幻想戦記クロス・スクエア   作:蒼空の魔導書

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ヒロイン合流! さあ、反撃開始です!!




霊剣使い VS 極光の魔女

終末の蛇の執行者プルート・A・イグナイトが操る黒炎に取り囲まれた出雲那を窮地から救ったのは、彼がこの異界で探していたクラスメイト──柊明日香であった。

 

「また会ったわね、武内君。 できれば明日、A組の教室で会いたかったものだけど……」

 

自身の伐刀絶技によって氷のオブジェと化した高層ビルの屋上に立ち、出雲那が立っているハイウェイをその透き通った碧眼で見下ろす明日香はやれやれとその艶のある長髪を手で掻き上げるとその場から飛び降り──

 

「ハァァアッ!」

 

右手に持ったレイピア型の霊装《エクセリオン=ハーツ》を振るって出雲那を閉じ込めている凍り付いた黒炎を砕きつつ同時にハイウェイ上に着地するという鮮やかな妙技で彼を氷の檻から解放して参上すると、朱い空を見上げ、そこから怪訝な目でこちらを見下ろしてきているプルートを射貫くような鋭い双眸で睨みつけた。

 

「貴様、何者だ!? 俺の炎を凍らせるとは、只者ではないな!!」

 

明日香から向けられる強大な威圧感と霊圧を感じ取って、彼女がこの周辺区域を自分が発した炎術ごと凍らせた張本人であるという事実を瞬時に把握したプルートが不愉快そうに明日香にその素性を明かすよう要求してくる。 問答無用で一触即発の雰囲気だ。 しかし、明日香はその要求を拒みはせず──

 

「お初にお目にかかるわね、終末の蛇(ヨルムンガンド)の執行者。 私は結社《終焉の盾(エインヘルアル)》の異界探索エージェント──《霊剣(れいけん)使い》柊明日香」

 

と、尻込みする事もなく堂々とその素性を明かしたのだった。

 

「何? 《終焉の盾》だと!!」

 

「柊……やっぱり、お前も《終焉の盾》って裏組織の人間だったのかよ」

 

「ええ、黙っていてごめんなさいね。 でも幾ら戦士候補生だからって表の人間を裏の事情に…………って、何故武内君が終焉の盾の事を? それに、()って!?」

 

「今日さっき終焉の盾のサクヤって女がオレに接触して来て、お前がこの異界に居るって教えてくれて、それで連れて来てくれたんだよ。 オレが【伊邪那岐の創り手】ってやつだから協力してほしいってさ。 さっきまで一緒だったけど此処に来る途中でグリード共から助けたリディとエリカを外に避難させるってから一旦別れて異界の外に転移して行った。 それで、後で追い付くから先行してろって言ってやがったぜ」

 

「……」

 

明日香の素性を聞いてプルートが驚いている間に明日香の隣に立った出雲那が明日香にその素性を確認するように聞く。 明日香はバレてしまっては仕方がないと残念そうな表情で答えようとするが、その最中に出雲那の発言はまるで自分が所属する組織を知っているかのような口振りだったので言葉を詰まらせ、若干動揺気味にその不審を感じた疑問を聞き返すと、出雲那がサクヤという女性にこの異界に協力者として連れて来られたと返してきた為に、明日香は無言で額を左掌で押さえて愕然と落胆する。

 

──サクヤさん、あなた来ていたんですか……はぁ……何の任務かは知らないけれど、表の人間を巻き込むなんて……。

 

いつもながらあの先輩は困った人だという呆れと表の人間を裏の事情に巻き込んでしまったという罪悪感、そして最近どうも自分の思い通りに事が運ばないという小さな嘆きが明日香の心境を掻き乱して、彼女をなんとも言えない憂鬱感に苛ませていた。 どうしてこうなったのかという空気が場を支配し彼女の落胆を増大させるが、今はそれを問題にしている場合ではないだろう。

 

「《終焉の盾》……“怪異狩り”の連中か。 チッ! 面倒なのと遭遇してしまったな」

 

