所々に作者が勝手に手を加えるところもありますけど、その辺りはノーツッコミでお願いします笑
宿泊施設にあるラウンジ、そこに枕や掛け布団、おやつなどを持ってきて、サトシたちはスタンバイオーケーだった。目の前には大型モニター、サトシの手にはディスクが一枚。
「それじゃ、全員揃ったし、早速始めるとするか。あ、けど、確か初日からのものが全部入ってるって言ってたからなぁ」
「だったら、サトシとサトシの知り合いの出てるバトルに絞って見たらいいんじゃないかな?元々は、サトシのリーグでの活躍を知りたいって話だったんでしょ?」
「それもそうだな。じゃあそうするか。みんなもそれでいいか?」
「意義なーし」
「俺もそれで構わない」
「僕も」
「うん」
「それでお願いします」
「じゃ、始めるか」
確認をとった後に、ディスクをプレーヤーに入れるサトシ。待つこと少し、大画面に大きなスタジアムが映し出された。満員の客席に溢れる歓声。まるでその熱気が画面越しに伝わってくるかのようだった。
「これがカロスリーグの舞台、ミアレスタジアム」
「おっきい〜。ポケモンリーグってこんなに大きな会場でやるものなの?」
「あっ、カルネさん!」
「本当にチャンピオンなんだ」
開会の言葉がチャンピオンであり、世界的な女優であるカルネさんから述べられる。大きな歓声とともに、リーグ最初のバトルが始まろうとしている。
バトルフィールドに現れたのは黒を基調とした服装に身を包んだ青年。自分たちよりも三つくらいは年上だろうか。対するトレーナーは自分たちの近い年頃、あるいは少し若いくらいに見える。
「どっちかがサトシの知り合いなのか?」
「二人ともだ。黒い服の方がアラン。カロス地方での俺のライバルだ。スッゲェ強いんだぜ」
「オレンジの髪の子はトロバ。ポケモンサマーキャンプで出会った、私たちの友達。いつもカメラを持っていて、いろんな珍しいポケモンを撮ってたわ」
「始まる」
ランダムに選択されたフィールドが、地面から上がってくる。岩と水のステージが現れ、バトルの準備は全て整った。開始の合図とともに、両者最初のポケモンを繰り出す。オレンジ色の体に尻尾の炎、大きな翼を持つポケモン。
「どっちもリザードン!?」
「リザードン対決ですね」
「でも、何かつけてるよ」
アランのリザードンは首回りに、トロバのリザードンは尻尾に、何かの石が埋め込まれた飾りをつけている。不思議がるマオたちをよそに、同じリザードンを持つカキは、食い入るように画面を見ている。
『来ないのならこっちから仕掛けます!リザードン、ほのおのうず!』
先に動いたのはトロバの方。アランのリザードンは、空に飛び上がり、その渦をかわす。お返しとばかりにかえんほうしゃで反撃するも、トロバのリザードンはドラゴンクローで攻撃を防いだ。と、ここでトロバが首から下げているカメラを手に取る。
『さぁ、最初からとっておきを出します!行きますよ、リザードン!』
カメラを掲げ、そのシャッターボタンを押す。いや、それはボタンではなく石だった。その石から眩しい光が溢れ、リザードンの尾にある石と結び合う。
「何これ?」
「Z技……じゃない」
「これは、もしかして……」
驚くマオたちが見る中、リザードンが徐々に姿を変える。腕にはヒレのようなものが現れ、頭のツノは三本に増える。顔つきも変わり、姿を現したリザードンは、彼らの見たことのない、全く新しい姿になっていた。
「これってもしかして進化?」
「いや、リザードンはこれ以上は進化しないはずだ……まさか」
「これは、メガ進化って言うんだ」
「「「メガ進化?」」」
「わたくし、本で読んだことがあります!最終進化したポケモンの中には、さらなる力を持つ新しい姿に進化するものがいると。それがメガ進化」
「さらなる力……」
