やっとウルトラサンを始めたところです笑
そう言えばプレゼントのイワンコ女の子だったけど、アニメだと絶対男の子だよね、あれ?
まぁ、そんなあれはあれとして、お話どうぞ〜
その日はほしぐもの定期検査の日だった。
スクールを終え、ククイ博士の家に戻ったサトシたちを出迎えたのはバーネット博士。念のためにと、健康状態やウルトラオーラについてのデータを収集している。
「もう少しだから、ちょっと待っててねほしぐも」
「ガックゥ」
特に悪意がないことを理解しているのか、ほしぐもも大人しく協力している。というよりも、終わった後のご褒美の金平糖が待ち遠しいだけなのかもしれないが。
「これでよしっ。終わったわよ」
「どうでした?」
「特に異常は無さそうね。健康状態も良さそうだし、何も心配はないわ」
「そうですか。お疲れ、ほしぐも」
「金平糖、用意してありますよ」
「ク〜♪」
リーリエが差し出す皿に乗っている金平糖をすぐ様食べ始めるほしぐも。満面の笑みを浮かべながら食べる様子は、中々微笑ましく思える。
「ところで、リーリエちゃん」
「はい?」
「こっちに来る直前にルザミーネと会ったんだけど、何か溜息ついてたわ。原因に心当たりある?」
「うっ……それは、その……」
「リーリエ?」
ギクリと体を震わせ視線を逸らすリーリエに、バーネット博士が首をかしげる。一方サトシとククイ博士はというと苦笑している。
「何かあったの?」
「ええと、あったといえばあったのですが……」
スクールにいる間、リーリエは何やら視線のようなものを感じていた。誰かにずっと見られているかのような、そんな奇妙な感覚に。
まさかストーカー?それとも別の何か?
誰かに相談するべきか悩んだ結果、ルカリオを連れているサトシに相談してみることにしたのだった。快く話を聞いたサトシは、ルカリオに頼んで周囲の波導を探ってもらったところ……
『この男が犯人だ』
『えっ?』
ルカリオが指差している相手を見て、サトシ達の表情がひきつる。唯一面識がなかったルカリオは不思議そうに首を傾げている。
『な、にをしているの、ジェイムズ?』
『お、お嬢様……こ、これはですね……』
茂みに隠れていたジェイムズの手にはビデオカメラ。ご丁寧に軽い変装までしているジェイムズを見るリーリエの表情は笑顔ではあったものの、どこか表現できない冷たさが見え隠れしていた。
「それでジェイムズにお話を聞いてみたら、何でもお母様の指示だったそうで」
「ルザミーネの?」
「はい」
「それで、リーリエがどういうつもりなのかってルザミーネさんに電話して……」
『もう!ジェイムズに変なことをさせないで!』
『だって、あなたとお話しする機会も全然ないし、学校とかククイ博士の家でどう過ごしてるのか、気になるじゃない』
『だからといって、隠し撮りさせる理由にはならないでしょ』
『そんなに怒ると可愛いお顔が台無しよ。ねぇ、サトシくん?』
『えっ、俺?』
『折角だし、サトシくんのお話も聞かせて欲しいわ。リーリエのこと、それからほしぐもちゃんのことも』
『え、えーと』
『もういいです!』
「で、リーリエがそのまま電話を切っちゃったんです」
「だってお母様、反省するそぶりもないんですもの。それにサトシにまで」
「そうだったの」
ふんっとそっぽを向きながらご機嫌ななめ気味に話すリーリエ。何やら納得がいったようで頷くバーネット博士。リーリエに何か伝えようと口を開き———
———トントン
と、ここで扉をノックする音が。
「おっ、来たな」
ククイ博士が玄関へと向かう。ドアを開けると、
「「「「お邪魔しま〜す!」」」」
と元気な声。外にはマオたち四人が少し大きめの荷物を持って集まっている。
「あら?みんなお揃いね」
「バーネット博士!アローラ!」
「アローラ。それで?この賑やかな感じは何かしら?」
「今日は博士の家でお泊まり会なんです!」
「お泊まり会?」
ニッと笑って手荷物カバンを見せるマオとスイレン。なるほど、お泊まりセットならば、普段より荷物が多いのも頷ける。
「みんな来たことだし、私は帰ろうかしら」
「えー!折角だから、バーネット博士も一緒にどうですか?」
