〝世界の果て〟を見て、蒼星姫を眷属にして気分良く帰り、日が暮れたころに街の噴水広場で先に向かっていた久遠と春日部と合流した……のだが、2人とノーネームのリーダーであるジン・ラッセルが〝フォレス・ガロ〟のリーダーのガルド・ガスパーと一悶着を起こしてギフトゲームをすることになったらしい。
それを聞いて黒ウサギは激おこだ。尻にぷんぷん丸が付きそうなくらいに。
「なんであの短時間に〝フォレス・ガロ〟のリーダーと接触してしかも喧嘩を売る状況になったのですか!?しかもゲームの日取りは明日!?それも敵のテリトリー内で戦うなんて!!準備している時間もお金もありません!!一体どういう心算があってのこどです!?聞いているのですか3人とも!!」
「ムシャクシャしてやったわ」
「今は反省している」
「だけど後悔はしていない!!」
「黙らっしゃい!!」
事前に打ち合わせていたのか綺麗に淀みなく順番に言った言い訳を黒ウサギは無情にも一蹴する。十六夜はそれを見てニヤニヤと楽しそうにしている。
黒ウサギの気持ちは分かるが、久遠たちの心情も分かる。要はガルド・ガスパーの事が不快で仕方がないのだ。人質をとってギフトゲームを強要し、そして人質をただ殺すのでは無くて食うという人道に反したガルド・ガスパーの事が。
まぁ小物臭がプンプンするガルド・ガスパーだが、個人的には嫌いでは無い。目的の為に何でもやるという姿勢は好感を覚えるし、元の世界でも金持ちの道楽で
だがここでそれを口に出してしまうと黒ウサギの胃がマッハで死ぬので言わないでおこう。せっかく愉しい弄られ役を見つけたのだから長く長く大切にイジメないと。
それにしてもと、激おこぷんぷん丸な黒ウサギから目を話して隣に立つ青髪の女性に目を向ける
「ん?どうかしたか?」
「いや、
青を基調としたミニスカの改造巫女服を着込み、肩甲骨辺りまでの長さの青髪を無造作に伸ばし、敵意はないものの鋭い目でこちらを見るのは箱庭の街に着くなりいきなり発光して人型になった蒼星姫だ。胸は然程大きくは無いが全体的にバランスが取れたスタイルなので気にならない。
「あぁ、恩恵で人属性に関する物があってな。それを使う事で人間の姿を真似る事ができる。我だけでは無く他にも真似ている者はいるぞ」
「へぇ……なら逆に他の動物の恩恵を持っていたらそれになれるのか?犬だったり、猫だったり」
「出来なくは無いな。要は比率の問題だ。人属性に関するものが強ければ人よりの姿になり、獣の恩恵が強ければ獣よりの姿になる。確か〝フォレス・ガロ〟のリーダーも人と獣と悪魔の恩恵で人型になっていると聞いた事があるな」
蒼星姫からの説明を聞いて恩恵に対して興味が湧いてくる。元の世界の異能のように特殊な力と認識していたが蒼星姫の話では肉体に作用するからだ。異能ではそこまで大きな変化はなく、精々腕や足などの部分的な変化が限界だ。
「はぁ〜、仕方がない人たちです。まぁいいデス、腹立たしいのは黒ウサギも同じですし。〝フォレス・ガロ〟程度なら十六夜さんか時雨さんが1人いれば楽勝ーーー」
「何言ってんだよ、俺は参加しねえよ」
「当たり前よ、貴方なんて参加させないわ」
「先に言っておくわ、俺もやる気無いから」
と、どうやら黒ウサギの説教が終わるのと同時に目論見が外れたらしい。ガルド・ガスパー自身はそこまで脅威ではなく、十六夜が出れば楽勝だと考えていた黒ウサギだが十六夜本人と久遠がそれを拒否した。そうなったら黒ウサギがこっちを頼る事が目に見えていたので先に断っておく。
「なっ!?ど、どうして!?」
「いいか?この喧嘩はこいつらが
「そうそう、3人がやりたいと言ってるんだからやらせればいい。自主性は重んじようぜ?あぁ、負けても骨は拾ってやるから安心して戦ってこい」
「あら、分かってるじゃない」
「……もう、好きにしてください」
丸一日振り回されたからなのか疲れた様子で黒ウサギは肩を落としながらヤケクソ気味にそう言った。
そして黒ウサギの提案でギフトの鑑定をするという事で〝サウザンドアイズ〟というコミュニティに向かうことになった。
ギフトの鑑定によって恩恵の起源や秘めた力を知ることで自分の力の正しい形を把握しておいた方が引き出せる力はより大きくなるからだそうだ。
そしてジンは蒼星姫と共に〝ノーネーム〟に帰してある。理由はガルド・ガスパーを警戒してだ。これまでやってきた事をバラされて自暴自棄になったガルド・ガスパーが〝ノーネーム〟に刺客を放たないとも限らない。箱庭内でも相当な権限を持つ黒ウサギがいるコミュニティにそんな事をするかは疑問だが、警戒するに越したことはない。
〝サウザンドアイズ〟に向かう途中で、月と街灯ランプに照らされた並木道を見つけた。
