XYサトシinアローラ物語   作:トマト嫌い8マン

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いやぁ、もうね、なかなか進まないねこれが。

ようやく来ましたよ、このシーンが!

まだまだほしぐも編も、続きそうですが、よろしくどうぞです!


ソルガレオ降誕!ウルトラホールの先へ!

誰も動くことができなかった。それだけあっけにとられていたのかもしれないし、あるいはこの事態に恐怖を感じていたのかもしれない。

 

まさかアローラの守り神全員と遭遇するなんて、誰が想像しただろうか……一名を除いて。

 

「また会えたな、カプ・コケコ!それにカプ・テテフも!」

「ケーコ」

「テテ」

「カプ・ブルルとカプ・レヒレ、だよな?あの時はちゃんと挨拶とかできなかったから。よろしくな!」

「レヒ」

「ブルルル」

 

動じていない、どころかごくごく当たり前のように会話してるし。前からカプ・コケコとよく遭遇していたことを知っていたから衝撃はまだ少ない方ではあるが、

 

「やっぱりサトシってすごいなぁ」

「いつもと変わらないというか、誰に対してもフレンドリーというか」

「才能、かも」

 

「なぁ、カプ・コケコ。リーリエのお母さんが、ウルトラビーストと一緒にウルトラホールの向こうに行っちゃったんだ。俺たち、そこに行きたい」

「ソルガレオならば、ウルトラホールの先に行けると聞きました」

「ここにいれば、ソルガレオに会えるのか!?」

 

問いかけるサトシ、リーリエ、グラジオ。一人ずつの顔を見て、カプ達が何やら相談でもするかのように集まる。と、

 

「わっ、何何?」

『エレキフィールドにサイコフィールド、四つの別々のフィールドが混ざり合ってるロト!』

 

眩しい光を放つカプ達。その光がまるでスクリーンのように上空に映像を映し出した。

 

場所は日輪の祭壇。その空が裂け、二体のポケモンが飛び出してくる。

 

「ソルガレオに、ルナアーラ……これ、俺の夢と、同じ」

 

二体が共鳴するように吠えると、祭壇の中央に、何かが現れようとしている。徐々に大きくなるそれは、ふわふわの雲のような姿に、夜空のような色をしている。

 

「あれって、ほしぐも、だよね」

「じゃあ、ほしぐもはソルガレオとルナアーラの子?」

 

ほしぐもをカプ達に託し、消える二体。と、今度は画面にサトシが映る。カプ・コケコに導かれるように森へと進んだサトシが見たのは、四体のカプ守り神と、彼らに守られるように眠るほしぐもだった。

 

「これ、あの時の……」

 

映像はそこで終わる。あまりに突然見せられた映像に、暫く誰もがボケーっとしてしまう。

 

ポスン、と頭への軽い衝撃。サトシが振り返ると、博士がサトシの頭に手を置き、微笑んでいる。

 

「やっぱり凄いな、サトシは。お前はソルガレオとルナアーラ、そして守り神達から、ほしぐもを託されたんだ。島キングや研究家ではない、お前が」

「俺が……でも……」

 

表情を曇らせるサトシ。背負っているリュックの中から、ほしぐも、の変化してしまった姿を出し、カプ達に差し出す。

 

「ごめん。俺がしっかり守れなかったから、ほしぐもが……」

 

サトシの前まで降りてきて、ほしぐもを見つめるカプ・コケコ。サトシの掌の上に浮かぶほしぐもを、カプ・コケコが受け取り、他のカプのもとに飛ぶ。

 

ほしぐもを囲うように覗き込む、カプ達。また顔を見合わせ頷く。

 

宙に浮かんだほしぐもを中心に、四体の守り神が円を描くように飛ぶ。

 

「コー」

「テッテー」

「ブルルル」

「レレー」

 

カプ・コケコ達から光が溢れ、ほしぐもへと注がれる。ほしぐもに大きな変化は見られないが、その体はしっかりと、注がれる光を吸収している。

 

「なんだ?何をしているんだ?」

「わからない、でも、」

「綺麗……」

 

光を浴びたほしぐもは、四体の守り神に連れられるように祭壇の中央に移動する。中心を取り囲む四つの柱、そして太陽と月の紋章が描かれた台座。四体のカプ神が、それぞれ一つの柱へと向かう。

 

「おい!ソルガレオはどこにいる!一刻も早く、ウルトラホールの先に向かう必要があるんだ!」

 

グラジオが声を張り上げる。感じとられるのは焦り。ソルガレオを求めてここまで来たが、待っていたのは守り神のポケモンたちだけ。ソルガレオは来るのか?呼ぶ必要があるのか?だとしたら方法は?

