これは夢だと、自覚できる時がある。
それは大抵の場合で夢の終わりかけでわかるのだけれど、たったひとつだけ、私がもっとも多く見て最初から夢だと自覚できる夢がある。
その夢で私は、仄かに暖かい何かに包まれていて、そのナニカは私を優しく撫でてくれている。少しだけ目を開けば、広がっているのは錆び付いたりボロボロになり、それでも地面に突き刺さっている剣や刀、あるいは槍や古式のライフルなど―――おおよそ、武器といわれるだろう全てと、しかし全くその場にそぐわない金管楽器もそこにはある。
全くもっておかしいけれど、私はそれを確認した途端に、なぜだかものすごく眠気に襲われるのだ。夢のなかで眠気というのもおかしいが、そうとしか言い様のないものが私を襲い、私は暖かなナニカにもう一度包まれながら、眠り、そして
次に目覚めれば、そこはいつも通りの私の部屋なのだ。
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ふわぁ、と。止まることのないあくびを噛み殺しながら、彼女は家のポストに突っ込まれていた紙を引っ張り出す。
入っていたのは、新聞に隣からの回覧板、通販広告と胡散臭い悪魔召喚のチラシ。その内、悪魔召喚のチラシだけを家に入った途端にその場でクシャクシャに丸めてゴミ箱へと投げ捨てた。まぁ当然である。
そのままテーブルの上に残りを放り出して、彼女はソファーに転がった、が、途端にドタドタと階段を降りる音が響く。ちらりと時計を見れば、既に八時を回っている。思わずハァ、とため息をついて彼女はソファーから立ち上がり、
「アァリスぅーーっ!」
「あまり大きい声を出すとご近所に迷惑ですよ、姉様」
自分よりも遥かに小さく、しかし姉と敬愛する小さな少女を受け入れた。さすがに彼女が発した大声には一言注意をいれていたが。
てひひ、と笑いながらアリスと呼んだ
「わかっているわ、アリス。だからこそ声だけで済ませたんですもの。本当ならトランペットを吹きながら来ようかな、と思っていたのよ?」
「それは、その、本当に止めていただけると………」
そうならなくてよかった。いや、本気で。と胸を撫で下ろすアリス。無駄に広い日本家屋に住んでいる二人だが、近所に人が居ないわけではない。そして、彼女のトランペットは諸々の理由でとても響き渡るのだ。一度、彼女が堪えられなくなって吹いたときは、近所どころか街中に響き渡った位だ。吹かれなくて本当に良かった。
「まぁでも、そろそろ一回くらい吹きたいし、ちょっと出掛けようかしら?もしくはアリスで暇を潰すか………」
う~ん、悩むわ!とニコニコ顔でこちらをガン見するプルを見て、アリスは『あ、これはなんか企んでる』と察した。そして蘇るのは、姉に付き合わされた
あるときは曲を作らされ、つづいてそれをプルが演奏してアリスが歌ったものをネットに晒す、という本人にとっては羞恥プレイをさせられ、ある時は大富豪たちのお見合いパーティに事前情報もなしに放り込まれたりもした。
後者はパーティ自体ではなく婚約云々の話を断り、しかしダンスだけでもとせがまれ、軽く数人と踊って帰ってきたら姉がなぜかマジギレしており、それがトラウマになっているだけだが。
他にもいきなり『隕石落とすから頑張ってどうにかしてね?』と無茶振りされたり―――。
そんな思い出を噛み締めているアリスをジーっと見ていたプルは、何かに気づいたように突如目を輝かせる。同時に、アリスの背中に走る寒気。
「そうだわ、そうね、それが良いわ♪ああ、なぁんて素晴らしいんでしょう!」
一人で事故完結してうなぎ登りでハイテンションになるプルと、比例して悪寒が走り続けるアリス。ちょっと待ってくれと声をあげようと口を開き
「アリス!貴女は明日から
「……………ぇ?」
言われた台詞に理解が追い付かず、アリスは口を開いたまま呆けた。そんなアリスを見ながら、プルは続ける。
「そう、貴女は明日から駒王学園の二年生―――
アリス・P・アムドゥシアスよ!」
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