「「えっ」」
思わず反応してしまったのはバーネット博士とククイ博士。一方生徒組は既にそれが決定事項かのように盛り上がっている。
「えーと、いいのかしら?」
「君が迷惑でなければ俺からも頼むよ。みんな、楽しそうだしな」
「そう?なら、お邪魔するわ」
「んん?」
ふと二人の博士が話しているのを横目で見るマーマネ。心なしかククイ博士の表情がいつもより優しい気が……
「ふーん」
思わずニヤニヤしてしまうマーマネ。他の誰も気づかなかったのは幸いだったのだろうか。
こうして、二人の博士を含む、大お泊まり会が始まるのだった。
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「リーリエがいつも寝てるのってどこ?」
「私はあちらのロフトを使わせていただいてます」
「サトシは?」
「地下なんだ。元々物置だったんだけどね」
「へ〜」
改めてじっくりと家の様子を見るマオたち。いかにも生活感溢れるリビングに、トレーニングマシンがいくつも置かれている研究室。物置の名残で広くはないサトシの部屋、そしてリーリエのロフト(流石に男子は止められたが)。ポケモン達もトレーニングマシンを試したり、イワンコが使っていたおもちゃで遊んだりと、楽しそうだ。
「それにしても、やっぱりオーキド博士のとこと比べると小さいね」
「ほっとけ」
「オーキド博士?あのカントーにある?行ってきたの?」
「はい!修学旅行で。舞踏会にジムバトルも!」
「凄いわね、その修学旅行。あとで詳しく聞かせて」
さてさてみんなで集まって何ができるだろうか、と考えた結果———
『それじゃあいくロト!全力ポーズ、ワンツースリー!』
全力ポーズワンツースリーとは、草、炎、水のZ技のポーズを出題に合わせて三連続でとるゲームである。ポケモンスクールでは、Z技を効率よく覚えるための遊びとしても有名である。徐々に早くなるお題、それに合わせ瞬間的な判断や反射神経までもが重要になってくる。
「それじゃあ、男子チーム対女子チームで、勝った方が負けた方に何か一つ言うことを聞かせられるってことでどうだ?」
「いいよ!絶対負けないからね!」
やる気満々の両チーム。二人の博士を加え、いざ、ゲームスタート!
『いくロト!まずは、草、水、炎!』
「「「「「「「「草、水、炎」」」」」」」」
出だしは順調、ロトムがペースを上げながらお題を出し続ける。
最初にペースに追いつけなくなって間違えたマーマネに続き、スイレンが脱落。ついついポケモンの動きにつられてしまったようで、がっくりとうなだれている。
『草、草、草!』
「「「「「ブルームシャインエクストラ!」」」」」
「草、草、草!って、あっ!」
「サトシ、アウト!」
「そうだ。三つ揃ったら、技名だったよな。あっちゃー」
ぽりぽりと頬を書きながらサトシが座る。今まで何度もZ技を繰り出したことのあるサトシだったが、それでもやはりゲームとなると難しいようだ。
『どんどんいくロト!』
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数分後……
リビングにはタオルを持つカキとバクガメス。そしてその側ではサトシ達が体を拭いていた。人型のルカリオとゲッコウガは、ポケモン達の体を拭いて上げている。
『暑くなるのはわかるが、燃えすぎだな』
「コウガ」
「本当にすまない……」
サトシが脱落して少しあと、炎が三つ揃ったその時のこと。あまりにも熱中してしまったカキが、まさかの本物のダイナミックフルフレイムを室内で放ってしまったのだった。
咄嗟にゲッコウガとルカリオがそれぞれの技で威力を削いだため大惨事にはならなかったものの、サトシ達は真っ黒になってしまったのだ。
『しかし、面白い遊びがあるのだな』
「あれ?ルカリオは知らないんだっけ?この前のお昼休みにやってたと思うけど」
『ああ。その時は精神統一をしようと思って、スクールの屋根の上で瞑想していた』
「えっ?屋根の上?」
『ああ。あのてっぺんにある尖った柱の先端でバランスを取る。気を落ち着かせ、体をしっかりとコントロールできていないと、落ちるがな』
