幻想戦記クロス・スクエア   作:蒼空の魔導書

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やべっ、弟に進められて購入した『ありふれた職業で世界最強』が超おもしれー!!

春にアニメ化するそうだけど第3刊のティオの登場シーンは放送事故確定じゃねぇか! 下手したらダクネスを越える変態だぞアレ!!(爆)

ダクネス「こっ、これは……なんて羨ましい! 公衆の前で太くて大きくて硬いアレをk──」

レスター「ア″ーーーーーーーッ!? 何原作見て興奮しながらアニメ放送前にネタバレしようとしてんだ、このド変態がぁぁぁあああああっ!!!」

──追記──

公式サイト見てみたらアニメ放送が来年に延期になってた……。(泣)



葵柳流 VS 葵柳流。 踏み躙られた友と決定的な格の差

朱い煉獄の空を切り裂く一筋の光が走る。

 

超音速を超越する雷速の一閃によって引き裂かれた大気が衝撃波となって一気に広がり、目に映る赤い雲海の全てが那由他の彼方に吹き飛んで行く。

 

「届……いた……!」

 

光に貫かれて飛行魔法という名の翼を散らされた偽フェイトが落下して行くのを背に、出雲那は雷速の一刀を振り切った体勢で感じた手応えに喜悦と安堵の呟きを漏らしていた。 今の雷切は間違いなくドッペルゲンガーを斬った。 敗戦の歴史を乗り越え、自分は過去の闇に打ち勝ったのだと。

 

……だが、戦士の卵として未熟を理由に油断する事はできない。 【勝利を確信した時こそ、最大の隙を生む】、それは学園の戦術抗議でも鉄則として教えられている。 故に出雲那はそれ以上歓喜に浮かれる事はなく、直ちに昂りそうになった気を静めて抜き身の《十拳》を鞘に収め、右腰に帯刀して警戒しながらリトルガーデンのミリタリー区画へと降下する。

 

「……」

 

無骨な鉄板が敷き詰められた工場広場に降り立ち、雷鳥の翼を消して不自然な煙が上がっている路地裏の一角を無言で睨む。 おそらく、敵はあそこに墜落したのだろう。

 

──倒したのか? それとも……確認しに行ってみるか。

 

あの朱い空の上で抜き放った渾身の雷切は確かに偽フェイトを斬った、そしてフェイトの《真ソニックフォーム》は音速の速力を得る代償として一撃まともに入れれば墜ちる紙レベルの防御力と化す諸刃の剣……普通は倒したと確信するだろう。 言わば某断罪歯車の名を冠する格ゲーの紙ニンジャをデストローイしてシッショー言わせたようなものなのだ……なのに──

 

──何だ? この感覚、()()()()()()ぜ……。

 

まるで掃除をしていたら遠い昔に紛失した思い出の品が出てきたような……そんな感覚に苛まれていると凝視していた薄暗い路地裏への狭い通路の先から何者かの声が聴こえてきたのだった。

 

「東堂先輩より受け継いだ、雷光の如き一閃の下に斬り伏せる伝家の宝刀……多少オリジナルには劣るが、見事な“雷切”であった──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──さすがは()()()だな……出雲那」

 

「っ!!?」

 

薄暗い通路から姿を現した人物を目にした瞬間、出雲那は驚愕のあまりに眼を見開いていた。 帝国ヤマト人らしい黒髪黒眼の少年だが、その肌は雪のように白い。 仰々しくどこか痛々しい口調で懐かしみながら愉悦の笑みを浮かべて先程偽フェイトを撃墜した時に放った《雷切》の事を大いに称賛し、出雲那をその夜天のように黒い瞳で真っ直ぐと見据えるその雰囲気は大らかだが、その所謂厨二的な口調な為になんだか色んな意味で近寄り難い。

 

青学の学生服である黒の学ランを着ている事から出雲那と同じ青学の生徒である事が窺えるが、その上着は厨二らしく(かぶ)いた着こなしで袖を通さずに肩に羽織っており、その地に着きそうな程裾の長い──所謂“長ラン”の背中には『我が(こころ)、常に夜桜の如く壮麗であれ!』と帝国ヤマト語(日本語)で桜色の字が刺繍されていて、右の胸ポケットには【葵の葉】を模したワッペンが縫い付けてある。 所謂“改造学ラン”というやつだ。