画面の中のメガリザードンが吼える。ひでりによって強化されたねっぷうがアランのリザードンに襲いかかる。しかしそこはアランのポケモン。とっさに水を巻き上げ、ねっぷうを防ぎ、続いて繰り出されるドラゴンテールも上空に飛び避ける。
「アラン、だっけ?凄いね」
「あのリザードン、サトシのリザードンにも負けないくらい強そう」
息を呑み、試合を見守るマオたち。アランが左腕を胸の前に持ってくると、その腕に、先ほどのトロバが持っていたのと同じ石がはめ込まれた腕輪がついていた。
『我が心に答えよ、キーストーン!進化を超えろ、メガ進化!』
左腕を高く掲げると、眩しい光がリザードンを包み込む。現れた姿に、マオたちは困惑した。同じメガ進化をしたというのに、現れたアランのリザードンの姿は、全く別のものだった。身体の色は黒くなり、口元から青い炎が溢れている。翼の形も変わり、力強さが増している。
「な、何で同じポケモンなのに違う格好なの?」
「メガ進化の中には、一つ以上の姿を持つポケモンもいるらしいの。まだ詳しくは知られてないんだけどね」
二体のリザードンの吐き出す炎が、フィールドの中央で激突する。真下にあった水が、急速に熱され、激しい蒸気が彼らの視界を覆う。視界の悪さに耐えかねたのか、トロバの指示でリザードンが空へと飛び上がる。その様子を見たアランは小さく笑みを浮かべた。
『正面、角度53度!かえんほうしゃ!』
煙を突き抜け、青い炎がトロバのリザードンに命中する。その強烈な一撃に、堪らずリザードンは地面へと落下した。その姿は元のリザードンに戻り、目を回していた。
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「凄すぎるよ……」
クラスメートの気持ちを代弁するマオの一言。アランの強さは、それだけ圧倒的だったのだ。リザードンに続いて、トロバのプテラ、フラージェスを続けざまに打ち破ったアランのリザードンは、一切疲れた様子がないのだ。
「流石アランだな……ここまで圧倒的だったなんて」
「サトシ、観てなかったの?」
「この時次が俺の試合だったから、その準備でいなかったんだ」
「そういえばサトシ、この時ギリギリに現れたのよね」
「ギリギリ?」
「そう。もう少しで失格になるところだったんだから」
「「「「失格!?」」」」「おいおい」
なるほど、画面に映っているのは草原のフィールドと相手のトレーナーだけ。サトシの失格までのカウントダウンが始まっている。
「もぉー、サトシ。何やってたの?」
「いや、実はさ……」
「「「「「「バトルしてたぁ!?」」」」」」
お恥ずかしながら、みたいな感じに頭をかくサトシとピカチュウ。でも、とそこから一変、少し真面目な表情になるサトシ。
「俺はあの時、バトルして良かったと思ってる。リーグに出たかったのに、出られなかった人もいる。リーグも、憧れの舞台なんだ。その人たちの思いを、しっかりと受け止めることができた。だから、」
『俺はマサラタウンのサトシ。夢はポケモンマスター。そして、カロスリーグ優勝だ!』
丁度その時、画面からサトシの優勝宣言が聞こえた。今の話を聞いた後に、その宣言を聞いてみると、どれだけの覚悟を持って言ったのかがわかる。
「やっぱり凄いね、サトシは」
「そうですね」
「うんうん」
「もう、驚きの連続だよ」
「だな」
サトシの話題で盛り上がるアローラ組。それを見ながら、セレナがサトシに耳打ちする。
「いい仲間だね、サトシ」
「あぁ。みんなスッゲェいい奴ばかりでさ、毎日が楽しいよ」
「良かった」
「はーいそこー、二人だけの空間作らない!」
ビシッと指を指すマオ。笑いながら、サトシたちは再び画面へと意識を向ける。丁度相手がチルタリスを出したところのようだ。対するサトシが選んだのは、
『ゲッコウガ、君に決めた!』
