『ギフトゲーム名〝鷲獅子の手綱〟
プレイヤー一覧
逆廻十六夜
久遠飛鳥
春日部耀
クリア条件
グリフォンの背に跨り、湖畔を舞う。
クリア方法
〝力〟〝知恵〟〝勇気〟の何れかでグリフォンに認められる。
敗北条件
降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。
宣誓
上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
〝サウザンドアイズ〟印』
白夜叉が3人に提示したギフトゲームの概要の書かれた一覧を黒ウサギにチョークスリーパーをかけながら流し読む。ギブギブとか聞こえる気がするが気のせいに違いない。気のせいに違いない。
「黒ウサギの顔が赤通り越して青くなってるのだが……」
「大丈夫、窒息するようなヘマはしないから。こう、意識がギリギリ保てる程度の供給は残してあるから」
「えげつないのぅ……」
黒ウサギが抵抗しなくなったところで離して白夜叉にくれてやれば、空から鷲の翼と獅子の身下半身を持つ獣……本物のグリフォンが降りてきた。
どうやらこのゲームに挑むのは春日部らしく、グリフォンを見て目を爛々と輝かせて挙手していた。そしてグリフォンに向かって話しかける。普通なら何をしているか分からないような光景だがグリフォンの鳴き声に春日部が答えているので動物と会話する事が出来ると推察する。
どうやら春日部の話を聞く限り、春日部は〝力〟と〝勇気〟でグリフォンに挑むらしい。グリフォンに向かって堂々と誇りを賭けて勝負すると良い、グリフォンの鳴き声に対して命を賭けると即答していた。
思わず噴き出してしまう。十六夜と久遠は何か考えが何も言わない。黒ウサギはグロッキーで静かだが、元気だったら止めようとするに違いない。
命を賭けるだなんて馬鹿らしい、たった1つしかない命をここで捨てても構わないと言った春日部が馬鹿馬鹿しくて仕方がない。もっと安全に挑む事が出来たのだろうに、わざわざ一番危険な方法を選んだ春日部は間違いなく馬鹿なのだろう。
だが、そんな馬鹿は大好きだ。
「春日部」
体制を低くしたグリフォンに乗ろうとしていた春日部を呼び止めて着ていたコートを投げてよこす。
「寒いだろうから着ておけ。まぁ、匂いが気になるなら着なくても良いけどな」
「……ありがとう」
呆気に取られたような表情をしていたが、春日部は無表情を崩してそう礼を言ってくれた。ヒラヒラと返し、グリフォンが飛翔するのを見届ける。通常だったらあれほどの巨体で飛ぼうと思えばその何倍もの大きさの翼と推進力が必要になる。だと言うのにグリフォンは空を踏みしめるようにして走っている。あれがグリフォンの持つギフトなのだろう。
「良かったのか?止めんでも」
「止まるように言っても聞かんだろうからな。それだったら手を貸して背中を押した方が良い」
「それがあのコートか……優しいのう。あのコートにはどれだけの術式が掛けられている?」
「対魔と対刃と対弾、それと温度調整ってところだ。寒さが多少緩和される程度だけで風圧なんかはそのままだ」
寒さが和らいだは言え、風圧はそのまま。それに外面が凍るのは避けられない。グリフォンの背にしがみつくように跨っている春日部の皮膚や髪は氷が張っている。
それでも、彼女は諦めていない。どこか喜んでいるような雰囲気で必死にグリフォンの手綱を握っている。
そして反対側からグリフォンと春日部が現れ、ついにスタート地点である湖畔の中心まで辿り着く。そうして春日部の勝利が決定した瞬間ーーー春日部の手から手綱が外れた。
「ちっ」
