XYサトシinアローラ物語   作:トマト嫌い8マン

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はい、色々とね、もういじくりまわしましたね

何故こうなったのかというなら、
私の趣味だ。だが私は謝らない! (ナニイッテンダ

いよいよほしぐも編も残すとこあと2話
最終回一個前、どうぞ〜


キズナの果てに!唸れ、ピカチュウのZ技

何者かが次元を超える移動を行うとき、否が応でも彼らはそれを感知する。

 

彼らが影響を与えるのは、何もよく知るポケモンたちの世界だけとは限らないのだから。

 

故に彼らは常にいる。

 

あらゆる世界との狭間の場所に。

 

或いは世界の裏側に。

 

或いは時空の奥も奥底に。

 

通過者がいるだけならどうもしない。

 

自分が動く事、そのことの大きさを十分に理解しているから。

 

ただ、そこからはひどく懐かしい気配がして———

 

ひどく危険な予感がしていたから———

 

赤い瞳が見開かれ、懐かしい気配を追って行く。

 

大きな身体が、空間を駆け抜ける。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ルザミーネさん!」

『やだやだ、来ないでよ!』

 

手持ちのポケモンを全て出したルザミーネ。サトシがすかさず近づこうとするも、触手の先から攻撃を放つ。慌てて避けるサトシたち。攻撃が地面に当たると、煙を上げながら、その場所が溶ける。

 

「わっ、なんだ!?」

『サトシ、気をつけろ。それは、猛毒だ』

「毒っ!?」

 

思わず溶けた場所を二度見するサトシ。視線をルザミーネに戻すと、再び毒による攻撃を開始したところだった。

 

「ゲッコウガ、みずしゅりけん!」

 

サトシの投げたボールから飛び出し、ゲッコウガが水で練り上げた手裏剣を連続で投げつける。百発百中で、ゲッコウガの攻撃がルザミーネの攻撃を全て撃ち落とす。

 

『サトシ、私ははがねタイプもある。私が先行して、毒を防ごう』

「頼むぜ。ピカチュウ、ゲッコウガ、ソルガレオ。援護してくれ」

「ガルル」

「コウッ」

「ピィカ!」

 

頷くポケモンたちに笑みを返し、サトシが帽子のツバを後ろに回す。

 

「行くぜ!」

 

 

 

サトシがルザミーネを追う中、他のみんなのバトルも激しさを増していた。

 

「ガラッ!」

 

バクガメスに飛びかかって来たエンニュートををガラガラがフレアドライブを使用し、弾き飛ばす。

 

「アッマ!」

「ヂッヂ!」

「クロッ!」

「コォン!」

「ニャァァッブ!」

 

モクローたちのコンビネーション技で、雷電を纏う巨大な炎の渦がミロカロスたちの周囲を覆い、動きを封じる。

 

 

「ブラッ、キー!」

 

あくのはどうで、アブソルの逃げ道を塞ぐように攻撃するブラッキー。

 

トレーナーとポケモンとが協力し合い、徐々にルザミーネのポケモンを追い詰める。

 

 

 

「俺の全身!全霊!全力!全てのZよ!」

「アーカラの山の如く、熱き炎となって燃えよ!」

「ダイナミック、フルフレイム!」

 

 

「届け、水平線の彼方まで!」

「スーパーアクアトルネードッ!」

 

 

「蒼き月のZを浴びし、岩塊が今!」

「滅びゆく世界を、封印する!」

「ワールドエンドフォール!」

 

3つの戦地で、3人のZクリスタルが光を放つ。火球が、渦潮が、岩塊が、それぞれの相手へと迫る。

 

宙に浮く足場を揺るがすほどの衝撃が、彼らの戦場を揺らす。衝撃や煙がおさまると、彼らの前には、倒れ伏した相手のポケモンが見える。

 

「勝てたのかな?」

「やったね!」

 

喜びを分かち合うマオとスイレン。が、

 

「っ、立ち上がった、だと!」

 

目の前の光景に、カキが、グラジオが、マオたちが、思わず息を呑む。確実にZ技が決まり、目を回していたはずのポケモンたちが、まるで何もなかったかのように立ち上がる。

 