朱い空に漆黒の両翼を羽ばたかせながらプルートは舌を打ち、いつでも二人を強襲できるよう身構えていた。 その右手に持つ霊装《火ノ加具土》の刀身には得体の知れない黒炎が渦巻き、眼下の愚者共を焼き尽くさんと唸りを上げているように見える。 その威圧を感じた出雲那と明日香は気持ちを切り替えてプルートが滞空している朱い空を睨み、それぞれの得物を構えて迎撃態勢に入った。

 

「……武内君、話は後で聞かせてもらうわ。 今は目の前の敵を退ける事を優先しましょう」

 

「へっ! 言われなくても判ってんぜ!」

 

「二人同時か……おもしろい。 少々面倒だが、纏めて灰にしt──「ちょっと待ったぁぁああああっ!!」」

 

そのまま二対一で戦闘再開かと思われたが、突如プルートの後方からマリの制止が掛かり、飛行魔法で飛んで来たキャスケット帽の少女が黒き翼を広げるプルートの右隣に並んだ。

 

「マリ、どういうつもりだ!?」

 

「決まってんでしょ? 敵も二人になったんだし、あたしも参戦するんだから!」

 

「必要無い、下がっていろ! たかだか雑魚と雑魚に毛が生えた程度の輩、俺一人で十分だ!」

 

「何恰好付けてんの! 今現れたあの女、結構強そうよ。 アンタの炎も凍らされたし」

 

「フンッ! その程度、脅威になどならん! 俺の《第七園》はその領域内において最速で炎熱系の術を発動する事ができる。 故に敵は第七園の領域内に居る限り、俺の炎から逃れられはしない! 例え炎を凍らせる事ができようともな!!」

 

敵が二人に増えたので共に戦うというマリの申し出をプルートは不要だと頑なに拒否する。 何故なら例え明日香がプルートの黒炎を凍らせる事ができようとも《第七園》による即発動の炎で凍らされる前に相手を焼き尽くしてしまえばいいのだから、援軍など必要は無い……のだが、その定義は話に明日香が割り込んで来た事により瓦解する。

 

「お取り込み中のところ悪いのだけれど、この周辺に仕掛けてあった設置型の術式はさっきの《セルシウスサンクチュアリ》で一緒に()()()()()()()()()()から、もう効果は無いわよ」

 

「「……は?」」

 

「何だと?」

 

明日香が告げた宣告があまりにも驚愕的な内容だったので、出雲那とマリは漠然と呆け、プルートはそんな筈あるかと事を確かめる為にバチンバチンと指を鳴らして黒炎を呼び起こそうとする。 だが炎術は何度やろうとも発動しない……。

 

「莫迦な……そうか女、貴様【伐刀者(ブレイザー)】か。 そしてその氷の異能……“自然干渉系”かと思ったが、そうではない様だな?」

 

《第七園》による炎術即発の術式が凍結されて炎術が発動しなかった事に一瞬驚愕の表情を浮かべたプルートであったが、彼は明日香の右手に握られている得物が霊装である事に気が付いて彼女が伐刀者である事を瞬時に把握し、彼女の伐刀者としての異能が見た目通りの氷の異能ではないという事を即座に看破して、明日香に真意を問い質す。

 

【伐刀者】の異能の系統は大きく分けて四種ある。 霊力を自身の身体に行使して様々な身体能力を向上させる“身体強化系”、炎や氷などの自然現象を自由自在に操る“自然干渉系”、【傷を開く】【空を飛ぶ】などの働きを事象として引き起こす“概念干渉系”、そしてこの世の理を捻じ曲げる事象を発現させる“因果干渉系”……その中で明日香の能力は──

 

「ご明察ね。 そう、私の異能は【凍結停止】、物体のみならず()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という“概念干渉系”よ。 ついでに教えておくと、この周辺に仕掛けられていた貴方の術式を凍結させた私の伐刀絶技《セルシウスサンクチュアリ》は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というもの……残念だったわね、私には領域支配系統のスキルは通用しないわ!」

 

「チッ! 面倒な……」

 

朱い空から見下ろすプルートに毅然と言い放つ明日香。 彼女が居る限り厄介なプルートの《第七園》は封殺したも同然だ。 その事実にプルートは歯をギリッと軋らせ、やってくれたなという怒気が籠った異色の眼で地上の二人を睨みつける。 ここに来てプルートは初めて曇りの表情を露わにしたのだった。

