幻想戦記クロス・スクエア   作:蒼空の魔導書

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『壊れた非常識な日常編』のラストバトル開幕!

章最後のエルダーグリード戦。 推奨する戦闘BGMはもちろん東亰ザナドゥの神戦闘BGM『Believe It!!』です!



その一刀を以って偽りの陰を斬り裂け!

エルダーグリード──《ドッペルゲンガー》

 

「シッ!」

 

戦闘開始! 司令塔の頂上にて無数の浮遊砲台の防衛線を張って嘲笑の笑みを浮かべ、見下すように妖艶に手招きをして挑発をして来ている【絶対女王】──クレアに化けたドッペルゲンガーに向かって出雲那は甲板の床を蹴った。

 

女王(クイーン)に楯突く下郎がまた一人……地に撃ち墜として跪かせて差し上げますわ!」

 

山なりではなく弾丸の如く一直線に直進跳躍で向かって来る出雲那を迎撃するべく【絶対女王】が周囲に浮かぶ下僕達(アリステリオン)に号令を発する。 女王に仇名す反逆者を蹴散らせと命を受けた紅き守護者達が女王の前に集合し隊列を組む。 横に広がるように並び左右を前面にせり出させた“鶴翼の陣(クレインウィング)”……どうやら防衛線に飛び込んで来た出雲那を挟み込み、前方180度包囲射撃を浴びせるつもりのようだ。

 

「抜かせよモノマネ女王っ! こっちこそそのポンコツお嬢様芸人面の顔型を取って、お面作って、青学の校門にある青竜像の顔面に張っ付けて晒してやらあぁぁぁぁあああああーーーーーーっ!!!」

 

出雲那は相手が本人でないのをいい事に普段から心の内に抱いているクレアの印象を叫びぶち撒けて《気高き姫君(アリステリオン)》の防衛線に突攻。 二十の浮遊砲台が一斉に放って来る包囲射撃を鞘に帯刀したままの《十拳》を手に取って振り回し、幾重にも連なって次々と襲い来るレーザー光線を一条、また一条と叩き落して直進して行く。

 

豪雨の様に左右前方から襲来する無数のレーザー光線を一発も被弾する事無く捉え続けるそのスイングスピードはまさに神速、それは通常の人間はおろか並の星脈世代(ジェネステラ)でも到底できる芸当ではないだろう。

 

それを可能にしているのは出雲那の伐刀者(ブレイザー)としての能力にあった。 彼は身体の神経や筋肉に【霊力】の電流を流して反射速度や運動能力を強化する事ができる“身体強化系”の異能を持っており、その伐刀絶技の名を《雷髄(ライズ)》という。

 

乱雑に高速回転するような動きで十拳を振り回しながらレーザー光線の豪雨の中を無傷で突っ切った出雲那は司令塔の頂上に足を着けると同時に抜刀して偽クレアに斬り掛かるものの、弧を描く刃は偽クレアが余裕の笑みを浮かべると同時に床を蹴って上に跳躍する事で虚しく空を切ってしまう。

 

「ちっ!」

 

舌打ちと共に蝶の如く頭上を舞う絶対女王を憎たらしく見上げると、何時の間にか《気高き姫君》がその周囲を固めていて空から二十の砲口の標準が出雲那に向けて定められていた。 その陣形は半球形の牢を地上の餌を取る鳥に被せて空を奪う“鳥籠の陣(バードケイジ)”、上空周囲360度を囲う浮遊砲台の包囲網から逃れる事は不可能だ。

 

「葵柳流抜刀術──《星墜とし》っ!」

 

ならば殲滅砲撃が降り注ぐ前に撃ち墜とすのみ。 踏み出した右脚を軸に流れるように一回転しながら十拳を鞘に帯刀し、瞬間的に練り上げた気力を鞘内に集中させて一回転し終えると同時に再び抜刀。 飛ぶ斬撃が浮遊砲台の一つを穿つと爆発と共に無数の斬閃が飛び散り、それが包囲する全ての浮遊砲台を撃墜して雷鳥を閉じ込めて処分しようとする鳥籠を破壊した。

 

「なっ!? 馬鹿な……」

 

「もらったぜ! このままブッタ斬るっ!!」

 

《気高き姫君》がこうも簡単に全て無力化された事に一瞬の動揺を覚えている偽クレアの隙を突いて出雲那は床をチカラいっぱい蹴って真上に跳躍、十拳の柄を握りしめて弾丸の如く大気を貫き朱い空を舞う絶対女王に勝負を決めに行く横薙ぎを放った。

 

「ハァッ!!」

 

弧を描く剣閃が偽りの女王の胴を両断せんと振るわれる。 射程圏内の近接(クロスレンジ)だ、もう“加速(アクセラレート)”を使おうとも十拳の刃からは逃れられない。

 

戦闘が始まってまだ数十秒しか経っていない為、少々拍子抜けだが……この戦いは──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……まだ終わらない。

 

「そう簡単にはいかないよ、出雲那君」

 

「なっ!!?」

 