『ビビッ、理解不能理解不能!あのダメージで立ち上がれるはずがないロト!』

 

「っ、まさか、母さんを止めない限りは、こいつらも倒せないってことか?」

 

握りしめた拳に力がこもる。既に切り札であるZ技を使ってしまった今、自分たちの方が圧倒的に不利であることは間違いない。

 

「くっ、バクガメス!ガラガラ!リザードン!まだいけるか?」

「バッスーン!」

「ガァラ!」

「グルォォォッ!」

 

「みんな、もう少し頑張って!」

「お願い!」

「ううっ、やるしかないよね」

『来るロト!』

「ニャブ!」

「クロッ!」

「コォン!」

「アマイ!」

「アウッ!」

「マリュ!」

「ヂヂ!」

 

「ブラッキー、ルガルガン!ここは頼む!」

「ブラッキ」

「ガウッ」

「行くぞ、シルヴァディ」

「シヴァ!」

 

(頼む……急いでくれ、サトシ……)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

走る。

 

ただひたすら走る。

 

後退しながら毒を放ち続けるルザミーネめがけて、サトシはまっすぐ走る。

 

飛んでくる毒をルカリオとソルガレオが弾き、飛沫が飛んでもゲッコウガが洗い流す。

 

仲間たちのサポートを受けながら、サトシとピカチュウは、助けるべき人のために、守るべき約束のために、ただ前を向いて走る。

 

『来ないで!来ないで!あっちへ行ってぇぇ!』

 

ルザミーネの叫びに、周りの岩が変化する。サトシの道を阻む壁のごとく形を変える。それでも、

 

「ソルガレオ!」

「ガルルルォォォアァ!」

 

ソルガレオが跳躍し、力を込める。額に星空のような煌きが宿り、太陽のような紋様が浮かび上がる。太陽の熱、焔の一撃。ソルガレオが炎の弾丸となり、壁をたやすく突き崩す。

 

と、目に入るのは毒の地面。サトシとルザミーネを分断するかのように、毒が地面を覆い、普通では渡ることができない川を作り上げている。

 

あくまで普通のやり方では。

 

ソルガレオがサトシを乗せるために身をかがめる。すぐさま飛び乗るサトシ、ピカチュウ、ゲッコウガ。はがねタイプを持っているソルガレオとルカリオは、毒に臆すことなく、その上を駆け抜ける。

 

「急がないと……みんなも頑張ってるんだ」

「サトシ!」

 

突然聞こえた声に、サトシが振り向く。見ると、ピクシーに抱えられたリーリエと、シルヴァディに跨るグラジオが、彼らを追いかけるようにかけてきている。

 

ピクシーの特性はマジックガード、そして今のシルヴァディははがねタイプ。どちらも毒なんてなんのその。渡り終えていたサトシの隣に、2人も並び立つ。

 

「リーリエ、グラジオ!ピクシーはもう大丈夫なのか?」

「ええ。わたくしの事、思い出してくれました」

「よかった」

「サトシ、下はかなりまずい!母さんを倒さない限り、ポケモンたちは何度倒されても復活してくる!このままだと、他の奴らが!」

「ルガルガンはもう下に向かってくれています!」

 

思っていたよりも深刻な状況に、サトシの表情に若干の焦りが浮かぶ。早くなんとかしないと、みんなが危ない。

 

更には、

 

『っ、サトシ!』

「他のウルトラビーストまで!」

 

傍観していただけだった他のパラサイトたちが、徐々にサトシたちの方へと近づいてきている。複数のパラサイトからベノムショックが放たれる。咄嗟にソルガレオが守りに入り、事なきを得たが、ピンチに変わりはない。

 

「くそっ、どうすれば……?リーリエ?」

 

悔しげに声をあげたグラジオが、周囲を見渡し異変に気付く。いつのまにか、リーリエがいなくなっている。慌ててもう一度周囲を見ると、崖の上まで逃げたルザミーネを追うかのように、リーリエが崖を登ろうとしている。

 

「リーリエ!危険だ!戻れ!」

「お兄様!サトシ!お願いします、わたくしに任せてください!」

「でも、」

「わたくし、ちゃんとお話ししたいんです!お母様と!」

 

