当初4話の予定でしたが、長くなりそうなので何話で終わるかは未定になりました。
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「もうすぐ拠点だな」
無事に砂上船を降りた私達は、砂原の拠点へ。
「恐らく支給品はまだ届いていないでしょう。なので、ベッドの確認のみをして、ボルボロスの縄張りに向かいます」
「先に調査しないのか?」
「はい。今回は調査も依頼に入っていますが、まずはボルボロスを狩ります。調査はその後で、ゆっくりとしましょう」
兄さんの分も含めてクーラードリンクがあるとは言え、この暑さの中を歩き回って、体力を消耗した状態でボルボロスと対峙するのは避けたいです。ドスジャギィと
「そうか……。ま、俺としては
……そんなに目をキラキラさせながら言わなくても。
兄さんは
そうこうしてる間に、拠点に着きました。
兄さんに仮眠用ベッドの確認を任せ、私は支給品ボックスを覗きます。思った通り、中に支給品はありませんでした。辛うじて、砂原の地図が幾つか入っている程度です。
「やはりありませんね」
「ある方が珍しい。いつも遅れて来るからな」
「仕方ありませんよ」
支給品が遅れてくるには理由があります。
まず上位クエストのほとんどは、今回のような緊急の依頼がほとんどです。当然、危険性が高いのも多いですね。
その為、ギルドの準備が整う前にハンターが出発するので、結果的にクエスト開始までに支給品が届かない、と言う訳です。今回はギルドマスターからの依頼なので、少し期待はしていましたが……。
他にも、運んでいる最中にモンスターに襲われて遅れる、又は届かない事もあります。こちらは自然が相手なので、文句は言えません。護衛のハンターを雇うと言っても難しいでしょうし。
無い物を
「兄さん、ベッドの方はどうですか?」
「少し砂が掛かってはいたが、問題なしだ。いつでも行ける」
兄さんもベッドの確認が終わったようなので、予定通りボルボロスの縄張り――エリア3の泥沼を目指します。
◇
―砂原(昼)・エリア3―
北西部に砂漠地帯が広がる砂原は、昼は強烈な日差しによる暑さが、夜は吹き荒れる砂嵐と寒さが襲い掛かります。
しかしこのエリア3を含む東側は、ドリンクが必要なほど気温差は激しくありません。その為、ここには植物や水が僅かながら存在し、草食種のモンスターも生息しています。
「何だ、アプトノスがいるだけか?」
「エリア1にリノプロス、エリア2にはアイルー。ここまでは、いつのも砂原と変わりませんね」
周りを警戒しながら、泥沼へと近付いていきます。どうやら、目的のボルボロスはいないようですね。
普段は泥沼の中に潜っているのですが、その際に呼吸を冠状の頭殻上部にある
しかしここに居ないと言う事は、恐らくエリア4かエリア8で餌となるオルタロスを捕食しているかも知れません。
「どうする?」
「ここで待ち続ける訳にもいきませんし、一度エリア4に向かってみましょう」
と、泥沼を出てエリア4へ向かおうとした瞬間、地鳴りと共に地中から土砂竜がその姿を現しました。
「向こうからお出ましだぞ」
「そのようですね……行きます!」
兄さんはペイントボールを取り出し、気付かれない様にボルボロスの背後へと走って行きます。私は注意を引く為、アイシクルボウⅡに矢をつがえ前方に回ります。
こちらに気付いた土砂竜は泥沼の近くにいる私を、自分の縄張りに侵入した外敵と判断したようで、対峙した私に
すかさずアイシクルボウⅡの矢を放ちます。その矢が命中すると同時に、ボルボロスは二度地面を蹴って大きく
「くっ……!」
耳をつんざくモンスターの咆哮によって、呼び覚まされる人間の本能。これは何度狩りに出ても、慣れる事はありませんね……。
兄さんの方は、身体を前へ投げ出す様に跳び、地面に激突した衝撃で身体の硬直を防いだようです。
素早く起き上がり、手にしていたペイントボールを投げると同時に、
右脚を斬られたボルボロスは私に向かってくる事は無く、首を動かして自分の脚を斬りつけた存在を確認すると、
その間に硬直から立ち直った私は、アイシクルボウⅡに五本の矢をつがえ土砂竜の側面へ。
「そこです!」
熱が苦手な土砂竜は泥沼に潜んだり身体に泥を纏う事で、強烈な日差しからその身を守っているのですが、これが中々に厄介ですね。
身体を揺すって付着している泥を飛ばしてくる攻撃もそうですが、この泥はボルボロスが苦手とする熱を遮断します。つまり弱点である火属性の攻撃はあまり効果がありません。
なら泥を落とすにはどうすれば良いのか?それは水が一番です。水属性の攻撃であれば、土砂竜が纏う泥を素早く落とす事が出来ます。しかし逆に、ボルボロスは水への耐性が高く、有効なダメージにはなりません。
毒や麻痺といった、状態異常を引き起こす武器で攻撃してもいいですが、彼らはそれにも慣れて耐性が付いていきますね。
そこで、ハンター達と王立書士隊員の調査と検証によって判明したのが、氷属性による攻撃でした。これによって泥を纏っていてもいなくても、安定してダメージを与える事が可能になったと言う訳です。
横から攻撃をされたボルボロスはこちらを向き、小さく頭を振り上げる動作を見せます。
「――っ!」