このままだと春日部は湖畔に墜落する。水と侮ってはいけない、高所から水面に落ちれば水はコンクリート並みの硬さになるのだから。あれほど勇気のある馬鹿を死なせるのは勿体なさ過ぎる。距離は微妙だがなんとか助けようと駆け出しーーーグリフォンのように空を踏みしめながら緩慢な動きで飛翔していた。
「へぇ……」
足を止めるのと同時に、春日部が黒ウサギと出会った時に風上に立たれたらわかると言っていたことを思い出した。それは人間というよりも動物的な感性で語られていた。もしかすると春日部のギフトは縁を持った動物の特性を得る事が出来る類いかもしれない。
足を止めたが黒ウサギを弄り続けている白夜叉のところに戻るのは馬鹿らしいので、そのまま久遠と十六夜に話しかけられている春日部の元に向かう事にする。
「よう、お疲れさん」
「大勝利。あとこれ、ありがとう」
「助けになったのなら上々だ。俺もお前のような馬鹿の頑張りは見届けたいからな」
「それって私が馬鹿って事?」
「気を悪くしたなら悪かったな。俺個人の感性の問題で馬鹿な奴が好ましいだけだ。逆に阿呆ダメだな、死ねば良い」
「馬鹿も阿呆も同じじゃないかしら?」
「いいや、違うね。馬鹿はあれだ、出来ない無理だなんて度外視してやってやろうと考えてる。阿呆はあれだ、なんの根拠も無いくせに自分なら出来ると自信満々に考えてる。元の世界じゃそんな阿呆ばかりだったからなぁ……ホント死ねば良い」
元の世界では、
「ふむ……おんしには聞きたい事があるがそれは後回しにさせてもらおうかの」
春日部に好奇心を含んだ視線を向けていた白夜叉だがその視線をそのままにこちらに向ける。
黒ウサギは白夜叉がいた場所で痙攣して倒れていた。
「〝決闘〟に近い〝挑戦〟を望むという事だったのでな、こんなものを用意してみた」
虚空から羊皮紙が現れて、白夜叉がそれを指でなぞってから手渡して来た。
『ギフトゲーム名〝イカロスの翼〟
プレイヤー一覧
皐月原時雨
〝サウザンドアイズ〟ゲームマスター白夜叉
クリア条件
ホスト側のゲームマスターに有効打を一撃入れる
敗北条件
プレイヤーの降参、もしくは死亡
宣誓
上記を尊重し、誇りと御旗の下、〝ノーネーム〟はギフトゲームに参加します
〝サウザンドアイズ〟印』
「成る程ねぇ……」
「へぇ」
「ちょっと、これって……」
「……本気?」
1人納得して、十六夜が楽しそうにしている中で久遠と春日部だけが不安を孕んだ声色で尋ねてきた。
確かにこれは〝決闘〟寄りの〝挑戦〟だ。なにせこちらは白夜叉にたった一撃を叩き込めば良いのだから。無論、白夜叉はそれをさせまいと反撃してくるだろう。敗北条件にしっかりとプレイヤーの死亡と書かれているから。ギフトゲーム名はギリシャ神話から取っているに違いない。差し詰め太陽は白夜叉で、俺はイカロスという事か。蝋のの翼を溶かして天から墜落し身の程を知れと言いたいのだろう。
あぁ、本気でそう思っているならば実に哀れだ。抱き締めて愛でたくなってしまうほどに。
「1つ聞こう……もし、俺が白夜叉を殺した場合はどうなる?」
「ほう、おんしに私が殺せるとでも?」
「もしもだ。可能性が無いわけじゃないだろう?」
「その場合はおんしの勝ちで構わん。書き加えておこう」
白夜叉の指先が羊皮紙に触れ、クリア条件にホスト側のゲームマスターの死亡という一文が加えられた。
「よし、殺ろうか」
懸念すべきことは無くなった。コートを着直して軍帽を深く被り、目の前に立つ
「呵々!!本気で勝つつもりでいるらしいのーーー身の程を知れよ小童」
「まったくこれだからーーー人間舐めるなよ人外」
耀ちゃん、時雨ニキから馬鹿認定される。時雨ニキは馬鹿を好ましく思う。つまり……
時雨ニキのゲームの難易度がおかしい?でぇじょうぶだ、時雨ニキは甘粕倒してるからな。