 

そもそも、ソルガレオはいないのか?

 

「俺は、っ!」

「まぁ待てよ、グラジオ」

 

今にも飛びかかりそうな迫力のグラジオ。その肩にサトシが手を置く。

 

「カプ・コケコ達には、きっと何か考えがあるんだよ。信じようぜ」

「サトシの言う通りです、お兄様。信じましょう」

「……くっ」

 

サトシとリーリエの言葉に、グラジオが顔を背ける。けれども、一応冷静さは取り戻したらしく、小さく息を吐き出し、じっと見守る姿勢に入る。

 

「ん?はい、もしもし……えっ!わかった、すぐ向かう」

「博士?」

「バーネットが来ているらしい。俺が迎えに行ってくるよ」

 

ボールを取り出し、階段を降りて行くククイ。先ほどのジャラコ達がまた妨害しているらしい。強敵との戦いに、思わず肩に力が入る。

 

(頼むぞ、相棒……)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

他の守り神が、それぞれを描いた柱の上に乗る中、カプ・コケコがサトシに棒状のものを差し出す。

 

「これって……」

 

サトシがリュックから何かを取り出す。ハラに貰った太陽の飾りのついた笛。

 

反対側の手にはそっくりな笛。こちらには月を模した飾りが付いている。

 

「この模様、あそこの台座の絵と似てる」

「ねぇ、この音」

 

守り神達が、それぞれの柱の上に乗り、共鳴するように鳴いている。柱の根元から光が溢れ、その下に描かれた紋様を遡るように、壁を登って行く。光が、壁に描かれた太陽に届く、が、何も起こらない。

 

よく見ると、太陽から伸びる道はあと二つある。その一方は太陽の、もう一方は月の台座へと伸びている。

 

「もしかして、この笛を吹くんじゃないか?」

「カキの言う通りだと、僕も思う。きっとあの台座に乗るんだよ」

「じゃあ、二人で吹かないといけないね」

「じゃあ俺やるよ!」

 

すぐに手を挙げるサトシ。もちろん、誰も反対する理由がない。そもそもハラに笛をもらったのも、カプ・コケコに笛をもらったのも、サトシだからだ。ではもう一人はというと……

 

「俺がやる」

 

そう言って手を差し出したのは、グラジオ。真剣な眼差しでサトシを見るグラジオ。

 

「やらせてくれ」

「ああ。頼むぜ、グラジオ」

 

月の笛をグラジオに手渡すサトシ。二人はそれぞれ笛と同じ模様が描かれた台座の上に乗る。

 

「おそらく音色は、カプ・コケコ達のと同じものを奏でればいい。いくぞ」

「オッケー」

 

二人が笛に口を付け構える。タイミングを合わせるように、頷き合い、同時に音色を奏で始める。

 

サトシとグラジオ、そして守り神達による演奏。決して大きな音とは言えないが、あたりの静けさも相まって、神秘的で、そして不思議と力強さが感じられる。

 

サトシとグラジオの足元、台座からも、カプ・コケコ達の柱と同じように、光が溢れ出す。その光も道を登っていき、祭壇の壁に描かれた日輪へと向かう。少しずつ、少しずつ、日輪へと光が近寄る。この光が届いた時、果たして何が起こるだろうか。

 

ゴクリ、と誰かの喉がなる。

 

10センチ……5センチ……

……4……3……2……1……

 

 

6つの道の光が、交わった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

突然、祭壇の壁から地響きのような音が聞こえてくる。サトシ達が見上げると、光を帯びた壁の日輪が、まるで扉のように開き始めている。

 

「わわっ、何何何!?」

「祭壇が!」

「どうなってるの、これ!?」

 

開かれた日輪の先には、まるで太陽のように熱く、燃えるような色の光が満ちている。その光が、まっすぐと祭壇の中央、ほしぐもの元へと放たれる。

 

「ほしぐもちゃん!」

「待って!」

「何が起きてるんだ?」

 

周囲に溢れ出るほどの光を浴び、ほしぐもがゆっくりと浮上する。その体の周囲を、まるで炎のような光が包み込む。

 

熱く、激しく、眩いその光は、まるで小さな日輪のごとく、ほしぐもを完全に包み込む。

 

「グルルル……ガルルル……」

 

何かの唸り声のような音が響き渡る。発生源は、あの火の玉の中。ほしぐもが?でも、とても同じとは思えないほど力強く、逞しい声。誰もが息を飲む中、火の玉が弾け飛び、中にいたものが雄叫びを上げる。

 

「グォォォオオッ!」

 

美しい白い体毛に、金が混じる鬣。

 

顔はまるで夜空か、あるいは宇宙か。深い、神秘的な群青色に、星のような煌めきが見える。

 