ガキィィンという鈍い鉄を打ち付ける音が虚しく朱い空に響き渡る。 戦いを決する為に振るった横一閃は“烏のように黒い刀”の刃に受け止められて防がれてしまった。 それは本来なら有り得ない事象だ、何故ならドッペルゲンガーが化けているクレア・ハーヴェイの百武装(ハンドレッド)は無数の浮遊砲台を操る“ドラグーン型”で刀剣の武装を展開する“シュヴァリエ型”では無い、故に()()()()()()()事などあり得る筈がないのだ。

 

「一……輝……!?」

 

そう……今出雲那の眼に映る眼前の顔は彼曰くポンコツお嬢様芸人面のクレアでは無かった……男性アイドル顔負けの爽やかさが印象的ながら眼の奥に修羅の闘志を秘める《無冠の剣王(アナザーワン)》──出雲那の親友にしてルームメイトの同級生“黒鉄一輝”その人のものであった。

 

「ハァッ!」

 

「ぐっ!?」

 

なんとドッペルゲンガーは刹那の一瞬にしてクレアから一輝に姿を変えていたのだった。 さしずめ【虚冠の剣王】と言ったところか。

 

十拳を【虚冠の剣王】の陰鉄が押し返し、逆に薙ぎ払われた出雲那は来た道を戻るかのように司令塔の頂上に叩き落され、あまりの衝撃の大きさに塔が上から砕け落ちるように崩壊してしまう。 出雲那は崩落した塔の残骸に埋もれて生き埋めになってしまった──

 

「うおらァァーーーッ!!」

 

「……」

 

……と思いきや、三秒後床に散らばった瓦礫の山に無数の斬閃が走り、出雲那が大声で叫びながらその中から蹴り砕いて出て来た。 あんなに派手にブッ飛んでおいていったいどういう神経をしているんだと呆れたものだ。 万有引力の法則に従って朱い空から甲板の上にシュタッと着地を決めた【虚冠の剣王】がその呆れた惨状を目の当たりにして若干遠い目をしている。

 

──何でいきなり一輝の姿に……そういや、ついさっきサクヤの奴が──

 

『そう、あの陰がこの朱き煉獄の世界を現世に侵食させている存在……人の心の奥底に眠る闇を映し出す陰──エルダーグリード《ドッペルゲンガー》よ!!』

 

──って、言ってやがったな……つまり、今度は()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()ってところか?

 

出雲那は戦闘に入る前に念話でサクヤが伝えてきた敵の情報を整理し、今の状況を見定めてそう推測する。

 

心を映す陰、ドッペルゲンガー……その特性は相手の心や記憶を読み取り、自らの形とチカラとして現実に具現する。

 

──どうやらあのモノマネヤローは戦っている相手の姿に化けてミラーマッチをするだけが能じゃねぇみたいだな。 相手の記憶を読み取ってその一部を再現する……へっ、上等だ!

 

敵との距離は凡そ20m……出雲那は瓦礫の上に立ち、十拳の刀身を鞘に収めて右腰に帯刀。 抜刀体勢を取り、偽一輝に不敵の笑みを向けた。

 

「? ……何がそんなに可笑しいのかな?」

 

「ははっ、いやなに、おもしろくてツイな。 そういや最近しばらく一輝とは本気で打ち合っていなかったし……丁度いいぜ、今のオレの剣が一輝相手にどこまで食い下がれるか──」

 

出雲那は不敵の笑みを崩さずに体勢を下げ──

 

「──試してみるかっ! 行くぜ、モノマネ野郎ぉぉーーーーーっ!!」

 

足下の瓦礫を爆砕するように踏み砕いて疾風の如く疾走。 正眼に陰鉄を構える【虚冠の剣王】に正面から挑み掛かりに行く、その速度は無数の残像を生み出して後から追従する現象を発生させている。 【魔力】と【霊力】の雷光纏いて突進するその姿は、まるで一角を持つ雷の神獣のようだ。

 

「勝負だ出雲那君! 僕の最弱(さいきょう)を以って、君の意地(さいきょう)を打ち破るっ!!」

 

対する偽一輝も本人の口上を模して迎え撃つ体勢に入った。

 

陰鉄の切っ先を正面から突撃して来る出雲那に向け左手を刀身に添えて柄を握る右手を引き絞る“突き”の構え。 その切っ先一点に己の全てのチカラを集約し──突き放つ!

 

「第一秘剣──《犀撃(さいげき)》ィィーーーッ!!」

 

「はぁぁああああーーーーっ!!!」

 

空気を突き破る勢いで繰り出された陰鉄。 【虚冠の剣王】の全身全霊にして渾身の一撃と正面衝突する直前で出雲那は十拳を抜刀。 迸る雷光の刃と岩をも突き崩す切っ先がぶつかり合い、反動の衝撃で二人の足下が蜘蛛の巣状に陥没して周囲の建物の窓硝子の全てが割れ落ちていく。

 

「なっ!?」

 

同時に十拳の柄を握る出雲那の左手が若干左斜め上に引っ張られた、偽一輝の《犀撃》が出雲那の抜剣と衝突する瞬間に軌道を変えたのだ。 結果、左斜め上に切り上げた十拳の腹に陰鉄の切っ先が突き立ち、切り上げの軌道の運動エネルギーも相俟って出雲那の左腕が押し上げられてしまったのだ。