 

そして丈が長くぶかぶかしたズボン──所謂“ドカン”の腰周りに通したベルトの左側に差してある太刀の刀身が納まっているのは【葵の葉】が彫られている荘厳な鞘……そんな伊達酔狂、厨二病という単語を連想するようなこの少年は──

 

「このクソモノマネグリード、性根悪すぎだろ。 まさか“(みこと)”になって、オレの前に出て来るなんてよ……っ!」

 

出雲那は悪態を吐き、顔を引き攣らせて付近の船べりの先に見える朱い空を見上げてみる。 氷の魔導服を身に纏った美女が艦に背を向けて空に立ち、“黒き太陽”を艦に墜とすまいと大質量の氷の壁を隔て、“黒き太陽”の進行を防いで鬩ぎ合わせているのが見えた。 どうやら、サクヤは出雲那の救援に駆けつけてから未だにリトルガーデンに落ち征く“黒き太陽”を防ぎ続けていたようだ。 先程の念話も忙しいところ無理をして敵の情報を教えてくれたのだ。

 

そして“黒き太陽”を落とし放った張本人プルート・A・イグナイトは透き通った氷の壁の向こう側の空で「面白い」と愉悦の表情を浮かべている……出雲那の目の前に現れた少年の顔はプルートの顔と瓜二つであり、それが彼が二年前の事件の犠牲者となって亡くなってしまった出雲那の幼馴染にして親友──“葵柳尊”であるという事を物語っていた。 まあ当然、彼はドッペルゲンガーが化けた偽物ではあるのだが……出雲那は複雑な表情で視線を目の前の敵に戻す。

 

「テメェ、その様子だとさっきの雷切はくらわなかったみてぇだな。 オレの《雷切》は、まだ刀華さんのそれに届いてねぇ不完全なものだし。 大方、オレの雷切がザンバーを斬った瞬間咄嗟に《サンダーアーム》で相殺……いや、さすがに見切れねぇだろうから放電による磁力の反発を利用して()()()()()()()()()()()()ってところか……」

 

「ふむ、良き眼だ。 まあ、防護服の装甲が心許なさすぎてそれでも耐え凌げるか危ないところだったが、見ての通りなんとか無事だ。 まあそれも当然だな! 何故ならば、我が身体は【闇の深淵(アビス・ファルス)】の契約により不s──」

 

「厨二設定までマネてんじゃねぇ! ……ったく、さっきの雷切でおとなしくブッ倒されていろよ……」

 

尊の姿に化けたドッペルゲンガーのピンピンした様子を見て、何故《雷切》で斬った手応えがあった筈なのに奴を仕留めきれなかったのかを即興で考察する出雲那。 口にした《サンダーアーム》とは身体の一部に魔力の電撃を纏い触れた身体や得物を通して相手を感電させる攻防一体の防御魔法だが、さすがに異次元の速度と威力を発揮する必殺の雷切を防げる程のものではなく、故に敵はそれで《雷切》の威力を下げて耐えたのだと仮説を立てる。 偽尊はその仮説を肯定し自らに酔って闇がなんたらかんたら言い始めたので、出雲那はイラッと来て再び悪態を呟いて項垂れた。

 

……まあとにかく、まだ戦いは決着していないという事だ。 出雲那は気を取り直して、昔故人となってしまった親友に化けて対峙する陰湿な敵を睨みつけて威勢よく《十拳》の柄尻を向ける。

 

「で? 記憶から消し去りたい厨二病になってどうするつもりだ? そんな事をしたところでオレをますますイラつかせるだけで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……まさかテメェ、それでオレの精神を揺さぶっているつもりじゃねぇだろう──なっ!!」

 

死んだ親友を侮辱されたように感じて出雲那は内心怒り心頭だった。 怒気の篭った静寂な声音で目の前の敵にそれがどうしたと威嚇し、言葉の締めを言い放つと同時に掲げた十拳を右腰に帯刀し直しつつ腰を落として疾駆した。

 

「はぁっ!」

 

星脈世代(ジェネステラ)が有する驚異の身体能力で約20mの距離を一秒経つ間も無く一瞬で詰めた出雲那は、敵の懐に踏み込むと同時に《十拳》を抜刀。

 

「爆ぜ咲け──《火廣金(ひひろかね)》。 ふっ!」

 