 

だが、これで出雲那達が優勢になった訳ではない。 何故なら《第七園》が封じられたところでこれはプルートのチカラの一端に過ぎず、故に彼はまだ実力の半分すら出していないからだ。

 

「ほらぁ、だから言ってんでしょ!? あたしも加勢した方が断然効率良く終わらせられるってーの!」

 

それに彼の仲間であるマリの存在もある為、彼女が参戦すれば数の優位も消える。 その事を指をさしてギャーギャーと指摘してくるマリをプルートは鬱陶しく煙たがり、内心イラッときていた。

 

「それに、あまり時間掛けるとこの異界化を引き起こしたエルダーグリードがあたし達のチカラを察知して、場合によっては別の異界に逃げる可能性だってあるんだから!」

 

「煩い、そんな事など言われずとも解っている」

 

「だったら二人で戦ってとっとと終わらせる! んで、この異界の主が“例の眷属”だったら──」

 

「それ以上は終焉の盾(やつら)の前で口にするべき事では無い。 ……仕方がないから加勢は許可してやる、だからその喧しい口を閉じろ!」

 

言い合いの中でマリが自分達の目的についてうっかり零しそうになったところでプルートがそれを制した。 それで仕方なくマリの加勢を許した事によって彼女は「よっしゃあ!」と飛び跳ねて(空中だが)喜び、出雲那達とプルート達は再び向かい合う。

 

「痴話喧嘩は終わったようだな? それじゃあ戦闘再開といこうぜ!!」

 

「誰と誰の痴話喧嘩だ!? そのふざけた口を直ぐに黙らせてくれる!!」

 

「武内君、あまり無茶はしないでね。 戦闘に関しては貴方は素人じゃないという事は昼の決闘を観て理解しているけれど、それでも貴方はプロではないのだから」

 

「安心して、殺しはしないわ。 でもあたしの魔法はハンパじゃないから、メチャクチャ痛いのだけは覚悟しておいてよね!!」

 

そして周囲の万応素に呼応して四者の内から湧き上がった三大源力が激しく流動し、膨大なエネルギーが大気を揺るがす……戦いの準備は整った。

 

「──行くぜっ!!!」

 

真っ先に朱い空へと飛び出したのは出雲那だ。 魔術師としての飛行スキル《天鳥》をもって、背中に雷光の翼を形成した彼は空で待ち構える終末の蛇の執行者達目掛けて一直線に飛翔して行く。

 

「単調莫迦だな、撃ち墜としてくれる! 《拡散スル飛炎(フレイム・バラード)》!!」

 

「弾幕行っくわよぉぉぉおお! 《極光の弾幕(アウローラ・バラージ)》、!!」

 

対して下から向かって来る雷鳥を撃墜すべくプルートが火ノ加具土を連続で振るい刃に纏いし黒焔を無数に拡散させるように飛ばし、マリが弧を描くようにその場で旋回して数百にも及ぶ小型の魔法陣を展開しその全てからガトリング砲の如く七色の光弾の嵐を乱射する。

 

「へっ、こんな薄い弾幕屁でもねぇ! 一気に翔け抜けてやるぜ! 《雷光石火》っ!!」

 

闇と光の雨が降り注ごうとも雷の振るうが如き速さで翔ける雷鳥は止まりはしない。 閃光と見紛う速度で出雲那は弾幕の嵐を掻い潜って行き──

 

「雑魚が! 墜ちろっ!!」

 

弾幕を抜けた先からは黒き焔の翼を羽ばたかせるプルートがその炎刃をもって弾丸の如く突進して来ていた。

 

「はぁああっ!!」

 

「ぬぅおおっ!!」

 

出雲那はプルートに接近すると霊装である《十拳》を抜刀。 擦れ違い様に《火ノ加具土》の炎刃と交錯し、ソニックブームにも似た衝撃波が金属のぶつかる音と共に周囲の大気を吹き飛ばした。

 

「《雷光石火》!」

 

「《黒キ鳳凰ノ爆進(エクスプロード・オブ・ザ・ヘルフェニックス)》!!」

 