なんてことはないように語るルカリオに、流石の博士コンビも目が点になっている。それはどこの仙人ですか、とでも言いたくなってしまうような授業内容である。
「そういえば、普段ゲッコウガはどんな修行してるの?」
「コウ?」
「ん?俺が知ってるのは確かスクール付近の森の中をどれだけ早く駆け抜けられるかとか、プールの水の上を走り続けるとかかな。でも、ルカリオとバトルしてることも多いよな」
「コウガ」
「へぇ、そんな修行を……って、水の上?」
こちらは既に見たことあるククイ博士はともかく、バーネット博士は色々とキャパオーバーらしく、首を傾げたままである。
「それじゃあ、さっきのゲーム、女子の方が多かったから、男子はあたし達の言うことを聞くってことで!」
ビシッとサトシ達を指差すマオ。ウンウンと頷くスイレンに、楽しそうに微笑むリーリエにバーネット博士。
「まぁ、仕方がないな」
「結局残ったのって博士だけだもんね。カキは失格負けだけど」
「うっ、それは本当にすまない」
「まぁまぁ。それで、俺たちは何をすればいいんだ?」
悔しがるマーマネにしょんぼりしているカキ。苦笑するククイ博士をよそに、サトシがマオ達に問いかける。
「じゃあ、今度買い物に付き合ってね」
「荷物持ち、よろしく!」
いい笑顔で答えるマオとスイレン。リーリエも言葉こそ発していないが、かなり乗り気らしい。
「あらあら。しっかりね、男の子」
楽しげにウィンクするバーネット博士。自分たちよりも年上の大人なのに、どこか親近感が湧くほどにまで、彼女は親しみやすい。大人と子供、というよりもどこか家族と接しているような錯覚すら覚える。
「……家族……」
小さく呟いたリーリエの声は、誰の耳にも届かなかった。
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「さてと、そろそろ夕飯の用意をしないとね」
ソファに座り、談笑していたサトシ達。と、時計を確認したバーネット博士が立ち上がる。慌てて家主のククイ博士が立ち上がる。
「いや、それなら俺が」
「いいの。今日1日お世話になるんだし、やらせて頂戴」
「まぁ、君がそういうなら」
「あっ、あたし手伝います!」
「なら俺も!」
「わたくしもお手伝いします」
すぐさま立ち上がったのはアイナ食堂が看板娘のマオ、居候中のサトシとリーリエだった。比較的料理する機会が多い3人にバーネット博士の手伝いを任せ、残りのメンバーは散らかってしまった部屋の片付けをすることにした。
『みんな、頑張るロト!』
『お前は手伝わないのか?』
『僕はタイマー係。料理番の方を手伝うロト!』
キッチンの方へと飛んでいくロトムを見送るルカリオ。床に散らばった本を拾いながら、ゲッコウガが声をかける。
「コウガ」
『ああ、手早くすませよう。そうすればサトシの方も手伝えるしな』
「ゲッコウ」
「クロ!」
「コォン」
「ニャブ」
「ルガゥ」
「ピカ!ピカピカチュウ!」
他のサトシのポケモン達も手伝いに乗り気なようだ。ピカチュウの指示のもと、サトシのポケモン達が片付けに取り掛かる。触発されるように、他のポケモン達も動き出す。
「みんな、偉いね」
「こりゃ、俺たちも頑張らないとな」
ポケモンとククイ博士達の活躍により、みるみる部屋が綺麗になっていく。ものの数分で、部屋は元どおり、どころかそれ以上にピカピカになっていた。
一方料理組はというと、
「マオもリーリエも、すごく手馴れてるわね」
「えへへ、ありがとうございます」
「二人は流石だなぁ」
「あら、サトシも中々よ。十分経験者と言えるわよ」
「ほんとですか?ありがとうございます!」
バーネット博士がメインを、3人がそれぞれ違うサイドメニューを作っている。思っていたよりも頼もしい子供達に、バーネット博士がさらに楽しい気持ちになる。
「リーリエ、どんな調子?」
「はい。もうあと少しで野菜を切り終えます」
「そう。なら私も手伝うわ。一緒の方が早いものね」
言うが早いかリーリエの隣にまな板を並べ、包丁を手に取るバーネット博士。二人で並びながら野菜を切る中、リーリエがちらりとバーネット博士の方を向く。