それに対抗するように偽尊は“黄金の炎を纏う鞘に刀身が納まった刀型の霊装”を左腰に顕現して、全く同じタイミングで抜刀する。

 

雷光迸る刃は反時計回りに、黄金の炎の梵字で刀身の側面に【桜花炎舞】と綴られた刃は時計回りに弧を描く。 二つの刃は交差して軽い金属音を鳴らし、掠めるように弾くと両者は前に踏み出していた片足を軸にして素早く独楽のように一回転。 再び雷と炎の刃は弧を描き、今度は重い金属音を響かせて刃が重なる。

 

葵柳流抜刀術の基本の型《双円閃》を全く同時に繰り出した二人はそのまま霊装を打ち合わせ、鍔競り合い状態で激しく睨み合った。

 

「舐めんじゃねぇよ! 尊はもうオレにとって過去の人間だ。 『今の大切を護る』、それがオレの信条(ポリシー)だからな! 尊が死んだ事はもう吹っ切れてんだよ、このタコッ!!」

 

「クックック、果たしてそうだろうかな? 貴様の心は今も後悔の念による後ろめたさで焦燥に駆られているぞ。 二年前の事件の折にこの姿の者を自らの刃に掛けて亡き者にしてしまった事になぁ!」

 

「くっ!」

 

偽尊は嘲笑の笑みで激昂する出雲那の怒れる眼を見て嘲りの言葉を言うと腕にチカラを加えて出雲那の《十拳》を弾き飛ばす。 苦渋に表情を歪めた出雲那は敵の切り返しが来る前に後ろに跳び退き、《十拳》を鞘に納刀して右腰に帯刀し戻し、苛立ちの眼を滑稽そうに笑う畜生に向けて口許を歪めた。

 

「クックック……どうした出雲那、焦りで剣が鈍っているぞ? 吹っ切れていると言うのは虚言だったのか?」

 

「黙りやがれ! それ以上その粋好かねぇ口で喋ってみろ、八つ裂きにしてこの船の下の炎の海にばら撒いて捨ててやる」

 

抜刀の構えを取り、怒りの形相で尚も嘲り続ける口を止めない偽尊に脅迫の言葉を吐いて威嚇する。 このままだと出雲那の怒りは憤怒に変わりつつあり、それを表すかのように十拳の柄を握る左手は火山噴火の前兆の如くガチガチと震えている。

 

「それは恐ろしいな、この男を斬り殺した時の再現のようではないか? 二年前のあの悲劇の事件、《終末の蛇(ヨルムンガンド)》の執行者の一人である《ハザマ》という男が悩めるスクエアの戦士達や学生達が抱える苦悩を利用して誑かして騙し、その者達を【人体万応錬成】によって“人の形を保ったまま人外のチカラを持つ超人へと変える実験”を行ったが、結果は失敗……奴が騙して実験材料にした者達は人の形を保てずに“自我を失った腐る化物”となってしまい、元に戻す方法に見当がつかなかったが為に哀れな被害者の者達は()()()()()()()()のだったな」

 

しかし、偽尊はそんな威嚇などお構いなしに、愉快そうに顔を歪めて尊がこの世を去った事件の概要を語りだした。

 

「この尊という男、()()()()()()()()()()()()()()()()らしいな? 幼馴染である貴様と共に随分と良くしてもらったようだが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……少なくとも、この男はそう見えていたようだな。 故に幼馴染の友である貴様に“嫉妬の念”を心の内に抱いてしまった。 【ならぬ】という意志をその“嫉妬の念”と衝突させて感情を抑え込もうと必死になっていたようだが、そこをハザマとやらに付け入れられてしまい、無様にも《呪縛陣(マインドイーター)》という術に掛かって奴の操り人形になり、妬みの感情を“憎悪”に変えられて当時の貴様に差し向けられた」

 

「これ以上言うなと──っ!?」

 

これ以上は言わせるかと口封じに飛び出そうとする出雲那。 しかし、彼の脚は何時の間にか鉄板の床に突き立てられていた敵の霊装──《火廣金》から床を這って伸びて来ていた“黄金の炎の縄”に搦めとられて動きを封じられた。

 