大気の爆発が止み、闇と光の弾幕が地上を空襲爆撃すると同時に両者は光と闇の閃光となって天高く舞い上がった。

 

音すらも置き去りにして翔ける二つの閃光が朱い空で曲線を幾重にも描き、僅かな間も無く鳴り続ける剣戟音が空間を蹂躙している。 常人の目には黄と黒の軌跡が鳴り響く剣戟音と共に朱い空を侵食し続けて行くように映っている事だろう。 出雲那とプルートは今、それほどの超高速戦闘を上空で繰り広げているのだ。

 

「はやっ!? これじゃあ援護できないじゃないのよ!!」

 

なんとかプルートの援護を試みて極光の魔弾を指先から射出する魔法《極光の鏃(アウローラ・バレット)》の標準を超高速で翔け回る出雲那に合わせようとするマリであったが、速過ぎて全くその標準が定まらず癇癪をあげてしまう。

 

「ええいっ! だからと言って引き下がってたまるかぁっ!! この美少女天才魔導士マリさんを舐めるn「シュート!」──って、うおっと!?」

 

それでも諦めの悪いマリは意地でも狙ってやると眼に動体視力強化の魔法を掛けて無理矢理超音速で跳び回る出雲那をその視界に捉えようとするが、その隙を狙って明日香が牽制用の射撃伐刀絶技《スプラッシュアロー》をマリに向けて不意打ち気味に放って来た。 不意を突かれて仰天し焦ったマリは地上から向かって来た二発の冷弾を不格好なポーズを取ってギリギリ避け、腹立たしい形相で眼下のハイウェイに立つ明日香を睨みつけた。

 

「ちょっと!? いきなり何すんのよっ!!」

 

「隙を見せた貴方が悪いわ。 私がいる事も忘れないで」

 

マリの文句を正論で軽く言い返した明日香は上空で超高速戦闘を繰り広げている出雲那とプルートを一瞥して溜息を吐く。

 

──“あまり無茶はしないでね”って言った傍から……はぁ……仕方ない、《冥界の焔(ヘルフレイム)》は暫くの間武内君に任せておいて、私はこっちの執行者を出来るだけ早く倒す事に専念しましょう。

 

「貴方の相手は私よ、可愛らしい執行者さん。 遠慮しないで、何所からでも掛かって来なさい!」

 

「……上等よ……ブッ飛ばしてやるっ!!」

 

左手で自身の艶のある髪を掻き上げる明日香の挑発に簡単に乗ったマリが右手に虹色の粒子を纏った二十メートルはある光の大剣を形成し、大気が爆ぜる勢いでハイウェイ上で霊装を構える明日香に向かって急降下して突撃して行き、その全てを斬り裂く刃を振るった。

 

──()()の魔力!? まさか、この魔法は!!!

 

「《極光の剣(アウローラ・ブレイド)》!!」

 

眼前で七色の大剣が振るわれる瞬間、明日香はマリの魔法の正体を察して受けたら危険だと咄嗟に判断し、大きく後方に飛び退いた。 直後、彼女が飛び退く直前に居た場所を中心として横斜め上の軌道で道路を切り裂きながら光剣が通過し、飛び退いた明日香を追撃するように光剣が斬り返されてバツ字の裂け目がハイウェイに刻まれる。

 

刹那、バツ字に刻まれたハイウェイの一部は音を立てて崩落し、無数の破片が煉獄の炎海に飲み込まれて行く……安全圏まで飛び退いた明日香はいとも容易く切り裂かれたハイウェイを目の当たりにして戦慄した。 光剣で切り裂かれて崩落した場所は一見鉄の橋の表面をコンクリートで固めたハイウェイだが、異界の物質は全て現世には無い未知の霊子で構成されているものであり、その強度が見た目通りとは限らない。 それをあのキャスケット帽の魔導士が形成した魔力剣はまるでバターを切るようにアッサリと切断したのだから驚愕せざるを得ないだろう。 彼女の魔法は間違いなく通常のものじゃないと明日香は確信した。

 

──あの“虹色の魔力”……私の知っている限りだと二つの可能性が考えられるけれど、形成した魔力剣の驚異的な切れ味を考えると……少し試してみようかな。

 