雄々しく、猛々しく、それでいて暖かいそれは、まさに太陽の現し身、日輪の化身。

 

大地に降り立ち、サトシ達を見下ろすその姿に、誰もが驚愕を隠し得ない。一歩前に踏み出たサトシが、呟くようにその名を呼ぶ。

 

「……ソルガレオ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その呟きを皮切りに、各々が反応を示す。

 

『なななな、なんとっ!?ほしぐもが二回進化した姿が、ソルガレオだったロト!?大発見ロト!』

 

一心不乱に記録として写真を撮りまくるロトム。

 

『先ほどまでとは桁違いの生命力だな。これが伝説のポケモン、ソルガレオなのか』

 

冷静に分析しているルカリオ。

 

「俺は今、もぉぉれつに感動しているぅぅ!」

 

涙を流すカキに、それを落ち着かせようとするゲッコウガ。

 

「ほぇ〜」

「びっくり……」

「まさかほしぐもがソルガレオになるなんて」

 

純粋に驚いているマオ達。

 

「ソルガレオ……これで、行けるのか?ウルトラホールの向こうに」

 

希望が見えたのか、少し嬉しそうなグラジオ。

 

 

そして、一言も発さぬまま、ソルガレオにゆっくりと歩み寄るリーリエ。

 

「ほしぐもちゃん……いえ、ソルガレオ……貴方に、触れてもいいですか?」

 

リーリエの問いかけに答えるように、ソルガレオが身をかがめる。

 

「ありがとうございます……」

 

そっと手を伸ばし、ソルガレオの額に触れるリーリエ。固そうに見えても、やはりその毛は柔らかく、陽だまりのような暖かさを感じる。その暖かさに導かれるように、リーリエが自分の額をソルガレオの額に合わせる。

 

まるで祈るように目を閉じているリーリエ。その気持ちを察しているのか、それとも祈っているのか、ソルガレオも同じように目を閉じている。

 

暫くそのまま、動かずにいたリーリエとソルガレオ。やがて、リーリエがソルガレオから体を離し、笑顔を見せる。

 

「とても、暖かかったです。ありがとうございます、ソルガレオ」

 

そう告げてから、リーリエが道を譲るようにみんなの元へ戻る。リーリエと入れ替わるようにソルガレオに近づいたのは、

 

「ほしぐも……」

 

呟くように、サトシがソルガレオを呼ぶ。差し出された掌の上には、小さな金平糖がいくつも乗っている。

 

「なぁ、ほし……ソルガレオ、食べるか?」

 

ジッとサトシを見つめるソルガレオ。と、その口を開き、ベロを使って、サトシの手の上から金平糖をすくい取った。

 

「!ほしぐも、ってわぷ!?」

 

姿が変わってから、一度も食べなかった金平糖を、ソルガレオが食べたことに、喜ぶサトシ。笑顔をソルガレオに向けた瞬間、今度はそのベロが、サトシの顔を濡らす。

 

まるでイワンコや、ルガルガンがするように、体をサトシに擦り付けるソルガレオ。楽しそうな表情から、甘えているのがわかる。

 

姿形は変わっても、サトシに対する想いは、全く変わっていなかった。そのことが、サトシにとっては堪らなく嬉しい。

 

「立派になったな、ソルガレオ」

「グルルル」

「ああ。スッゲェかっこいいぜ」

 

サトシとほしぐも……否、ソルガレオとが触れ合う様子を、みんな離れて見守っている。

 

「まさか伝説のポケモンを育てちゃうなんてね〜」

「流石サトシ、規格外」

「ほんとびっくり……」

「タケシさんたちの言ってた通り、驚かされてばかりだよなぁ」

 

「お兄様?どうかしましたか?」

「いや……あいつをもっと知ってみたい、あいつともっと戦ってみたい、そう思っただけだ」

「サトシとですか?」

「ああ。俺の知らない何かが見えてくる、そんな気がする」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「なぁ、ソルガレオ。頼みがあるんだ」

 

しっかりとソルガレオと触れ合った後、サトシが真剣な表情でソルガレオを見つめる。

 

「俺たちを、ウルトラホールの向こうへ、連れて行って欲しいんだ」

「お母様を、助けたいのです」

「頼む。力を貸してくれ」

 

サトシ、リーリエ、グラジオからの頼みを聞くソルガレオ。すると、ソルガレオが口から、掌に収まるほどの大きさのものをサトシに渡した。

 

キラリと光るその鉱石は、サトシの持つどれとも形は違う。けれども、その輝きは、彼らのよく知るものだった。

 

