XYサトシinアローラ物語   作:トマト嫌い8マン

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ここから先はアニメに近いけど完全なパラレル展開になりそうです

まぁもう手持ちとか色々と考えるとパラレルも何もって感じですけどね笑

どうぞ


赤き眼差しとビーストキラー

「気持ちいいか、ピカチュウ?」

「チャ〜♪」

 

満面の笑みを浮かべるピカチュウに、サトシの頬も緩む。綺麗な晴れ空の下、朝の特訓を終え、サトシがピカチュウの体を洗っている。既に洗い終わったモクローは毛並み、というか羽毛がふかふかになり、お昼寝中。ふかふかなのが気持ちいいのかロコンが顔をモクローの羽にうずめている。

 

少し離れた場所では、ゲッコウガとルカリオが自主トレをしている。ゲッコウガにとってはかげぶんしんで撹乱するという戦法が使えない相手に対する対策ができ、ルカリオにとっては自身を上回るスピードを持つ相手との対戦の経験ができる。実力の近い両者は、よくバトルをする様になった。

 

「さて……これでピカチュウは終わりっと。次は、っとと!」

 

ピカチュウを水を張ったタライから出し、体を拭き終えたサトシ。次は誰の番かと思ったところで、ルガルガンがサトシの顔に身体を寄せる。イワンコの時から何度も経験した岩を擦り付けられる僅かな痛みを感じながら、サトシがルガルガンを撫でる。

 

「お前もやってほしいのか?」

「ルガゥ!」

「わかった。なら、次はルガルガンな」

『いわタイプなのに水浴びが好き、そんなルガルガンもいると。データアップデートロト!』

 

真夜中とも、真昼とも違う独特の毛並み。未だ世界に一体しかいない黄昏の姿。タテガミの様な首回りの毛も、夕焼け空の様な身体の色も、エメラルドの様に輝く緑の瞳も。どれをとっても、ルガルガンの見た目は立派だ。

 

「ほんと、かっこいいぜ、ルガルガン!」

「ガウッ!」

 

誇らしげに返事するルガルガン。その姿を見ていると、ふとサトシは進化した時のことを思い出す。助けてくれた二体のルガルガン。ライチさんの真昼のルガルガン、そしてグラジオの真夜中のルガルガン。

 

特にグラジオの方はZ技の特訓までしてくれた。そのおかげで、ルガルガンと一緒に、ワールズエンドフォールを完成させることができた。あの時は負けちゃったけど、あれからもしっかり特訓している。

 

「お前の成長、グラジオに見せてやりたいぜ」

「クゥ?」

 

空を見ながらグラジオのことを考えるサトシ。

 

瞬間、謎の浮遊感に襲われる。

 

「へ?」

「ピィカ?」

「ガゥ?」

「ガックゥ〜♪」

 

いつの間にか足場はなく、宙にいる。

 

またまたほしぐもテレポートである。

 

しかし地球には重力という力があるわけで、

 

「どわぁぁっ!?」

 

ほしぐも以外、仲良く地面に落ちていく。

 

 

 

「いてて……ん?」

 

思っていたほど強い衝撃ではなかった。クッションでもあったのだろうかと下を見る。見なきゃよかった……なんで現実逃避を始めてしまいそうだ。

 

「カイッ!」

 

大きな体に大きな顎。ギロリと見上げてくるたくさんの目。

 

カイロスの群れの上に、サトシたちは着地していた。

 

「どわぁぁっ!?」

 

慌てて飛び降りるサトシたち。怒りの形相のカイロスたちがゆらりとこちらに歩み寄ってくる。本格的にピンチではなかろうか……サトシたちが冷や汗を流しながら全速前進で駆け出そうとしたその時、

 

「エアスラッシュ!」

 

刃のような真空波が飛んできて、カイロスたちを蹴散らす。大きなダメージを受けたのか、カイロスたちが一目散に逃げていく。技の飛んできた方向にサトシが視線を向けると、いつか夜に見た仮面のポケモン、そしてクラスメートと同じ綺麗な金髪。

 

「まさかまたお前に合うとはな……お前とは何か、不思議な運命で結ばれているのかもしれないな」

「グラジオ!?」

 

つい先ほどまで考えていた相手、その張本人が立っていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ど、どうしてグラジオがここに!?」

「いや、そもそもお前が突然ここに来たんだが?」

「えっ、あっ!そっか、ほしぐものテレポート……」

 

ちらりと隣を見ると、ほしぐもが無邪気に笑っている。しょうがないなぁ、なんて思いながらほしぐもを抱き寄せるサトシ。と、グラジオが険しい表情をしている。

 

