時はゆっくりと流れ、彼らを成長させた。それと同時に国を見事に再生させた。ゾンビは完全に姿を消し、人口も少しずつだか増え始めた。
ほぼ、騒動以前の町に戻った世界を1人の人物がいた。彼はスーツに身を包み、鞄を抱えて走っていた。
「目覚まし時計壊れているとか、どんだけベタな展開だよ!」
独り言を呟きながら、彼は駅に向かった。彼は高校卒業後、とある一流企業に就職した。それでも彼の親友の足元にも及ばない。だが、彼は今の仕事を充分楽しんでいた。
駅に着き、彼は素早くICカードを取りだし、改札口にかざして中に入る。表示されている電車の出発時間は残り2分を切っていた。彼は人にぶつからないように気を付けながら電車を待った。電車が駅に着き、ドアが開くと同時に人が流れ込む。彼はその流れに身を任せ、電車に乗り込む。彼の職場まで50分くらいかかる。彼の最近の楽しみは小説投稿サイトに投稿される作品を読むことだった。
「ん、
ボソッと彼は呟きながら、小説の目次に飛んだ。彼がこのサイトを利用するようになったのは、
「どこの出版社だろう。糠天使コリペアさんと三ツ葉 亮さんは、うちの出版社だったはず。もしも、うちにしてくれたとしたら……誰が編集を担当するんだろう」
彼の独り言は絶えなかった。
"次は△△~。△△~。お出口は右側です"
「あ、降りなきゃ」
彼は人の波をかき分け、駅のホームに立った。どうしてもこの時間帯は通勤、通学ラッシュと重なってしまうため、毎日この様に一苦労しているのである。彼は改札口を目指し、ICカードをかざし、ロータリーの方を目指した。
「遅いぞ、今日は新しい小説家さんが顔を見せにくるんだから急げといったはずだぞ」
「す、すみません。古川先輩」
「行くぞ」
「はい」
古川のあとを彼は付いていった。駅から歩いて10分少々のところに彼が働く職場は建っている。5階建てのビルのような建物の前に1人の男性が辺りをキョロキョロと見ていた。不審に思った古川は、その男性に声をかけた。
「どうかしましたか?」
「ああ、すみません。ここを探しているんですが」
「それなら、ここですよ。用件は何でしょうか?」
「すみません、名乗り忘れていましたね。私は、雅樹と言う名前で……」
「わかりました、ご案内致します」
古川は丁寧に社内を案内した。彼は一旦古川と別れ、自分の机に向かった。
「あった」
机の上には"加藤錬"と書かれた名札が置かれていた。
「加藤さん、昨日会議室に置きっぱなしでしたよ」
隣の席で仕事をしている女性に指摘され、彼は苦笑いをしながら「すみません」と連呼した。
「さて、加藤さん。編集長がお呼びよ」
「あ、はい」
錬は編集長の待つ会議室に向かった。場所は第二会議室と教わっていたので迷うことなく加藤は第二会議室に着いた。彼は軽くノックをしてドアノブを回した。
「加藤くん。待っていたよ。君に、いや君を含め複数の人に話がある」
そう言うので錬は周りに座っている人達の顔をチラリと見た。
「簡単に自己紹介してもらおうか。まずはコリペアさんから」
「どうも、みなさん。糠天使コリペアです。ゾンビ系の小説をメインに書いています」
「はい。どうも、三ツ葉です。青春ラブコメディを書いています」
「えーっと、どうも。月波雅樹と申します。コリペアさんと同じくゾンビ系で受賞しました」
3人の小説家さんの自己紹介が終わったところで編集長が口を開いた。どうやら、月波雅樹と同時にもう1人小説家がいたらしいが、連絡が取れないるらしい。
「それで、担当編集者の変更があるんだ。小説家さん達は慣れるまでそう時間はかかんないと思っている。まず、コリペアさんは加藤錬くんが担当してくれ」
「はい」
「コリペアさんの作品は人気が高い。そして、三ツ葉さんは山下雅也君が変わらず担当してくれる」
「彼、大丈夫ですか? 色々精神的に追い込まれていましたけど」
「気にしなくて構いませんよ。そして、月波雅樹さんを古川優輝くんが担当してくれ」
「あ、お願いしますね」
「話は以上だ。解散」
亮とコリペアと雅樹は前から知り合いだったようで何やら共通の話題で盛り上がっていた。さらに仕事のスケジュールが合うとき飲みに行こうと話が進んでいた。彼らは仲良さそうに会議室をあとにした。
「錬、私は編集長に話があるから。仕事に戻ってて」
「あ、了解です」
彼は一礼してから会議室を出た。会議室を出た時、彼は大きく背伸びをした。その時首につけているロケットペンダントを久しぶりに見たくなった。あのあと皆で撮った写真を錬はロケットペンダントに入れ身に付けていたのだ。1枚1枚眺めると、あの頃を鮮明に思いだしていた。それと同時に4年前と異なりもう刀を振ることも銃のトリガーも引くこともないだろうと。
「ほれ、処理しないといけない資料は山のようになるんだぞ」
資料の束を錬の頭に乗せ、古川はニヤリと笑った。錬は目を瞑り苦笑いをした。その時、古川は錬のペンダントに気がついた。
「その男の子って、大道寺グループの社長のパートナー?」
「そうですよ、彼は俺の親友ですから」
すると、古川は錬に渡した資料を抱え自分の机の方にまっしぐらで進んだ。そしていつも以上のスピードで処理し始めた。錬はとりあえず自分の席に戻り、昨日の残っている仕事をこなした。そうしてディスクワークを続け、時刻は昼過ぎになっていた。
「加藤、昼休み入りまーす」
そう言って錬は布に包まれたお弁当箱を持って屋上を目指した。屋上には先客がいた。
「錬、お前か」
「山田先輩……」
「どうだ、慣れてきたか?」
「おかげさまで。何事も無くここまで来ていますからね」
お弁当箱を取り出しながら錬は答えた。弁当の中身は彩り豊かで栄養バランスもしっかり考えられている健康的なメニューだった。その味は素材の本来の味を殺さずに引き立てている。錬は、これがあるから嫌な仕事が重なっても頑張れている。そう実感していた。
「そう言えば……4年前、錬はどうやって乗り越えた?」
「そうですね、友人と逃げたり、立てこもったり……しましたね」
彼は絶対に友人の名前を出さなかった。それだけのことを彼の友人はしたのだから。
「そうか、でもさ、無事に生き残れて俺は良かったと思っている」
「そうですね。俺達は幸運に恵まれていたのかもしれませんね」
そう言って2人は笑った、その笑顔は嘘偽り無かった。
「さて、俺は仕事に戻るから。お前も時間は守れよ」
「わかってますよ」
亮斗は飲み干した空き缶を捨て、屋上をあとにした。錬は変わらず自分のペースで食事を続けた。その時、彼のスマホにメールが来たことを示す音楽が流れた。仕事の予定かと思い、錬は直ぐに確認した。
「……フッ。絶対来るんだろうな」
彼は左手でスマホをスリープモードに切り替える。その彼の左手の薬指には銀色に輝くリングがあった。彼は順調に順風満帆な人生を送り始めていた。
はい、作者です。今回から大人に成長したメンバー達を少し書いていこうと思いました。本来は前回が最終回だったんですけどね(笑)
このまま行きますと、全31話で終わりそうです。キリがわるいなと素直に思いました(笑)
まあ、しょうがないですね。