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さて、と……
廃墟の次のステージは「盗賊団のアジト」です!
どうやって拐われた町娘さん達を助け出しましょうか……
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異世界ホールを抜けた反動で、火照った身体中の熱を外に放出する過程で、偶然産み出されたとも言える『胸キュン♡戦法』……
廃墟を出て、森林の小道を歩きながら、この闘い方の応用方法を考えていました。
中でも、バトルシーン以外で使えそうなのは「壁ドン♡」「髪フゥ♡」の2つです。
冒険者にとって重要なファクターを占めるのは、何と言っても『マップ探索』です。
コレがちゃんと確立出来ているかどうかで、冒険の成否が全然変わって来るんですから。
『マップ探索』には主に「フィールド探索」と「ダンジョン探索」の2種類があります。
「フィールド探索」とは、主に外に出歩く時に障害物を排除出来るかどうかに関わって来る能力です。
だって、障害物を排除出来ないと、屋外活動が著しく制限されてしまうからです。
その時に役に立つのが「壁ドン♡」です!
気を込めた掌底突きは、目標物に気をぶつけて破壊する技なので、目標物を直接自分の手で殴って手を痛める心配はありません。
もっと練習して場数を踏めば、岩盤ですら割れるかも知れません。
「ダンジョン探索」は、主にダンジョンの構造、敵の数及び配置をどれだけ把握出来るかどうかに関わって来る能力です。
だって、ダンジョンはフィールドよりもはるかに不意討ち、先制攻撃を受ける確率が高いからです。
その時に役に立つのが「髪フゥ♡」です!
ダンジョンの外で小動物を捕まえて、またはダンジョン内の敵の1人を拘束して、「髪フゥ♡」でアカリが自由に動かせる“駒”にして自分の代わりにダンジョン内を歩き回らせれば、誰にも怪しまれる事無く“情報収集”が出来ます。
もっと練習して場数を踏めば、「髪フゥ♡」で操った“駒”に更に気を送り込んで、視角を共有させたりする事だって出来るかも知れません。
一番利用可能性を拡げられそうなのがこの2つなんです。
「髪フゥ♡」に関しては、もう1つ試してみたい“実験”もありますし、ね♪
ふとそんな事を考えながら歩いていると、森の向こうで何やらゴソゴソ動く人影があります。
アカリは気配がしない様にそろ~っそろ~っとつま先立ち歩きで近付き、木の後ろからそ~っと覗いてみました。
どうやら、盗賊団の人達の様です。
盗賊団と一緒にいるのは……どうやら町娘の皆さんの様です。
この近くに、町があるんでしょうか?
いえいえ、それよりも盗賊団が町娘を捕まえて、何をするつもりでしょうか?
まさか、どれ……いやいや。
アカリは頭をブンブン振って、必死にその選択肢を打ち消そうとしました。
しかし、さっきから嫌な予感しかして来ません。
「あの人達を助けに行かなくちゃ!」
でも、どうやって助けよう?
ただ盗賊団を倒すだけじゃなくて、町娘の皆さんを無傷で助け出すには……
アカリが頭の中でモヤモヤ考えながら様子を見ていると、盗賊団が町娘の皆さんをこの先にある洞窟へと連れて行く様です。
盗賊団の“お頭(かしら)”らしき大男がまず洞窟の中に消えて行き、その後に盗賊2人が間に町娘の皆さんを挟んで洞窟の中に誘導します。
その後、盗賊が3人洞窟の中に消えて行き、残る1人は、たぶん“見張り役”なのでしょう、ポツンと洞窟の外においてけぼりにされました。
「盗賊が6人、町娘の皆さんが4人、合計10人ってトコですね……」
……町娘の皆さんの救出プラン、決定しました!
あの“見張り役”さん、利用させて頂きましょう……
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何でオレだけ見張りなんだか、まったく……
……あ、オレ?
とある村に住んでたんだよ。
年寄り連中しか住んでない「過疎村」でさ、オレ仕方無く出稼ぎに出てたんだよ。
で、いざ出稼ぎから帰って来たら盗賊団の襲撃に会って壊滅しちまってるじゃんよ。
立ち尽くしてる所を盗賊団に見つかっちまってさ、死ぬのがイヤだったからみっともなく命乞いしたんだよ。
その結果、生かしてもらう代わりに盗賊団のケツにしがみつく事になっちまって、このザマだよ。
ハァ……
……おっ、向こうから女の子がやって来たぞ?
顔はカワイイし、見た目は“上玉”なんだが……なんであんなきぐるみを着てるんだ?
は、恥ずかしくはないのか?
なんかモジモジしてるみたいだし……
話を聞いてやると、何か道に迷ったらしいみたいなんだよ。
教えてやるフリしてこのままアジトに拉致して“お頭”に献上してやれば、オレの株もうなぎ登りになるんじゃねーか?
ようやくオレにもツキが回って来たぜ……!
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アカリは、モジモジとした感じを醸(かも)し出しながら“見張り役”さんに近付きました。
「あのぉ、すみません。
道に迷っちゃったんですけど……
この森林を抜ける道を教えてくれませんか?」
「お、おぉぉう、教えてやるよ。
一緒に付いて来いよ……」
「はい……」
アカリは、そそそ……と身を委ねる様に“見張り役”さんの背中にぴとっとくっつくくらい、おしとやかに付いて来ます。
か、カワイイ……
ちょっとポッとなっている“見張り役”さんの耳元に、ウインクしてひと言呟きました。
「このまま、イイ“夢”見させてあげますね……」
アカリは人差し指にチュッとキスをしながら、“見張り役”さんの頭に手のひらを置いて、髪の毛に直接甘い吐息で気を送り込んだのです!