「グラジオ?」

「サトシ……そいつは、」

「グルォァ!」

 

突然、サトシの目の前までグラジオの隣にいた仮面のポケモンが迫る。その視線の先にはほしぐも。怯えた様子のほしぐもを、まるで獲物を狙う獣のような鋭い目で射抜いている。咄嗟にほしぐもを庇うように抱き寄せる。

 

「な、なんだ?」

「落ち着け」

 

グラジオが制止の声をかける。少し距離を開けたものの、そのポケモンはまだ唸り声をあげ、ほしぐもを見つめている。グラジオも、サトシを見る。その視線からは驚き、戸惑い、そして怒りに似たものが見て取れる。

 

「サトシ、そいつは何だ?」

「ほしぐもって言うんだ。この前森の中で見つけて、俺が世話してる」

「ほしぐも?」

「リーリエが付けてくれた名前なんだ。可愛いだろ?」

「リーリエが?会わせたのか!?」

「えっ、いや、まぁうん」

 

拳を握るグラジオ。強い怒りを抑えるように、目を閉じ何度か深呼吸をしてからサトシを見る。

 

「サトシ、そいつはウルトラビーストだ」

「あぁ、バーネット博士も「そして!」……?」

「ウルトラビーストは、この世に災厄をもたらす存在だ!」

「……えっ」

 

 

 

 

丘の上に腰掛けるサトシとグラジオ。人の住む場所から割と離れた場所にあるこの丘は、絶好の場所だとグラジオは話す。

 

「本当なら、人前にあまりこいつを出したくないからな」

 

隣に腰を下ろすポケモンの頭、もとい仮面を撫でながら、グラジオが語る。

 

「どうして?」

「こいつは、人に造られたポケモンだからだ」

 

人に造られたポケモン。例えばそれは今では宇宙で活躍していると言われるバーチャルポケモンだったり、或いはこの世で最も珍しいポケモンの遺伝子を用いて造られた最強のポケモンだったり、果ては古代に生きたポケモンを現代に蘇らせ兵器として改造したものだったり。旅の中で、サトシは何体か似たような経緯を辿ったポケモンと会ったことがある。

 

「人に造られたって、どうして?」

「こいつの本来の名前はシルヴァディ。俺がこいつをタイプ:ヌルと呼んでいるのは、研究の名残だ」

「研究?」

「こいつは、ウルトラビーストと戦うために作られた。伝説に語られるある神を参考に、あらゆる状況、あらゆる敵に対応できるようにと考えられていたのが、タイプ:フルプロジェクト」

「あらゆる状況に対応する神……もしかして……」

「どうした?」

「あ、いや、何でもないよ。それで?」

「しかしある時、タイプ:フルプロジェクトは凍結することになり、封印された状態のこいつは、タイプ:ヌルというコードネームが与えられた」

 

ウルトラビーストと戦うため。そのためだけに造られたポケモン。そんな技術をグラジオ一人が持っている筈がない。おそらく大きな組織が造ったのだろう。そしてその組織に、サトシは心当たりがあった。

 

「……エーテル財団」

「!知ってたのか?」

「いや、何となく。この前、ルザミーネさんに会ったから」

「母さんに!?ほしぐもは?見られたのか!?」

「えっ、う、うん」

「っ!そうか……まだ手を出す気は無いということか。だが……」

 

何やら緊迫した雰囲気のグラジオに、サトシが首を傾げる。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「グラジオ?」

「お前には教えた方が良さそうだな。リーリエがどうしてポケモンに触れなくなったのか、聞いてるか?」

「いや……本人も覚えてないって」

「それほどショックだったのかもしれないな……リーリエがポケモンに触れなくなったのは、ウルトラビーストが原因だ」

「えっ?」

「リーリエは、ウルトラビーストに襲われたんだ」

「なっ!?」

 

エーテルパラダイスにある家に住んでいた頃の話、突然現れたそのウルトラビーストがリーリエを捕らえてしまうのを、グラジオは目撃した。目撃した、だけだった。

 

「怖くて足がすくんでしまったんだ。助けられなかった!」

「……グラジオ」

 

拳を強く握るグラジオ。それだけで、どれほど悔しい思いをしているのかがわかる。

 

「だから俺は旅に出た。こいつを連れて。強くなって、今度こそ、リーリエを守り抜いてみせる。もうあんな怖い思いは、絶対にさせない!」

 