「これ……Zクリスタル、だよな」

「また違う形……」

「サトシに、Z技を使って欲しい、ということでしょうか?」

「なんだかわからないけど、やってみるぜ!」

 

やる気満々にZクリスタルをセットするサトシ。キラリとZクリスタルが強い光を放ちならがら輝く。激しい力の奔流をサトシは感じた。と、

 

「っ!うわっ!」

 

バキリ、という嫌な音がしたかと思うと、Zクリスタルが外れ、地面に落ちる。

 

「なんだ今の?」

「わかんない……って、サトシのリングが!」

 

驚きの声を出したマオが指差すZリングを見ると、Zクリスタルをはめる為の場所に、大きなヒビが入ってしまっていた。

 

「Zリングが壊れた!」

「なんでこんなことに?」

「わかんない……でもさっき、とてつもない力が流れた感じがした……俺とクリスタルを繋ぐみたいに」

「とてつもない力?まさか、その負荷に耐えきれなかったのか?」

 

詳しいことは全く分からない。しかしこのままではZ技が使えない。グラジオかスイレンがやろうにも、もしまたリングが壊れるようなことがあったら……サトシたちが途方にくれていると、

 

「ケーコー」

「へ?ってあっ、Zリングが!」

 

ふわりと、Zリングがサトシの手首から抜け、浮かび上がる。与えられた時とは逆に、カプ・コケコの方へと飛んでいくZリング。目の前まで来たそれをカプ・コケコは、

 

両腕で挟むようにZリングを挟み込んだ。

 

「「「「「「「えっ?」」」」」」」

 

呆気にとられるサトシたち。と、カプ・コケコからカプ・テテフ、カプ・ブルル、カプ・レヒレへと、まるでバトンをつなぐかのごとく、Zリングが回される。ほしぐもがソルガレオに進化したときと同じように、サトシのZリングが光り輝く。最後にカプ・レヒレからリングがサトシに向かって放たれる。ゆっくりとサトシの目の前まで下りてきたZリングは、しかし、その姿かたちが変わっていた。

 

「黒くなっちゃった……」

「それに、さっきのヒビが治ってる……」

「そうか!これならもしかして……」

 

先ほどは使えなかったソルガレオにもらったクリスタルを、新しく生まれ変わったZリングにはめ込むサトシ。先ほどと同じく、強い力の流れが感じ取れる。しかし今度は弾け飛ぶことなく、Zクリスタルの光が収まっていく。

 

「今度は大丈夫みたいだな!」

「これで、ウルトラホールの向こうへ行けるのですね!」

 

リーリエの言葉に応じたかのように、ソルガレオが身をかがめる。

 

「乗れってことか?」

 

ソルガレオが頷く。サトシを先頭に、みんながソルガレオの背中にまたがる。

 

「頼むぜ、ソルガレオ」

「ガルル」

 

「コー!」

 

カプ・コケコが声を上げ、サトシの正面まで下りてくる。右腕で左の手首を指さしながら、ひねるような動作をするカプ・コケコ。真似るように、サトシがZクリスタルをつまみ、ひねる。Zクリスタルが光を放ち、オーラが溢れ出てソルガレオを包み始める。

 

カプ・コケコが腕を動かす。まるで初めてサトシがZ技を試した時のことのように。その動きに合わせるように、サトシが腕を動かす。

 

「行くぜ!これが!俺たちの!」

「「「「「「ゼンッリョクだ!」」」」」」

 

ソルガレオの咆哮が周囲に轟く。その身を光に包まれながら、ソルガレオが大地を蹴る。飛び上がったその背後に、日輪のごとき熱く、眩い輝きが現れる。その輝きから伸びる光の道を、ソルガレオがかけていく。と、その先、空高い場所の空間が揺らめき始める。

 

「ガルルォォオッ!」

 

ソルガレオが再び吠える。その勢いによってか、空間の揺らめきが広がり、穴が開く。

 

ウルトラホールだ。

 

「行っけぇ!」

「ガルルルォォオ!」

 

ソルガレオが迷わずその中に飛び込んでいく。あたりに広がるのは、光の筋だけ。その中をただまっすぐに、ソルガレオがかけていく。

 

「よぉし、このまま一気に行こう!」

「待っててください、お母様!」

 

 

 

日輪の祭壇にて、サトシたちを見送った守り神たち。彼らが見つめる先、ウルトラホールが揺らめき、ゆっくりと閉じていった。

 




姿が変わったルザミーネさん。

謎の力をまとうポケモンたち。

激しい激闘が繰り広げられる中、リーリエの思いと言葉が繋ぐ!

次回、XYサトシinアローラ物語
「激闘開始!ウルトラビーストの世界」
みんなもポケモン、ゲットだぜ!

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