日常が崩壊した世界で。   作:葉月雅也

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早紀との知り合いである月影(つきかげ) (みやび)
彼女は一体何者なのか。


悩みと決断

「久しぶり、早紀」

「そうね、(みやび)

「早紀さんと知り合いだったんですか?」

「ええ、そうよ。時雨、少し席を離れてもらってもいいかしら?」

 

 

時雨は頷き、部屋を出る。部屋を出た先にはほのかが立っていた。

その目は今の人は誰だ? と言っているようだ。

その時部屋の中から人の頬を叩く様な音がした。

時雨は中に入ろうとするが、それをほのかが阻止する。

そして、首を左右に振る。

 

 

 

 

「痛たた……」

「貴女、自分が何言っているか分かっているの!?」

 

 

先程のフードを被った人物の名は、月影 雅。

昔、早紀の専属メイド兼友人として大導寺家に出入りしていた人物である。

 

 

「銃を夏奈ちゃんか、みくちゃんが持たないとあの子達は全員死ぬよ。時雨君の動きを見たけど、遠距離からゾンビを狙える人が居ないと辛いわよ」

 

 

雅は目を細め、深刻さを早紀に伝える。しかし早紀の表情は変わらない。

雅はため息をつき、頭を左右に振った。

 

 

「早紀」

「わかっているわ……しかし……」

 

 

「早紀様、朝食の用意ができましたので、お声をかけさせていただきます」

 

 

由美が室内に入って手を綺麗に揃えてお辞儀する。

早紀は席を立ち、雅に一緒に来るように言い部屋を出た。

 

 

「あれ、盗み聞き?」

 

 

ドアの横に立っている時雨とほのかに気付き、雅はニカッと笑いほのかの頭を撫でる。

ほのかはその手を払い除ける。

 

 

「朝食を食べに行くわよ」

「行こっか~」

 

 

雅と早紀の性格は真逆だ。

この二人がかつて手を組み荒れていた事を時雨達は知らない。知る余地もない。

 

 

 

 

 

「それでは簡単に自己紹介を。月影 雅と言います。早紀の右腕とかお嬢の執事をやっていました。それと『更識』と『金月』を作った人でーす」

 

 

皆の食事の手が止まる。この人はどこから見ても女性である。

髪の毛をポニーテールでまとめ、たわわな胸、スラリと伸びた足。

どこをどう見ても女性である。

 

 

「私の執事を勤めてくださった方は、影崎正樹という方です。彼は真面目な方でした」

 

 

食事を終了したほのかは、紙ナプキンで口元を拭きながら答えた。

雅は人差し指で頭を掻きながらバツが悪そうに口を開く。

 

 

「それ、私が変装した姿なんだよね。影崎正樹は2つ名なんだよね」

 

 

ほのかの表情が固まる。まるで今までの生き方を否定された様な感じだ。

ほのかの隣に座っている、みくが代わりに雅に問いかける。

 

 

「え、じゃ……今は何故?」

「うーん、それは言いにくいなぁ。簡潔にまとめると、ヘマやらかしちゃったんだよ」

「コイツは掃除している最中に私の宝を汚したのだ」

 

 

ムスッとしながら(みのる)が答える。しかし、それ以上聞いても何も答えなかった。

一同は、再び沈黙に包まれた。

そんな沈黙を突き破ったのは雅だった。

 

 

「早紀、食料の余裕はある?」

「あるわ」

「彼らに持たせてあげて。ここを脱出させるために」

「どう言うこと?」

 

 

雅は手を添えて早紀に耳打ちする、早紀は目を見開く。

 

 

「そんな……」

「事実よ。故にここに立て籠り続けるのは不可能。分散が必要ってわけ。都心部も落ちるわけだし」

 

 

早紀はテーブルに手を置き立ち上がる。その目は何かを決心したようだ。

 

 

「この子達が乗ってきた車に食料を詰め込んで頂戴。それと、地下室のロックを解除するわ」

「早紀さん?」

 

 

不安そうに早紀を夏奈が見つめる。

早紀は今までに見せたことのない笑顔で大丈夫とだけ言った。

作業は快速列車の様に進んだ。

 

 

「続いて都心上空からお送りします」

 

 

いつの間にか付けていたテレビから映像と音声が流れている。

 

 

 

 

都心部は、ほぼ機能していない。

住民達の争い、奪い合い、殺し合いの地獄絵図と化していた。

あちらこちらで火の手が上がっている。

外を歩いているのは感染者かゾンビが割合を占めている。

 