「予期せぬ形で幼馴染の親友に敵意を向けられた貴様は動揺のあまり成す術もなく追い詰められ、この男の奥義で斬り倒されそうになったところで駆けつけた東堂先輩が横から割って入って来て戦いを止めた。 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、この男は悲しみの感情のあまり壊れてしまい……奴は──()()()

 

ギリィィッ! と、血を流す程強く出雲那が歯を軋らせる音が鳴る。 そして──

 

「クックック! 弾けてしまった時点で“葵柳尊”という人間の命運は決定された。 【人体万応練成】とは《三大源力》を持つ異能者に精神の制御を失わせて身体の内に秘めた万応素(マナ)を流出させ、その膨大な万応素を対価に()()()()()()()()()()()()()()()()()というこの世の理に背いた練成術で、この男は【ヴェノムミノタウルス】という腐った牛の化物へと変貌してしまったのだ! ハーッハッハッハ!! 実に陳腐で滑稽で愚かしい笑える話ではないかぁ! 少し良くしてもらった女に軽々しく恋慕などという感情を抱いてしまったが為に幼き日から共に切磋琢磨してきた最も親しい友に愚かにも抱いてしまった負の感情を隠し、挙句利用されて化物に変えられ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだからなぁぁぁあああっ!!!」

 

「テンメェェェエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!」

 

過去の闇を踏み躙り幼馴染の親友の一生を嘲笑する畜生の嘲りを耳に入れて、出雲那の怒りはとうとう天元を突破してしまった。 はち切れんばかりの憤怒の怒声が朱き煉獄の空を揺るがし、放出された膨大な【気力】【魔力】【霊力】が渦を巻いて嵐のように周囲の工場倉庫を倒壊させる。 身体から迸る激しい雷光が獣の如き咆哮を上げて、脚を拘束している炎の縄を一筋の電撃が焼き切った事により憤怒に狂い猛る雷鳥は解き放たれた。

 

「うおぉぉおおおおぉぉおおぉおおおおおおっ!!!」

 

スタートに踏み出した一歩が鉄板の床を砕き、飛び散った破片が地を這い行く雷閃に撃ち抜かれて粉々に砕け散り、轟く爆音と共に砲弾の如く出雲那は怒りの雷光纏いて倒すべき怪異へと突貫して行く。 コイツだけは許さない。 敵を近接(クロスレンジ)に捉えると同時に涎一滴この世に残してなるものかと叫び声を上げて、踏み込みと共に《十拳》の刀身を鞘より抜き放った。

 

雷光迸る刃は弧を描いて敵の首へと吸い込まれて行く。 その首もらったぁっ! そう思ったその瞬間、鉄を打ち付ける音と共に十拳の刃は敵の首を落とす手前で止められた。

 

──なっ!!? 《槌楯(ついじゅん)》……だと……!!

 

驚愕で一瞬時が停滞したかのような奇妙な感覚に襲われる。 敵の首を刈り取るべく抜き放った一刀が下から突き上がる偽尊の柄打ちに止められた事によって、怒りで眼尻が吊り上がっていた出雲那の眼は大きく見開かれていた。

 

葵柳流帯刀術《槌楯》──相手が繰り出して来た物理攻撃に対して斜めから柄打ちを打ち込み、衝撃とチカラを外側に逃がすという防御技である。

 

「哀れな人生であったが、()()()()()()()()()()()。 こうしてこの俺が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだからなぁっ!!」

 

「──がっ!」

 

狂気に歪んだ眼をカッ! と見開いた偽尊が刹那の一瞬で《火廣金》の柄を持つ手を持ち替え、柄を押し付けている《十拳》の刀身を支点に納刀されている《火廣金》の鞘を下から回し上げる。 自分の渾身の抜剣がいとも簡単に受け止められた事に一瞬の動揺を抱いてしまった出雲那。 その一瞬の隙を突かれ、黄金の炎を纏った鞘の刃部が鳩尾に叩き付けられて彼は胃液を吐き散らし宙に突き上げられた。

 

「ハッハーッ! 葵柳流帯刀術──《激流衝(げきりゅうしょう)》っ!!」

 

宙に突き上げられた反動で仰け反り、無防備状態の出雲那の脳天にすかさず彼の頭上に跳躍した偽尊の兜割りが落とされる。

 

「がはぁっ!!」

 