「……こんな感じなのでしょうか?」
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ようやく料理が完成、さぁ楽しい夕食の始まり始まり〜、とは残念ながらならなかった。
ぐ〜、と誰かのお腹がなく。はぁ〜と溜息が口から漏れる。
「全く、ゴンベのやつ……」
リビングに輪になるように座るサトシ達。カキがちらりとゴンベの方を見る。幸せそうな表情で寝ているゴンベに、とてもではないが怒る気にはなれない。
「まぁ、もう少し待とうぜ。博士達、わざわざ買い物に行ってくれてるんだし」
「でも、驚きました。ゴンベにあんなスピードが出せるなんて」
感心したように呟くリーリエに、思わずサトシ以外のメンバーも頷く。
なんとゴンベは、完成したばかりの料理を、目にも留まらぬ速さで食べつくしてしまったのだった。おかげで材料がなくなってしまい、ククイ博士とバーネット博士が買い出しに出かけている。
「流石カビゴンの進化前」
「Z技の時のカビゴンのスピードも、驚異的だからなぁ」
ゴンベともカビゴンとも幾度と出会っているサトシ。あの未来都市で進化した子や、赤いバンダナの女の子の手持ちの子。自分の仲間になった子も、ポケベースで活躍する子も、本気を見せると凄いことをよく知っている。
と、ルカリオとゲッコウガがサトシに近寄る。入口の方ではルガルガンとニャビーが外に出て行くのが見える。
『サトシ、少し外に出る』
「あ、じゃあ俺も行くよ」
「?サトシ、どこか行くの?」
「すぐ外に行くだけだよ。みんなも来るか?」
何があるのだろうか。疑問に思ったカキ達。唯一事情を知ってるリーリエは、ロコンを抱き上げ、サトシのすぐ後をついていく。気になったカキ達がみんなで外に出てみると———
「ルガッ!ルガゥル!」
「ニャ!ニャッブ!」
アクセルロックで接近するルガルガン。その攻撃を後ろに跳ぶようにしながら避けるニャビー。すぐさまひのこを打ち出すが、ルガルガンがいわおとしで炎を打ち消す。飛びかかるルガルガンを、ニャビーがひっかくで迎え撃つ。
『はぁっ!』
「コウッガ!」
目にも留まらぬ速さで動き、拳を繰り出すルカリオ。しかしその動きを先読みしたゲッコウガが光刃を交差させるようにしながら攻撃を防ぐ。力一杯振り抜き、ルカリオの拳をゲッコウガが弾く。すかさず懐めがけて振るわれる刃を、肘と膝で挟み込むように防ぐ。
「これって、特訓?」
「ああ」
「みんなとても頑張り屋さんばかりで、毎晩特訓しているのです」
少し離れた場所ではシロンとロコンがピカチュウに素早く動くコツを教えてもらっている。シロンもロコンもピカチュウの動きを少しでも吸収しようと、集中している。
「本当にサトシのポケモンは凄いね」
「うん、努力家いっぱい」
「あ、あれ?モクローは?」
「あ〜、モクローは……」
外に持ち出していたリュックを見せるサトシ。中には気持ちよさそうに眠っているモクローが。
「あらら」
「朝とかもうちょっと早い時間なら起きてるんだけどな」
「ぐっすり寝ちゃってる」
「よぉし、俺も特訓だ!」
サトシと同じくバトル好きのカキ。バクガメスとガラガラもサトシのポケモン達を見てやる気が出ているようだ。
目の前で繰り広げられる特訓を眺めながら、マーマネがぽつりと一言。
「これ、余計にお腹空かないかな?」
さて、買い出しに行った博士組はというと、買い物袋を両手に下げ、二人並んでククイ博士の家を目指している。
「ごめんね、迷惑かけちゃって」
「迷惑なんてないさ。あいつらも楽しんでる」
「ならいいんだけど。今日はありがとう。子供の頃を思い出して、楽しかったわ」
満面の笑みの同僚に、思わずドキリ、としてしまうククイ博士。咳払いをしてさりげなく視線を逸らす。
「それにしても、みんないい子ばかりね。特に彼、頼もしいわね」
「えっ?」
「サトシくん。ほしぐものこともだけど、リーリエのことも。ルザミーネも気に入ってるみたいだし」
「あぁ。将来が楽しみなやつだよ」
「そうね。不思議な感じの子ね」