「ハッ!」

 

マリが使う魔法の正体を掴む為の策を頭の中で即興で構築した明日香はコンクリートを蹴ってハイウェイから飛び出し、付近にあるビル郡の側面を跳び回りながら三次元の立体機動でマリから距離を稼ごうとする。

 

「──って、どっからでも掛かって来いと言っておいて、逃げるんかいっ!! クールで優等生っぽい顔してんのにふざけてんじゃないわよ? 逃がすかぁぁああああああああああっ!!!」

 

明日香の行動を見て自分を馬鹿にしていると思ったマリは当然逃げる明日香を怒りの形相で追撃して来た。

 

「おらぁぁああっ!! 逃げんなぁぁぁあああ!! うらぁぁぁああああっ!!!」

 

ビル郡の間を縦横無尽に跳んで凄まじい速度で移動する明日香を狙ってマリは《極光の剣》を無茶苦茶に振り回し、周囲の高層ビルを次々と真っ二つに切断していく。 しかし、怒り任せの単調な攻撃軌道では明日香を捉える事などできる訳がなく、七色の大剣の刃は無駄な物を斬るばかり……空を飛べるマリの方が有利な筈なのに、何故か明日香の方が戦いの主導権(イニシアチブ)を握っている様だった。

 

「剣の扱いがなっていないわね。 それに貴方、少し沸点が低すぎるんじゃないかしら? カルシウムはちゃんと接種した方がいいと思うわ、神経の興奮を抑える効果があるらしいからね……とりあえず定期的に牛乳やヨーグルトなどの乳製品でも飲んでみたらどう?」

 

「大きなお世話よっ! 牛乳なら毎朝飲んでいるからアンタに心配される筋合いは無いってーのっ!!」

 

「そう? それにしては小さいわね(身長が)……」

 

「小さっ(胸部が)!!? ……ああああ、あたしのコココ、コンプレックスをををっ!!」

 

これも策の内なのか明日香は《極光の剣》を空振りしまくるマリを煽りに煽って挑発していたのだが、どうやらその中で彼女の禁忌に触れてしまったらしく、マリは指をワナワナと小刻みに振るわせながら明日香を指し、ガチガチに引き攣らせた表情が体内にある魔核からの強大な魔力の噴出と共に段々と般若のような憤怒の表情に変わってしまう。

 

「ゆ、許さない……自分は少し大きいからって……ッ!!」

 

明日香が言った事を盛大に勘違いしたマリちゃんは、それはもう、御怒りだった……彼女の背後に雷が落ちたような錯覚を感じさせて、ブチギレたマリは先程出雲那の前にプルートと共に参上した時に空のグリードの大群を纏めて葬った広域殲滅魔法《極光流星群(スターダスト・アウローラ)》を放つ前に展開したのと全く同じ巨大な魔法陣を展開する。 明日香がどれだけ動き回ろうが広範囲を絨毯砲撃して逃がさない魂胆なのだろう。 怒りの拳が振り上げられる。

 

「ブッ殺す! 死ね、巨乳っ!! 《極光流星群》──ッッ!!!」

 

【不殺の魔導士】とはいったい何だったのだろうか(汗)……マリはブッコロ宣言と共に眼前の魔法陣に振り上げた拳を怒りのままに殴り付け、爆砕すると共に百を超える七色の魔力砲弾が撃ち出された。

 

──な……なんて出鱈目なの!? 射線と照準を固定する術式の構築を全て魔力に回して形成した巨大な魔力ダムを決壊させて、弾け飛んだ大魔力を無差別多弾頭砲撃として撃ち出すなんて!!

