そこで新たに、書士隊の活動をオムニバス形式で書く事にしました。
第一弾はbotに登場しない小説オリジナルのアリシアさん。
アリシア編は4話ほどの予定です。
1 ―長い一日の始まり―
―
「――気を付けろよ?」
心配そうな声音で私にそう言う兄さん。
「ガンナーである私に、ボルボロスは相性のいい相手ですよ?」
「フッ、そうだったな。それじゃあ、行くか!」
「はい!」
岩陰から飛び出した兄さんはドスジャギィへ向かい、私もアイシクルボウⅡに矢をつがえて弓弦を最大まで引き絞ります。
「さぁ、こっちに来なさい!」
兄さんがドスジャギィに攻撃すると同時に、私もボルボロスの背後から矢を
乾燥した大地に僅かに吹く風と体力を奪う強烈な日差し。
ボルボロスの狩猟と砂原の調査依頼を受けて、私たち兄妹は砂原に来ています。
この日は忘れられない程、とても長い一日になりました。
申し遅れました。
私はアリシア。砂漠の街ロックラックを主な活動拠点とするハンターであり、それと同時に王立書士隊の一員でもあります。
兄のカイルは書士隊員ではなくただのハンターですが、たまに私の仕事を手伝ってくれます。兄さん大好き。
……コホン。今回の依頼は書士隊としての仕事の一環で、砂原近辺に中型・大型モンスターが複数確認されたと報告がありました。そこで調査を兼ねたボルボロスの狩猟依頼が出されました。
この報告があったのは今朝の事です。
× × ×
―ロックラック・ゲストハウス―
まだ日が昇りきっていない早朝、私はハンターズギルドに呼ばれ、ギルドマスターから依頼を受けました。
準備のためにギルドから戻ると、丁度そこへ兄さんが起きてきます。
「兄さん、おはようございます」
「あぁ、おはようアリシア。こんな早くにどうしたんだ?」
「はい。ここ最近、砂原で大型モンスターの目撃報告が多く挙がっているのですが、先程その砂原での狩猟依頼を受けてきました」
「確か……モンスター達が活発になって縄張り争いが頻発してるとかで、狩猟環境がかなり不安定になってるんだよな?」
朝食を食べながら兄さんが聞いてきます。……なんだかいつもより食べるのが早い様な?
「……ええ、そうです。そこで現地調査を兼ねたモンスターの狩猟を、ギルドマスターから頂きました」
「なるほど、直々にアリシアが指名された訳だ」
兄さん?
「何だアリシア、行かないのか?」
「もちろん行きますが……いえ、それよりも兄さん。なぜ狩りの準備をしてるのですか?」
「俺も行くからに決まっているだろう?」
あぁやっぱり……。最初から誘うつもりではありましたけど。
そう言って兄さんは、ここロックラックで作った愛用の防具、レウスGシリーズを着始めました。
現在では滅多に見る事がない“G”を冠された防具。レウスシリーズに強化を重ね、上位のリオレウスを狩猟した証でもあります。
「兄さん、いつも使ってるヒドゥンサーベル改が見当たりませんが、どうしたんですか?」
「それなら強化の為に工房に預けてある。そろそろ出来てるだろうから、今から取ってくるよ。酒場で待っててくれ」
そうして兄さんは工房へ。
私も早く準備に取り掛かりましょうか。
武具は以前バルバレに訪れた際に作った物で、武器はアイシクルボウⅡ、防具はジンオウSシリーズを装備します。
アイテムは出発前に、砂原の状況をギルドマスターに確認してから、必要な物を選びましょうか。
それでは、私は兄さんを待つためにギルドの酒場へ向かいます。
◇
―ロックラック・ハンターズギルド―
まだ人が少ない酒場で兄さんを待っていると――
「あれ、アリシアちゃん?」
と、聞き覚えのある男性の声が。
「あなたは確か……兄さんのご友人の……ガルフさん、でしたね?」
「覚えててくれたのか! いやぁ、嬉しいねぇ!」
声の主は兄さんの友人であるガルフさん。ハンマーを扱う上位ハンターです。
以前、兄さんの狩りに同行した時にガルフさんもご一緒だったのですが、凄く目立ってましたね。煩くて。
「兄さんのご友人の中で、ガルフさんほど賑やかな方はいませんから」
「そうかそうか! はっはっは!!!」
朝から煩いです。静かにしてください。まだ寝てる人だっているんですよ? ほら、受付嬢もこっちを睨んでるじゃないですか。
「それはそうと、アリシアちゃんは今からカイルと狩りかい?」
「……はい、そうです。まさか、ガルフさんも一緒に行きたいんですか?」
「いやぁ、ホントは一緒に行きたいんだけど、実はさっき狩りから戻ってきたばかりなんだよ」
なるほど、夜の狩りで余計にハイテンションだったんですね。
「なら今からお休みになるんですね」
「そう言う事。もう眠くて眠くて……ふぁぁぁ~」
今にも寝そうですね。早く帰って寝ればいいのに。
「……大丈夫ですか?」
