンとアシマリも、スッゲェ強いからな。Z技も使えるから、いざって時は頼もしいし」

「頼もしい……うん、わかった」

 

サトシと組みたいなぁ、と思っていたスイレンだったが、頼もしいと言ってもらえただけでも嬉しいと思える。サトシのおかげで手に入ったZクリスタルに、Z技。それを頼りにしてくれるなら、その期待に応えられるように、もっと頑張ろうと、スイレンが心に新たな決意をしているのに、みんなは気づかずにいた。

 

「では、あとはわたくしとマオですね」

「じゃああたしはスイレンとチームになるよ。リーリエはサトシとね」

「えっ、でも」

「ほら、リーリエってまだシロンとピカチュウにしか触れてないでしょ?」

「ううっ」

 

ライドポケモンのムーランドに乗ることに成功して以来、リーリエはライドポケモンに挑戦してみている。スクールのケンタロスやスイレン宅のラプラスなど、数は着実に増えてきているものの、未だに一般のポケモンではシロンとピカチュウ以外の時は身構えてしまうのだった。

 

「わたくしも頑張ってはいるのですが……」

「そんなこと知ってるよ。大丈夫だよ。すぐに他のポケモンにも触れるようになるから。でも、今はまだっぽいから、いざという時に触れるポケモンと一緒の方がいいでしょ?」

「マオ……」

「だからあたしとスイレン、カキとマーマネ、サトシとリーリエのチームに分かれよっか」

「……はい」

 

気をつけるようにと声をかけながら、三チームがそれぞれ別の方向へと向かう。リザードンに乗ったカキとマーマネは空から、マオたちは海岸の方から、そしてサトシたちは町の方から探すために、歩き出した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

町の人にも話を聞きながら歩き続けるサトシたち。しかし目撃した話はいくつかあれど、自分たちは空のヒビを見つけられずにいた。

 

「うーん、全然いないなぁ」

「やはり、そう簡単にみられるものではないのかもしれませんね」

「ピカッ!」

「どうした、ピカチュウ?あ、この道って」

 

気がつくとサトシたちは森へと続く道の前にたどり着いていた。しかしそれはただ森に続くだけではない。この道の先、奥まで進んだところに、以前ハラさんと訪れた神殿がある。

 

「カプ・コケコの神殿がある場所……」

「戦の遺跡ですね。わたくし、本で読んだことがあります。まだ行ったことはないのですが……」

「行ってみようぜ!」

「ピカピィカ!」

「えっ!?あの、サトシ!?」

 

すぐ様駆け出してしまうサトシとピカチュウを慌てて追いかけるリーリエとシロン。サトシもはぐれないように速度を調整しているものの、いきなり走り出されたリーリエとしては気持ち大変さが増し増しだった。

 

「サトシ、ちょっと待ってください〜」

 

流石に普段あまり走ることをしないリーリエに、サトシについて走り続けろという方が酷である。流石のサトシも、リーリエの様子に足を止める。

 

「ごめん、リーリエ」

「いえっ……論理的結論としてっ……少し、休めば……問題ありません……ふぅ」

 

完全にバテバテなリーリエを見て、いきなり走り出すのは良くなかったよな、と反省するサトシ。カキやスイレンなら割とついてこれるかもしれないが、リーリエは元々が正真正銘のお嬢様だ。それを期待するのは難しいかもしれない。

 

「大丈夫か?」

「……っはい……もう大丈夫です。走れます!」

 

グッと気合いを入れるリーリエ。わかっていたことではあるけれども、根気強さはなかなかのものだ。

 

「もうすぐ神殿には着くから、ここからはゆっくり行こう。もしそこにヒビかそれを作ってたポケモンが現れた時に、疲れ切ってちゃどうしようもないしな」

「あ、はい。あの、ありがとうございます」

「いや、俺もチームで行動するなら、そのくらいの配慮すべきだったしな」

 

呼吸もしっかりと整えることができたリーリエとサトシ。今度は焦ることなく、周りの様子を見ながら進む。

 

「思っていたよりも、野生のポケモンは少ないですね」

「カプ・コケコを祀る神聖な場所ってハラさんも言ってたし、ポケモンたちもそれをわかっているのかも」

 

