この物語は、ゾンビ無双より、どうやって生き残るや人間関係を書いているシーンの方が多いですね……。すみません。
カーテンを閉めきった暗い部屋で一人の男性がパソコンに流れる無数の文字の列を眺める。時折、マウスを操作しているがその表情は変わらない。
「ちっ、完璧には尻尾を出さないか……」
男性は、くわえているタバコを灰皿に押し付けて消す。髭はここ数日剃っていないようで伸びている。
「ん……ここは?」
男性は滑らかな指先でピアノを奏でるようにタイピングする。エンターキーを叩き、爆笑をする。しかしか、男性は直ぐに真顔に戻る。
「俺の力じゃ、どうしようもないな……仲間も、いねえし」
その時、男性の脳裏にある人物の顔が
「あとは頼むぞ、時雨」
男性はパーソナルコンピュータに刺さっているメモリーカードを抜き取り、駆け出した。軽く荷物を持ち、最後に黒い鉛の塊を持ち施錠せずに家を出た。もう戻ってくることは無いと思ったからだ。男性はロードバイクに跨がり、とある場所に向かった。そこなら必ず彼らと会うことができる、そう確信があったからだ。男性の家の表札には"長元"の文字があった。
「あれから、ほのかはどうだ?」
「お嬢様は中から鍵をかけていますので、こちらからは何も出来ません」
「完璧に心を閉ざしちゃったんだね。まぁ、ほのかさんも強いからって言っても女子だからね……」
「時雨、こういうときにお前が側にいなくてどうする!?」
時雨は席を立ち、ほのかの部屋に向かった。ドアの前に立つが何て声をかけていいのか分からない。時雨が、ほのかの右腕だった頃こんなことがなかったからだ。
「ほのか……」
「今は放っておいて」
「……」
時雨は右手でドアに触れる。声の大きさからドアの付近には、ほのかはいない。だったら問題はないだろうと判断した時雨は右足でドアを蹴り飛ばす。
「そんな気がしたよ」
ほのかは、ベッドの上で膝を抱えて泣いていた。刀は出来る限り遠い位地に置いている。
「何しているのかしら?」
若干、鼻声になっているがほのかは、まだ強がっていた。時雨は堂々と部屋の中に入った。
「……来ないで! お願いだから独りにして」
「断る」
「殺すわよ」
その目に殺意は消えていなかった。
「ああ、殺せばいいだろ。お前がそれで満足して、立ち直るならな」
ほのかの動きが止まる。その隙に時雨は、ほのかにそっと抱きついた。ほのかも時雨に身を委ねた。
「泣きたい時には泣け。俺は、そんなに頼りないか?」
ほのかは号泣し、時雨はほのかが泣き止むまで優しく頭を撫で続けた。
「もう、いいわ」
少し鼻声が気になるが、気持ちは落ち着いてきたようだ。時雨はホッとしていた。
「お兄ちゃん、ほのかさんの様子は、どう? ってドアが!!」
「あ」
時雨は今更自分が何をしたか思い出した。
「どうするの? ほのかさん、今晩ドアなしで寝ろって言っているの!?」
「夏奈さん、その件は大丈夫よ。時雨の部屋で寝るわ」
「そうですか。わかりました。夕食もうすぐ出来上がるよ」
そう言って夏奈は部屋を去った。その後、ほのかは普段と変わらず皆と接していた。
その夜
「じゃ、ほのかはベッドで寝ろ。俺は廊下で寝るから」
「寒いわよ」
「何を今更。毛布かけるから問題ない」
「そう言って、風邪ひいていたじゃない。いいから寝るわよ」
そう言って、ほのかはなから強引に時雨の腕を掴み部屋のドアを閉めた。
「夏奈の部屋で寝た方が、よかったんじゃないか?」
「うるさいわね、寝るわよ」
そう言って、ほのかはベッドの空いているスペースを叩く。時雨は軽くため息をつき促されるまま、ほのかの隣に寝転がる。ほのかは直ぐに掛け布団に頭まで潜り込んでいる。時雨は少し出ているほのかの頭を撫で、瞼を閉じた。一方の突然頭を撫でられた、ほのかは顔を赤く染めている。
「早く気づきなさい……バカ」
ほのかは寝返りをして時雨と背中合わせになるようにして寝た。