振り返りながらそういうリーリエ。その真っ直ぐな瞳に宿る、強い覚悟。その覚悟を秘めた眼差しを見つめ、グラジオがフッと息を吐く。

 

「わかった……サトシ、リーリエを頼む!俺はこいつらを引きつけとく」

「わかった。ソルガレオはグラジオに力を貸してくれ」

「ガルゥ」

 

ソルガレオが頷くのを見て、サトシたちもリーリエを追うように登り始める。

 

 

「リザードンは空のやつらを引きつけてくれ!ガラガラ、フレアドライブ!」

 

「モクロー、飛び回って撹乱お願い!」

「スイレン、マーマネ、あたしたちはモクローを援護するね」

 

「ルゥガ!」

「ルガゥ!」

 

他の場所でも、ウルトラビーストたちの参戦によって、窮地に立たされる仲間たち。

 

早くなんとかしないと———

 

———みんなが、危ない!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

最初に崖を登りきったリーリエが、呼吸を整えるべく息を吐く。

 

既に服は汚れ、丁寧に手入れされていた髪も所々がほつれている。

 

いつもからは想像もできない姿のリーリエだったが、彼女自身もそんなことを気にしていられる状況ではなかった。

 

目の前には自分を睨みつける女性。

 

とてもよく知っていて、でもよくわからない。

 

ルザミーネの視線を受け、リーリエが真正面からその視線を迎え撃つ。

 

「わたくし、お母様に言いたいこと、沢山あります……」

 

ああ、本当に……ありすぎてどこから始めればいいのか困るほどだ。ちゃんと言えるだろうか。ちゃんと伝わるだろうか。

 

でも、

 

『できるさ!もしリーリエが本気で家族と向き合えたらさ』

 

あの時、彼にそう言ってもらえたのだから、

 

「わたくしは、お母様のことが、大っ嫌いです!」

 

ありったけの声を張り上げ、リーリエがルザミーネに伝える思い。

 

その言葉を聞いて、ルザミーネの動きが止まる。

 

「いつもいつもわたくしのことを赤ちゃん扱いして、一方的に思いを押し付けて……そして今も、子供みたいなわがままばっかり!」

 

「あの日、ウルトラビーストに初めて会った時から、お母様はビーストのことばかり……まるで操り人形のように、ビーストに取り込まれて……」

 

「思い出して、お母様!」

 

「貴方がどうしてウルトラホールの研究を始めようと思ったのか!」

 

『わた……しは……』

 

明らかな動揺が、ルザミーネに現れる。

 

わなわなと震え、目が見開かれている。

 

どうして研究を始めたのか?

 

そんなの……

 

『モーン……』

 

漏れたのはとある人の名前。

 

自分にとって、リーリエにとって、グラジオにとって……

 

家族にとって大切な、最後の1人の名前……

 

大切な……家族……?

 

そうだ……

 

グラジオは、大切な息子だ……

 

リーリエは、大切な娘だ……

 

可愛くて可愛くて仕方がない、自慢の……

 

『リー、リエ……』

 

 

———突然、視界が闇に飲み込まれた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「お母様!」

 

突如起こった変化に、驚きの声を上げるリーリエ。後から登ってきたサトシとリーリエの前で、ルザミーネの姿が、パラサイトに飲み込まれる。

 

まるで絶対に逃がさないと言わんばかりに、ルザミーネの体が見えなくなる。

 

「どうすれば……」

「そうだ、Z技で……いやっ、でもルザミーネさんに当たったら……」

 

悩んでいる間にも、まるで身を守るかのようにどんどん地形が変化する。岩場が盛り上がり、壁のごとく、パラサイトの周りを覆う。

 

「なんとか引っ張り出すしかない!行くぜ、ピカチュウ、ゲッコウガ、ルカリオ!」

 

一斉に駆け出すサトシたち。パラサイトが放つ毒に加え、周囲の岩までまるで意思があるかのように降り注ぐ。

 

「ピカチュウ、10まんボルト!ルカリオ、はどうだん!行くぜ、ゲッコウガ!」

 