 

「ふっ!」

 

「がはぁっ! ──なんのっ!!」

 

曝け出された懐に間髪入れず偽一輝の左拳が突き刺さる。 強烈な推進力を伴った攻撃をモロに鳩尾にくらった出雲那は口から胃液を吐いて後方に吹っ飛びそうになるが、丹田にチカラを込めて足を踏ん張る事によって食い縛り、耐えきった。

 

そして二人は蜘蛛の巣状の小クレーターの上でそのまま斬り結ぶ。 両者同時に振るった弧を描く剣閃が激突し鉄を打ち付ける鈍い音を響かせて、火花を散らすと同時に弾くのを合図に激しい剣戟が開始された。 全アドレナリンを放出しての全力の斬り合い。 休まずに鳴り続ける剣戟音と共に弾ける無数の火花が両者の間で壁となり、弧を描く光の軌跡が四方八方から相手に向かい火花の壁に衝突しては消えて行く。 常人の目には二人の剣筋が刹那の間に奔っては瞬く間に消えていく二人の周囲を取り巻く無数の細い光線に映る事だろう、その周囲に渦巻く無数の光の軌跡が旋風を巻き起こしているかのような錯覚さえ覚えてしまう。

 

──偽物でも()()()()()()()()()こりゃあ。 オレの振るう剣が全部受け流されている……チッ、さすがだぜ。 異能なしの真っ当な斬り合いじゃ、まだ一輝に勝てねぇか……仕方ねぇなっ!!

 

「っ!?」

 

このまま斬り結び続けたらいずれ致命的な隙を作られて斬り負けると察した出雲那は奥の手を行使した。 十拳が眼を焼く程の強烈な光を発する紫電を放出し、それが柄を握る左手に流れて出雲那の全身を駆け巡る。 紫電を全身に纏うと急激に出雲那が振るう剣の速度が爆発的に跳ね上がった。

 

「うぉぉぉおおおぉぉおおおぉおおおおっ!!!」

 

「くっ!」

 

飛んで来る手数の多さと凄まじい疾さに【虚冠の剣王】は苦悶と驚きの表情を浮かべている。 急激に上昇した相手の剣速に対応が追い付かないのだ。 伐刀絶技《雷髄》の神経刺激による身体能力の向上が迅雷の如きスイングスピードを実現し、光の流星群の如き怒涛の剣閃が火花の壁を押し返して行く。

 

たまらず偽一輝は刃を引いて、後方に大きく跳び退いた。

 

──チャンス! 貰ったぜっ!!

 

それを好機と出雲那は足を強く踏み出して弾丸の如く飛び退いた偽一輝を追撃する。 狙いは着地の瞬間だ。 身体の重心が安定していて隙の無い体捌きを見せる一輝もさすがにその一瞬ならば身体を支える重心は不安定、強力な一撃を打ち込めば勝機を引き寄せられる筈。

 

低空を滑空するかのように超高速で疾走しながら十拳の刀身を鞘に収め、右腰に帯刀して鞘の内に雷光を迸らせる。 《雷切》で斬り抜けるつもりだ。 師に及ばぬこの一閃でも人の身では対応できぬ雷速の一刀、偽物如きを斬り捨てるには十分だ。

 

「雷切ィィーーーーーッ!!!」

 

偽一輝の両足が床に着く直前に一気に距離を詰めて、着地と同時に受け継がれた伝家の宝刀を鞘より抜き放つ出雲那。 音速を遥かに超越する一閃が大気を爆散させて、衝撃波が周囲に存在する有象無象を塵に変えて吹き飛ばす! それは目の前の【虚冠の剣王】も例外ではなかった…………ん?

 

──っ!!? 斬った手応えが無ぇっ!! しまっ──

 

「第四秘剣──《蜃気狼(しんきろう)》っ!!」

 

「ぐっ!!」

 

身体を無理矢理傾けるように咄嗟に横に跳び退いて、出雲那は鉄の床を転がる。 その刹那の間に烏のように黒い刃が出雲那の頭上の空を切っていた。 そう、出雲那の雷切は虚冠の剣王に躱されていたのだ。

 

足捌きの緩急で残像を作り出す黒鉄一輝のオリジナル剣技の一つ──《蜃気狼》。 出雲那が狙うべきは着地の瞬間ではなかったのだ。 もし彼に雷切を伝授した師である刀華の真の雷切ならば残像を作ろうとも今の一閃で確実に【虚冠の剣王】を両断し勝負を決する事ができたのだろうが、生憎出雲那の不完全なそれでは地に足を着けた黒鉄一輝を捉える事はまだできない。

 

「ふぅ~、あっぶねぇあぶねぇ。 今のを避けた上にカウンターまでブチ込んできやがるとは、やっぱ一輝は強ぇな……だけど、オレだってまだまd「八葉一刀(はちよういっとう)流──《弧影斬(こえいざん)》!」──って、のあぁぁっ!?」

 

立ち上がって敵に振り返ろうとする出雲那だったが、続けざまに“三日月状の閃刃”が飛んで来た。 出雲那は振り返った刹那に眼前に迫っていた閃刃に仰天して、慌てて《雷髄》を発動し瞬間的に床に弧を描いてそれを回避し、閃刃を飛ばして来た敵を文句を言いたそうな批難の目で見据えた。 そこに立っていたのは虚冠の剣王ではない黒髪の剣士──