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さて、無事に博士達が帰ってみると、特訓していたサトシ達は空腹で床に倒れていた。すぐに料理に取り掛かったバーネット博士。手際よく作られた特製スピード料理には、みんなが満足げな表情を浮かべていた。
片付けをみんなで行い、交代で風呂を使い、いよいよ寝る準備に入った。
ロフトで寝るガールズと、その下のリビングで寝るボーイズ。布団を敷き、みんなで雑魚寝する事にしたのだった。
「やっぱりお泊まりって楽しいね!」
「俺もだ。俺だけ島も違うしな」
「ねぇ、これからどうする?寝る?」
「もっとおしゃべり!」
修学旅行の時は部屋が完全に別だったからみんなで集まって寝る事はなかったため、なんだか新鮮な気分である。
「それにしても、バーネット博士の料理も美味しかったなぁ」
「うん。なんかお母さんの味って感じかな?」
「お母さんの、味……」
マーマネの何気ない一言で始まる家庭料理談。いわゆる、お袋の味についてみんなが語る中、リーリエはただ一人、ピッピ人形を抱きしめるだけだった。
夜みんなが寝静まった頃、こっそりと家を抜け出す一つの影。
いつかの夜のように、リーリエが海を眺める。あたりに人もポケモンもおらず、ただ寄せては返す波の音だけがあたりに響いている。
思い出すのはもう遠い昔にも思えるほど、懐かしい記憶。自分がいて、兄がいて、そして母がいて。父親も確か、研究者だった事は覚えている。けれども、やはりいつも一緒にいてくれた母のことの方が、鮮明に思い出せる。
先ほどまでの会話、自分はなんて答えたのか、それさえよく覚えていない。ただ……
「リーリエ」
ふとかけられた声に振り向く。あの日の再現ではなかろうか。そう思ってしまう。ただ違うのは、そこにいるのが彼だけではないこと。サトシとバーネット博士が、リーリエの元に歩いてきている。
「こんな遅くに一人で抜け出して。波の音でも聞きにきたの?」
「えっ?」
「私は好きよ、波の音。自然と穏やかな気持ちになるもの」
「俺もです。それに、なんだかとても懐かしいことも思い出します」
波の音に耳を傾けるように、サトシとバーネット博士が目を瞑る。それに習うように、リーリエも目を瞑ってみる。
静かに打ち付ける波の音は、まるで自分を包み込んでいるかのようにも思えるほど優しい音だった。隣からサトシの鼻歌が聞こえてくる。波の音と合わせると、なぜか神秘的にも聞こえ、心の奥から安らかな気持ちになってくる。でも、この曲、確か何処かで聞いたことがあるような……
「綺麗な曲ね。何の曲かしら?」
「オレンジ諸島を巡っていた時に知ったんです。海の神に捧げる祈りの曲だって」
「海の神?それはまた、こういう場所にはぴったりな感じね」
曲が終わると、サトシとバーネット博士が話しているのが聞こえてくる。そっと目を開くリーリエ。と、こちらを見ている二人と目があった。
「何かあったの?」
「えっ、何か、ですか?」
「リーリエ、この前みたいに難しい顔してたからさ。何か悩みでもあるのかなって思ってさ」
どんな小さな変化もお見通しなのだろうか。微笑みかけるバーネット博士とサトシの姿が、自分の記憶の二人と少しだけ重なって見えた。
「……その、家族のことで、少し」
「家族の?」
「ええ」
そこから、リーリエは二人に話した。
かつての家族のこと。
研究の中で行方不明となった父のこと。
その父の研究の後をルザミーネが継いだこと。
それ以来、何処かルザミーネとの関係に亀裂ができてしまったこと。
どうしても思い出せない、ポケモンへの恐怖のきっかけのこと。
グラジオのこと。
それはまだ13歳の少女には混乱することも多く、どうしたらいいのか、どうすべきなのか、わからなくなってしまっている。
「お母様のことが、時々わからなくなってしまいます」
「そう、なのか……」
そんなリーリエに、サトシはかけるべき言葉が見つからない。前は仲直りできる、そう言ったこともあったけれども。
物心ついた時から、父親のことを知らなかった。兄弟もいなくて、母だけが家族だった。でも、その母とは、とても仲のいい関係でずっと来れたと思っている。