黄金の炎を纏った鞘の刃部に脳天から叩き落された出雲那の身体が爆撃機から落とされる爆弾の如く鉄板の床に墜突し、衝撃で爆砕するように鉄床を砕き蜘蛛の巣状のクレーターを形成する。 硬質な床だったが為に叩き落された運動エネルギーの勢いを殺しきれずに彼の身体は床をバウンドして転がり、先程倒壊した工場倉庫の瓦礫の山の内の一つに突っ込んで瓦礫の山を跳ね飛ばした事でようやく勢いが止まり、そのまま俯せに倒れる体勢で制止した。

 

「うっ、うう″……くそ……!」

 

「ほう、あの一撃をまともに頭に受けて死なないどころかまだ立つか? オリハルコンを彷彿させるような呆れた頑丈さだな、出雲那」

 

「うる……せぇ……テメェだけは──」

 

強大な【気力】を持ち一般人を遥かに超越する強固で頑丈な身体を有する【星脈世代(ジェネステラ)】とはいえ、脳天に痛烈な一撃を叩き付けられても尚立ち上がり向かって来ようとする出雲那を見て偽尊は亀裂が生じてない鉄床に着地しつつ驚きと感嘆の声をあげる。

 

脳震盪で朦朧とする意識の中、出雲那は震える脚で砕けた鉄床を踏みしめて敵を睨みつけ強がりを言うものの、その脚の震えが示す通り出雲那の身体はこの異界に入ってからの連戦による疲労とダメージで見るからにもう限界寸前だった。

 

──倒れてたまるかよ! コイツは勝手にオレの記憶を盗み視て、オレの過去と尊の想いと人生を踏み躙り、そして何よりも(ダチ)との絆を嘲笑いやがったんだ! コイツだけは──

 

「──絶対ぇに、ブッタ斬るっ!!!」

 

震える脚に鞭を打ち、残りの持てるチカラを出し尽くしてでもあのクソモノマネヤローを打倒してやると裂帛の気合いと共に銃から撃ち出される弾丸の如く出雲那は敵に突攻して行く。 複数の残像を追従させて近接戦(クロスレンジ)に捉えると、“葵柳流の使い手”同士の激しい打ち合いが開始された。

 

抜刀術にせよ帯刀術にせよ、葵柳流の真髄は【螺旋】だ。 繰り出す技も身体の動作も“回転”の軌道で渦巻く【流れ】を生み出している。 さながら衝突して移動しながらせめぎ合う二つの台風だ。 出雲那が弧を描く高速の抜剣を繰り出せば、偽尊が《朧撫子》で受け流しカウンターの抜剣が円の軌道を描く。 《雷髄(ライズ)》を使用した超反応で出雲那が偽尊の《螺旋鋼突》のスクリュー突きを回るように躱しそのまま相手の腹に回し蹴りを叩き込み吹っ飛ばしても、距離が開く間も無く跳躍して離れず追撃する。 弧を描いて打ち合う剣が嵐のような衝撃波を発して周囲に見える異界の朱い風景を吹き飛ばして行く。 罅割れた鉄板の床を剥がし、工場倉庫の残骸を吹き飛ばし、工場と工場の間を走るコンクリートを蹂躙して、二人の打ち合いは激しさを増して行く。 暴風渦巻く中で独楽のように回りながら剣戟を繰り広げる二人は、まるでハリケーンの中心でダンスを踊っているようだった。

 

──やっぱり! コイツはオレが知ってる尊の技と戦法しか使って来ねぇ。 痛ぇ過去を侮辱された所為で頭に血が上っていたからさっきはやられたが、冷静になって対処すれば訳無ぇぜ!!

 

「もらったぁぁああっ!」

 

右上から引くように斜めに振り下ろされる納刀状態の《火廣金》をギリギリまで体勢を屈めて回避し、相手が腕を振り切った完璧なタイミングで出雲那は右腰に帯刀していた《十拳》を鞘から引き抜いた。 剣戟の間の完璧な隙を突いた出雲那が狙ったのは再び偽尊の首だ。 お前は何処の妖怪首置いてけだ!? と言いたくなる程抜き放たれた霊力の刃は綺麗に相手の首筋へと吸い込まれて行く。

 

──今モノマネヤローが振るった霊装の柄はオレから見て奴の左腰の位置だ。 今から引き戻したって間に合わねぇよ! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!