 

「くっ!!」

 

明日香は迫り来る無差別絨毯砲撃を前にしてビルの側面のガラス窓を蹴破り、内部に侵入して朱く染まったテナント内を全力で駆け抜ける。 廊下への扉を蹴破り内部通路に出たところで魔力砲弾の嵐が殺到、容赦なくビルを撃ち抜きその内部諸共無数の巨大な孔だらけにしていく。

 

──この砲撃、物質を()()()()()()()()!? ……やっぱり、間違いないようね。

 

右も左も上も下も虹色の砲撃が蹂躙して破壊して行く光景を目の当たりにして明日香はマリの魔法の正体を完全に見破ったようだ。

 

多量の魔砲弾がビルを全体的に撃ち抜いた為にその質量の殆どが消失し形が保てなくなったビルは無数の瓦礫となって崩落して行くが、それでも休まず爆撃は続いており、明日香はその爆心地の間を落下する瓦礫を乗り継いで潜り抜けるというなんとも無茶無謀な方法で砲弾の嵐をやり過ごして行く。 直撃はもちろん、一発でも掠ればアウトだ。

 

そんな決死な状況だというのにこの柊明日香という伐刀者は常に冷静に飛来する砲弾と砲弾の間を潜って回避し続けている。 なんという屈強な精神力なのだろうか、彼女は最後の瓦礫を蹴って大きく跳躍し、遂には無傷で爆撃範囲から飛び出したところで《極光流星群》の砲撃が止むのだった。

 

遠くの空で光と闇の閃光が休む間も無く幾度とぶつかり続ける中、明日香は朱い空を滑空して地上を見下ろす。 そこには地上と呼べる物は無く、煉獄の炎の海が広がっているだけだった……。

 

「とんでもない破壊力ね、あんなに広大な範囲で展開していたビル郡を今の魔法だけで跡形もなく消し飛ばしてしまうなんて……これがこの世の森羅万象全てを七色の光によって問答無用で消し去る古代魔法。 希少ながらも複数の方法で習得できる滅竜魔法などとは違い、第一次遭遇(ファーストアタック)期の【原初の魔導士(エンシェント・ウィザード)】の血筋にしか継承される事のない“純血属性(ピュアブラッド)”、そしてその中でも絶対的な破壊力を誇る《極光(きょっこう)魔法》……なるほど──」

 

明日香は空中で身を翻して身体を正常の体勢に持って行って()()()()()()()()()()()その上に立ち、何時の間にか数メートル前まで迫って来ていたいたマリにその澄んだ碧眼を向けた。

 

「──貴方が終末の蛇の《極光の魔女》ね? 上から聞いているわ。 道理で貴方のような純粋な魔導士(ウィザード)が対霊武装も無しに通常の魔法が通用しないグリード達が蔓延る異界探索に赴いて来ているのかと思ったけれど、魂すらも消し去る極光魔法の使い手なら此処に来たのも納得できるわ、グリードを倒せる魔導士なんだしね。 ……それにしても貴方、なんでも【不殺の魔女】を自称しているそうね? それにしては今の魔法は完全に私を殺しに来ていたと思うのだけど?」

 

「もちろん、身体の一部分(胸部)だけは殺すつもりでブチかましてやったわ。 でも舐めないでよね、あたしは美少女天才魔導士マリさんよ? 人間を消し飛ばさないように魔法の殺傷力を抑える事くらい造作もないってーの!」

 

「そう、制御はお手の物ってわけか……極光魔法なんて殺傷能力の高過ぎる魔法を制御できるなんて、“フレイザー先輩”の神掛かった魔力制御とどっちが上なのか興味があるわね」

 

「冗談。 あの《必中の星(サジタリウス)》の変態制御能力に匹敵できる奴なんて終末の蛇(ウチ)でも使徒の《紅の幻魔》と《緋色の絶望》ぐらいなもんよ……あ! あと“マザー”も居るわね」

 

「結構いるじゃないの……迂闊な事を言うんじゃなかったわ、あんな変態制御能力を持つ魔導士が敵に三人も居るだなんて……」

 

「てか、そういうアンタも伐刀者ながら大概じゃない? その足場にしている氷、重力に引っ張られて落下しないのはアンタが空間に上手く固定しているからじゃないの?」

 

「いや、これは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()から落下しないってだけなの。 伐刀絶技として名付けるなら《ブルーウォーカー》ってところよ」

 

……どういう空気なのか、二人は空中で雑談をしてしまっている。 意外にも人としての相性は良いのだろうか、普通に雑談している分には雰囲気は悪くなさそうだ。

 

もし組織の立場が無かったなら二人は良き友になっていたかもしれないが、今は雑談を長々と続けている場合ではない事ぐらい二人は理解している。

 