さらに奥へと進むサトシたち。と、何かが聞こえて来る。ポケモンの鳴き声に衝撃音、誰かの叫ぶような声。これは、

 

「誰かが、バトルしてる?」

「もしかして、大試練の挑戦者でしょうか?」

 

気持ち更に静かにサトシたちは音のする方へと近づいていく。そこにいたのは、

 

 

「くっ!ストーンエッジ!」

「ルゥガァ!」

 

拳を地面に叩きつける真夜中のルガルガン。巨大な岩柱が地面から次々に突き上げられる。それを見ながら、退治しているポケモンは同様に地面を殴る。そのポケモンめがけて進んでいたストーンエッジの岩柱が砕かれる。間髪入れずに飛び上がったポケモンが、体に電気を纏い、突進する。強烈なワイルドボルトを受け、ルガルガンが弾き飛ばされる。

 

「ルガルガン!」

 

倒れているルガルガンに駆け寄るトレーナー。それを見下ろしながら、対峙しているポケモンがゆっくりと高度を落としている。

 

 

「カプ・コケコ!?それに、」

「お兄様!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「サトシ、リーリエ!?」

 

突然現れた二人に、グラジオは驚きを隠せない。カプ・コケコの方はというと、サトシのことを興味深げに見ている。駆け寄って来るサトシたち。

 

「お兄様、どうしてここに?」

「……お前には関係ないことだ」

「ルガルガン、大丈夫か?」

「ああ。気を失ってはいるが、ポケモンセンターに連れて行けば問題はない。俺もこいつも、まだまだということか」

 

ルガルガンをボールに戻しながら、グラジオが立ち上がる。サトシと向き合うように振り返ると、サトシの背後にカプ・コケコが近寄っているのが見える。

 

「本当にお前は気に入られているようだな」

「えっ?」

 

グラジオの視線を追うサトシ。カプ・コケコの顔が目の前にあったことに驚きながらも笑顔を浮かべる。

 

「久しぶりだな、カプ・コケコ」

 

コクリと頷く。カプ・コケコがサトシのリュックを指差す。

 

「開けろってことか?」

 

再び頷く。疑問符を浮かべるも、サトシがリュックを下ろして開いてみる。特に変わったものは入っていない。モクロー、モンスターボール、弁当箱、水筒、ノートに鉛筆、そして以前見つけた透明の……

 

「あれ?」

 

取り出した鉱石を見て、サトシが首をかしげる。透明だったはずの鉱石は、深い青色に染まっていた。

 

「サトシ、それはなんですか?」

「あぁ、えっと。前にムーランドと宝探ししたことあっただろ?その時に見つけたんだけど……」

「綺麗な青色ですね」

「!その模様……水のZクリスタルと同じ?」

「ほんとです!もしかして、Zクリスタルの原石とか?」

「うーん。でも前までほとんど透明だったんだよなぁ。なんで色がついたんだろう?」

 

うんうん唸るサトシ。そんな彼の様子をさておいて、カプ・コケコがサトシの腰のボールを一つ叩く。ボールが開き、中からポケモンが飛び出す。飛び出したのはゲッコウガ。カプ・コケコを視線に捉え、視線を鋭くする。

 

「カプ・コケコ?」

 

サトシたちの元から離れ、バトルフィールドにもなっている広場、その片方へとカプ・コケコが飛びこちらを見ている。

 

「バトルしようってことか。ゲッコウガと」

 

頷く。

 

視線を交わすサトシとゲッコウガ。どちらからともなく拳を合わせる。

 

「なら、最初から全力で行くぜ!」

 

そのセリフとともに、ゲッコウガを激しい水流が覆う。初めてみるその現象に、グラジオの目が驚愕に見開かれる。

 

「な、なんだ!?」

「お兄様……これがサトシとゲッコウガの全力です」

 

水流が弾け飛び、変幻したゲッコウガが現れる。背中のみずしゅりけんが煌めき、視線は鋭く相手を見据えている。

 

「いあいぎりだ!」

「コウッ、ガ!」

 