「桜……じゃないわよね?花弁の形が違うし真夏になっても咲き続けているはずがないもの」
「いや、まだ初夏になったばかりだぞ?気合いの入った桜が残っていてもおかしくないだろ」
「……?今は秋だったと思うけど」
「何言ってんだ?花なんて一部の金持ちの道楽で一般人なら見る事が出来ない代物だろうが」
微妙な食い違い。3人は時間が違うらしいのだが、俺だけは絶対的に価値観そのものが違っている。
「それは皆さんがそれぞれ違う世界から召喚されているからデス。元いた時間軸以外にも歴史や文化、生態系など所々違う箇所があるはずですよ」
「パラレルワールドってやつか?」
「惜しいですね。正確には立体交差並行世界論といものなのですけど……簡単には説明できないのでまたの機会に」
そう黒ウサギが曖昧に濁したところでどうやら店に着いたらしい。店の旗には2人の女神像が向かい合って記されている。そして日が暮れて閉店時間なのか、割烹着の女性店員が看板を下げようとしていた。
「まーーー」
「待ったは無しです御客様。うちは時間外営業をやってませんので。そもそも、いい歳して閉店時間に来るとか何なんですか?良識ある大人として恥ずかしくないのですか?あぁ、無いんですね可哀想に……」
「ガフッ」
女性店員の本気で憐れむような目にやられたのか、黒ウサギはよく分からない音と共に顔面から倒れ伏した。ちょうど良かったので黒ウサギの上に腰を下ろす。
「いや、済まんな。この馬鹿ぎ馬鹿な事をして。ほら馬鹿、謝れよ。姿勢は土下座な」
「なんで黒ウサギが罵倒されなくちゃならないんですか!?それに時雨さんはどうして黒ウサギの上に座ってるんですか!?」
「ちょうど良い場所にあったから」
黒ウサギは跳ね起きようとするがその前に力を込めていた箇所を足で払ってそれを阻止する。阻止する度に黒ウサギが顔面から地面に落ちてるのが実に無様で滑稽で面白い。
「黒ウサギ……なるほど、〝箱庭の貴族〟であふウサギの御客様でしたか。知能指数が低そうな顔をしていたので野良ウサギだと勘違いしていました」
「んぎぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
女性店員の煽りの素晴らしさにサムズアップすると彼女も僅かに頬を緩めてサムズアップを返してくれた。
「ではコミュニティの名前をよろしいですか?中で入店許可を伺いますので」
「うっ……」
「俺たちは〝ノーネーム〟ってコミュニティなんだが」
女性店員がコミュニティの名前を聞いた瞬間に黒ウサギは抵抗を止めた。何か後ろめたいことがあるのかと思ったが、その黒ウサギの様子に気づかずに十六夜は躊躇いなしにノーネームと名乗った。
「この箱庭には数多くの〝ノーネーム〟が存在します。どこの〝ノーネーム〟か分からない以上、入店許可は出せません。旗印があるのなら別ですが……」
「あぁ、そういう事ね」
女性店員の言葉で黒ウサギが抵抗を止めた理由が分かった。なぜならこちらには名前と旗印も無いのだから。黒ウサギの話によれば〝サウザンドアイズ〟は大規模な商業コミュニティ。どこの誰とも分からない奴を入れて問題が起こるリスクを彼女たちは冒さない。要は信用出来ないから入れさせないのだ。
「その……あの……私達に旗はーーー」
「ーーーいぃぃぃぃやっほおぉぉぉぉぉぉ!!久しぶりだ黒ウサギィィィィ!!!」
言いにくそうに黒ウサギが地面に顔を当てながら呟いていたところ、店内から着物を着た白髪のロリータが爆走してきた。この後の展開が予想できたので黒ウサギから離れると予想通りにロリータは黒ウサギにタックルし、そのままの勢いで街道の向こうにある水路まで吹っ飛んだ。
「……おい店員、この店にはドッキリサービスがあるのか?なら俺も別バージョンで是非ーーー」
「あると思いますか?あるわけないじゃ無いですか。これだから思春期拗らせた童貞は……」
「ーーーグフッ」
真剣な表情で十六夜は言っていたが女性店員のガチの蔑むような目と暴言にやられてその表情のまま奇妙な音を出して倒れた。
その十六夜を棒でつついて遊んでいると、さっき店から飛び出してきたロリータがこちらに向かって来るのが見えた。このままだとぶつかるのは分かっていたので、はたき落とす。
「ガフッ!!」
「店員さん、これ何?」
「……うちのオーナー、〝サウザンドアイズ〟の幹部の
「……酒、飲む?」
「いただきます」
女性店員は差し出した酒を受け取るとストレスから逃れる為に一気に飲み下した。
おら!!蒼星姫の擬人化だぁ!!スレンダーな青髪美女!!ペッタンとか言っちゃダメだゾ!!
女性店員さん、毒舌化。あのホワイトロリータのせいで十六夜も沈む毒を吐けるようになりました!!
ちなみに作者は手のひらサイズのバストが好きです。