 

「出雲那、油断大敵だぞ? 敵に五秒以上背を向けるなんて、誘いじゃなければ自殺行為だ」

 

「……今度はリィンかよ」

 

出雲那の記憶を読み取ってドッペルゲンガーが次に化けたのは出雲那のクラスメイトで友人の一人、そして八つの型から成る東方剣術《八葉一刀流》の使い手──《灰色の騎士》リィン・シュバルツァーであった。 さしずめ【無色の騎士】だろうか。 新たな猛者の出現に出雲那は表情を引き攣らせている。

 

──リィンも手を抜ける相手じゃねぇ。 八葉一刀流は型に填まってはいるが読み易いと思って隙を突けばカウンターくらうし、初伝の技でも斬鉄をやらかしやがる。 あと強化(バフ)無しの素なのにオレの《雷光石火》に追い縋って来るし、星流闘技(メテオアーツ)でもないのに【気力】で炎出すs──

 

「心の中で愚痴を言っている場合か? こっちは容赦しないぞ!」

 

「──おまけに、あらゆる先入観を度外視して本質を捉える《観の眼》でこっちの考えはある程度読まれているしよ。 一輝の照魔鏡レベルの観察眼程じゃねぇけど、コイツも大概良い眼してやがるぜチクショウッ!」

 

「行くぞ! 二の型──《疾風(はやて)》っ!!」

 

「だが、ブッタ斬る! 《雷光石火》っ!!」

 

向かい合った両者は得物を手に同時に駆け出し、音を置き去りにして閃光となってぶつかり合う。 朱い空にも届くような甲高い剣戟音と共に差し交し位置が入れ替わるように駆け抜けると二つの閃光は跳弾するかのように方向を変え、不規則な位置で三度程同じように両者は一瞬刃を交えては駆け抜けた。 その間、僅か0.5秒──刹那の一瞬で四度の剣戟音がほぼ同時に鳴り響いた。

 

「ぐっ!?」

 

互いに背を向けて得物を振り抜いた恰好で煉獄の炎海を眼に映す出雲那は、左脇腹を右手で押さえてガクリと片膝を床に着いてしまう。 その脇腹は緋色の液体が滲み出ていて学ランの内側に着ている白いシャツの一部が液体と同じ色に染まっていた。 今の超高速の打ち合いの最中に一撃、【無色の騎士】の刃をまともに受けてしまったのだ。

 

「や……やるなリィン。 去年の《王竜四武祭(リンドブルス)》ベスト16入りは、やっぱ伊達じゃねぇってか……」

 

彼は十拳の刀身を床に突き刺してそれを杖代わりに苦痛で倒れそうになった身体を必死に支えながらも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と実感していた。 舞い散る木の葉を斬るように精密且つ疾く鋭い技は閃きの如く。 《灰色の騎士》の二つ名を貰った昨年の王竜四武祭では惜しくもナイツニクス学園の《黒の剣士》に敗れはしたものの、聖ルシフェル学園の《絶氷(ぜっひょう)》を破ってベスト16入りを果たした。 その剣技は出雲那の記憶にもしっかりと焼き付いており、その八葉の一端の“奥義”は鮮明に印象に残っている──

 

「無明を切り裂く、閃火(せんか)の一刀……!」

 

「っ!!」

 

そう、背中に感じるこの静寂に燃ゆる焔のようなプレッシャーも──

 

「クソッ!」

 

「はああああっ!」

 

振り向いた瞬間に激しく燃え盛り、夜の草叢を錯覚させるような威勢と共に一直線に自分へ迫って来る紅も──

 

「はっ! せいっ! たあぁっ!!」

 

「うぐっ!」

 

その振るわれる三刀の刀身を包む、燃え盛る焔も──

 

「おおおおおおおおっ!!!」

 

「──があっ!!!」

 

自分を容赦無く切り刻む、幾重にも連なる六花の剣閃も──

 

(つい)の太刀──《(あかつき)》っ!!!」

 

「がぁ″ぁ″ぁ″あ″あ″あ″あ″あ″っ!!!」

 

その太刀を鞘に収める背に感じた哀愁も──全て出雲那の魂に刻み込まれているのだ。

 

八葉一刀流、第“七の型”中伝の奥義──《暁》。 無数の焔の斬閃に斬り刻まれた出雲那の身体は奥義の締めに巻き起こった斬閃の爆発によって吹き飛び、リトルガーデンの艦上の街に建つ建物を幾つも突き抜けて薙ぎ倒し、商業施設や娯楽施設などがある華やかな繁華街“ファミリー区画”の中央道路の一角に蜘蛛の巣状のクレーターを形成した。

 

「う……が……」

 

咄嗟に反応して辛うじて急所は避けたものの、無数の炎痕が刻まれた身体は深刻なダメージを受けてしまった。 喉が焼けてうまく声が出せない。

 

──オレってホンット弱ぇな、畜生。 自分(テメー)のチカラ不足と不甲斐無さに反吐が出るぜ……でも、ここで倒れるわけにはいかねぇ──

 