走り出すゲッコウガ。両手に水のくないを手にしている。周りに電撃が走り、フィールドが電気を帯びる。カプ・コケコがワイルドボルトを発動し、突っ込んで来る。

 

両ポケモンの激突が激しい衝撃を周囲に引き起こす。

 

ゲッコウガ対カプ・コケコ。サトシたちにとってのリベンジマッチの火蓋が、切って落とされる。

 

 

 

サトシの手に持つ鉱石が淡い光を放ち出した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「これが……サトシたちの本気……」

 

目の前で繰り広げられる光景に、グラジオは開いた口が塞がらないような気持ちだった。

 

並みのポケモンでは捉えられない素早さで動き回るカプ・コケコに対し、変幻したゲッコウガはそれと同等、あるいはそれ以上のスピードを見せる。タイプ相性なんて関係ないと言わんばかりに、繰り出される技の一撃一撃が重い。更には、

 

「ケーコー!」

「みずしゅりけんで防げ!」

「コウッ!」

 

カプ・コケコの放った特大のエレキボールを、ゲッコウガはみずしゅりけんを目の前で回転させることで防ききる。型にとらわれない柔軟な発想に技の応用力。どれもこれまで戦ってきたどのトレーナーよりも優れている。

 

そっと腰に付けているプレミアボールに触れるグラジオ。この中にいるポケモンの力を真に引き出すのは、今の自分ではまだ不可能だ。本来であれば守り神にも負けないはずのこいつを、自分はまだバトルに出すことさえもそう簡単にはできない。

 

もっともっと強くならなければ。

 

あの人を止めるためにも。

 

彼女を守るためにも。

 

拳を握るグラジオの表情に、リーリエはどこか強い信念が見て取れた。自分の兄が修行の旅に出たのは知っていても、なんのための修行かは詳しく知らない。それでも、それが彼にとって本当に大切なものなのだと、今ようやく実感できた気がした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

サトシの近くまで後退するゲッコウガ。サトシ共々、息が上がっていて、呼吸をするたびに肩が大きく上下している。それは相手も同じようで、連戦しているとはいえ、カプ・コケコ相手にここまでくらいつけるゲッコウガの実力の高さが伺える。

 

「やっぱり強いな……それに、前みたいにはエレキフィールドを消させてくれないか」

 

以前バトルした時は、みずしゅりけんを使ってエレキフィールドを解除させてみせたゲッコウガ。しかし今回は、そんな隙を与えないと言わんばかりに、カプ・コケコが攻撃を仕掛けて来る。攻撃を防いでも完全には威力を殺せず、着実にダメージが溜まってきている。

 

「はぁっ、はぁっ……何か、逆転の一手を……ん?」

 

顔を伝う汗を手で拭うサトシ。と、サトシの手に持っていた鉱石に変化が起きているのに気づく。深い青色で一杯だった鉱石は、中央の紋章部分だけに赤色が浮かび上がって来る。それに伴い、鉱石にヒビが入る。徐々に大きくなったそれは、やがて鉱石全体に広がり、鉱石が砕けた。

 

「なっ、えっ?これって……」

 

カプ・コケコがサトシのことを見つめている。サトシの手のひらには、完全に砕けたかと思った鉱石の一部が乗っている。通常のZクリスタルとほぼ同じ大きさのクリスタル。深い青と赤色で、中央に水の紋章。

 

ただ、それはZクリスタルとは形が異なっている。

 

まるでゲッコウガのみずしゅりけんの形を模したかのような十字の形。まるで見たことのないZクリスタルが、ここに生まれた瞬間だった。

 

「……感じる……すごい力だ」

 

理屈ではなく、本能が告げている。これは自分たちの力だと。間違いなく、サトシとゲッコウガのための力なのだと。であるならば、使えないはずはない。

 

「行くぜ、ゲッコウガ!俺たちの全力全開!」

 

サトシがZクリスタルをZリングにはめる。ゲッコウガがサトシの方を見て頷く。臨戦態勢に入るカプ・コケコに、思わず息を呑んでしまうグラジオとリーリエ。

 

二人の全力が今、明かされる。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

サトシがクリスタルをはめた状態から、ダイヤルを回すように捻る。まるでXの形にも見えるようにはまっているZクリスタルから、眩い光が溢れ出す。

 

