復讐者のプロッドが無くなってしまった……
なのでプロッド再構築の間、指を鈍らせない為に投稿します。
主人公は調律者シリーズの主人公の時雨。ですが本人では無くifの時雨です。
「ーーー生きて、笑いながら逝ってくれ。それが、私からお前に送る
「ーーー分かった。さようなら、母さん」
「あぁ元気でな、時雨」
母を殺した。
始まりは純粋だったのだろうが年月の経過により形骸化した正義を掲げて酔い痴れている
だって見ていられなかったから。片肺を潰された上で毒を打ち込まれて苦しみながら死ぬ母の姿を見たくなかったから。
母を殺して、復讐に走った。目標は
数億人にもなる大虐殺を迷わずに決行する。
時には素手で生きたまま解体し、
時には母から与えられた
時には無関係な人ごと爆薬で吹き飛ばし、
時には貯水池に毒を流し込み、
時には街に戦略兵器を叩き込み、
そうやって感情的に、ある意味機械的に淡々と殺して殺して殺し続けて、
そして最後に、遺伝子的な関係から見れば父に当たる男ーーー人間賛歌を謳う魔王、甘粕正彦と対峙した。そうなった理由はたった1つ、
甘粕は人間賛歌を謳う魔王、人々が困難に立ち向かう勇気を愛して止まないキチガイだ。だからそれを最前席で見る事ができる立ち位置ーーー人類の敵対者である魔王の席に進んで座った。そして魔王である自分に対抗する組織として
もっとも甘粕が関わったのが最初期だけで、それ以降はまったく干渉していないのでこの
だが、頭では理解しても感情が理解しない。
頭では理解しても魂が理解しない。
だから甘粕に挑んだ。規格外の異能である【意志の力】で生み出されるのは戦艦、核爆弾、水爆、衛星兵器。それに対してこちらは母から与えられた焔華が一振りと役に立たない異能、それと鍛え上げた肉体だけ。
何度死にかけたか覚えていない。そもそも死んでいたのかもしれない。本来なら勝機など微塵も無いはずだった戦い、自殺行為としか思えない戦いだった。
だがーーー勝った。
「ーーーえ?」
「ーーークハハッ!!よもや俺が敗れるとは……俺を討ったのが俺の継嗣とは、まったくクロノスのような結末では無いか」
信じられなかった、甘粕の心臓に焔華を突き立てている事が。甘粕は魔王を名乗るだけあってどれだけ過小評価したところで最強クラスの人間。対するこちらは甘粕の遺伝子を引いているとは思えない程の劣等だと言うのに。
「だが、まぁ、こんな結末も悪くは無い。死の恐怖に怯えながらも母の仇を討たんと勇気を震わせる貴様に敗れたのだならな……」
そう言いながら甘粕は頭を手荒く撫でてきた。まるで、父が子の頭を撫でるように。
「皐月原時雨、俺の息子よ。どうかその生を謳歌してくれ。老衰で果てる時に良き人生だったと笑いながら逝けるように。人は泣きながら生まれる故にな」
「……母さんと同じ事を言ってるぜ?」
「ゼロとか?クハハッ!!そうかそうか、それは…悪く無い……なぁ……」
そうして人類の敵対者であった魔王甘粕正彦は、母と同じ言葉を遺して死んだ。被っていた軍帽が落ちて満面の笑みを浮かべた死に顔が露わになる。
焔華を引き抜こうとして、その刀身が半ばから折れてしまった。甘粕によれば母と甘粕は浅くは無い仲だったらしく、こう言うこともあるんだなと思いながらそのままの状態で甘粕を埋葬した。
「……周りの奴らは人類悪だの何だの騒いでお前の事を毛嫌いしていたけど……俺はその生き方嫌いじゃなかった。おやすみ、
土と血で汚れた軍帽を被りながら、もう1人の親である甘粕に向かってそう言って立ち去った。
「ーーーよし、準備完了」
甘粕を倒してから半年。負った怪我が完治した事を確認してから旅の準備をしていた。
それは母と甘粕の遺言に従う為。2人はどうか笑いながら逝って欲しいと願っていた。だが今の自分は何もかもやる気が起きなかった。言ってしまえば燃え尽き症候群とかいうやつだろう。
だから世界を見て回る事にした。資源が取り尽くされて荒廃したこの世界を、この手で現文明を滅ぼしかけたこの世界を見て回る事で何かやりたいと思えることが見つかるかもしれないと思ったからだ。
このまま自殺しても良いのだがそうしたらきっとあの世で2人に何をしているんだと殴られるに違いない。だから、やりたいと思える事を見つけるための旅に出る事にしたのだ。
カバンに食料や着替えを詰め込み、腰に折れた焔華を下げ、黒いコートを羽織り甘粕の軍帽を被る。
準備は出来た。当ての無い旅を始めようとしたところで、目の前に一通の便箋が落ちてきた。思わず掴み取り、上を見るが飛行物は無く、落とした人間も辺りには見られない。それどころかその便箋の宛名には『皐月原時雨殿へ』と書かれていた。
『悩み多き異才を持つ若者に告げる。その
封を切って中身を確認すればそこにはそう書かれていた。