 

()()()()()()()一気に刃を振り抜こうとする出雲那……だが、この時彼は自分が負ける要素が異界に入ってからの連戦による疲労とダメージの蓄積量ぐらいしか見当がつかず、加えて斬り合いに興じる昂揚感に酔っていた為に失念していたのだ────【勝利を確信した時こそ、最大の隙を生む】という戦いの鉄則を──

 

「なっ────!!!?」

 

瞬間、ガチィッ! という勢いよく硬い何かで硬い物を挟み込むような音が響き、その原因である目の前で起きた事象を目の当たりにして出雲那は驚愕のあまり千切れてしまいそうな程眼を大きく見開いた。 それは文字通りの()()()()()()だった。 偽尊の首を切断すると思われた《十拳》の刃に、彼は首を前に倒してその黄ばみの見当たらない真っ白な()()()()()()()()()()()という奇天烈な方法で斬首を免れていたのだ。

 

「ひょおりしだとおごっだが(勝利したと思ったか)? あはがはだが(浅はかだな)っ!!」

 

「っ!!」

 

偽尊は《十拳》の刃に噛みついたまま憎たらしいドヤ顔をして宇宙語(?)を言い、十拳に噛みついたまま首を大きく左右に揺さぶり引くと十拳の柄を握る左腕が引っ張られ出雲那の身体がその動きに合わせて左右に引かれ、それに乗じて偽尊が十拳を放すと出雲那は揺さぶられた反動でバランスを失い体勢を崩してしまう。

 

「本当に浅はかだな出雲那。 貴様の考えなど読めているぞ、()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と思っているのだろう? ……それは確かに間違いではない。 俺は()()()()()()()、人の記憶から【形】と【チカラ】を再現する事しかできぬ……しかしだ。 貴様、まさか永きに亘る刻の中で失念してしまったわけではあるまいな? 貴様と俺──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という事を!」

 

「……ぁ……」

 

完全に体勢を崩してしまい、よろめく出雲那の口から失意の声が漏れた。 たった今、眼前の敵が放出し出した大気を揺るがす桜色の闘気に当てられて思い出してしまったからだ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を……。

 

「葵柳流抜刀術の“奥義”の一つ……《新月一閃(しんげついっせん)》」

 

過去の親友の陰がこれまでベルトの左腰側に差しっぱなしだった【葵の葉】が彫られている荘厳な鞘に刀身を納めている太刀の柄に右手を添え、腰を後ろに限界まで捻り引き絞って闘気を溜めている。 出雲那がそれを前にして放心気味に呟いた“奥義”の名──奥義とは葵柳流において“千旋(ぜんせん)”の階位に至る事のできた者に伝授される必殺技の事である。

 

葵柳流の門を潜った者は修練と実戦により身に付いた技の熟練度に応じて相応の【階位】が与えられるシステムが存在し、一番下の階位は“初旋(しょせん)”と呼ばれ、次に“一旋(いっせん)”“十旋(じゅっせん)”“百旋(ひゃくせん)”──という感じで上の段位に上がる度に十倍単位で数字が増えて行く数え方だ。

 

出雲那に与えられている階位は“十旋”、葵柳流においてはこの階位を与えられてようやく半人前なのだが、その実力は一兵卒が相手なら一騎当千どころか万人が相手でも返り血一つ浴びずに殲滅が可能な程の強さを誇っている……逆に言えば()()()()()()()()()()として認められるという事なのであり、葵柳流で高みを目指すという事がどれだけ過酷な道なのか、想像するだけでも顔面蒼白になる事であろう。

 

そして生前の葵柳尊が持っていた階位は奥義の伝承が許される“千旋”、この階位に至ればA級遊撃士やダイランディア軍の将官クラスなどの最上位級の戦士達とも渡り合えるという脅威の戦闘力が身に付き、()()()()使()()()として認められる。 半人前と一人前……二人の実力差は二年経った今でも縮まっていない。 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ように、葵柳流の剣士として半人前の出雲那は《剣姫》葵柳流美の血を引き継ぐ一人前の葵柳である尊には決して届きはしない……。

 

「夜天の闇に融けゆく月に引き裂かれ、桜の華と散れっ!!!」

 