両腕を交差してから一度開くサトシとゲッコウガ。両腕を前に出して、再び交差させる。ここまでは共通の動き。しかし、Z技は固有のポーズを正しく行わなければ発動できないはず。初めて使うクリスタルを、サトシたちが使いこなせるのだろうか。

 

(わかる……これは俺たちのための技……だから、必要な動きは、俺たちが)

 

左腕を上に、右腕を下に、大きく円を描くように広げる二人。丁度左右に開いた状態で一度動きを止め、まるで印を結ぶかのように両手を合わせる。

 

「これが……俺たちの……全っ力だぁっ!」

 

左手を胸の前に構えたまま、勢いよく右腕を天に向かって伸ばす。Z技のエネルギーが溢れ出し、ゲッコウガの体を包み込んだ。

 

途端に、ゲッコウガを中心に水が湧き出てくる。電気を帯びていたはずのフィールドが放電し、電撃が弾ける。しかしそこはゲッコウガの作り出す水。みずしゅりけん同様、電気を通すことなく、寧ろ洗い流していくかのようだ。

 

エレキフィールドが打ち消され、カプ・コケコに僅かながらも動揺の気配が見て取れる。有利な地形を打ち消されただけでなく、相手の有利なフィールドによって上書きされてしまったのだ。戸惑いも無理はない。

 

サトシとゲッコウガがクラウチングスタートでもするかのように屈む。視線は鋭く、カプ・コケコを見ている。

 

「行くぜ!」

 

水が舞い上がりゲッコウガを包み込む。と、次の瞬間、ゲッコウガの姿が消えていた。

 

「なっ!?」

「今、一体何が?」

 

カプ・コケコが警戒するように辺りを見渡す。しかし突然その体が大きく仰け反る。態勢を戻したかと思うと、今度は逆側から衝撃が。間違いなくゲッコウガの仕業、しかしどうやっているのかがわからない。

 

周囲を取り囲むように、連続攻撃を喰らわせるゲッコウガ。その速度はもはや別次元のものになっている。やがて地面を覆っていた水が、スーパーアクアトルネードのように、大きな渦となり、カプ・コケコの動きを封じる。

 

天高く飛び上がる一つの影。ゲッコウガがカプ・コケコを見下ろすようにしながら、背中のみずしゅりけんを手に取る。

 

「全力全開、限界を超える!」

「コォウッ!」

 

周囲の水がどんどんゲッコウガのみずしゅりけんに集まって行く。より大きく、より強く、より鋭く、みずしゅりけんが変化して行く。その大きさはかつて見たことがないほど、あの時、カロスリーグで見せたものと同等くらいにまで広がって行く。

 

「行っけぇぇえ!」

「コォウッガァ!」

 

青く輝くみずしゅりけんを、ゲッコウガが勢いよく投げつける。水流で逃げられない中、咄嗟に両腕を合わせ防御態勢に入るカプ・コケコ。そのまま電撃を身に纏い迎撃するかのように身体に力を込める。特大のほうでんがカプ・コケコより放たれる。みずしゅりけんが渦巻く水を断ち切り、カプ・コケコに命中すると同時に、カプ・コケコの放った電撃がゲッコウガを襲う。眩い閃光が走ったかと思うと、辺りを切り裂くような爆風がグラジオたちに届いた。

 

 

恐る恐る目を開くグラジオとリーリエ。煙でよく見えないし、何も聞こえない。爆発音や激突音が聞こえないことからすると、決着はついたようだ。徐々に視界が晴れていく。

 

「サトシ……?」

「どうなった?」

 

見えてくるのはフィールド。そしてそこに横たわる三つの影。サトシ、ゲッコウガ、そしてカプ・コケコが全員倒れ、動かなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「っ……ここは?」

 

クラクラする頭を晴らそうと、サトシが頭を振りながら体を起こす。辺りはまだ森で、寝かされていたのはアーカラ島の大試練の時にみんなが使っていたのと同じ石の席。もう一つの席にはゲッコウガが寝かせられている。

 

「目覚めたか……」

 

声の方向を見るとグラジオが腕を組んで木にもたれるように立っている。

 