カロスリーグのフィールドに現れたのは、彼らも良く知るゲッコウガ。いつもは細められている目を開き、すぐさま構える。
「ゲッコウガだ」
「かっこいい〜」
「画面越しでも、貫禄ありますね」
バトルが始まり、チルタリスのりゅうのはどうを受け止めるゲッコウガ。追撃のりゅうせいぐんが襲いかかる。
『もっともっと強く!行くぞ!』
サトシとゲッコウガの動きがシンクロし、激しい激流を身に纏う。そのまま走り出したゲッコウガは、迫り来るりゅうせいぐんを一つまた一つと、かわしながら、フィールドの中央で大きく飛び上がる。
水が弾け、姿が現れる。その水流は形を変え、背中に巨大なみずしゅりけんが現れる。閉じられていた瞳を開き、ゲッコウガはチルタリスを見下ろした。
『なんだこれは!?ゲッコウガの姿が変わった!?』
メガ進化ではない変化、それも今までに他で確認されたことのない現象に、会場はどよめき、歓声が一層大きくなる。
『ゲッコウガ、みずしゅりけん!』
ゲッコウガの放ったみずしゅりけんがチルタリスに直撃する。羽を使い、身を守ろうとしたチルタリスだったが、煙が晴れると、目を回し、地面に倒れていた。
「ドラゴンタイプのチルタリスには、みずタイプのみずしゅりけんは効果がいまひとつのはずです。なのに一撃で倒すなんて……」
「ゲッコウガ、やっぱり強すぎだよ」
その後、アランと同じように、残る二体も単独で撃破し、サトシは無事に二回戦進出を決めた。
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初日のバトルを見終え、サトシたちは少し休憩を兼ねてお話タイムに入った。
「凄かったね〜。ポケモンリーグってアローラ地方にはないから、なんだか新鮮だったなぁ」
「あんなにいっぱいのトレーナーが集まるのもだけど、みんなすっごくレベル高かったね。メガアブソルだっけ?凄かったよ」
「私はカメックス。踊りながら戦うの、面白い」
「あたしはあのケッキングって面白そうなポケモンだと思ったな〜。横になってるのに、攻撃の時は強かったし」
思い思いに感想を語るクラスメートたち。普段は見られないような高レベルの駆け引き、ポケモンにバトルスタイル。更には例年になかったほどの、メガ進化ポケモンたちの参加。男子だけでなく、女子組も大いに盛り上がっているようだ。
「でもサトシも凄かったよね〜。最初からゲッコウガの三体抜きしちゃうんだもん」
「二回戦でも、オンバーンとピカチュウだけで勝ってたよね。オンバーンてまだ卵から生まれてそんなに経ってなかったんでしょ?それで相手のポケモン二体も倒しちゃうんだから」
「三回戦はファイアロー、大活躍。ブレイブバード、かっこ良かった」
「実況の方からもとんでもない選手って言われてましたね」
「まぁ、実際そうだよな」
ポケモンたちがよく育てられていることもあるが、サトシたちの強さはもちろんそれだけではない。サトシの閃きやとっさの作戦はとてもではないが真似できることじゃない。
そして一見無茶苦茶にも見えるその作戦を、ポケモンたちはなんの疑いもなく、やってのける。よほどの信頼関係で結ばれていなければ、ありえないことだ。
「いやぁ、なんか照れるな……はは」
目の前で自分の話題で盛り上がられると、さすがのサトシも照れ臭い。そんなサトシを眺めながら、セレナは楽しそうに笑っている。
準々決勝への進出を決めたサトシ。
ライバルたちとの決戦の時も近く気合が入るサトシ
その前に立ち塞がるトレーナー、アヤカ
そして最後の一枠を賭け、二人の友が対決する
この戦いに勝利し、準決勝に進めるのは誰か?
次回、激闘!カロスリーグ 第2章
白熱の準々決勝、ルチャブル対メガアブソル
最後は誰だ?ショータ対ティエルノ
豪華二本立てでお送りします!
みんなもポケモン、ゲットだぜ!