「で、呼び出されたはいいけどなんで誰もいねえんだよ?この状況だと招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねえのか?あと何やってんだ?」
「第二案の準備を」
火にあたりながらカウボーイ処刑に続く第二案の準備を進める。考えてみたらカウボーイ処刑は馬がいないと出来ないのだった。残念だ。
「確かにそうね。説明もないままでは動きようがないもの」
「……この状況に対して落ち着きすぎてるのもどうかと思うけど。特に皐月原さん」
「慌てたってしょうがないから落ち着くしかないじゃない。あ、ドライフルーツあるけどいる?」
「いる」
袋詰めしていたドライフルーツを差し出したらノータイムで春日部は手を突っ込んでイチジクのを掴んだ。招待状に書いてあることご本当ならここは異世界でなのだろう。元の世界だとドライフルーツは高級品にあたるのだが旅の間の嗜好品の1つとして持ってきておいた。
イチジクを齧り、僅かに無表情を綻ばせた春日部の顔を見て渡して良かったと思う。
「仕方ねえなぁ……こうなったら、
「へぇ……」
3人の視線が茂みに集まる中で逆廻が気付いていた事に興味を引かれる。
「なんだ、貴方も気付いていたの?」
「当然、かくれんぼじゃ負けなしだぜ?2人も気付いてたんだろ?」
「風上に立たれていたら嫌でも分かる」
「あんなガバガバな隠密で隠れてるつもりになってるのが無様で面白くて黙ってた」
「へぇ……面白いな、あんたたち」
だからこうして第二案の準備をしていた訳なのだが……それにしても逆廻は面白いと言いながらも笑っていない。それは逆廻だけで無く、呼び出された全員がそうだ。口元が笑っているが、目が笑っていない。呼び出されて湖に叩き落とされて放置プレイされれば誰だってそうなるだろう。
そうして全員で、誰かが隠れている物陰に視線を向ける。
その視線に臆したのか焦ったのかは知らないが、少しの間を空けてから物陰から
「あははは〜……や、やだなぁ御4人様。そんな敵意に満ちた目で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?えぇえぇ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは1つ穏便に御話を聞いていただけたら……」
「断る」
「却下」
「お断りします」
「よし、完成」
「ちょっと待って下さいそこのお方。それはいったい……?」
「ん?見て分からないのか?……十字架だけど」
「いえ、それは分かるのですが……一体何のために?」
「ここに呼び出して湖に叩き落としてくれた奴を炙るため」
第二案として考えたのは火炙りだ。その為に服を乾かしながら手持ちのロープを使って木製の十字架を手作りしていた訳だ。ちなみに第三案はこの十字架を使った磔刑だったりする。
「ーーー撤退!!」
「逃すか!!」
逃げようとした黒ウサギだが、その前に逆廻に回り込まれる。どうも快楽主義と言ったのは嘘では無いらしく、その顔には『楽しそうだ』と書いてあった。
「助けて……助けて下さい……!!このままだと黒ウサギはこんがり美味しく焼かれてしまいます……!!」
「面白そうだから却下」
「んもぉぉぉぉぉぉぉーーーフギャッ!?」
逆廻の隙を伺いながら逃げ出そうとしていた黒ウサギだが背後からやって来た春日部には気づかなかったらしく、そのまま頭に生えていたウサギ耳を掴んで引っ張った。見たところ、力一杯に。
「ちょ、ちょっとお待ちを!!触るまでならまだしもまさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるなんてどんな神経をしているのですか!?」
「好奇心故に」
「へぇ、それって本物なのか?だったら俺も」
「……じゃあ私も」
「ちょ、ちょっと待ーーー」
春日部だけで無く逆廻が、そして遠慮気味に久遠が黒ウサギの耳を引っ張りに向かって行った。
それによって起こる黒ウサギの悲鳴をBGMに持って来ておいた酒を楽しむ事にする。
「ーーーあ、あり得ない、あり得ないのですよ……まさか話を聞いてもらうために小一時間も消費してしまうとは……」
「ん?終わった?」
初めの十数分は酒を愉しんでいたが飽きてしまったので湖に釣り針を投げ込んで魚釣りに移行していた。釣った魚は火で炙って焼いてある。
「……モグモグ」
「にゃ〜」
春日部も耳を引っ張る事に飽きたのか、焼いてある魚を猫と一緒に頬張っている。ちなみに十字架は火種になって灰になっている。
「いいからさっさと進めろ」
涙目になっている黒ウサギに対して逆廻は無情にもそう告げる。確かに黒ウサギにとっては悲劇だったかもしれないが、こちらからしてみれば死活問題なのだ。何せ何も知らない土地にほぼ裸一貫で放り出されているのだから。
釣り針と糸をしまって形だけ話を聞いてやろうという態度で望む。他の3人も似たようなものだが、内心では知りたがっているのだろか……いや、案外本気でどうでもいいと思っているかもしれない。
「それではいいですか?御4人様、定例文で言いますよ?言いますよ?さぁ、言います!!ようこそ、〝箱庭の世界〟へ!!我々は御4人様をギフトが与えられた者達だけが参加出来る『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼンさせていただこうかと召喚しました!!」
「『ギフトゲーム』?」
ギフトゲームと聞いて思い当たるのは招待状に書いてあった
曰く、ギフトとは修羅神仏、悪魔、精霊、星から与えられた恩恵。
曰く、ギフトゲームはその恩恵を用いて競い合うゲーム。
曰く、この箱庭はその為に造られた世界。
曰く、呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって〝コミュニティ〟に所属しなければならない。
曰く、ギフトゲームの勝者はゲームの〝
曰く、ギフトゲームのチップは様々。それこそ、金品や土地や権利名誉ギフト……人間も賭け合うことが出来る。
曰く、ギフトゲームは勝者が総取りする事が出来るシステム。
曰く、ギフトゲームは自己責任で開催されるゲーム。
黒ウサギの長々とした説明を簡略したらこんなところだろう。それを聞いて、少しばかり
あぁ、
「ーーー待てよ、まだ俺が質問してないだろ?」
黒ウサギの説明を聞いて納得していたところでこれまでで一度も口を挟まなかった逆廻が威圧的な声を上げながら立った。それまであった軽薄な笑顔が無くなった事でその場にーーー正確には黒ウサギに緊張が走る。
「……どういった質問でしょうか?ルールですか?それともゲームそのものですか?」
「そんなのは
これからに必要になるであろう2つをどうでもいいと切り捨てて、逆廻はは大胆不敵に笑いながら、本人にとって最重要事項であろう一言を紡いだ。
「この世界はーーー
それを聞いて成る程と思った。
あの招待状に書いてあった一文に、『家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて箱庭に来られたし』と。それに似合うだけの催し物があるかどうかを逆廻は尋ねていた。
久遠も、春日部も、それを気にしていたらしく、耳を傾けている。
「ーーーYES。『ギフトゲーム』は人を超えた者たちだけが参加出来る神魔の遊戯。箱庭の世界は外界よりも格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」
その逆廻の問いに対し、黒ウサギは迷う事なくそう答えた。
黒ウサギによる説明回。なお、3人が茶々を入れなければ黒ウサギは磔刑か、火炙りにされていた。
これが年末最後の投稿。それでは皆様、良いお年を。