「そろそろ限界かも……。じゃあ俺は帰るよ……おやすみ~。くぁぁぁ~」
「はい、おやすみなさい」
ガルフさんはふらついた足取りで、宿屋通りの方へと消えていきます。
……極限の睡魔は、煩い人も静かにさせる。良い事ですね。
ガルフさんと別れ、暫く待っていると兄さんが工房の方から出てきました。
「すまない、また待たせたな」
「いいえ、大丈夫ですよ。武器の強化は無事に済んだんですね」
「あぁ。
自慢げな声で強化したばかりの太刀を見せてくれる兄さん。こういう所は少年のようで、少し可愛いです。
各工房の情報共有や技術の向上によって、現在はこのロックラックでも、他の街のような武器が出来るようになりました。
それでも街の工房や村の加工屋によって、武具の性能に僅かな差が出たりします。なのでハンター達は各地の街などへ行って、自分に合った装備を作る訳です。
今でも職人に頼めば、そこでしか出来ない武具を作ってくれます。最近はロックラックでしか作れない装備も珍しいんですよ。
例えば、今近くのテーブルに座っているハンターが装備しているスラッシュアックス、ディーブレイク援。ロックラックではディーエッジから強化する際に攻、援、輝の3種類が選べます。
攻は攻撃力が高く、援は装飾品のスロットが多く、輝は会心の一撃が出やすい。と、他では見られない強化が出来るのです。最終的には、天か剛の2種類しか選べませんが。
他にも、ガンナーの武器では組み立て式ボウガンとミドルボウガンですね。どちらもロックラックでしか作れません。
防具は兄さんが装備しているようなG防具。今ではタンジアやドンドルマで見られるS防具やU防具もありますが、G防具も強化で作る事が出来ます。
私もこのジンオウSシリーズを作る前はレイアGシリーズでしたが、その話はまた別の機会に。
「その太刀の性能は砂原で存分に発揮して頂きます。では兄さん、そろそろ」
「そうだな。では早速――」
「ギルドマスターから現在の砂原の状況を聞きます」
「……そう言う事は先に言ってくれ」
出鼻を挫かれてガッカリしてる兄さん。意外と良いですね……。
「おぉアリシア殿。それにカイル殿もご一緒ですか」
ギルドの受付カウンターに向かうと、ギルドマスターが私達に気付いて声をかけました。
「はい。これから砂原に出発します。そこで現在の状況を伺いたく」
「うむ、依頼目的の
「日が昇って、巣から出てきた訳ですね」
「昨晩までは
「気が変わったのか、
考えるように兄さんが言います。
「リオレイアが砂原を去った理由は、現地に行ってみないと分かりませんね」
「……そうだな」
するとギルドマスターがもう一つ、気掛かりな事があると言いました。
「砂原の近辺で竜巻を目撃した、という話も上がってきておりますな。まだ正確な情報ではありませぬが、お気を付けて」
「分かりました」
ギルドマスターから砂原の状況を聞き終えると、私が先に受けていた依頼書に兄さんの名前を書き加え、持っていくアイテムの準備に掛かります。
普段のアイテムに加え、消散剤やクーラードリンク、念の為にホットドリンクもポーチに。目標はボルボロスの狩猟ですが、調査がメインの依頼なので、夜までかかる可能性もありますからね。
「兄さんもホットドリンクを忘れないで下さいね」
「ああ、分かった」
この他にも、アイシクルボウⅡに装着出来るビンを専用ポーチに、調合用の空きビンと材料も持ちます。
罠や爆弾は使わなかった場合、不要な荷物になるので今回は置いていきましょう。
「準備出来たぞ」
「こちらも終わりました。それでは行きましょうか」
「よし」
互いに装備やアイテムの確認をして、砂上船の発着所へ。手続きをして、中型の砂上船に乗り込み、砂原に向けて出発します。
× × ×
―砂上船・甲板―
ロックラックを出発してから数時間。
すっかり日も昇り、強烈な日差しが私たちを襲い始めます。
「そろそろ砂原が見えてくる頃ですね」
「ああ……ん? アリシア、あれは何だ?」
「え?」
兄さんが不思議そうに見上げる方向に目をやると、飛竜らしき生物が見えました。
ギルドマスターの話では、リオレイアは砂原を離れ、戻ってくる様子もなかったはず。そう思いながら目を凝らすと、その飛び方からリオレイアではないのが判ります。
あの四足歩行の飛竜特有の飛び方は……。
「……ティガレックスか?」
兄さんはその飛竜をティガレックスだと判断したようです。
確かにティガレックスは、この砂原に現れる事があります。しかし、ティガレックスにしては飛び方が優雅と言いますか、しなやかと言いますか……。
「向こうは気付いていないみたいですね」
「ああ、このまま素通りしてくれれば良いんだがな」
……兄さん、あまりそういう事を言うのは止めて欲しいのですが。