「ふーん……ま、軽いおしゃべりはこれぐらいにして。 時間が押しているし、戦闘を続けるわよ!」

 

「そうね。 向こうで《冥界の焔》と戦っている武内君の事も心配だし、無駄な事を話している場合じゃなかったわ」

 

うっかりしていたと再び気を引き締める二人。 明日香が霊力を滾らせて霊装を構え、マリが両拳を腰に引き締めて魔力を昂らせた。

 

「名乗らせてもらうわ! 結社《終末の蛇》──執行者No(ナンバー).ⅩⅨ(ナインティーン)《極光の魔女》二階堂マリよ! よく覚えておきなさい、終焉の盾の《霊剣使い》柊明日香っ!!」

 

「ええ、憶えておくわ。 覚悟しなさいマリ、私の氷は貴方の極光でもそう易々と消し飛ばせる程柔じゃないわよ!」

 

「上等っ!!」

 

両者共に戦意は上々だ。 明日香は霊力を放出して概念に干渉する冷気を全身に纏い前傾姿勢で《エクセリオン=ハーツ》の切っ先を極光の魔女に向け、マリは眼前に五重の魔法陣を展開して両手を組み霊剣使いを見据えている……あとは、激突するのみ!

 

「氷迅の剣──《アイシクル・ノヴァ》っ!!!」

 

「空ごとブッ飛ばす──《極光の爆砕(アウローラ・インパクト)》っ!!!」

 

明日香が氷礫を撒き散らしながら突進するとマリが五重の魔法陣に極限まで収束させた魔力を籠めた両手をハンマーのように叩き付けた瞬間、朱い空全体を虹色の爆炎が彩り、氷華の大輪が咲いたのだった……。

 

 

 

 

 

 




出雲那「ちょっ、蒼空!? 柊の奴を魔改造し過ぎだろ!? 何だよ【凍結停止】って、チートだろ!!?」

いやぁ、伐刀者ってさあ、なんか変わった異能を持っている事が多いだろ?(原作のステラなんか炎と見せかけて【(ドラゴン)】だったし……)

出雲那「ああ、まあな……」

だからアスカも折角伐刀者設定なんだから、その異能をステラのように単純なものと見せかけたチート能力にしようと思ったんだ。 それで考えて思い付いたのが【凍結停止】ってわけ。

出雲那「でも、チート能力は扱いを間違えると逆にヘボくなる事だってあるんだぜ? 柊の奴に使いこなせるのかよ?」

明日香「心配は無用、私はプロよ!」

出雲那「うあっ、柊!?」

明日香「プロの私ならこの程度の能力くらい問題無く使いこなせるわ。 敵が設置した(トラップ)系のスキルを術式ごと停止させて無力化したり、空間を固定して浮遊する足場にしたり、結構便利よコレ」

更に敵の攻撃スキルを発動前に潰したり、発動されても“概念干渉系”だから()()()()()()()()()()()()()()()()事だってできる!

出雲那「うわ、チート。 それ無敵じゃねぇの?」

いや……“時”とか“運勢”とか因果に関係するものはさすがに凍結させられないし、マリの《極光魔法》のような触れた全てを消滅させるなど“一部の特殊特性が付加されたスキル”は凍結できなかったりするんだよねぇ……因みに、出雲那とプルートが持つ《八百万の神刀》の二振りのチカラも凍結できなかったりする。

出雲那〔一体何なんだ、この《創生の雷刀(イザ=ナギ)》のチカラとはよ? 気になって夜も眠れなくなるじゃねぇか……〕

明日香「でも、私は魔改造されたけれど……マリって、この戦闘力で『対魔導学園35試験小隊』の彼女の原作設定そのままなのよね……」

《極光の魔女》マジ公式チート……ロクアカの読者に分かり易く言えばマリの魔法は【全魔法がイクスティンション・レイの消滅効力付加】だからな……。

出雲那&明日香「「うわぁ、チート……」」

そんなわけで、プルート達との戦闘は次回も続きます! ……こんなにもたもたしていてリトルガーデンでピンチの転落王者元クiゲフンゲフンッ! クレア様は果たして無事なのだろうか……。

待て、次回!

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