「ぐ……おおぉっ!」

 

それでも十拳を杖に出雲那は何とか立ち上がった。 例えまだ踏み入れるには早すぎる過酷なプロの戦場だろうと、例えどんなに自分が身の程知らずだろうと、負けるわけにはいかないのだ、死ぬわけにはいかないのだ、昨晩の夜に自分の命を救ってくれた少女と明日の学園で友達と共に笑い合う為にも。

 

──でも、どうするよ? 相手は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を持ったエルダーグリードだ。 あのヤロウ、オレの記憶を勝手に…………ん? ……“記憶”?──

 

「──そこにブッ飛んでいたのか出雲那っ! 最後はこのオレが引導を渡してやらぁぁぁああああああっ!!!」

 

ドッペルゲンガーの攻略方を考えているうちに建物の屋根を乗り継いで空に跳躍して来たのは、青学の仲間である《白竜》の“スティング・ユークリフ”に化け直したドッペルゲンガーだった。 竜が咆哮を上げて朱い空を舞い、満身創痍の獲物を全力で仕留めるべく聖なる息吹を放つ。

 

「くらえ!! 白竜の──《ホーリーブレス》ッ!!!」

 

昼の決闘で放った《白竜の咆哮》とは比べ物にならない極大レーザーを吐き出し、瞬雷の剣士ごと艦上の街を貫く。 聖なる白き光がドーム状に広がり、街を飲み込んで消えて行く……そこにはもはや何も残っていない。 艦の底まで空いた空洞に、底から覗く地獄の炎だけだった。

 

「……へっ! どーだ、思い知ったか!? やっぱオレが最強だぜっ!!」

 

跡形もなく消えて巨大な空洞となったファミリー区画を付近の時計塔の屋上に降り立って見下ろし、偽スティングはドヤ顔で拳を天に掲げた。 出雲那はホーリーブレスによって消し飛んだのだろうと思って勝利を確信したのだ──

 

「葵柳流帯刀術──」

 

「…………ひょっ?」

 

調子に乗った白竜を螺旋の槍で突き落とさんとしている雷鳥が足下に潜んでいる事にも気付かずに──

 

「──《螺旋鋼突(らせんこうとつ)》っ!!!」

 

「な────」

 

鞘に収めた刀身を柄を握りしめる両腕の捻りを利用して突き放つ、ドリルを連想させるスクリュー回転突きがスティングの足下の床を突き貫き────ポコチィィーーーン♪

 

「があ☆$#※%ご@べぎ¥ア″ァ″ァ″ーーーーーーーーッッ!!!?」

 

……その一撃は女には一生理解できない激痛を偽スティングに齎し、解読不能の言語で悲鳴を上げさせて煉獄の朱い空へとブッ飛ばした。 鮮やかな放物線を描き、事故に遭った我が子を気遣うように股間を両手で押さえながら心底痛そうに眼から涙を流して後方の“ミリタリー区画”に落下して行く様は、酷くシュールだ。

 

「──ハッ! マジで馬鹿だぜオレは……“オレの記憶の中の知り合いに化ける”って事は、()()()()()()()()()()()()()使()()()()って事じゃねぇか!」

 

「っ!!」

 

落下しながら恨めしく天を見上げれば、朱い空に雷光の翼を羽ばたかせて不機嫌そうに悪態を吐き捨てながら墜ちて行く竜を見下ろしている出雲那の姿があった。

 

実は《ホーリーブレス》がファミリー区画に落ちた時、出雲那は《雷髄(ライズ)》と《雷光石火》を同時に発動し超高速でその場から離脱していたのだ。 そして偽スティングの落下地点にて建つ時計塔の中に入って屋上の一つ下の階に上がり竜が落下する場所を予測してその丁度真下で待機、竜が屋上に着地したのを気配で感知した瞬間真上の天井を突き破る技を放つ──数秒の間にこれだけの動きがあったのだ。

 

着ている学ランは先程無色の騎士の《暁》に斬り刻まれてズタズタで赤い血だらけだが、彼の表情に苦痛はもう見られない。 寧ろ獲物を狙う鷹のような眼光を光らせて威圧感バリバリである。

 

いったい何故? 何故、身体中が血だらけになる程ダメージを負っているというのに彼はまともに動けるのだ? そう疑問を抱くところだが、出雲那は着ている青学の学ランの内ポケットに右手を突っ込んでそこから何かを取り出し、股間を押さえて落下中の偽スティングにその存在を主張するかのように見せつける……額に青筋を浮かべて。

 

「見ろよコレ……オレの“Myトマトケチャップ”の容器……!」

 

出雲那が手に持ち出したのはズタズタで中身が消失している携帯用のトマトケチャップの容器であった……何で出雲那がそんな物をと思うかもしれないが、大のトマト好きである彼は何時も何時も十以上の携帯トマトケチャップを持ち歩いているのだ。

 

「文字通り無残だろ? さっきテメェにくらわされた《暁》で上着の内や胸、ズボンの脇ポケにしまっていたスペアのMyトマトケチャップも全部コレと同じ有り様だぜ……テメェ、どうしてくれんだ?」

 