それを見た私は、地面を蹴って後ろへと飛び退くとそれと同時に、土砂竜が勢いよく振り下ろした頭殻は地面へと叩きつけられ、上部に付着していた泥が周囲に飛び散りました。
ボルボロスが私に気を取られている隙に、兄さんは再び背後に回り込んで尻尾を攻撃。二回振り下ろした後、刃を横にして土砂竜の右脚に突きを、そして下からすくう様に切り上げます。
私と兄さんの挟み撃ちを受けるボルボロスは
「兄さん、離れて下さい!」
「了解だ……うおっ!?」
兄さんは太刀を左に払う様に斬りながら、右側へ飛び退いた。その目の前に、撒き散らされた泥が降ってきました。
「兄さん!」
「……大丈夫だ。少し危なかったがな」
幸い泥は被らずに済んだようですね……。
それを確認した私はアイテムポーチから麻痺ビンを取り出して、アイシクルボウⅡに装着。そして弓を上に向け、矢を放ちます。
空に向けて放った矢はボルボロスの頭上に到達すると、小さな破裂音と共に複数に炸裂、そのまま土砂竜へ降り注ぎます。しかしこれだけでは、麻痺させる事は出来ません。
「アリシア、
「麻痺ビンです。ボルボロスの動きを止めます」
「分かった」
言葉を交わしつつも、互いにボルボロスから目は離しません。
土砂竜は私達が泥を受けていないのを認識したのか、威嚇行動をしてきます。
「はあッ!」
その隙に兄さんが背後から再び斬撃。一撃では終わらず、流れる様な動作で二撃、三撃と繰り出していきます。私もつがえた五本の矢で攻撃。
しかし、ボルボロスもただやられている訳はありません。背後から攻撃する外敵を追い払う為、その場で巨体を回転させて、長い尻尾を振り回します。
「ぐッ……」
ちょうど太刀を振り下ろす瞬間だった兄さんは、その尻尾を回避する事が出来ずに、殴打されて地面に叩きつけられる様に飛ばされました。
私は尻尾が届かない範囲から矢を二射、三射と立て続けに放ちます。
「そろそろですね」
私が呟いたそれと同時に、ボルボロスがこちらへ噛みつこうと迫ってきます。が、これを土砂竜の懐に飛び込む形で回避。一瞬で矢をつがえ、振り向きざまにボルボロスを
「兄さん、今です!」
「ああッ!」
土砂竜の身体が麻痺で動けなくなったのを確認した私は、アイシクルボウⅡに装着している麻痺ビンを強撃ビンへと切り替えます。
その間に、尻尾の一撃を受けていた兄さんもすぐに立ち上がって、麻痺で動けないボルボロスに斬りかかります。そして兄さんの太刀に変化が。
ハンターが扱う武器の中には通常の物とは他に、特殊な機能を持つ物が幾つか存在します。その多くが、元となったモンスターの特徴、特性を現しています。
兄さんの扱う太刀――夜刀【月影】は、
更にこの太刀最大の特徴は、隠された刃が存在し、それがある条件によって出現する機構ですね。その条件とは、攻撃する事で“気”を練る事。今兄さんが振るっている夜刀【月影】は、隠されていた刃が、その姿を見せています。
つまり、それは兄さんの気が極限まで練られたと言う訳です。
そして、ここまで練った気をより高める事で、遂に太刀の真価が発揮されます。
「うおぉぉぉッ!」
兄さんは雄叫びを上げながら、夜刀【月影】を右上から大きく振り、ボルボロスを切り裂きます。素早く刃を返し、今度は左から斬撃。
更に太刀の速度を上げて再び右左から斬り、そして夜刀【月影】を真上に構えると、全身の力を込めて叩きつけるように振り下ろしていきます。
太刀を極めたハンターのみが扱える奥義、気刃斬り。
最高にまで高めた練気を刀身に乗せる斬撃は、通常では弾かれてしまう程の甲殻すら、気にせず攻撃出来る技です。
――しかし、これで終わりではありません。
地面に叩きつけた事で土煙を上げる夜刀【月影】。それを僅かに持ち上げたかと思うと、瞬時に刀身を横にして、兄さんは踏み込みながら身体を一回転させます。
「はぁッ!!!」
そして周囲を薙ぎ払う様にして、太刀で大きく横一文字に、鋭くボルボロスを切り裂いていきます。
気刃斬りをも極めた者だけが会得出来る、太刀使い究極の秘奥義――気刃大回転斬り。その一撃は通常の攻撃はもちろん、気刃斬りよりも素早く斬撃を繰り出します。
しかしその攻撃速度の為に、気刃大回転斬りをした後はもう一度身体を回転させて、勢いを相殺させなければなりません。これが隙となる故に、こうしてモンスターを拘束するなどして動きを止めている間でなければ、なかなか使うタイミングも無いようです。
気刃大回転斬りを当てた兄さんは土砂竜を背後にして、身体を回転させながら夜刀【月影】を鞘に納めます。――いつ見ても、この時の兄さんは
私もただ見惚れているだけではありませんよ?
兄さんが気刃斬り、気刃大回転斬りでボルボロスを攻撃していた最中、私も強撃ビンを装着したアイシクルボウⅡに矢をつがえ、兄さんに矢が当たらない場所を狙い射っていきます。
一気に畳み掛けた事で、土砂竜が纏っていた泥はそのほとんどが剥がれ落ち、茶褐色の甲殻がその姿を見せています。
「まだ頭の泥が残っていますが、時間切れみたいですね……」
麻痺の効果が切れ、動けなくなっていたボルボロスがこちらに振り向きました。
私達を再び視界に捉えた土砂竜は、地面を二度蹴って大きく咆哮。
「ぅ……!」
「ぐッ!」
ボルボロスの頭殻にある鼻孔からは、興奮で荒くなった鼻息が蒸気の様に吹き出しているのが分かります。それは怒り状態になったサイン。
さて、本番はここからですね……!