やっぱり、優しい人なのだとサトシは実感する。冷たい態度や言葉も、本当は全部リーリエのことを想ってのことなのかもしれない。

 

「やっぱり、いいお兄さんなんだな、グラジオって」

「……俺は全てのウルトラビーストを倒す。奴らはこの世界にとって、危険な存在だからな。ほしぐもだって、例外じゃない」

「そんなことない!」

「何故そう言い切れる?」

「ほしぐもは、俺がきちんと育てるって約束したから。カプ・コケコたち、そしてソルガレオとルナアーラと」

「なっ、伝説のポケモンにだと!?」

「う、うん。夢の中で、だけど」

 

突然至近距離から自分の顔を覗き込んでくるグラジオに、流石のサトシも戸惑う。何かを見極めようとしているのか、グラジオの視線がサトシから外れる気配はない。

 

「お前は何者なんだ?」

「へ?」

「何故カプ・コケコはお前にZリングを与えたんだ?何故カプ・テテフはお前とお前のルガルガンを気に入ったんだ?あのゲッコウガは一体どうしてあんな力を持っているんだ?何故ソルガレオとルナアーラ、伝説のポケモンがほしぐもを託したんだ?」

「ちょ、ちょっと待って!そんなに一遍に聞かれても、答えられないって」

 

鼻同士が触れそうなほどに近くまで詰め寄ってきたグラジオの体を少し押し返しながら、サトシが待ったをかける。流石に冷静さを取り戻したのか、グラジオも「すまない」と言って体を離す。

 

「グラジオ、バトルしてみないか?」

「バトルだと?」

「俺のことを知りたいなら、バトルを通すのが一番だ。やろうぜ!」

「ふっ……本当に不思議なやつだな。いいだろう」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「行くぜ、ルガルガン。お前の成長、見せてやろうぜ!」

「ルガゥ!」

 

「戒めの仮面纏いし聖獣、ここに!シルヴァディ!」

「シヴァ!」

 

ルガルガンを見下ろすシルヴァディ。同じ四足歩行をするポケモンとはいえ、シルヴァディの方が一回り以上体が大きい。しかし臆することなく、ルガルガンは強い視線でシルヴァディを見ている。

 

「いい目をしてるな、お前のルガルガン」

「へへっ、サンキュー。お前のルガルガンも見てるんだ。特訓して強くなった成果、見せてやるぜ!」

 

トレーナー同士が火花を散らす。審判のいないバトルゆえ、コールはない。バトルを見守る観客もいない。互いに相手を観察し、呼吸を整える。バトルのスタートを切るのは—————

 

「ルガルガン、いわおとし!」

「シルヴァディ、エアスラッシュ!」

 

同時に動く二体のポケモン。飛び上がり、尾を振り岩を飛ばすルガルガン。頭のトサカの部分から真空波を斬撃のように飛ばすシルヴァディ。二つの技が空中でぶつかり合い、弾ける。

 

「攻撃力を上げるぞ。つるぎのまい!」

 

シルヴァディの周りに剣が現れ、囲むように回り出す。攻撃力を高めるシルヴァディ。地面に降り立ったルガルガンは、すぐ様駆け出す。

 

「アクセルロック!」

 

シルヴァディが反応するよりも早く、ルガルガンの攻撃が体の側面に炸裂する。大きく弾き飛ばされるシルヴァディ。あれだけの体格差でここまでダメージを与えたことに、僅かにグラジオが目を見開く。

 

「成る程。更に力をつけたらしいな」

「もちろん。トレーニングは欠かさずやってるからな」

「面白い。ブレイククロー!」

 

前足に力を込め、ルガルガン目掛けて接近するシルヴァディ。振り下ろそうとしたその瞬間、

 

「今だ!かわしてかみつく!」

 

素早く移動し、シルヴァディの背後を取る。無防備な背中に噛みつこうと、ルガルガンが仕掛ける。

 

「甘い!ダブルアタック!」

 

シルヴァディがトサカと尾に力を込める。そのまま振り向かずに、尾の一撃でルガルガンを弾く。

 

「畳み掛けるぞ!エアスラッシュ!」

「ルガルガン、アクセルロック!」

 

ルガルガンに追い討ちをかけようと、シルヴァディが真空波を飛ばす。しかし着地してすぐさまアクセルロックを繰り出すルガルガンは、その攻撃をかわし、逆にシルヴァディに攻撃を決める。

 

「攻撃は最大の防御!ルガルガン、いわおとし!」

「ダブルアタック!」

 