ピカチュウの電撃が、ルカリオの波導が岩や毒を貫き、砕く。サトシに並走するゲッコウガが姿を変え、クナイを手に取り切り裂く。

 

徐々に岩場へは近づいている。それでも、ルザミーネを包むパラサイトには届く気配がない。

 

「ゲッコウガ、みずしゅりけん!」

「コウッガ!」

 

ゲッコウガの強烈な一撃が、岩を切り裂きパラサイトに迫る。命中し大きく体が揺れるが、それでも、ルザミーネを手放す気配は全くない。

 

「やっぱり、Z技で行くしかないのか……でももしルザミーネさんにまで当たったら……」

 

一瞬の戸惑い、その瞬間、サトシめがけて触手が振るわれる。薙ぎ払われるように弾かれた体が宙を浮く。

 

「ぐっ!」

「ガッ!?」

『サトシ!』

「ピカピ!」

 

慌てて駆け寄り、二撃目を防ぐルカリオ。ダメージが共有され膝をつくゲッコウガ。ピカチュウは衝撃で飛ばされたサトシの帽子を拾う。

 

「っ、大丈夫だ……やるしかないな。ルカリオ、ルザミーネさんの正確な位置を探ってくれ。ゲッコウガはルカリオの援護。Z技を使った後、すぐにルザミーネさんを助けてくれ。ピカチュウ、いけるか?」

「ピカピーカ!」

「コウ」

『わかった』

 

瞳を閉じ、波導を探るルカリオ。邪魔しようと襲いくる攻撃を、ゲッコウガが全てさばく。ピカチュウとサトシはZ技に向けて気持ちを高める。

 

『見つけた。あの球体の中央だ』

「オッケー。ルカリオ、時間稼ぎ頼む!行くぜ、ピカチュウ!」

『任せろ』

「ピッカァ!」

 

あの強固な守りを突破するには、全身全霊の一撃を当てる必要がある。それも、一箇所ではなく全体に。スパーキングギガボルトで通用するかはわからない、けれども、

 

(絶対に、助け出す!)

 

サトシとピカチュウの気持ちが、合わさる。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「コウッ?」

 

突然、元の姿に戻った自分に驚くゲッコウガ。しかし直後、よく似た力の流れを感じ取り振り向く。

 

サトシとピカチュウ。

 

2人の間につながる思い。

 

それはピカチュウに注がれるのではなく、サトシの腕につけられたZクリスタルに注がれている。

 

ひし形の鉱石の形が変わる。

 

現れるのは電撃の形。

 

身体中を駆け巡る激しい力の奔流は、ソルガレオのZクリスタルを嵌めた時と似ている。

 

サトシの帽子をかぶり、飛び上がったピカチュウ。拳を合わせ、ハイタッチする2人。

 

「行くぜ!これが、俺たちの、全身全霊!」

 

轟くは激しい雷鳴。彼らの代名詞と呼べる技、その究極形。

 

「10まん、100まん……いや、1000まんボルト!これが俺たちの、全っっ力っだぁぁっ!」

「ピィカ!ピカピカピカピカッ、ピィ〜カ〜ッ、チュゥゥゥゥウ!」

 

並みのピカチュウには到底なし得ない高さのジャンプで、ピカチュウが空中高くまで跳び上がる。光の届かないようなくらい空に、激しい火花が散り、瞬く。

 

その雷撃はまるであの日の再来。

 

2人を繋いだ、あの雨の日のよう。

 

しかし今は天候の助けは要らず、必要なのは2人の思いだけ。

 

本来の許容量をゆうに超えているはずの電力が、電圧が、電流が、あの小柄な体に集約されている。

 

ほぼ袋から電気が溢れる。

 

赤、青、黄、緑、橙、紫、藍。

 

その眩い攻撃は、この暗い世界において、まるで闇を照らし、逆境を跳ね除ける希望の光。

 

7色の雷撃が、パラサイトに降り注ぐ。7つの電撃それぞれが電光の柱を上げるほどの威力がこもっている。圧倒的な電力はしかし、正確に敵の中央に届かぬよう、岩を砕き、表面を焦がす。助けたいと願うその気持ちに答えるかのように、ルザミーネ以外にのみダメージが通る。

