書士隊活動録   作:まさ(GPB)

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前回に引き続き一年弱振りの更新になってしまいました。(ちなみに今月でTwitterの王立古生物書士隊botが稼働して8年になります)


5 ―新たな影―

砂原(すなはら)(昼)・エリア8―

 

エリア4からこのエリア8へと逃げてきたボルボロスは、エリア中央にあるアリ塚の一つを破壊して、中にいたオルタロスを捕食(ほしょく)していました。

「なんとも無防備だな」

「今のうちに一気に仕掛けます」

「了解だ」

そう兄さんと交わして、それぞれ動きます。

兄さんは納刀(のうとう)していた夜刀(やとう)月影(つきかげ)】の(つか)に手をやりながら走って行き、私はその後ろでアイシクルボウⅡを展開させます。

ボルボロスは食事に夢中で、まだ私達には気付いていません。

「はぁッ!」

兄さんが無防備な土砂竜(どしゃりゅう)の後ろ脚を一閃。続けて私はアイシクルボウⅡの矢を放っていきます。しばらくオルタロスを捕食し続けていたボルボロスでしたが、何度か攻撃を与えてる内に私達に意識が向けられました。

振り向いた土砂竜は頭殻の鼻孔(びこう)から鼻息を噴くと、()を置かずに二度地を蹴って咆哮(ほうこう)

「ぐっ……!」

「っ……!」

そこからボルボロスは、目の前で動きが止まっている兄さんへ前に出ながら噛みつこうとします。なんとか兄さんはそれをかわしますが、続けて土砂竜は冠状の頭殻で叩き潰そうと振り下ろしてきました。

「おわっ!」

迫りくる頭殻から転がって避けるのを見た私は、ボルボロスへと曲射を行って注意を向けさせます。

「こっちです」

土砂竜の頭上から()った矢の数々の破片が降り注ぐと、ダメージに耐え切れなかったのか大きく()()りました。

それを見た兄さんも、すぐにボルボロスの懐に飛び込んで抜刀します。

「おおぉぉぉぉッ!!!!」

と同時に、肉質が柔らかい部分へ気刃斬りを叩き込むと、更にその流れを止めずに気刃大回転斬りを繰り出しました。

兄さんが斬り抜けながら反動を利用して納刀。ボルボロスは一度倒れて再び立ち上がろうとしましたが、力ない鳴き声を上げると共に砂原の地に倒れて完全に動かなくなりました。

 

「……どうやら終わったようだな」

「ええ、そのようですね」

息絶えたボルボロスに、私もアイシクルボウⅡを背中に収めながら近付いて行きます。

「剥ぎ取りは?」

「甲殻と背甲、それと爪をそれぞれ一つずつにします」

「分かった」

取り過ぎないように注意しながら専用のナイフで土砂竜から素材を剥ぎ取ります。これはそのモンスターを狩猟した事を示す証としても必要ですね。

兄さんと二人で堅殻と堅甲を二つずつと甲殻を一つ、それと鋭爪をボルボロスから剥ぎ取って後は残します。

「兄さん、周囲の警戒をお願いします」

いつものやつ(・・・・・・)だな、了解」

兄さんが土砂竜から少し離れて警戒している間に、私はボルボロスの頭部の方へと歩いて行きます。そしてその頭殻に手を当てて目を閉じ、

「お疲れ様、ゆっくりお休みなさい」

と言葉をかけて離れました。

「兄さん、太刀の手入れはしなくて大丈夫ですか?」

「ああ、さっきやったばかりだからな。それに、ボルボロス以外の狩猟はしなくてもいいんだろう?」

「まだ分かりません。先程のドスジャギィのように、他にも大型モンスターがいる可能性もあります。状況によってはまた複数のモンスターと対峙するかもしれません」

ギルドマスターの話によれば、昨晩まではここには雌火竜(めすかりゅう)もいたようですし、他にもこの砂原の周辺では竜巻の目撃情報もあります。

――まさかとは思いますが……。

「ま、その時はその時だ。なんとかなるだろう」

そう言いながら兄さんは笑いました。

「……とにかく、長く時間をかける訳にも行きません。クーラードリンクの効果が出ている間に、エリア9とエリア10の調査に向かいましょう」

「よし、分かった!」

 

× × ×

 

―砂原(昼)・エリア9―

 

砂原の西部に広がる広大な砂漠地帯、その北側に存在するエリア9。

ここは一面が砂だらけですが、最北端には大きなサボテンや火薬草といった植物が自生しており、そこで草食モンスターが度々(たびたび)食事をしているのが確認されていますね。

他にも、エリア8から続くこの道を抜けてすぐ左――エリア9の南東には巨大な石柱も存在しています。

「いるのは……デルクスとジャギィくらいか?」

「大型モンスターが地中に潜っているかもしれないので注意していきましょう」

「ふむ、そうだな」

モンスターの中には地中に潜って生活する者や、移動する者が存在します。先程まで戦っていたボルボロスは勿論、この砂原では角竜(かくりゅう)ディアブロスや(せん)(こう)(りゅう)ハプルボッカが好例でしょう。

砂漠地帯に棲息するハプルボッカは背面を砂上に出して砂山に擬態しますが、注意深く観察すると鼻孔から出る鼻息で判別が可能です。しかしディアブロスの場合は潜行中、そこにいるという兆候がほとんど見られません。

