書士隊活動録   作:まさ(GPB)

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2017年1月5日に王立古生物書士隊botが5周年を迎えます。
そこで新たに、書士隊の活動をオムニバス形式で書く事にしました。

第一弾はbotに登場しない小説オリジナルのアリシアさん。
アリシア編は4話ほどの予定です。


アリシア編
1 ―長い一日の始まり―


砂原(すなはら)(昼)・エリア4―

 

「――気を付けろよ?」

心配そうな声音で私にそう言う兄さん。

「ガンナーである私に、ボルボロスは相性のいい相手ですよ?」

「フッ、そうだったな。それじゃあ、行くか!」

「はい!」

岩陰から飛び出した兄さんはドスジャギィへ向かい、私もアイシクルボウⅡに矢をつがえて弓弦を最大まで引き絞ります。

「さぁ、こっちに来なさい!」

兄さんがドスジャギィに攻撃すると同時に、私もボルボロスの背後から矢を()っていきます。

 

乾燥した大地に僅かに吹く風と体力を奪う強烈な日差し。

ボルボロスの狩猟と砂原の調査依頼を受けて、私たち兄妹は砂原に来ています。

この日は忘れられない程、とても長い一日になりました。

 

申し遅れました。

私はアリシア。砂漠の街ロックラックを主な活動拠点とするハンターであり、それと同時に王立書士隊の一員でもあります。

兄のカイルは書士隊員ではなくただのハンターですが、たまに私の仕事を手伝ってくれます。兄さん大好き。

……コホン。今回の依頼は書士隊としての仕事の一環で、砂原近辺に中型・大型モンスターが複数確認されたと報告がありました。そこで調査を兼ねたボルボロスの狩猟依頼が出されました。

この報告があったのは今朝の事です。

 

× × ×

 

―ロックラック・ゲストハウス―

 

まだ日が昇りきっていない早朝、私はハンターズギルドに呼ばれ、ギルドマスターから依頼を受けました。

準備のためにギルドから戻ると、丁度そこへ兄さんが起きてきます。

「兄さん、おはようございます」

「あぁ、おはようアリシア。こんな早くにどうしたんだ?」

「はい。ここ最近、砂原で大型モンスターの目撃報告が多く挙がっているのですが、先程その砂原での狩猟依頼を受けてきました」

「確か……モンスター達が活発になって縄張り争いが頻発してるとかで、狩猟環境がかなり不安定になってるんだよな?」

朝食を食べながら兄さんが聞いてきます。……なんだかいつもより食べるのが早い様な?

「……ええ、そうです。そこで現地調査を兼ねたモンスターの狩猟を、ギルドマスターから頂きました」

「なるほど、直々にアリシアが指名された訳だ」

兄さん?

「何だアリシア、行かないのか?」

「もちろん行きますが……いえ、それよりも兄さん。なぜ狩りの準備をしてるのですか?」

「俺も行くからに決まっているだろう?」

あぁやっぱり……。最初から誘うつもりではありましたけど。

そう言って兄さんは、ここロックラックで作った愛用の防具、レウスGシリーズを着始めました。

現在では滅多に見る事がない“G”を冠された防具。レウスシリーズに強化を重ね、上位のリオレウスを狩猟した証でもあります。

「兄さん、いつも使ってるヒドゥンサーベル改が見当たりませんが、どうしたんですか?」

「それなら強化の為に工房に預けてある。そろそろ出来てるだろうから、今から取ってくるよ。酒場で待っててくれ」

そうして兄さんは工房へ。

私も早く準備に取り掛かりましょうか。

武具は以前バルバレに訪れた際に作った物で、武器はアイシクルボウⅡ、防具はジンオウSシリーズを装備します。

アイテムは出発前に、砂原の状況をギルドマスターに確認してから、必要な物を選びましょうか。

それでは、私は兄さんを待つためにギルドの酒場へ向かいます。

 

     ◇

 

―ロックラック・ハンターズギルド―

 

まだ人が少ない酒場で兄さんを待っていると――

「あれ、アリシアちゃん?」

と、聞き覚えのある男性の声が。

「あなたは確か……兄さんのご友人の……ガルフさん、でしたね?」

「覚えててくれたのか! いやぁ、嬉しいねぇ!」

声の主は兄さんの友人であるガルフさん。ハンマーを扱う上位ハンターです。

以前、兄さんの狩りに同行した時にガルフさんもご一緒だったのですが、凄く目立ってましたね。煩くて。

「兄さんのご友人の中で、ガルフさんほど賑やかな方はいませんから」

「そうかそうか! はっはっは!!!」

朝から煩いです。静かにしてください。まだ寝てる人だっているんですよ? ほら、受付嬢もこっちを睨んでるじゃないですか。

「それはそうと、アリシアちゃんは今からカイルと狩りかい?」

「……はい、そうです。まさか、ガルフさんも一緒に行きたいんですか?」

「いやぁ、ホントは一緒に行きたいんだけど、実はさっき狩りから戻ってきたばかりなんだよ」

なるほど、夜の狩りで余計にハイテンションだったんですね。

「なら今からお休みになるんですね」

「そう言う事。もう眠くて眠くて……ふぁぁぁ~」

今にも寝そうですね。早く帰って寝ればいいのに。

「……大丈夫ですか?」

「そろそろ限界かも……。じゃあ俺は帰るよ……おやすみ~。くぁぁぁ~」

「はい、おやすみなさい」

ガルフさんはふらついた足取りで、宿屋通りの方へと消えていきます。

……極限の睡魔は、煩い人も静かにさせる。良い事ですね。

 