 

と、パラサイトの動きが止まる。その一瞬の隙を逃すサトシではなかった。

 

「ゲッコウガ!」

「ゲッコウ!」

 

雷鳴がやんだ直後、素早く動いたゲッコウガが飛び込む。片手に握った光の刃。それを持って力なくルザミーネを拘束している触手を断ち切る。

 

膨れ上がり、姿が変わっていたパラサイト。その体が崩れたかと思うと、本体らしきパラサイトが塊から飛び出す。無理やり固められていたのか、ボロボロと大きな影が崩れ落ちる。

 

完全に崩れた後には何も残らず、少し離れた場所で、ゲッコウガがルザミーネを抱えている。

 

「やった……やりました!」

「終わった……のか?」

 

笑顔でゲッコウガの元へ駆け寄るリーリエとピクシー。ほっと溜息を吐き、安堵の表情を浮かべるグラジオ。

 

「ニュート?」

「ん?様子が……」

 

「ドレディ?」

「ミィィロ?」

「もしかして、元に戻った?」

「ってことは、やったんだ!サトシたちが」

 

「ソォル?」

「ブラッキ!」

「ソォル……」

 

下で戦っていたポケモン達の様子が変わる。戸惑いの表情を浮かべ、辺りを見渡している。先程までの強いオーラも消え、疲れたのか、座り込むものも。そんなポケモン達を見つめ、マオ達は笑顔を浮かべる。

 

 

「やったな、ピカチュウ……」

「ピィカ」

「ははっ……あ〜、疲れたぁぁ」

「チャァァ」

 

2人並んで仲良く座り込むサトシとピカチュウ。疲労困憊な様子でありながらも、朗らかな笑みがこぼれる。

 

「ピカピ」

「ん?あ、サンキューな、ピカチュウ」

 

ピカチュウがサトシに帽子を差し出す。笑みを深くし、サトシがピカチュウから帽子を受け取る。

 

あとは元の世界に戻るだけ。それでこの事件は解決する。

 

 

そう、誰もが思っていた……

 

 

 

 

『避けろ!』

 

緊迫した声をあげたのは、ルカリオだった。突然の声に驚きながらも、サトシとピカチュウは咄嗟にその場から転がるように逃げる。

 

ほんの一瞬前まで彼らがいた場所が、毒の液に溶かされる。

 

『こいつら、まだ!』

 

ルザミーネと同化していたパラサイトが離れ、事件が解決したかのように思っていた。けれども、

 

(……違ウ……仲間、違ウ。敵……排除……敵……排除!)

 

感じられるのは明確な敵意。パラサイト達にとって、自分たちの世界で暴れまわった(ように見える)サトシ達は、危険な存在、敵と認識されてしまったらしい。

 

「くそっ……シルヴァディたちも、もう限界に近い!」

「そんな……お母様を助けられたのに……」

 

 

「リザードン、しっかりしろ!」

 

「モクロー、大丈夫?」

『ビビビッ!大ピンチロト〜!』

 

「ルゥガァァッ!?」

 

既に気力も体力も使い果たし、限界状態のサトシ達。反撃しようにも、力が入らない。ソルガレオも必死に戦うが、数が多すぎて守りきれない。

 

「なんとか、しないと……っ!」

 

立ち上がろうとするサトシ。その彼目掛けて放たれる攻撃。気付いた時にはもう遅く、彼らの目の前まで、攻撃が迫っていた。

 

(……やられる!)

 

『サトシよ……心配しなくても良い』

 

「グァァァァッ!」

「パルルルォォォア!」

「キュゥゥウン!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

響いたのは落ち着いた声と、何者かの雄叫び。次の瞬間、彼らに襲いかからんとしていた攻撃が、まるで見えない盾のような何かに防がれる。

 

「今の声……まさかっ!」

 

サトシが顔を上げると、そこには……

 

 

恐る恐る目を開いたカキ。目の前に広がるのはウルトラビーストの世界ではなく、深く、そしてどこか神々しい群青。まるで自分たちを守るかのように覆いかぶさるその影が、彼に顔を向ける。

 

