「あっははは!!いやぁおんしもやりおる!!〝挑戦〟とはいえここまで私がやられるとはな!!次は〝決闘〟?〝決闘〟する?」
「なんでそんなにテンション高えんだよこの和風ロリババアが!!十全なテメェならともかく弱体化したテメェなんぞもう興味無いわ!!」
白夜叉とのギフトゲームは俺の勝利で終わり、今は〝サウザンドアイズ〟の白夜叉の私室にいる。
ケタケタと笑っている白夜叉だが、身体には大きな刀傷が出来ていた。全力では無かったとはいえ殺意は満タンで放った
というよりも腕が痛い。戦闘中はアドレナリンと気合いと根性で耐えていたがゲームが終わって気が抜けて痛みがぶり返してきた。
「大丈夫?」
「すごい音がしたけど普通に使ってたから大丈夫じゃないの?」
「いえいえ、あれはどこからどう見ても骨折してるようにしか見えませんでしたけど?」
「あぁこれ?感じからしたら粉砕骨折してるよ。めっちゃ痛い。医者か痛み止めが欲しい」
「粉砕骨折してるのに使うとか、俺からしてもドン引きだぜ」
「おぉ、治療が先であったな」
「白夜叉様はもう一目で重傷だって分かります!!」
白夜叉が柏手を二回打つと、廊下に繋がる障子が開いてそこから女性店員が現れる。そして白夜叉の状態と、関節では無い部分が曲がっている俺を見て何故呼ばれたのか理解したようだった。
「オーナー、やり過ぎです」
「許せ、雑務ばかりでストレスが溜まっていたのだ。薬を頼む」
「分かりました。皐月原様には霊薬を、オーナーは塩水でよろしいですね」
「そこは普通に薬でいいであろう!!」
「ーーーオーナー、明日からのお菓子の時間楽しみにしていてくださいね?」
「あ、すいません。塩水でお願いします」
お菓子の時間に何があるのか、白夜叉が顔を青くしながら畏まった敬語でそういうと女性店員は満足したように頷いて下がっていった。
「さて、治療の用意が出来るまでの間にギフトゲームの商品でも渡しておくかのう」
白夜叉がそう切り出して再び柏手を打つ。すると目の前にダークグレーの一枚のカードが現れた。十六夜にはコバルトブルーのカード、久遠にはワインレッドのカード、春日部にはパールエメラルドのカード。
「それは、ギフトカード!?」
「お中元?」
「お歳暮?」
「お年玉?」
「すまん、持ち合わせがないんでお返しはちょっと……」
「違います!!というかなんで皆さんそんなに息が合ってるんですか!?あと時雨さんは律儀に悲しくなる返事をしないでください!!このギフトカードは顕現しているギフトを収納できる超高価なカードですよ!!」
なるほど、つまりは超便利アイテムと。ギフトカードを見ればそこには自分の名前と、恩恵らしいネームが記されている。
【皐月原時雨
ギフトネーム
・〝
・〝
・〝眷属・蛇神蒼星姫〟
・魔王特権】
「ーーー」
ギフトネームを見た瞬間に言葉を失った。前2つは良い。1つ目はただ強いか弱いかが判断出来る役に立たない異能の事であり、2つ目は元の世界で格上とばかり戦ってきたから宿ったギフトだろう。そして3つ目は滝で眷属にした蒼星姫のこと。そこまでは問題無い。
問題は4つ目だった。〝魔王特権〟、そんな異能は知らないはずなのに心当たりがある。それは甘粕の異能であった〝意思の力〟。言ってしまえば物理法則や概念を覆す理解不能な異能。甘粕はこれを使う事で何も無いところから軍刀や兵器を作っていたし、身体の老化現象を止めて実年齢は100を超えるはずなのに見た目は20歳位に見えていた。恐らくはこの〝魔王特権〟も同じ効果があると思われる。
「ーーークハッ!!クハハッ!!」
思わず可笑しくて笑ってしまう。みんなの視線が集まるが、それでも込み上げるものを抑えられない。