母親とどううまく付き合うのか、なんてアドバイスは思いつかないし、それは何か違う気がする。
悩むサトシの隣でバーネット博士がくすりと笑う。
「リーリエはルザミーネのこと、嫌い?」
「そんなことはないです」
「彼女、忙しい身だし、結構我慢させちゃってるのかもしれないわね。時々集中し過ぎて周りが見えなくなるくらいだし。でも、あなたの事、大切に思ってるはずよ」
「そう、なのでしょうか?」
「私、この前見たのよ。リーリエの子供の頃の写真を、愛おしそうに眺めているの」
「お母様が?」
「ええ。だから、いつかちゃんと話し合ってみたら、何かわかるかもしれないわね」
バーネット博士の優しい笑みを見て、リーリエも温かい気持ちになる。もし、ちゃんと話し合えたのなら、こんな風に二人で笑いあえるのだろうか。
「きっとうまくいくさ」
「そうですね。いつか、話を」
「さ、そろそろ寝ましょ。風邪引いちゃうかもしれないから」
「「はい」」
並んで小屋に戻る3人。サトシとリーリエの間から、肩に手を添えるバーネット博士。その姿は血縁は無くとも、まるで一つの家族のようで……
(いつか……家族で……)
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翌日。
お泊まりを終えマオたちは帰宅する。サトシとリーリエも、途中まで散歩も兼ねてついて行くことにした。
道中、ぼんやりしているリーリエ。ルザミーネと話したいと決めたが、その前にもう一人、どうしても話を聞かないといけない相手がいた。
(お兄様が以前連れていたあのポケモン……記憶にないはずなのに、知っているかのよう……わたくしの失った記憶と、何か関係が?)
「クゥ〜?ガックゥ〜!」
「えっ」
それはあまりにも一瞬のことで、誰一人とて反応できなかった。ほしぐもによってリーリエがテレポートさせられてしまった。
飛ばされた場所は洞窟の中。何故こんな場所に?辺りを見渡すリーリエ。すると、見覚えのある後ろ姿が目に入る。
「お兄様!」
「なっ、リーリエ!?何故ここに!?」
駆け寄ろうとするリーリエ。と、その前に大きな影が飛び込んでくる。仮面に覆われた顔から、リーリエを見つめる眼差し。その姿には見覚えがある。あの時、サトシのゲッコウガとバトルをしていたポケモン。
けれども、それだけじゃない。
もっと昔、ずっと前に、自分はこのポケモンを知っている。
脳裏に浮かぶのは巨大な影。鋭い爪に大きく開かれた口。その影は自分の方に向かってきて——
「あ、あぁっ、あっ」
「!リーリエ!」
様子がおかしい妹を心配し、グラジオが駆け寄ろうとする。しかしそれよりも早く、ほしぐもが再びテレポートを発動させる。リーリエの姿が、消えた。
パッ、と消えた時と同じように、リーリエとほしぐもが現れる。他のみんながほっとする中、サトシはリーリエの異変に気付いた。ガクッと膝から崩れ落ちそうになるリーリエを咄嗟に支えるサトシ。
「どうした?何があったんだ?」
「わ、わたくし……お兄様に会いました」
「グラジオに?」
「そこに、あの仮面のポケモンがいて……あの子、あの時もいました……忘れて、いたんです。あんな恐ろしいことを、どうして……」
怯えるように体が震えているリーリエ。心配そうなシロンが近づこうとするも、
「嫌っ!」
鋭い拒絶の声。自分が発した言葉、とった行動を信じられないという表情のリーリエ。シロンに向けられた手までもが震えている。
「リーリエ、もしかして、」
「また、なの?」
「そんな……わたくし……また、ポケモンに……」
楽しかったお泊まり会。
けれども、その空気は既に霧散してしまった。
またポケモンを恐れ、拒絶してしまったリーリエ。
果たして、無くした記憶で何があったのか。
そして再び、ポケモンに触れるようになるのか。
…………… To be Continued
忘れてしまった記憶。
思い出してしまった恐怖。
一体あの時、本当は何があったのか……
リーリエ、元気出せって。きっとなんとかなるって
って、あなたはっ!何をするつもりですか!
次回
リーリエの危機。聖獣、激流、覚醒す!
みんなもポケモン、ゲットだぜ!