……つまり、着ている学ランが部分部分赤く染まっているのはダメージによる流血ではなく、持ち合わせていた“Myトマトケチャップ”の容器が全て先程無色の騎士の《暁》をくらってズタズタになり中身が切り口から流出してべっちょりと付着したという事だ……落ち行く偽スティングを冷徹な表情で見下ろし出雲那の眼光がキラリと光る。 朱い空に背を向けている為に顔が半分影に隠れているのも相俟ってヤ◯ザのように恐ろしい。 持ち合わせのMyトマトケチャップを全部お釈迦にされた事に相当キレちまっているのは見るからに明らかだ。

 

「……オレのトマトを──」

 

こうなったら元凶を思いっきりブッ飛ばさなければ気が済まないだろう。 怒れる雷鳥は十拳という名の嘴の先を落下する竜に定めて、足で天井を蹴る寸前の様に上に両脚を投げ出してバネを作る。 それを引き金に身を弾丸に変えて──発射(フォイヤー)

 

「──弁償しやがれコノヤロォォォオオオオオーーーーーッ!!!」

 

「ゲフゥゥーーーーーーーーッ!!!」

 

そして、怒りの嘴は落下の加速に乗ってコンクリートに叩き付けられる寸前だった偽スティングの腹筋に突き刺さり、そのままの勢いで背中を派手にコンクリートに打ち付け、鞘とコンクリートでサンドイッチになった腹筋が圧力で潰れた。 なんとも惨い一撃だ、衝撃で彼等の半径約30mの地に蜘蛛の巣状のクレーターが形成されているのが今の出雲那の怒りの大きさを表しているようにも見えて戦慄を禁じ得ない。 そんなにトマトが好きなのかこの男は? 全身を“くの字”に曲げられて口から胃液を大量に吐き出している偽スティングが哀れで仕方がない……。

 

「とどめだ! このまま《雷流し》で──」

 

「ぐ……調子にのるんじゃねぇっ!!」

 

「!!?」

 

出雲那がそのまま敵の腹筋に突き立てている十拳を通じて高圧電流を流しドッペルゲンガーを仕留めようとするが、敵は戦士候補生如きの未熟者にやられてたまるかと意地の叫びを上げると同時に自身の全身を真っ黒に染めてドロドロに溶けだすという奇妙な現象を起こしたのであった。 奴は戦う相手の記憶を盗み見てその中の人間の姿に化けるが、その正体はあくまでもグリードなのだから常識外れの行動を起こしても不思議ではない。

 

「あっ!? ……クソッ、逃げられた!」

 

全身を全て溶かして黒い水たまりと化した事によってドッペルゲンガーが出雲那の拘束から抜け出した。 不可解な現象に一瞬の戸惑いを覚えた所為で敵を仕留める好機を逃してしまった出雲那は悔しそうにそう吐き捨てる。 そして水たまりが地をスライドするように移動して出雲那から約20m程距離を取ると、その場で新たな人の形を形成しはじめた。

 

「またオレの知り合いに化ける気か? ……次は誰だよ。 善吉か? マイか? それともオレ自身か?」

 

そして姿の形成が終わり、ドッペルゲンガーが成った姿は黒髪長髪で常に不敵な笑みを浮かべる“黒衣の断罪者”──

 

「──って、ユーリかよっ!?」

 

「飛ばしていきますかっ!」

 

「しかも、いきなり切り札の《オーバーリミッツ》使ってんじゃねぇっ!!」

 

ドッペルゲンガーが化けて来たのはB級遊撃士“ユーリ・ローウェル”であった。 実は出雲那達はよく各《四武祭(フェスタ)》の開催前に最終調整を目的として遊撃士協会に摸擬戦の依頼を出す事があり、その過程でユーリやフェイトとも手合わせをした経験があったのだ。 なのでドッペルゲンガーがユーリに化けたところで特別に驚く事ではないが、問題は彼が“戦闘のスペシャリスト”である遊撃士(ブレイサー)だという事だ。

 

敵はここまで、一輝やリィンなど自分と同じ戦士候補生である青学の仲間に化けて向かって来たが、今度は“戦闘のプロ”だ。 限界まで練り上げた気力を一気に解放して一定時間戦闘力を爆発的に上昇させるスキルを発動し、鬼気迫る気迫で地を蹴る様は獲物に跳び掛かりに行く狼のようで、更なる苦戦を強いられると予想される相手なのだが……何故だろうか、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「蒼破! ──《蒼破追蓮(そうはついれん)》っ!!」

 

「ほっ! はっ! よっ!」

 

相手への牽制として偽ユーリが前進しながら放って来た三発の衝撃波を出雲那は最小限の動きで躱しきる。 その直後に偽ユーリが出雲那を近接戦(クロスレンジ)に捉え、肩に担いでいた白い刀──《ニバンボシ》を振り下ろして斬り付けてくる。

 

「そらっ!」

 

出雲那はそれを鞘に収めた十拳で受けて左下に流して隙を作ろうとするのだが、偽ユーリは受け流されたニバンボシを脇下から背中の上に投げてすかさず拳による三連撃を放ってきた。

 

「《三散華(さざんか)・追蓮》っ!!」

 

出雲那がバックステップで拳を避けると偽ユーリが真上から落ちて来たニバンボシをキャッチしてそのまま大きく踏み出し、後退した出雲那に突きで追撃をかける。 流石は戦闘のスペシャリストと称賛できる隙の無い連撃だ……と言いたいところだが──

 

「ふっ!」

 

出雲那は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()余裕をもって横に少しズレる事で迫り来るニバンボシの切っ先を避けていた。

 

確かに突きは“点”の攻撃であるが故に相手が放って来るのを判っているのなら回避するのは容易なのだが、何故出雲那は偽ユーリが突きで追撃して来ると判ったのだろうか?

