幻想戦記クロス・スクエア   作:蒼空の魔導書

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お待たせしました! 前章の最終話のあとがきに予告しました、今章の【表】のメインヒロイン──『学戦都市アスタリスク』で大人気の“あの巨乳美少女中等生剣士”が今話にて初登場しますッ!




可憐なる銀綺との邂逅

あの朱い煉獄の異界での死闘を潜り抜けて、出雲那は己のプライドに懸けて誓った言葉通りに自分の命の恩人であり昨日青学に編入してきたクラスの新たな仲間である亜麻色の髪の少女を無事に朝という光の空下に連れ戻す事ができた。

 

その亜麻色の髪の少女──柊明日香と共に待望の今日の青竜学園へと登校するべく、二人は東エリア郊外の海沿いの道を気分よろしく並んで歩いて行く。

 

「おい、決闘(デュエル)しろよ、武内出雲那ッ!」

 

だがそんな二人の前に想定外、今日の学園への最後の刺客が立ち塞がる。

 

「武内君。 あの騎士風の防護服(プロテクター)を身に着けている背の高い女性、なにやら貴方の名前を呼んで凄く情熱的な視線を向けてきているみたいだけど……」

 

「あー、気にすんな。 あれはただバトルマニアという不治の病を患った女ニート侍だからさ……」

 

だが、その刺客に名指しで決闘状を叩きつけられて喧嘩を売られた当人にとっては想定外でもなんでもなかったようだ。 スクエアの非日常な日常にまだ慣れていない故、不意にやって来た言葉のドッジボールに呆気にとられて困惑してしまっているのか、目の前の道に毅然と立ち塞がりつつ手に持った騎士剣型の魔装錬金(ミスリル)武装の切っ先を烈火の如き熱視線と共にこちらに向けてきている桃色ポニーテールをした女騎士を摩訶不思議な珍獣を目撃したかのように指さしながら訊ねてくる明日香には目の前の存在を気に留めないように言っておく。

 

この手合いは毎度の事ながら自分の相手だ。 いい加減に面倒な事この上ないが、仕方なく腰に差した《黄旋丸》の柄を手に一歩前へと出る。

 

「今までに一度もオレに勝ててねぇからって、ここまでくるといい加減にテメェしつけぇぜ、シグナム先輩。 昨日の夕方も毎度の様にあれだけ派手にブッタ斬ってやったってのによ」

 

程々に呆れた半目を向け、出雲那が皮肉でもって歓迎した相手の女騎士はやっぱりシグナムであった。 彼女は切っ先を相手に向けていた自身の愛剣《レヴァンティン》を一旦下げ、相対する自分の永遠のライバル(自称)から受け取った皮肉に対して嬉しそうに微笑する。

 

「フッ、それは当然だろう。 私はベルカの騎士にして《流離(さすらい)の烈火の将》なんだぞ。 昨日の夕刻に貴様に負けて、気を失っているところを何者かが謀ったかのようにテスタロッサが通りかかって、またしても奴の拘束魔法(ライトニングバインド)によって不条理にも拘束されて、今度はギルドの地下牢に不覚にもそのまま監禁されてしまったが、そんな事で私の貴様への(勝利への)熱いこの想いは繋ぎ止められはせんッ! 例え火の中、水の中、草の中、森の中、土の中、雲の中、あの壮齢の御仁が穿いているパンツの中ッ! 私はベルカの騎士の誇りと矜持に懸けて、何度でも貴様の前に立ってやるッッ!!」

 

「あらまあっ。 硬派そうに見えて情熱的な人ね」

 

「人が誤解するような事をこっちに指さしながら言ってきてんじゃねぇよ!? それの何所が不条理なんだ、このムッツリスケベ女騎士がぁぁーーっ!!」

 

口に掌を当てて明らかに誤解をした驚きをする明日香。 一応容姿端麗な美女から真顔で告白紛いな事を言われた為に猛烈な恥ずかしさに襲われて赤面し、罵倒気味の文句を吐き返す出雲那。 永遠のライバルに向ける情熱的な台詞の合間の一瞬だけシグナムから視線を向けられていた、付近の歩道橋を渡るビジネススーツ姿の中年男性も妙な悪寒を感じて身を震わせている光景。 その全てが名状し難いバトル前の空気のようなものだ。

 

「さあ、いざ尋常に勝負だ、武内ィッ!」

 

『DUEL standby』

 

そんな空気の中でソーサラーキューブが宙に打ち上げられ、決闘(デュエル)用の非殺傷領域《ソーサラーフィールド》が周囲一帯空高く展開されていく。 巨乳ニー……もとい、《流離の烈火の将》の戦意は上々だ。 此処で逃げたら男が廃る、故に出雲那も相手に売られた決闘に応じて買ってやると意気込むようにシグナムの立つソーサラーフィールド内に足を踏み入れようとするが、それを険しい表情を浮かべた明日香が引き留めた。

 

「ちょっと待ちなさい。 貴方の傷はまだ治っていないのに、決闘なんて」

 

「さっき飲んだ薬のおかげで雷切一発くらいならギリギリ大丈夫だ。 そんだけできればシグナム先輩くらい、いつもように速攻でカタを着けられっから、お前が心配する必要はねぇよ──っと!」

