日常が崩壊した世界で。   作:葉月雅也

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今回から再び、時雨君達の出番です。


食材探索

結局のところ時雨の体調が万全になるまで3日かかった。その間の防衛は、ほのかとくるみが担当してくれていたらしい。

 

 

「もう大丈夫なのですか? 時雨さん。」

 

 

そう言って部屋のなかに入ってきたのは、みくだった。彼女は時雨が手に数学の参考書を持っていることに気がつき、微笑した。

 

 

「もう、日常が戻ってくる保証は無いんですよ。むしろこれからも崩壊し続けると思います」

「わかっている、わかっているさ。それでも心のどこかで日常が戻ってくることを期待している自分が居るんだよ」

 

 

参考書を閉じ、時雨はベッドから出てきた。その足取りはいつもと変わらず完全に回復しきったようである。その時、居間にある電話が突如鳴り出す。みくと時雨の表情が変わる。3日前に襲撃してきた奴らが復讐しに来る可能性がゼロでは無かったからだ。

 

 

「俺が出る」

 

 

そう言うと時雨は居間に向かう。居間には誰も居なく、ただ電話が鳴り響いている。時雨は軽く呼吸を整え、受話器をとった。

 

 

「もしもし」

「もしもし、その声は時雨か? 私、早紀よ」

「早紀さん? どうしたのですか?」

「雅の家なんだけどね。ほのかの家と同じ構造で、物置があるはずよ。そこに銃があるわ、それを使いなさい。あとテレビはたまには見なさい」

 

 

言い終わると同時に早紀は電話を一方的に終了した。時雨には早紀の最後の言葉が引っかかっていた。この崩壊した世界でテレビを見ろ? 彼には何のことだか検討もつかなかった。

 

 

「お兄ちゃん、おはよう。もう大丈夫なの?」

「夏奈、おはよう。もう大丈夫だ」

 

続けて、由美、くるみ、ほのか、錬、みくの順番でそれぞれ居間に集まった。時雨は早紀に言われた通りテレビの電源を付け、ニュース番組にチャンネルを変えた。

 

 

 

「えー、現在起きている原因不明の人が人を襲う事件が発生しています。尚、噛まれるとおおよそ2時間後には死に至るようです。今回は、ゲストに株式会社ファールゼード社社長、高藤(たかとう)雄太郎(ゆうたろう)氏に来ていただいています」

「よろしくお願いします。現在発生している事件ですが、ウイルスの方は完全に活動が弱まっているようです。こちらが、その観測データです」

 

 

そう言って彼はプレゼンをするかのように現状をわかる範囲でまとめ、説明をし始める。

 

 

 

 

 

時雨とほのかは、画面の中で話続ける彼を睨む。その時、夏奈は黙ってリモコンを持ちテレビの電源を消した。

 

 

「それより、朝ごはんを食べながら今後の予定を考えなきゃ」

 

 

そう言ってキッチンの方に姿を消した。あとに続くようにほのかもキッチンに向かった。料理が出来る2人は仕事も速かった。上手く作業を分担することで効率良く料理を(こしら)えていく。

 

 

「召し上がれ」

「いただきます」

 

 

皆、黙々と食事をする。まるで騒動の初日のときみたいに。結局、誰一人しゃべることなく朝食が終わった。

 

 

「どうするのかしら時雨君? ここにはもう食材が持たないわ」

「ほのかさんの言う通り、さっき料理してて冷蔵庫を開けたんだけど結構消費しちゃってるよ」

「ほのかと夏奈の報告から食材を調達しにいこう、この辺りにスーパーマーケットはあるのか?」

「ありましたよ、車で20分の位置です」

「ありがとう、みく。それでは行こう」

 

 

武器は出来るだけ持ち出すことにした。そして全員が武装することにした。今回の作戦で調達するのが、くるみと時雨。その2人を近くで補助するのが、ほのか。そして援護を夏奈とみくが行い、車の運転を由美が担当することになった。

 

みくが言った通りスーパーマーケットは車で20分のところにポツリと立っていた。無論、ゾンビが徘徊をしている。しかし、以前と異なる点がある。それはゾンビの数だ。ゾンビは所狭しと徘徊している。

 

 

「先陣は私が」

 

 

夏奈はアサルトライフルを取りだし、窓を開けた。そしてトリガーを引き、ゾンビを狙撃し始めた。

 

 

「銃声と大まかなゾンビの立ち位置から計算して耐久できる時間は5分です。行ってください、くるみさん、時雨さん!!」

「了解」

 

 