 

「はあっ!」

 

「っ!? 危ねっ! 《義翔閃(ぎしょうせん)》っ!!」

 

「ぐうっ──!」

 

「ここだっ!!」

 

突きの隙を突いて偽ユーリの懐に踏み込んだ出雲那は十拳の柄尻突きを偽ユーリの鳩尾に打ち込むものの、偽ユーリは見事にそれを見切ってバックステップで回避した。 すかさずニバンボシを振り上げ足下から広範囲に跳ね上がる衝撃波で出雲那に反撃すると出雲那はさすがに躱しきれずに足を踏ん張り、衝撃波で飛ばされないように食い縛った。 そして相手が一瞬の硬直に陥った今が好機と偽ユーリはオーバーリミッツ状態の時にのみ使用できる大技──《バーストアーツ》を放った。

 

「腹ぁ括れよ!! 天r——」

 

だがその瞬間、出雲那の口端が吊り上がった。

 

「これを待っていたぜっ!!」

 

「──な……なんだとっ!!?」

 

なんと出雲那は偽ユーリがバーストアーツを発動する瞬間を見計らって足の踏ん張りを止め、チカラを抜いて《義翔閃》の衝撃波の流れに乗り、自然に上に吹き飛ばされたのだ。 よって偽ユーリのバーストアーツは空振り、大技直後による大きな隙が生まれる。

 

「もらったぜっ!」

 

偽ユーリの頭上で鞘に収めたままの十拳を両手持ちでやや後ろに引くように構え、自由落下と共に真上に振り上げ、半円を描くように敵の頭上に一撃を叩き落とす。

 

「やべっ、しくった!!」

 

「葵柳流帯刀術──《半月落とし》ィィーーーッ!!」

 

十拳を振り下ろすと同時にあまりの威力と衝撃に偽ユーリの足下のコンクリートが爆砕して粉塵が舞った。 仕掛けたタイミングは完璧だった。 完全に相手が大技後の反動で硬直状態のところに叩き付けた一撃、これが決まったのなら出雲那の勝利は決定的だろう……しかし──

 

「……ヤロー、また姿を変えやがった」

 

粉塵が晴れると、そこに居たのは十拳の鞘尻を大きく罅割れた道路に着けて苦虫を噛み潰した表情で朱い煉獄の空を見上げる出雲那一人しかおらず、決定的な一撃を叩き込まれた筈の偽ユーリの姿はどこにも見当たらなかった……その理由は簡単だ、今出雲那の目線の先には黒いレオタードの様な装甲の薄い防護服(プロテクター)を身に纏う金髪ツインテールの美しき空戦魔導士(エアリアルウィザード)が金色に輝く魔力で形成された“大刃の双剣”を携えて朱い空に滞空しつつ彼を見下ろしている。

 

「予想通り、フェイト先輩に変身したか……しかもいきなり全力全開の《真ソニックフォーム》とはな……」

 

そう、ドッペルゲンガーは出雲那の《半月落とし》が叩き落とされる直前に、彼の知り合いの中でも特に速力に長けている“フェイト・T・ハラオウン”に姿を変えて飛行魔法を発動し、ほぼ音速に等しい超高速で空に逃れていたのだった。 今偽フェイトが身に纏っている防護服はいつもの黒い軍服調の《インパルスフォーム》ではなく、装甲を極限まで軽くして防御力を度外視した金色の閃光最速の《真ソニックフォーム》、そして両手に持つ柄尻の魔力糸で繋がった双剣の魔装錬金(ミスリル)武装は彼女の愛機バルディッシュが変形したもので、その最強形態《ライオットザンバー》である。

 

つまりC級遊撃士《金色の閃光》の本気モードという事だ。 彼女もユーリと同様戦闘のプロ、普通なら彼女と戦えば苦しい戦いになる事は必至だ……だが、あの《金色の閃光》の紅い眼で睨まれようとも()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「誰に化けようが、もう無駄だ!」

 

出雲那は大胆にもそう言い放って、十拳を右腰に帯刀して抜刀の構えを取ると全身から激しく流動する雷光を放出し背中に雷鳥の翼を展開。 同時に放出した雷光を全身に巡らせて身体能力を激的に上昇させ、足下で雷光がバチバチと弾ける。 全身全霊に流れる《三大源力》をフルに使った《天鳥》《雷髄》《雷光石火》の同時発動による、出雲那の最速モードだ。

 

「テメェの弱点は──もうバレてんだよ、モノマネ野郎っ!!」

 

言葉で表すのなら、まさに《瞬雷(ブリッツ)》! 出雲那は空を翔ける閃光となって地を蹴り、同時に偽フェイトも閃光となった。 朱い煉獄の空を蹂躙して二つの閃光が何度も激突する。 その度に落雷の如き轟音が轟き、大気を激しく揺るがした。

 

人の心の奥底の闇を映し出して自らのチカラとするドッペルゲンガーの弱点……それは結局のところ“相手の記憶の中の人物にしか成れない”という一点に尽きる。

 

──“オレの記憶の中を映し取る”んだから、()()()()()()()()()()()()()使()()()()のは道理だ!