間違いなく、〝魔王特権〟の異能を俺に与えたのは甘粕だ。何を考えて甘粕がこれを渡したのかは理解出来ない。自分を倒したことに対する褒美なのかもしれないし、もしかしたら俺にも甘粕と同じように魔王としてあれと望んで渡したのかもしれない。
だけど、まぁーーーどんな思惑があるにしても、
そうして女性店員が治療の用意を終えるまで、ギフトカードを見ながら笑う奇妙な人間が目撃された。
「ーーーはい、これで大丈夫なはずです。霊薬の効果で二、三日もすれば完治すると思いますが出来るだけ腕を動かさないようにしてください」
「ありがとう……すげ、もう痛みが無い」
女性店員が持ってきた霊薬という薬を飲んで固定してもらった腕にはもう痛みは無い。少し骨折箇所が熱を持っているがそれは治癒が始まっているからだと分かる。
「ヒギィ……クフゥ……ンン……!!」
「おいおいつまらんぞ、もう少し色気のある声でも出してみろ」
「この鬼畜生がぁ!!」
傷口を塩水で洗う白夜叉の声を聞いていたのだが思いの他つまらない。黒ウサギで遊ぼうかと思ったが治療に時間がかかりそうなので十六夜たちを連れて先に帰ってしまったのだ。〝ノーネーム〟の本拠地にはあいつらと入れ替わりで蒼星姫が迎えに来て案内してくれることになっているので心配はしていない。
「はぁ……それで、おんしのギフトはどのようなものだったのだ?」
「ほい」
「ンアァ!!」
ギフトの詳細を求められたので白夜叉に向かってカードを投げたら丁度傷口に刺さってしまった。済まない、わざとじゃないんだ……故意なんだ。
それを見て女性店員はニッコリ笑っている。凄い良い笑顔で。
「この悪童が……!!何々……〝
「何か問題でも?」
「この〝魔王特権〟というギフト、どんなものか理解しておるのか?」
白夜叉から放たれる気配が変わる。それは〝サウザンドアイズ〟の幹部白夜叉ではなくて〝白き夜の魔王〟である白夜叉のそれ。恐らくは〝魔王特権〟を見て〝箱庭の魔王〟を連想したのだろう。
まったく……気持ちは分からんでもないが心外だ。同一視されるとはヘドが出る。
「おおよそは理解している。言っておくがその魔王は箱庭の魔王じゃなくて俺のいた世界の魔王を指している言葉だ。ただ目的も無く好き勝手暴れる事しかしない能無しとあいつを一緒にしてくれるなよ?」
白夜叉の気配に返したのはただの殺気と怒気。ただ力があるから魔王を名乗る有象無象と人間を愛するが故に魔王になった甘粕を同一視された事に対する殺意と怒り。相当気に入らなかったのだろう。〝白き夜の魔王〟の顔だった白夜叉が気圧されてしまう程の物を出していたらしい。
「……済まなかった、謝らさせてくれ。それにしてもおんしの世界にも魔王がおったのか?」
「あぁ、人類の敵対者という意味では本当の意味で魔王だった……多くを語るつもりは無いけどな」
「ぬぅ……教えてくれても良いだろうに」
「語るにしても時間切れだ。迎えに来たみたいだからな」
第六感がこちらに近づいてくる蒼星姫の気配を捉える。その足取りは重く、戸惑いながら近づいてくるのが分かるので恐らくは白夜叉と会うのが気不味くて躊躇っているのだろう。
「そうか、なら仕方ないのう。いつでも遊んでやるぞ?」
「気が向いたらな」
そう言って白夜叉と別れ、女性店員に見送られて〝サウザンドアイズ〟を後にした。
蒼星姫は〝サウザンドアイズ〟からそう離れていないところで挙動不審な動きをしていた。それが可笑しくて十分程隠れて見ていたのは内緒だ。
速報。時雨ニキに魔王特権がインストールされていた。本人は気づいていなかったが、ギフトカードによって認識してしまった模様。
これでいつでも兵器ブッパが出来るゾ!!