くるみは自動拳銃(オートマチック)、時雨は回転式拳銃(リボルバー)を手に持ち、比較的ゾンビの少ない道を全力で走り抜ける。時折、止まり片手で発泡する。だが、夏奈の的確な援護のお陰で2人は疾走することと弾を節約することに成功する。

 

 

「着いたな」

 

 

この時点で時雨は2発、くるみは5発しか射っていない。

時雨はドアを蹴り破り、中に突入する。その様子を確認した由美はエンジンをかける。エンジンがかかったことに気がついた夏奈は発泡を止め、窓を閉めた。

 

 

「しっかり……掴まっていてください!」

 

 

由美はアクセルを踏み込む。車は勢い良く走りだす。そして駐車場内でぐるぐると旋回し始める。ゾンビを轢き殺すのが目的だ。ゾンビはボンネットに叩きつけられ、フロントガラスに血飛沫や体液が付着する。由美はワイパーを動かし、視界を確保する。2周目に入ると1周目のゾンビの体液と血溜まりで曲がる際、サイドの窓にもゾンビの体液と血飛沫が付着する。

 

 

「きゃ……」

「大丈夫ですよ」

 

 

夏奈はみくにそっと抱きつき、背中を叩く。

 

 

 

 

「くるみ、お前は必需品の買い足しに行ってくれ。おれは食料を調達しにいく」

「わかったよ、兄貴」

 

 

こうして2手に分かれ、それぞれ確保に向かう。

 

 

「冷凍食品とレトルト食品だな」

 

 

時雨はレジ袋を貰い、天井から下げられているコーナーを記した物を頼りに、目的地に向かった。もうすぐコーナーにたどり着くタイミングで、あることに気がつく。

 

 

「参ったな……」

 

 

冷凍食品とレトルト食品のコーナーにゾンビが群がっているのである。時雨達と同じことを考え、実行し、失敗した者達だ。彼はホルダーから回転式拳銃(リボルバー)の残弾数を確認する。

残り4発。それに対してゾンビの数は、おおよそ7体。しかもリロード中は攻撃ができない。予備を会わせると24発。最悪17発は外しても逃げればいい。彼は装填し、構える。慎重に狙いを定め、トリガーを引く。辺りに爆竹の様な音が響き渡る。それを聞きつけたゾンビは時雨の方に集まる。その隙に、くるみは退く予定だ。

外では車のクラクションが1つ長く鳴らされる。駐車場内にいたゾンビの殲滅が終わったサインだ。時雨は再びトリガーを引く。2体目も額の中央に当て、少量の血飛沫を上げ、仰向けに倒れた。続けて3体目、4体目、5体目と順調に頭を貫いた。装填されている最後の銃弾で6体目のゾンビを片付ける。しかし足元の確認を疎かにしていた時雨に不幸が襲いかかる。足元にあったのはペットボトルだった。どうやら棚から落ちていたようだ。それに足元を(すく)われる。体勢を大きく崩した時雨は正に絶体絶命だった。ゾンビもすぐそこまで近づいている。彼は横に転がりだした。そして立ち上がり、装填する。

 

 

「危なかった……」

 

 

安堵しながらトリガーを引く。彼は元人間に引導を渡した。その後大急ぎで冷凍食品とレトルト食品を持てる限り持つ。

帰り道は予備に預けられていた自動拳銃(オートマチック)でゾンビを蹴散らしていく。

 

 

「お兄ちゃん!」 「兄貴、こっち!」

 

 

夏奈達に呼ばれ、時雨はそちらの方向へ走り出した。車は、ほぼ全てがゾンビの血飛沫と胃液等で汚れていた。由美にドアを開けてもらい、時雨は車に乗り込む。

 

 

「お帰りなさい、時雨君」

「ああ、ただいま。随分大変な仕事だったよ」

「それでは出発します」

 

 

そう言うと、由美は安全運転で雅から借りている家に向かった。ゾンビを引き殺している時の眼差しに、みくは感心していた。と同時に私にも出来ることがあるのかな、と少し不安に思っていた。




こんばんは、葉月雅也です。今回登場したきたファールゼード社は結構重要だと思うんですよね、多分。
動画を見て癒されながら、頑張って更新していこうと思います。

ネタバラシ
くるみが今回使用した銃のモチーフは ベレッタ M84
時雨が今回使用した銃のモチーフは コルト パイソン
                 デザートイーグル
です。尚、現実に近いが現実ではない、日本に似ているけど日本ではない国と理解してください。銃刀法とか言い出したら物語が進まないので堪忍を……。
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