正直なところ、この手紙が何を言っているのかまったく分からない。辛うじて招待状らしき物だとはわかるがそれだけだ。
だが、
燃え尽き症候群だったはずなのに少しだけやる気が出てきた。
「良いぜ?どこの誰だか知らんが興味が湧いた。この招待に乗ってやるよ」
誰かが隠れて聞いているのかと思い、態々口に出して了解の意を示す。
ーーーすると次の瞬間には遥か上空、見たことの無い風景が広がる世界に飛ばされて急転直下を始めた。
「……呼び出し人ゼッテー〆る」
そのまま大地に落下して愉快なオブジェクトにでもなるかと思っていたが落下地点には湖があってそこに着水した。普通なら湖があっても愉快なオブジェクトになるはずなのだが緩衝材のような物があったおかげで全身水浸しで済んだ。
「ファック!!」
「……大丈夫?」
「し、信じられないわ!!まさか問答無用で引きずり込んだ挙句、空に放り出すなんて!!」
「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ」
悪態を吐きながら陸地に上がると他にも3人……正確には3人と猫一匹がいたらしく、同じように罵詈雑言を吐き捨てながら陸地に上がっていた。
このままでは風邪を引いてしまうのでさっさと服の上を脱ぎ捨てて少しでも早く乾くようにと水を絞る。上半身裸になってしまったが背に腹は変えられない。咄嗟に掴んでいたカバンの中身を確認すればその中身は奇跡的に乾いたままだった。流石は人理が崩壊しても壊れないというキャッチコピーのカルデア社のレオナルドプロデュースのカバンだ。
タオルを人数分引っ掴んで適当に服を絞っている3人に投げ渡す。
「ほら、使っとけ。風邪でも引いたら面倒だからな」
「……どうも」
「あら、ありがとう。気が効くわね」
「サンキュー」
3人からの礼を受け取りながら、地面を軽く掘ってブロック状の着火剤を設置して火を点ける。これ1つで1時間は持つはずだからその間に服は乾くだろう。
手際良く火を起こした事に3人は少し驚かれたが、それでも濡れているのは嫌なのかすぐに火に近寄ってくる。
「あんた手際いいな」
「丁度旅の支度をしていたところだったんだよ。これが無かったら木を擦って火起こしするところだった」
「ところで……ここ、どこだろう?」
「さぁな?まぁ、世界の果てっぽいものが見えたしどこぞの大亀の背中じゃねえか?」
「え?そんなの見えたの?マジか〜……呼び出し人をどう〆るか考えてて見てなかった」
「協力するわ」
「ちなみに最有力候補はどこぞのカウボーイみたいに縄で縛って馬で引きずる」
「ヤハハッ!!いいなそれ!!」
軍帽を絞りながら他の3人の様子を伺う。1人はヘッドホンをつけた学ラン姿の金髪の少年。1人は良いところの出なのか上等な洋装を着た黒髪の少女。1人は無表情のまま猫を抱えたスリーブレスのジャケットとショートパンツを着た茶髪の少女。
性別、年齢的な共通点は見られない。あるとすれば……あの手紙にあった
「まず間違いないだろうけど一応確認しとくぞ。もしかしてお前たちにも変な手紙が来たのか?」
「そうだけどまずは〝オマエ〟って呼び方を訂正して。私は
「……
「そう、よろしく春日部さん。じゃあ見るからに野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」
「高圧的な自己紹介をありがとうよ。見たまんま野蛮で凶暴な
「そう、取り扱い説明書をくれたら考えてあげるわ。十六夜君」
「ハハッ、マジかよ。今度作っておくから覚悟しとけ、お嬢様」
金髪の少年が逆廻十六夜、黒髪の少女が久遠飛鳥、茶髪の少女が春日部曜ね。逆廻と久遠辺りが相性が微妙そうだな。
「なら最後に、火を起こしてくれた貴方は?」
「なら逆廻っぽく自己紹介でもさせてもらおうかね?」
久遠にそう振られたので、半乾きになって来たワイシャツを着ながら答える。
「皐月原時雨だ。天狗になってる奴の鼻を粉々に粉砕する事に愉しみを覚えるソフトサディストの愉悦主義者だ。3Dなんでそれを理解した上で接してくれ。なお、それでどんな被害を被っても自己責任という事で」
「……3Dって何?」
「デンジャーでデストロイヤーでデリケート」
「ヤハハッ!!」
「……マトモそうに見えたけどそうでも無かったのね」
そうと短く返して無関心を装う春日部。心からケラケラと笑う逆廻。目に見える程に落胆している久遠。
端的に言って割りかしカオスな事になっていた。
「(うわぁ……見事に問題児ばっかりですねぇ……)」
時雨がもし甘粕打倒後に箱庭に招待されていたら?というスタートから始まりました。
とは言っても調律者シリーズよりも人間強度は高め。なので調律者の時雨のトラウマも克服済み。