《新月一閃》──放つ刃が納まる鞘が相手に対して身体の後方に隠れるように限界まで腰を捻って引き絞り、全身に溜めた闘気を一気に解放すると同時に左手で鞘を水平に上げ、太刀を右手で引き抜く……引き絞った腰を戻すバネを利用した遠心力で放たれた豪快な横一文字が、無防備な雷鳥の生を断つ桜色の光刃を走らせる。

 

「クソッ!!!」

 

時計回りに半円を描いて迫り来る偽尊の太刀。 身体のバランスを崩して無防備な出雲那がこの奥義を回避あるいは防ぐ事など不可能であり、彼の表情に死相が浮かんだ。

 

──奴の剣が遅く見えるのに、身体が動かせねぇ? ……死に際に陥る知覚加速(オーバーレブ)ってやつか……冗談じゃねぇっ!!

 

自分の胴に迫る太刀の刃がスローモーションのように遅く感じた出雲那は自分がここで死ぬ運命である事を悟り、それを必死に否定していた。

 

──オレはまだ尊との約束を全然果たしていねぇ! 刀華さんが言っていた【成すべき責任】だってまだ見当もつかねぇし、今日の夕方あの人に死ぬなって言われているのに裏切れるか!!

 

ゆっくりと死の刃が迫る中、彼はどうしようもないと理解していても生きる意志を折る事ができずに心の中でチカラの限り叫んでいた。 死んでたまるか! 負けてたまるか!! と……その時──

 

『──……トックン……』

 

……と、左腰の《十拳》と《黄旋丸》の下に重ねて帯刀していた《創生の雷刀(イザ=ナギ)》が小さく脈を打ちだした。

 

──それに、オレは柊と……このクソッタレな夜を終わらせて、また今日の昼みたいに──学園で皆とバカやって、笑い合うんだよっ!!!!

 

死の刃が彼の胴を薙ぐその瞬間だった。 出雲那が心で溢れ出る渇望を叫ぶと同時に《創生の雷刀》が覚醒の光を解き放ち、朱き煉獄に眩い光が齎された。

 

「──ぬぉぉっ!? なっ、何だ、この光は──っ!!」

 

とどめを刺す直前で突如相手の右腰に差してある太刀が目が眩む程強烈に発光した為にその光が至近距離で目に入り、偽尊は眩しさのあまり腕を引いて眼を覆い、攻撃を中断してしまった。 それが武内出雲那を倒す最後のチャンスを逃してしまったとも知らずに……。

 

「これは……創生の雷刀(コイツ)……の……?」

 

かくして覚醒の光は解き放たれ、武内出雲那が【伊邪那岐の創り手】として目覚める時がやって来たのだった。 ……異界のリトルガーデンを包み込んで行く眩い光──果たして、《創生の雷刀》が秘めるチカラとは……?

 

 

 

 

 

 

 




今話で《創生の雷刀(イザ=ナギ)》のチカラが覚醒すると言ったな? アレは最後だ。

出雲那「結局、次回に引っ張ってんじゃねぇかぁぁあああああっ!!(蹴り)」

ぐはっ!! だって仕方ないじゃん、戦局優勢で覚醒したら盛り上がりに欠けるんだからさ! やっぱピンチの時に覚醒のテンプレパターンが一番だよ♪

明日香「“王道”って言ったらいいじゃない……」

サクヤ「まあでも、これでようやく出雲那が【伊邪那岐の創り手】として使命を全うする為のチカラを手に入れるわね」

出雲那「創生の雷刀(コイツ)は物心ついた頃から手元にあったけれど、今までずっと寝てやがったんだな……ったく、今まで寝て怠けてた分しっかりと働いてもらうからな!」

あ。 リリなのstsの見直しも終わったし、そろそろ新作の執筆に取り掛かろうかな? ……三話程ストック作りたいから次話の更新は少し遅れるかも~?

出雲那「ざけんなテメェッ!! いい加減最初の章を終わらせやがれぇぇえええええっ!!!(雷切)」

うぎゃぁぁあああああああーーーーーーっ!!!

明日香「新作の執筆に感けてこの作品をエタらせないようにしてよね」

サクヤ「次回こそ本当に《創生の雷刀》のチカラをお披露目するわ♪ それでは次回まで、Auf Wiedersehen(アウフ・ヴィーダーゼン)!(さようなら)」

明日香「サクヤさん、別に発音良く言わなくても……」



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