「……髪フゥ♡」
髪フゥ♡の気の直撃を喰らった“見張り役”さんはグルッと目を回して白目になってしまいました。
「じゃあ……今回は“偵察”とか何もしなくてもイイです、このまままっすぐに、ワタシを守りながら“お頭”のトコまで行って下さいね。」
「は……い……」
今の段階のアカリでは、まだ髪フゥ♡で操った相手に複雑な事をさせるのは無理なので、取り合えず戦闘の際の『盾役』として頑張ってもらう様です……
アカリは“見張り役”さんを前に歩かせて、そのまま盗賊団のアジトへと乗り込んで行ったのでした。
アジトの中は盗賊が5人いて、計画通り町娘を拉致出来た「勝利の美酒」で全員酒を煽っているのかベロンベロンです。
どうやら“お頭”は町娘の皆さん4人と奥の部屋にいる様です。
これはチャンスですね……
「あん?……なんだぁオメェはぁ?」
「おぃ新入り、何でこんな小娘、中に入れたんだぁ?」
「でもコイツ、なかなかの“上玉”じゃねぇかぁ!
この小娘はよぉ、オレ達が頂いちゃうかぁ?」
「構わねぇよなぁ!」
「みんなぁ、やっちまえっ!」
……はぁ、どいつもこいつも好き勝手なコト言ってくれますねぇ。
『情けは無用』ってコトですか……
今回のテーマは「“お頭”に気付かれない内に素早く殲滅させる事」です。
まぁ、盗賊達がこれだけ喚き立てても“お頭”が出て来ないって事は、逆に言うと戦闘の時に多少大声をあげても大丈夫って事でしょう。
今回大事なのは、盗賊達を殲滅するスピード、という事になりますね。
要はタイムアタックです。
さぁ、無駄な戦闘は避けて、速やかに殲滅させましょう!
えーと、それにはまず……
盗賊5人を素早く倒すには……
……やっぱり「手前に引き込みながらドン」、コレに限りますね!
コレにちょうどいい『胸キュン♡戦法』は……
……それはもう、あの“連携技”しかないでしょう!
まず、盗賊が2人こちらに迫って来ます。
「たかが小娘だぁ!
2人がかりで動けなくして押し倒しちまえっ!」
アカリはこちらに迫り来る2人のうちの1人の腕を絡め取り、
「さぁ、応用連携技、行きます!
腕グイ♡で捕まえてからの……」
絡め取った腕を腕グイ♡で捕まえて微笑みながら自分の懐に引き寄せます。
そして、タイミングを見計らって……
ちょうど後から追いかけて来たもう1人とピッタリ重なるタイミングで、
「……壁ドン♡」
腕グイ♡で捕まえた盗賊のどてっ腹に手を当てて、超至近距離から壁ドン♡をお見舞いしました!
どうやら壁ドン♡で放った気の波動は1人目を貫通して2人目にも当たった様で、吹っ飛ばされた先で2人とも踞(うずくま)って嘔吐物を吐き出して倒れてしまいました。
…………!!!
今の連携技を見て、どうやら残りの3人ともビビってしまった様です。
「たぶん今の2人、肋骨が折れてしまったかも……」
アカリのそのひと言を聞いた途端、
「うわぁぁぁっ!」
「ひがぁぁぁっ!」
と錯乱状態になってしまった3人のうちの2人が脇目も振らず突っ込んで来ました。
「さぁ、今度は顎クイ♡の応用技です♪」
そう言って並んで突っ込んで来る2人に両手で待ち構えています。
そして、右の掌底突きで1人目の、左の掌底突きで2人目の、それぞれの顎に当てて、
「……顎クイ♡」
とカウンターで両方の掌底突きを振り抜きました!
2人とも、その場で泡を噴いて突っ伏してしまいました。
「ば……バケモンが……っ!」
残った1人は、喚き散らしました。
次の瞬間、どこからともなくカチン!という音が……
「女の子に向かって……“バケモン”ですってぇ!!?」
背後がゴゴゴ……と怒りの炎で燃え盛ってます。
どうやら、そのひと言がアカリの逆鱗に触れてしまった様です!
とっさに壁に立て掛けてある剣を取り、身構えました。
確かに剣と素手では素手の方が圧倒的に不利なのです。
しかし、残ったこの盗賊は、慌てていたのかある致命的な失敗をしてしまいました。
そう、こんな狭い洞窟内で剣を選択してしまったのです……!
「くっ、このヤロウ!」
狭いので振り抜こうとすると壁に当たり、振り抜く事が出来ないのです!
ガキンっ……!
その隙を見逃すアカリではありませんでした。
“バケモン”と言われた恨み、とばかりに思いきり股関を蹴りあげたのです!
「うぐっ……!」
そして、股関を押さえた盗賊に、
「そこまでです!……壁ドン♡」
壁に剣を当てたままの状態で、まともに股関蹴りあげからの壁ドン♡という連携技を喰らった盗賊はそのまま壁に激突し、壁にもたれ掛かって座り込んだままノビてしまったのでした……