攻めの手を休めず、飛び上がりながら岩を打ち出すルガルガン。しかしシルヴァディは怯むことなく突っ込んでくる。相当な硬さなのか、技を受けながらも、仮面が割れることなく、むしろシルヴァディを攻撃から守っている。

 

ルガルガンの元に辿り着いたシルヴァディの二段攻撃が炸裂する。大きく飛ばされたルガルガンは近くの池に叩き落とされてしまう。

 

「ルガルガン!」

 

水面から顔を出すルガルガン。ずぶ濡れになり、座り込んでいる。どこか怪我でもしたのだろうか、サトシが心配していると、

 

「ルガゥル!」

 

突然ルガルガンが大きく吠える。ギンッと更に鋭い視線でシルヴァディを見つめている。視線には本気の怒りが込められ、その瞳は美しい緑色から、真夜中の姿と同じ、深い赤色に変化している。

 

「ルガルガン?」

 

サトシが駆け寄ろうとすると、一瞬でルガルガンの姿が消える。

 

「ガゥル!」

「シヴァ!?」

「「なっ!?」」

 

直後、ルガルガンのアクセルロックがシルヴァディを弾き飛ばした。先ほどと比べても威力が上がっていて、今度はシルヴァディの巨体が地面に倒れるほどだった。

 

「急に力が……ブレイククロー!」

 

振り下ろされたシルヴァディの一撃をかわすルガルガン。そのままその腕に強くかみつく。

 

「振りほどけ!ダブルアタック!」

 

シルヴァディの渾身の力を込めた攻撃が決まり、ルガルガンも思わず噛みついていたシルヴァディの腕を離す。

 

地面に倒れてもすぐ立ち上がり吠えるルガルガン。いつもの子供のような無邪気さや、仲間想いの優しさは見えず、まるで闘争本能の塊のようだ。

 

「まさか、暴走してるのか?」

 

「この感じ……まるで……」

 

その様子を見たサトシの脳裏に、一体のポケモンが浮かぶ。かつてライバルのポケモンで、のちに自分の仲間になったあの猛火の子。心優しいあのポケモンは、時に湧き上がる力を抑えられずに暴走してしまった。その時の姿と、今のルガルガンの姿は、とてもよく似ている。

 

離れた場所にいるピカチュウが、泣き出しそうなほしぐもを必死にあやしている。シルヴァディとグラジオはルガルガンを止めようとしてくれている。

 

「俺がルガルガンのトレーナーだ。俺が止めなきゃ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

飛びかかってくるルガルガンをどう止めようか、思考を巡らすグラジオの目に入ってきたのは、その突撃を身一つで受け止めるサトシの姿だった。

 

「サトシ!」

 

すぐにシルヴァディで助けようと指示を出そうとするが、

 

「大丈夫だ!」

 

サトシから制止の声が飛ぶ。見ると、サトシはルガルガンを抱きしめている。

 

「落ち着け、ルガルガン」

 

宥めるように優しく語りかけるサトシ。それでも暴走したルガルガンには聞こえないのか、まだシルヴァディを狙おうとしている。

 

「大丈夫だから、落ち着け。っ!?」

 

サトシを邪魔だと感じたのか、ルガルガンがサトシの腕にかみつく。痛みに顔を歪めながらも、サトシはルガルガンを離さない。

 

「ルガルガン!」

 

 

 

 

 

はっきりしているのは敵の姿だけ。仮面を纏ったあのポケモン、その姿しか目に入ってこなかった。

 

けれども、それ以外関係ない。

 

戦わなくてはいけない。

 

倒さなければならない。

 

何があっても—————

 

「ルガルガン!」

 

飛び込んできたのは自分を呼ぶ声と、口に広がる鉄の味。

 

前にもどこかで感じたことのある味、何度も聞いてきた声。それだけで、今自分のことを抑えているのが誰なのか、わかった。

 

すっ、と頭が冴えていく。

 

まるで認識できなかったはずの周囲の様子がわかってくる。一度目を閉じ、もう一度開くと、大好きな主人が心配そうに覗き込んでくれている。

 

 

「大丈夫か、ルガルガン?」

「ルゥガ」

「うん。なら、良かった」

 

一度目を閉じ、開かれたエメラルド色の瞳は、申し訳なさそうにサトシを見る。口をサトシの腕から離し、傷を優しく舐める。元のルガルガンに戻ったらしい。

 

「サトシ、大丈夫なのか?」

「平気だよ、ってて」

「まったく、無茶をする。見せてみろ」

 