数時間後、ほのかは背中から微かに温もりを感じていた。振り向いて見ると、時雨がほのかに抱きついていた。
「……え」
ほのかの思考は完全にショートしていた。現状の整理も出来ず、また次から次へと溢れる感情の制御が出来なかったのである。彼女の顔は真っ赤になっていた。しばらくして、彼女は再び寝返りをした。想像以上に時雨との顔は近かった。その寝顔に彼女は頬を紅潮させる。そして、彼女も彼に抱きつき、再び眠りについた。
翌朝、時雨の部屋のドアを元気良く開けたのは、くるみだった。由美は昨晩、目覚まし時計をセットし忘れ、完全に寝坊である。
「兄貴! 朝です……よ」
くるみの表情が固まる。彼女の目線の先には、幸せそうに寝ている2人だった。
「やっぱり、無理だよ……。兄貴のことを諦めるなんて……」
くるみはホルダーからナイフを取り出す。その瞳には光がなかった。
「うそだよね、ウソだよね、嘘だよね……。兄貴は私のことを愛してくれればいいのよ……。兄貴以外の人間なんて要らないし、邪魔をするんだったら……容赦なく殺す……」
くるみは、ゆっくりと2人に歩み寄る。そして小声で ふふふ……あはは と笑いながら接近する。ベッドの近くまで近づき、ナイフを構える。その時、ほのかが目を覚ました。ほのかは瞬時に状況を察して、掛け布団を、くるみに投げつけた。
「何しているのかしら?」
表情には何も変化は無いが、明らかにほのかは憤怒していた。だが、原因は自分が殺されそうになっているからではない。時雨に危険が迫っているからだ。
「ほのかさんこそ、何しているのですか? 兄貴は貴女の所有物では無いんですよ? 兄貴の初めても……体も心も髪の毛1本までも、私の物なんだから」
くるみは、邪悪な笑みを浮かべていた。しかし、ほのかは冷静に言葉を返した。
「貴女……変態ね」
「何とでも言えば?」
「そう」
「でも……貴女が邪魔だから兄貴は私のことを見てくれない。結局、貴女しか見ていない」
「何を言っているのかしら?」
「惚けても……ムダよ……。兄貴が一番心配しているのは、夏奈ちゃんでも……みくさんでも……錬でも……私のことでも、自分のことでもない。貴女だけが心配なんだよ!」
「……」
「だから……だから貴女さえ居なくなれば兄貴は私のことを見てくれる。兄貴の笑顔は私だけが見ていればいいのよ!」
ほのかはこの時、思った。仲間だと思っていた人物が1人、たった1人、死ぬだけで人間関係は、こんなにも簡単に崩れ去るんだと。それと同時に、くるみは、とんでもない闇を匿っていたんだと知った。
「悪いけど、時雨君を譲る気は微塵も無いわ。彼は私に普通に生活する喜びを教えてくれたのだから」
そう言うと、ほのかは手刀で、くるみのナイフを地面に叩きつける。続けて回し蹴りをする。しかし、そくるみはそれを両腕を使い、防御する。くるみは一瞬油断したほのかの腕を掴み、投げ飛ばす。タンスにぶつけられた、ほのかはしばらく動けなかった。その隙にくるみはホルダーから2本目のナイフを取りだし、ほのかに近寄る。そして大きく振りかぶる。
「……リーダー最後に言い残すことは?」
「……」
「何もないのですね。それでは……」
「2人ともなにやっているんだ?」
「兄貴 待っててね。もう少しでお邪魔虫を殺すから。」
「くるみ、何言っているんだ?」
ほのかは、くるみと彼が話している隙を見逃さなかった。素早く刀を持ち、くるみが持っているナイフを
「ほのか、もうやめろ」
「……」
ほのかは無言で刀を鞘に収める。それと同時に、くるみは泣き出した。彼女は何も語らず、ただ ごめんなさい と繰り返していた。時雨は静かに、くるみの肩を叩いた。
こんばんは、眠いです(笑)
大体、原稿が出来上がるのって22:45以降なんですよね~。
毎回、日付変更と戦いながら、彼らの奮闘する物語を作者も奮闘しながら書いています。