その胸の中央にはダイヤのごとき宝玉。尾の部分はまるで巨大な扇のよう。

 

その姿はまるでサトシが来る前、ククイ博士が教えてくれた伝説そのもの。

 

「まさか……ディアルガ!?」

 

時を司る神の如きポケモン、ディアルガが、ウルトラビーストを見上げる。

 

 

その巨体を見上げるマオ達は、思わず腰を抜かしそうになる。両肩の宝玉が煌き、桁違いの風格を持って彼女たちを庇うそのものの体は、真珠の如く美しく、神々しい。

 

口を開き大きく吠える。その迫力にポケモンたちの体から力が抜ける。

 

あまりにも、あまりにも、その存在は桁違いだった。

 

「嘘……」

「こここここれって!?」

「パルキア……」

 

空間を司る神の如きポケモン、パルキアが、彼女たちを守るように手を広げる。

 

 

突然現れたその姿に、一瞬恐れにも近い感情を抱いたものの、ルガルガンたちが感じたのは畏敬の念だった。

 

本能が告げている。これは、いや、この方がいるから、自分たちは生きているのだと。今助けてもらったことだけではなく、その存在自体が、自分たちの世界を支えているのだと。

 

本来決して会えるはずのない、世界の裏にあるもう1つの世界の主。

 

ギラティナが、彼らの方を向き、小さく頷いた。

 

 

 

それはどんな文献よりも古く、存在さえも疑われる。全てのポケモンの遺伝子を持つミュウでさえ、そのものの子と考えられるほど。

 

世界にはいろんなポケモンがいるが、その全ての始まり、創世の伝説。時間、空間、反転。神と呼ばれるものたちを生み出し、人々とポケモンを生み出した、大いなる慈愛を持って常に世界を見守り続けるもの。

 

本で読んだことはある。

 

研究の元として話は聞いている。

 

だが、こんなことがあるなんて、果たして誰が思うだろう。

 

そのものはゆっくりと彼らの前に降り立つ。音もなく、優雅に降り立つその姿は、まさに神と呼ばれるにふさわしい。ソルガレオが膝を曲げ、まるで跪くかのように、頭を下げる。伝説のポケモンであるソルガレオでさえも、敬意を払わずにはいられない存在。

 

その瞳が1人の少年を捉える。そこに込められているのが、ただの慈愛だけでなさそうなのは気のせいではないだろう。

 

何故なら少年が嬉しそうに立ち上がり、その名を呼んだ時、

 

「ありがとう……アルセウス。また会えて嬉しいよ」

『サトシ……こうして言葉を交わすのは、随分久しぶりのように思えるな』

 

その瞳が細められる。嬉しい、その気持ちが伝わる。

 

そうぞうポケモン、アルセウスが、サトシを見下ろしながら、笑っている。

 

 

 

「でも、どうして?」

『お前達が時空を超えるのを感じ、異変があったのかと見に来たのだ。どうやら、来て正解だったらしい』

 

フワリと、アルセウスの巨体が浮かび上がる。空に浮かんでいるウルトラビースト達も、何やら戸惑っている。

 

(強イエネルギー……光……違ウ、デモ)

 

『もう怖がらなくても良い、この世界の子供達よ。彼らはお前達に危害を加えに来たのではない』

 

威厳ある声で、落ち着いた風格で、アルセウスが語りかける。姿は見えずとも、その声はこの世界の全てに響く。

 

『彼らは愛する者を返して欲しいだけなのだ。そしてもう、彼らは帰るだろう。この世界のことは心配しなくてもいい。私が元に戻そう』

 

(……ホント?……敵ジャナイ?)