両者とも音に敏感である為、爆弾や音爆弾を使えばいるかどうか確認出来ますが、今回は生憎(あいにく)持って来ていませんから確認も出来ませんね。

「モンスターに注意しつつ、まずはあのサボテンの確認に向かいましょう」

今し方例に挙げたディアブロスや、()()(りゅう)ドボルベルク亜種はその主食が草食である大型モンスターです。そこで先に彼らがいるかどうかを調べます。

「よし!」

 

植物が生えている場所に到達しました。周りやサボテンの状態を確認を見ていきます。

「どうなんだ?」

「……新しく食べられた形跡は見当たりません。少なくとも、角竜や尾斧竜はいないようですね」

「火薬草とかは()って行かなくていいのか?」

火薬草は発火作用を持つサボテンの一種です。その用途は様々で、小さなタルに詰めて小タル爆弾に出来る他、別のアイテムと調合する事で爆薬や火炎弾にして使用されます。

「まだそれなりに数はあったはずですが……そうですね、少しだけ頂いて行きましょうか」

「今生えてるのがこの数なら……3つか4つ程でいいか?」

「ええ、それ位で大丈夫ですね」

「よっしゃ」

採取する数を確認した兄さんは(かが)んで火薬草を採っていきます。

その間に私は再びエリア9を見渡して、デルクスやジャギィの様子を確認します。

――ジャギィ達はエリア5に続く通路の周囲から動く気配はなし。デルクス達の回遊コースは……ここからエリア10へ向かうのには問題なさそうですね。

「アリシア、こっちは終わったぞ」

「分かりました。では、これからエリア10に向かいます」

「もうここで他に見るところはないんだな?」

「大型モンスターの痕跡も見当たりませんからね。それに、まだクーラードリンクはあるとは言っても無駄には出来ません」

「それもそうだな……じゃあ行くか」

「ええ」

 

     ◇

 

―砂原(昼)・エリア10―

 

エリア9より南――狩場全体で見て南西側に位置するエリア10。

ここもエリア9同様に一面が砂漠で、その広さもほとんど同じ程です。エリアのほぼ中心に当たる場所には僅かながら植物が自生し、そこには様々な昆虫が集まってきます。

更にこのエリア10の西側に存在する崩れた石橋の跡から飛び降りる事でエリア11に行けますね。と言ってもこちらはエリア7にある通路も通じているので、そこから双方向で行き来が出来ますが。

棲息しているモンスターは先程のエリア9と同じくデルクスがいる他に、リノプロスの存在が確認されています。しかし今は数頭のデルクスしか見当たりません。

「少し待ってみましたが、地中から大型モンスターが出てくる気配もありませんね」

ここにもディアブロスやハプルボッカが地中に潜んでいる場合がありますが、現時点では彼らの姿は見られません。

「そうだな。デルクスも俺達に気付かずに遠くで泳いでるぐらいだ」

兄さんの言う通り、離れた場所で数頭いるデルクスが回遊していますが私達にはまだ気付いていないようです。デルクスが気付いて襲い掛かって来ないように注意しながら、エリアの中央部に歩いていきます。

 

中央部まで到着した私と兄さんは、周囲の状態を確認します。と言っても、兄さんがデルクスや他のモンスターが現れないか警戒をしている間に、私が調査をしているんですけどね。

幾つかの朽木がありますが、特に大型モンスターなどの痕跡や手掛かりになるようなものはありません。

「虫は採っていかなくていいのか?」

と、兄さんは近くに生えている植物を指さして聞いてきました。

ここでは、にが虫やセッチャクロアリなどと言った素材になる昆虫は勿論、ドスヘラクレスや王族カナブンなどの希少な昆虫も採取出来ます。ですが今は必要ないでしょう。

「今回は採らなくても大丈夫ですよ」

「そうか? なら、ここはもう調査する場所はそれ程ないか」

兄さんは周りを見渡しながらそう口にします。

――確かに西側の砂漠地帯は広い割に調査する地点も少ないですし、クーラードリンクがあると言ってもあまり長居する必要もありませんね。

「そうですね。では、ここから一度エリア11に降りて、それからエリア7の調査を――」

しましょう、と言おうとしたその瞬間、エリア外の南西方向からエリア8に向けて黒い影が私達の頭上を飛んで行くのが見えました。

「今のは……!?」

「恐らく飛竜種のモンスターですが、ちゃんとした姿の確認は出来ませんでしたね……」

暫くすると先程の影が降り立ったのか、エリア8からそのモンスターのものと思われる咆哮が轟いてきます。私も兄さんも、そのモンスターの咆哮に聞き覚えがありました。

「少し厄介なのが来たみたいだな」

「ギルドマスターから竜巻の目撃情報は聞いていましたが……」

「まさかこのタイミングで、その原因がやって来るとはなぁ」

兄さんが「どうする?」と聞くような様子で言います。

「……まだ砂原全体の調査も終わってませんが、このまま放置して途中で遭遇する方が面倒ですね。出来れば追い払うのを目的にして戦いましょう」

「分かった」

二人で武器やアイテムの状態を確認して、エリア8に続く道に向かいます。

――太陽の位置はまだ高い。本当に長い一日になりそうです。

 




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