「グラジオ?」

「只者ではないとは前から思っていたが……お前は稀有な存在らしいな」

「?……そういえば、カプ・コケコは?」

「先に目覚めて何処かへ飛んで行ったぞ。しかしまさか相討ちにまで持っていくとはな」

「相討ちか……いけたと思ったんだけどなぁ」

 

悔しがるように呟いているものの、バトル自体が満足いくものだったのだろう。サトシは笑みを浮かべている。

 

「あっ、サトシ!目を覚ましたのですね!」

 

どこからか水を汲んできたのか、リーリエが水筒とタオルを手に道を戻ってきた。

 

「リーリエ。心配かけたみたいだな、ごめん」

「全くだ。ポケモンセンターに連れて行こうと思っても、お前がどうして倒れたのかの説明ができなかったからな。結局ここで回復を待つことにした」

 

呆れているかのような溜息をつくグラジオ。しかしすぐに真剣そうな表情になる。

 

「で?あれはなんだ?」

「あれって?」

「惚けなくていい。あのゲッコウガのこと、そしてそのZクリスタルのことだ」

 

グラジオの視線を追ってサトシがZリングを見ると、先程のZクリスタルがまた無色透明になってしまっている。

 

「あれ?」

「どうやら、先程のZ技を使ったことで、色を失ったようですね」

「そうなのか?うーん……」

「サトシのゲッコウガがあの姿になってから、このZクリスタルが力を放ちました。もしかしたら、あのゲッコウガになっている時間の分だけ、エネルギーが溜まるのかもしれません」

「それで、あのゲッコウガなんだ?」

「ああ、あれはキズナ現象って言って、ごく稀に起きるらしいトレーナーとポケモンのシンクロ、それによるパワーアップなんだ。詳しいことはわかんないけど」

「シンクロ……それでお前も倒れたわけか」

 

納得がいったように頷くグラジオ。

 

「あのZ技も、ただのZ技とは違うみたいだな」

「本に載ってたどのZ技のポーズとも違いました」

「俺は身体が勝手に動いてたって感じがしてたけど」

 

どうやら、まだまだ謎がたくさん残っているようだ。詳しく調べる必要があるかもしれない。そう思ったサトシは、後日ククイ博士に相談することに決めた。

 

「Z技を超えるZ技……(スーパー)Z……いや、(ちょう)Z……超絶水手裏剣と言ったところだな」

「超絶水手裏剣かぁ……なんかいいな、それ!」

「良いのでしょうか……」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

森を一緒に抜けたサトシ、リーリエ、グラジオ。ゲッコウガとルガルガンを回復させるために立ち寄ったポケモンセンターの前で、グラジオが立ち止まる。

 

「俺はここまでにしておく。まだ、すべきことがあるからな」

「え、ですが」

「一つ言っておく。何故お前がそれほどまでに守り神に気に入られているのかはわからない。だが、それは必ずしもいいことではない。いずれアローラを揺るがす出来事に巻き込まれる、かもしれないな」

「お兄様?」

「何か知ってるのか?」

「ふっ、さぁな」

 

片手を上げて立ち去るグラジオ。彼の言葉は、一体なんのことを指し示しているのだろうか。疑問や疑念は尽きないものの、今はただ、新たな力を喜ぼう、そう思うサトシだった。

 

結局マオたちも見つけることができなかった空のヒビ。果たしてそれは何かの前触れなのだろうか。

 

新たな謎が生まれるものの、ワクワクしているサトシ。彼のアローラでの冒険はまだまだ続く。

 

 

余談だが、この時の出来事を聞いたマオや博士までも興味津々になり、サトシにもう一回見せてとせがむこととなるのだが、それはまた別の話……

 

 

 

そして、サトシのZリングに小さく傷が付いているのに、誰も気付けずにいたことも……




いつも通りのポケモンスクールの朝、と思いきや突然の行事!?

えっ、修学旅行?どこに行くんですか?

俺もよく知ってるとこって……まさか!?

次回
突然の行事。アローラ、カントー修学旅行!
みんなもポケモン、ゲットだぜ!

なお、修学旅行編の冒頭に続く

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