 

『本当だとも』

 

アルセウスの言葉に、パラサイト達の動きが止まる。敵意もなく、ただサトシ達をじっと見つめているだけ。

 

『さぁ、サトシ。仲間達とともに帰るのだ。お前達の世界へ。心配することは何もない』

「アルセウス……ホントはもっと沢山のこと、話してみたいよ」

『私もだ……きっとまた会えるだろう。お前が旅を続ける限りは』

「うん」

 

最後にサトシに1つ頷き、アルセウスがさらに高く浮かんで行く。その周りに集まるように、3つの巨大な影が集まって来る。アルセウスよりわずかに低い位置にとどまり、彼らはサトシを見てから鳴き声を上げる。

 

「ディアルガ、パルキア、ギラティナ!みんなも来てくれたのか?」

 

答えるようにまた鳴き声が上がる。左手を高く上げ、サトシが大きく手を振る。

 

「ありがとな!」

「ピカピィーカ!」

 

サトシのその様子を眺め、アルセウスの体が輝く。盛り上がっていた岩場は元の高さに戻り、砕けた足場は修復される。戦いによって生じた破損が、まるで最初からなかったかのように復元されていく。そして最後の大地が元に戻った直後に、アルセウス達の姿はなくなっていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「うっ……ここ、は?」

 

空を見上げていたサトシ達がその声にハッとする。ゲッコウガに支えられていたルザミーネの瞳が、ゆっくりと開く。

 

「お母、様?」

「……リーリエ?……あ……そう、だったわね」

 

意識が戻ったばかりではっきりしなかったのか、何度か瞬きを繰り返すと、泣きそうな表情になるルザミーネ。

 

「お母様?っ、わわっ!?」

 

母親のその様子に心配気に顔を覗き込むリーリエ。と、その体が抱きしめられる。でも今までのような子供をあやすようなものではなく、それはまるで縋り付くかのように強く、痛く、そして優しかった。

 

「あなたの言葉……胸に届いたわ。いつのまにか忘れてたわ……こんなに大切な、宝物達……」

「お母様……」

 

そっと腕を伸ばし、母親の震える肩に腕を回し、抱きしめる。ジワリと視界が滲む。顔がクシャっと歪んでしまう。ああ、きっととてもみっともない顔をしているのだろう。でも、仕方がなかった。だって、

 

「ごめんね、リーリエ。ごめん、なさい……」

「っ!」

 

自分が望んでいた、幸せな結末が、ここにあるのだから。

 

 

「サトシ……」

「あっ、グラジオ」

「色々聞きたいこと、言いたいこと、あるがまずはこれだけ言わせてくれ……ありがとな、約束守ってくれて」

「っ、へへっ。ああ!」

 

サトシが鼻の下を左手でこする。キラリと黄色のZクリスタルが煌めく。稲妻ではなく、元の菱形に戻って。

 

 

みんなの元へ戻ると、誰もが興奮状態にあった。

 

「そっちもか?」

「うん!パルキアが来て、もう凄かったよ!」

「俺のところはディアルガだったぞ」

「ガウガウッ!」

『ええええっ!?ギラティナに会ったロト!?って!データアップデートし忘れたロト!』

 

「あっ、リーリエ!」

 

最初にリーリエ達に気づいたマオに続くように、みんなが駆け寄って来る。

 

「助け出せたんだね!よかった〜」

「はい!皆さん、ありがとうございます!」

「いや〜、よかったよかった」

「ああ」

「これでみんなハッピー、だね!」

 

「グラジオ……この子達は……」

「ああ……関係ないって言っても、みんなで分かち合おうって……」

「そう……いい友達を、リーリエは持ったのね」

「そうだな……あいつも……俺も」

「!……ふふっ」

 

話したいことはたくさんある。でも、先に帰ろう、ということになり、サトシ達はポケモン達をボールに戻す。屈み込んだソルガレオの背中にサトシ達が乗る。

 

ふとサトシが後ろを見ると、パラサイト達が自分達を見つめている。最後に手を大きく振り、サトシが正面を見つめ直す。

 

「帰ろう、俺たちの世界へ」

 

 

ウルトラホールを抜け、元の世界に戻ったサトシ達。ククイとバーネットに出迎えられた彼らの大冒険は一先ず終わりを告げた。

 

 

———一先ずは

 

 

(光……光……足リナイ……光……光……モット、モットモット……)

 

………………To be continued

 




平和な日常

穏やかな日々

いつの間にかいなくなっていたソルガレオ……

そんな中、ククイ博士が一大勝負?

次回、XYサトシinアローラ物語
『別れと始まり。博士の想い』
みんなもポケモン、ゲットだぜ!
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