ガルフさんと別れ、暫く待っていると兄さんが工房の方から出てきました。

「すまない、また待たせたな」

「いいえ、大丈夫ですよ。武器の強化は無事に済んだんですね」

「あぁ。夜刀(やとう)月影(つきかげ)】、素晴らしい業物だ」

自慢げな声で強化したばかりの太刀を見せてくれる兄さん。こういう所は少年のようで、少し可愛いです。

各工房の情報共有や技術の向上によって、現在はこのロックラックでも、他の街のような武器が出来るようになりました。

それでも街の工房や村の加工屋によって、武具の性能に僅かな差が出たりします。なのでハンター達は各地の街などへ行って、自分に合った装備を作る訳です。

今でも職人に頼めば、そこでしか出来ない武具を作ってくれます。最近はロックラックでしか作れない装備も珍しいんですよ。

例えば、今近くのテーブルに座っているハンターが装備しているスラッシュアックス、ディーブレイク援。ロックラックではディーエッジから強化する際に攻、援、輝の3種類が選べます。

攻は攻撃力が高く、援は装飾品のスロットが多く、輝は会心の一撃が出やすい。と、他では見られない強化が出来るのです。最終的には、天か剛の2種類しか選べませんが。

他にも、ガンナーの武器では組み立て式ボウガンとミドルボウガンですね。どちらもロックラックでしか作れません。

防具は兄さんが装備しているようなG防具。今ではタンジアやドンドルマで見られるS防具やU防具もありますが、G防具も強化で作る事が出来ます。

私もこのジンオウSシリーズを作る前はレイアGシリーズでしたが、その話はまた別の機会に。

「その太刀の性能は砂原で存分に発揮して頂きます。では兄さん、そろそろ」

「そうだな。では早速――」

「ギルドマスターから現在の砂原の状況を聞きます」

「……そう言う事は先に言ってくれ」

出鼻を挫かれてガッカリしてる兄さん。意外と良いですね……。

 

「おぉアリシア殿。それにカイル殿もご一緒ですか」

ギルドの受付カウンターに向かうと、ギルドマスターが私達に気付いて声をかけました。

「はい。これから砂原に出発します。そこで現在の状況を伺いたく」

「うむ、依頼目的の土砂竜(どしゃりゅう)はまだ砂原におりますが、付近で狗竜(くりゅう)のボスと群れを確認したようですな」

「日が昇って、巣から出てきた訳ですね」

「昨晩までは雌火竜(めすかりゅう)も確認されとりましたが、既に砂原を離れた様子。戻ってくる事もないでしょう」

「気が変わったのか、(ある)いは別の理由か……」

考えるように兄さんが言います。

「リオレイアが砂原を去った理由は、現地に行ってみないと分かりませんね」

「……そうだな」

するとギルドマスターがもう一つ、気掛かりな事があると言いました。

「砂原の近辺で竜巻を目撃した、という話も上がってきておりますな。まだ正確な情報ではありませぬが、お気を付けて」

「分かりました」

ギルドマスターから砂原の状況を聞き終えると、私が先に受けていた依頼書に兄さんの名前を書き加え、持っていくアイテムの準備に掛かります。

普段のアイテムに加え、消散剤やクーラードリンク、念の為にホットドリンクもポーチに。目標はボルボロスの狩猟ですが、調査がメインの依頼なので、夜までかかる可能性もありますからね。

「兄さんもホットドリンクを忘れないで下さいね」

「ああ、分かった」

この他にも、アイシクルボウⅡに装着出来るビンを専用ポーチに、調合用の空きビンと材料も持ちます。

罠や爆弾は使わなかった場合、不要な荷物になるので今回は置いていきましょう。

「準備出来たぞ」

「こちらも終わりました。それでは行きましょうか」

「よし」

互いに装備やアイテムの確認をして、砂上船の発着所へ。手続きをして、中型の砂上船に乗り込み、砂原に向けて出発します。

 

× × ×

 

―砂上船・甲板―

 

ロックラックを出発してから数時間。

すっかり日も昇り、強烈な日差しが私たちを襲い始めます。

「そろそろ砂原が見えてくる頃ですね」

「ああ……ん? アリシア、あれは何だ?」

「え?」

兄さんが不思議そうに見上げる方向に目をやると、飛竜らしき生物が見えました。

ギルドマスターの話では、リオレイアは砂原を離れ、戻ってくる様子もなかったはず。そう思いながら目を凝らすと、その飛び方からリオレイアではないのが判ります。

あの四足歩行の飛竜特有の飛び方は……。

「……ティガレックスか?」

兄さんはその飛竜をティガレックスだと判断したようです。

確かにティガレックスは、この砂原に現れる事があります。しかし、ティガレックスにしては飛び方が優雅と言いますか、しなやかと言いますか……。

(いず)れにせよ、まだかなり遠い為、あの飛竜が一体何なのかは判別出来ません。

「向こうは気付いていないみたいですね」

「ああ、このまま素通りしてくれれば良いんだがな」

……兄さん、あまりそういう事を言うのは止めて欲しいのですが。

 




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マシュマロ(感想などに):https://marshmallow-qa.com/masa_gpb
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