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うそっ……
いきなり割り込んで来た通信の主は、ワタシの……お父さん?
しかも、ワタシの出生の秘密もサラッと……
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えっ、ワタシのお父さん、生きてたんだ……
しかもお父さん、人間じゃなくて『大天使』って……
「ねぇキュイさん、ワタシのお父さんって……
どんな人だったんですか?」
「アカリ様の父上のシュージン様は、もともとは人間でした。
母上のタカコ様と同じ学校の先輩後輩の間柄だったそうです。
お2人とも、別々のタイミングで全く同じ異世界へと飛ばされました。
しかし、この異世界に飛ばされた時に母上のタカコ様は平行世界の異世界に飛ばされたのに対し、父上のシュージン様は未来世界の異世界に飛ばされてしまったらしいのです。
その時に、どうやら遺伝としてもともと持っていた『大天使』の血が“覚醒”してしまった様です。
母上のタカコ様がキュイぐるみの能力がフルに発揮出来る様になり、能力『ジャンプ』で未来へ“跳べる”様になった時、未来世界で父上のシュージン様と出会ったのです。」
キュイは、まるで遠く……
そう、『天界』の方を見ている様でした。
「しかし、その時にはもう父上のシュージン様は“覚醒”しきっていて、見た目は神々しい4枚の羽根を生やした『大天使』の姿そのものでした。
ただ、そのお顔は、タカコ様が一目惚れした人間の頃の秋人(しゅうじん)様のままだった、とタカコ様からお聞きしました……
そして、タカコ様もシュージン様も未来世界にて同じ目的である、世界の終焉をもたらす『黒き巫女』を追いかける為、行動を共にする事になったのです。」
そして、話はいよいよ核心へと迫ります……
「最終的に、『白き巫女』に“覚醒”したタカコ様とシュージン様は『黒き巫女』を逃げも隠れも出来ない場所へ追い込む事に成功します。
ただし、その場所は大天使族、女神族、魔神族など、限られた種族しか侵入が許されない『天界』だったのです……
父上のシュージン様は『大天使』なので行けますが、このままでは母上のタカコ様は『人間』なので、『天界』に入る事は許されません。
結局、手段はひとつしかありませんでした。」
朱璃が、まさか……という顔をしています。
耳まで真っ赤になり、モジモジしています。
「そう、たったひとつだけ……
父上のシュージン様と母上のタカコ様がひとつに結ばれる事だけだったのです。
そしてタカコ様のお腹の中に宿った“愛の結晶”こそアカリ様、アナタだったのです。
アカリ様を身籠ったままなら、タカコ様も『天界』へ入る事が出来ますからね。」
アワワワワ……!
朱璃は顔をリンゴみたいに真っ赤にして、両手のひらをバタバタさせています。
「そうして3ヶ月後、母上のタカコ様がアカリ様を身籠った事を確認してから『天界』へ侵入し、激戦の末『黒き巫女』を討ち滅ぼしたのです……
ワタシも大変でしたよ。
激戦の最中、タカコ様が闘っている間じゅうワタシも必死でお腹の中のアカリ様を守り続けていたんですから……!」
そこまで話した瞬間、突然キュイの目が真っ白になり、キュイの口から何やら
ピーピーピー……ガガッ!
と、まるでラジオの周波数を合わせる様な音が聞こえたかと思ったらキュイの口から男の人の声が聞こえて来たんです!
「あーあーあー、テステステス。
こちらの声ぇ、聞こえてますか、オッケー?」
……???
「うんっ、呆気に取られているって事は、ちゃんと聞こえているな。
こっちはキュイの口を通して喋ってるから、聞いているのはタカコかな?」
「すいません、たぶん人違いです……
って言うか、“人違い”ほど遠くもないですね。
ワタシ、お母さんの娘の朱璃(あかり)です。
もしかして、貴方は……ワタシのお父……さん?」
「そうかそうか、アカリってんだぁ、オレ達の娘の名は……!
初めまして、オレがお前の父のシュージンだ、ヨロシクな。
オレ達の元に生まれて来てくれてありがとな、アカリ……
って言っても、こうやって声は聞けるけど、顔はまだ見れねぇからなぁ。
早く会って、お前の顔を見たいよ、アカリ……
いやー、『危険』を冒してまでキュイを通して通信してみて、大正解だったよ……」
朱璃は、父の言った『危険』というセリフが気になりましたが、これ以上は聞かない方が良さそうです。
「タカコ母さんの事なら心配ねぇぞ。
お前が思ってる以上に強いから、母さんはさ。
それと……
今のキュイの話、途中からオレも聞いてたよ。
だから、オレからもちょいと補足してやる。
『大天使』と他の種族、または他の種族と『女神』、どちらの場合で生まれた子供でも、
男の子の場合は『大天使』に、女の子の場合は『女神』になるんだ。
だから、『大天使』は男のみ、『女神』は女しか存在しない。
そしてアカリは、『大天使』であるオレと母さんとの間に生まれた女の子なんだ。
それが何を意味するか……アカリなら……分かるな……
おっと……もう妨害電波に……捕まっちまったか……
アカリ……父に会いに……『天界』へ来い……
待ってるぞ……」
そして……キュイの口からは
ツーツーツー……
という音しか聞こえなくなりました。
「あの……キュイさん?キュイさんってば?」
とキュイの肩をゆっさゆっさ揺すってみました。
すると、白目を向いていたキュイが正気を取り戻し、元の目に戻りました。
「うーん……途中から誰かに意識を乗っ取られていた様な……
アカリ様、何かあったのですか?」
キュイは何も覚えていない様です。
そこで、朱璃はキュイに、途中からキュイの身体を介して父のシュージンからコンタクトがあった事、そして父からのメッセージを全てキュイに話しました。
「そうなんですか……
父上のシュージン様の声が聞けたんですね……」
キュイはちょっと残念そうです。
そして、父のシュージンのメッセージを聞いてキュイはフムフムと考えた後、
「父上のシュージン様は、確かにアカリ様が『大天使』と『人間』の間に生まれた女の子って言っていたんですね?」
そして、次のキュイのひと言に、我が耳を疑いました!
「つまり、アナタは……
『女神』なんですよ、アカリ様!
って言うか、正確に言えば『人間』でもあり『女神』でもある、“半人半神”なのが今のアカリ様の状態なんです。
だからこそ、『女神』であるアカリ様を身籠っていたからこそ、『人間』であるタカコ様でも『天界』に入る事が出来たんですよ……」
あっ、と言ってキュイはポンとキュイは手を叩きました。
「あっ、そうそう、ちなみに、確か……
父上のシュージン様も、最初は“半人半神”だったって聞きましたよ。」
……今の話からすると、
ワタシって、父親似なのかなぁ……?