 

「た、助けてくれ~……」

 

 

男性が右足を引きずりながら歩く。しかし、負傷しているのは右足だけではなく、肩からも出血している。噛まれた痕跡もある、感染者だ。

 

 

「ガハッ……」

 

 

男性は足を止め、吐血を数回繰り返している。

男性は膝から崩れ落ち、地に体がつく。

やがて彼は呼吸が止まる。

 

 

 

 

 

 

 

「都心部は終わったな」

「そーだね、国の(おさ)達はどこに行ったんだろうね」

「さあな」

 

 

珍しく、錬が真面目に答える。ふと、みくには疑問が浮かぶ。

 

 

「雅さん、何でこの事を知っていたのですか?」

「簡単なことだよー、知り合いが働いているんだよ。国の経営する病院でね」

 

 

早紀以外、雅のキャラが分からなくなっていた。

 

 

「早紀様、詰め込みが終了しました」

「ありがとう。それと……夏奈着いてきなさい」

「は、はい」

 

 

 

 

「早紀さん、どこに向かっているのですか?」

「地下室よ、そこに何丁か銃があるわ、それを貴女に使ってほしいの」

「私、銃を使えないですよ」

 

 

実際、夏奈はテニス一筋でいる。木刀すら持ったことがない。

運動が出来る普通の女の子だ。

早紀は、獲物を見る目で夏奈を見つめる。

 

 

「貴女、嘘ついてるわね」

「え……?」

 

 

早紀曰く、夏奈の行動力があまりにも戦闘ができる兄の時雨と似ているらしい。

夏奈は否定していたが、早紀は目力を弱めることはなかった。

 

 

「とりあえず、これよ」

 

 

早紀は部屋にあったケースを取りだし、蓋を開けた。

夏奈は真顔で、銃を組み立てる。

 

 

「お兄ちゃんがいない間、お金持ちの友人の家に泊まることもあって……。その時、的射ちしてたからね……」

 

 

夏奈は間を取り、言葉を紡ぎ続けた。

 

 

「私も戦うよ。お兄ちゃんの幸せのために」

「あら、夏奈ちゃんってブラコン?」

「違いますよ、私はただ、お兄ちゃんとほのかさんが付き合うのが夢ですから」

 

 

そう言って夏奈は向日葵の様に微笑んだ。

 

 

 

「お。おかえり」

 

 

錬がソファーに座り、夏奈の方を向いて手を振った。

夏奈は微笑み、肩に背負っているケースを足元に置いた。

 

 

「皆、準備はいいか? そろそろ出発しようと思う」

「おー、もう行くの? それじゃあ……」

 

 

雅は布に包まれた物体を錬に渡す。

そして目で開けてみなさいと催促した。

 

 

「これって……」

「うん、『金月』の兄弟刀『銀月(ぎんつき)』だよ」

「……ありがとうございます」

 

 

時雨達は乗ってきた車に体を滑り込ませる。運転は変わらず、由美が担当する。

最後にほのかが乗り込み、全員いることを確認して由美はエンジンをかける。

 

 

「行きます!」

「ああ」

 

 

由美はアクセルを踏み込む。車は勢いよく走り始めた。

 

 

 

 

約20分後……

 

 

「これでよかったのかしら?」

「うん。防衛戦は数が多ければ良いって訳じゃないからね」

 

 

走り出した車を見送った3人は警戒心を解かない。

ここに日常が戻ってくる保障はない。

もう、ここは戦場である。一瞬の油断が命取りとなる。

味方の数が多くなれば、集団心理で気が大きくなる、それが油断を生む。

だから雅は、ほのか達に移動するように言った、お互いの生存率を上げるために。

 

 

「なら、私は妻の命を最優先で守ろう」

 

 

力強く実は言葉にした。

隣に立っている早紀は少し頬を赤く染め、俯く。

親子はやはり、似るものである。

 

その時、門を叩く音がする。近辺にいたゾンビが集まり始め、襲撃を開始したのだろう。

 

 

「早紀、雅。大人の意地を見せてやろうではないか」

「ええ、そうね」

「パパッと片付けよう!」

 

 

実と雅は刀を、早紀は二丁拳銃を構える。

門が開いた時が開戦の間となる。

 

 

「門を開けるわよ」

 

 

門が開くと同時に流れ出すゾンビの大群、駆け出す3人。

守るべきモノを死守する戦いが始まった。




春休み 来たら更新 はやくなる?

わかりません。
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