しゃがみこみ、サトシの腕の傷を診るグラジオ。持っていた水で傷を洗い、ポケットからハンカチを取り出し、簡易的な包帯がわりにし、サトシの傷の手当てをする。

 

「これでとりあえずはいいだろう」

「サンキュー。グラジオ、手際いいな」

「シルヴァディはポケモンセンターに連れていけないからな。傷の手当てにはもう慣れた。……それで、どうする?」

「?」

 

グラジオの質問の意図がわからず、首をかしげるサトシ。先ほどまでやっていたことを忘れているのだろうか。グラジオが小さく息を吐いてから答える。

 

「バトルの続きのことだ。その怪我で続けるのか?」

「やる!こんなの全然へっちゃらだし、またいつバトルできるかわからないし」

 

途端に飛び上がるように元気になるサトシ。単純というか純粋というか。この僅かな時間で、確かにサトシのことを色々とわかってきた気がする。

 

「では、続きを」

「ああ。始めようぜ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「一撃で決めさせてもらう!シルヴァディ、つるぎのまい!」

「ルガルガン、気合い入れてくぞ!」

 

更に攻撃力を高めるため、再びつるぎのまいを使うシルヴァディ。身を屈め、今にも飛びかからんとしているルガルガン。勝負が決まるのは、一瞬。その一瞬を逃すまいと、

 

「行くぞ、ブレイククロー!」

「アクセルロック!」

 

シルヴァディよりも早く攻撃を決めようと動いたルガルガン。しかしその動きを読んでいたのか、シルヴァディは片足でその攻撃を受け止める。止まってしまったルガルガンに向けて、シルヴァディの渾身の一撃が炸裂する。

 

地面に叩きつけられ、サトシの側まで地面を跳ねたルガルガンは、目を回してしまっていた。

 

「勝負あったな。戻れ、シルヴァディ」

 

グラジオがシルヴァディをプレミアボールに戻す。サトシもルガルガンに駆け寄る。

 

「ルガルガン?」

「ガゥ」

「お疲れ。よく頑張ったな」

 

途中の暴走のこともあり、浮かない表情のルガルガンだったが、サトシに撫でられるのが気持ちいいのか、目を細め、笑顔を浮かべている。

 

ご機嫌な様子のルガルガンに、ほしぐもやピカチュウも嬉しそうにしている。

 

「お前がどんな奴か、なんとなくわかってきた気がする」

「俺も、なんかグラジオのこと、少しずつわかってきたかも」

「お前のルガルガン、なかなか癖がありそうだな」

「うん……でも、きっとなんとかなるって。その時は、またバトルしてくれよ」

「いいだろう」

 

バトルを終え、握手を交わす二人。立ち去る直前、グラジオが振り返る。

 

「お前に頼みがある」

「頼み?」

「一つ、今日俺と会ったことは誰にも言わないこと。一つ、シルヴァディのことは黙っていること。一つ、リーリエの過去についても誰にも話さないこと。特にリーリエには話すな、いいな?」

「グラジオ……」

「約束しろ。俺は、お前を信じてるから言ってるんだ」

「……わかった」

 

背を向け、歩き出したグラジオが足を止める。

 

「……そうだ。もう一つだけ、約束してくれるか?」

「?なんだ?」

「リーリエを……俺の妹を頼む。今はまだ俺が側にいることはできない。だから、お前が守ってやってくれ」

 

真剣なグラジオの声。きっと本当はそばで見守ってやりたいのだろう。グラジオの(リーリエ)への、強い想いを感じ取ったサトシ。

 

「約束するよ。きっと守る」

「……ふっ。またな」

 

遠ざかるグラジオの後ろ姿を見送ったサトシ。グラジオとの約束を胸に、サトシもまた帰ろうと足を進め——

 

「ってあれ!?どうやってここから帰るんだ!?」

 

頼みのほしぐもは眠ってしまい、テレポートも使えない。慌てふためくサトシたちをよそに、気持ちよさそうに、無邪気な寝顔を見せるほしぐもだった。

 

 

 

ちなみに、サトシたちは強い帰巣本能を持っているルガルガンのおかげで、なんとか無事に帰ることができた……その日の夜に

 




これから2週間ほど音信不通になります

というのもちょっと日本を離れるのです

なので更新はお休みします


あ、一応次回予告


今日はみんなでお泊まり会!

バーネット博士も一緒に、ゲームに料理に盛りだくさん!

そんな中、夜中に一人外に出るリーリエ。

ルザミーネさんがどうかしたのか?


次回、
お泊まり、訳あり、リーリエに
みんなもポケモン、ゲットだぜ!

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