 

幾ら格上の戦士が相手でも、()()()()()()()()()()()()()()()()()のならば問題は無い。 四武祭の本戦に勝ち進むような二つ名持ちの学生や遊撃士のようなプロの戦士は何百もの攻め手を持っているものだ、何故ならば()()()()()()()()()()()()()()

 

「一度オレを負かしたからって、二度も同じ手が通じると思ってんじゃねぇぇえええええええっ!!!」

 

「ぐああぁっ!?」

 

急旋回(ブレイク)からの捻り込みで背後を取った出雲那が偽フェイトの綺麗な背中に強烈な慣性を持った肘打ちを叩き込んだ。 周囲の雲を吹き飛ばす衝撃波と共に美しい金髪が揺れ豊満な胸を強調するように身体を反らして遥か上空に吹っ飛ばされる。

 

「くぅぅっ!」

 

赤い雲海の上で堪えて止まり、雲海の下から迫って来ている雷鳥を偽フェイトは涙目で睨みつけた。 そしてそれを迎え撃つ為に金色の双剣を一つに合わせ、身の丈の三倍以上はある巨大な魔大剣を作り出して肩の後ろに振り被る。

 

「負けられない! 負けてたまるものかぁぁああぁぁああぁあああああああっ!!」

 

《ライオットザンバー・カラミティ》──出雲那はかつてフェイトとの摸擬戦でこの金色の大剣の一振りをまともにくらい、摸擬戦場を突き破って場外にブッ飛ばされて敗北を喫したという苦い経験をしている。

 

何故あの時、全力全開の真っ向勝負をするという選択をせずに躱してカウンターを決めるという戦法を選んだでしまったのだろうか……何故──

 

「今度は受けて立つ!」

 

不完全だからと、師のように慕う少女から受け継いだこの一刀を信じなかったのか。

 

「この《雷切》で──」

 

赤い雲海を突き抜け、光の矢の如く偽フェイトに向けて突貫する出雲那が左手で右腰の十拳の柄を握りしめ、鞘の中に激しい雷光が迸る! 眼前に迫るは視界を埋め尽くす程の質量を持った金色の刃! その雷速の一刀を以って偽りの陰を──

 

「──斬り裂く!! 雷切ィィーーーーーーーッ!!!」

 

雷光迸る鞘から異次元の速度の一刀が抜き放たれた。 巨大な金色の刃に十拳の刃が食い込み、その一閃のもとに金色の閃光最大の剣は両断された!!

 

「嘘っ!? そんな──」

 

「うおぉぉぉおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

「──がはぁぁっ!!!」

 

そして、出雲那が放った渾身の雷切は、そのまま偽フェイト──ドッペルゲンガーにその刃を届かせるのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




出雲那「って、長っ!? しかも所々にギャグを混ぜんなよ!」

長くなってしまったのは出雲那と戦わせたかった人が多過ぎて戦闘の区切り所がつかなかったからです! せっかく敵が人の記憶の中の人物に化ける能力を使うんだから、ここで色々な人と戦わせないと勿体ないじゃないですかぁ。

善吉「あとギャグが混ざったのは出雲那、お前が異界に携帯トマトケチャップを持ち込んだ所為だろうが!」

マイ「と言うか、幾つトマトケチャップを持ち歩いているのさ!?」

出雲那「いつも十以上は必ず持ち歩いているぜ!(エッヘン)」

善吉「威張るなよ!」

マイ「まあそれはとりあえず置いておいて、出雲那ってフェイト先輩のザンバーでホームランされた事があったんだね」

出雲那「ああ、去年の《鳳凰四武祭(フェニクス)》直前に先輩に頼んで最終調整を手伝ってもらった時だな……」

善吉「ぷっ! 思い出したら笑えてきたぜ。 あれ見てる方は爽快だったな、ハハッ! 先輩のフルスイングにブッ飛ばされたお前が摸擬戦場の天井を突き破って飛んで行って、シリウスタワーの導力塔に引っ掛かって……ブブッ、アハハハハハ!!」

マイ「わっ、笑い過ぎだよ善吉!? そ、そんなに爆笑すると……わ、私も釣られて笑っちゃ……あは、ははははっ!!」

出雲那「笑い過ぎだテメェ等っ!!(怒)」

さて、次回は遂に出雲那の《創生の雷刀(イザ=ナギ)》がそのチカラを解放する! ……かもしれない。

出雲那「“かも”かよ!? ……って事は、渾身の雷切をくらわせたっていうのに、敵はまだ倒しきれていないっていうのか!!?」

それは次回のお楽しみに! では読者の皆さん、さようなら(アウフ・ヴィーダーゼン)!!
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