 

そう言って心配してくれる明日香の手を自分の右肩から振り解き、出雲那はソーサラーフィールド内に悠々と入り、20mの間を取って日常のようにシグナムと立ち合った。 異界での死闘の負傷がまだ治りきっていないとはいえ、その表情は毎度のように目の前の女騎士との決闘で勝利している為、当たり前のように余裕そのものであったが──

 

「ふっふっふ、“いつもように”か……これはまた、随分と見縊ってくれるな」

 

「へっ、たりめーだ。 生憎今はちょっと訳アリでな、学校に遅刻する訳にもいかねぇし、悪りぃが速攻でブッタ斬らせてもらうぜ!」

 

出雲那の不敵な短期決着勝利宣言を耳に入れても何故だかシグナムが不快感を浮かべる様子は微塵も窺えない。

 

「悪いが、そういつも通りにはいかないぞ。 なんたって今日は“心強い味方”がいるのだからな!」

 

そればかりか彼女は自分の勝利を確信しているかのような不敵な態度だ。 その理由は彼女の発言した意味が判らず「はぁ?」と出雲那が漏らした直後、双方の間に割って弾けたコミカルな花火(?)と共に颯爽と見参した小さき第三者の存在があるからだ。

 

「その通りだっ!」

 

「うおっ!?」

 

出雲那の眼前で花火が弾け、気が付くと驚き慄いたその顔を勝気に覗き込むような恰好で燃えるような紅いツーサイドをした小悪魔が眼前に浮いていた。 見た目約30cmの妖精サイズ的に、何処からどう見ても人間には見えない生意気そうな女の子。 その第一印象通りの挑発的な笑みを作り、唐突な彼女の登場に呆気に取られている出雲那を調子付いた眼つきで睨みつけて、口を開けば出て来る言葉は機関銃。

 

「やいやいやいっ! シグナムの永遠のライバルだかなんだか知らねーが、そんな余裕ぶっこいていられるのも今日が最後だぜ! なんてたってシグナムにはこの《烈火の剣精》──炎の《魔導融合機(ユニゾンデバイス)》の《アギト》様が味方に付いてやったんだからな! 覚悟しろよ? アタシとシグナムが組めばお前みたいなバカっぽいガキなんか、けちょんけちょんn「うっせぇっ!」──げふぅっ!?」

 

人を煽りに煽ってくる言葉がその小さな口から吐き出され続ける度に『パンパンパンパン!』と連続して背景に弾けていく花火の炸裂音も相俟って騒がしい事この上なく、この眼前に浮く耳障りな小悪魔──アギトに瞬間的な苛立ちを覚えた出雲那は黄旋丸の刀身を納刀した鞘による軽い打ち払いを蝿を払うかの如く一閃。

 

「ふぎゃ! ぐごっ! がぼっ! あべしっ! わらばっ! ひでぶっ!」

 

まるでピンボールの球のように吹っ飛んだアギトは、まるで世紀末の小物が四散消滅する時の断末魔のような愉快な言語を吐き出しながら、街灯や歩道橋などといった周囲にある公共物に小さな身体を何度か衝突させて数回程反射を繰り返し……ポヨォォン♥

 

「ひゃんっ♥」

 

最終的にはシグナムの巨乳クッションがアギトの小さな身を受け止めて収めたのだった。

 

「むぐ? もががっ!? もがががもごっ!」

 

「ん。 あ、あんっ♥ た、武内ぃんんっ♥ 貴様、いいいきなりアギトに何をする──ひゃぁん♥ こ、こらアギト。 あ、あまり私の胸の中でもごもごしないでくrんんーっ♥」

 

「むっももががもごごっ(だったら早く放せっ)! ごもでがぱむがっ(このデカパイがっ)!!」

 

「「…………」」

 

自身の豊満な胸元に妖精サイズの女の子を埋めさせて抱え、それが原因で自分の胸に吹きかけ続けられるアギトの吐息に悶えながら扇情的で甘い喘ぎ声を連続して漏らしつつ、腰を抜かしたような中腰のエロイ体勢をする女騎士……それが胸をひたすら襲い続ける性感刺激に必死に抗いながらも赤面涙目の上目遣いでもって苦情を訴えてくる様は男の目には猛毒かもしれないが、それ以上にこうなった原因が彼女達の自業自得であった為、寧ろ白けて毒気が抜かれるだろう。

 

「ぶはぁぁっ! く、くるじ~! 空気空気ぃ……はぁ、はぁっ! ……あ、あぶねー。 も、もう少しで窒息死するところだったじゃねーか……はぁ、はぁ……!」

 

「す、すまないアギト……はぁ、はぁ……武内、貴様ぁ……ッ!」

 

「そんな睨まれる筋合いなんか、こっちには無ぇよ。 ていうか、誰が永遠のライバルだ誰が? ……まったく、一体全体何なんだよ、その喧しい事この上ないハエ女はよ?」

 

「誰がハエ女だテメェコラァァーーッ!?」

 

「アギトは拾った」

 

「拾ったぁ?」

 

やっとの思いでシグナムの乳圧峡谷から脱出する事ができたアギトを指さして、彼女という存在が何故お前と共に居るのかと息を整えつつこちらに批難の目を向けて来きているシグナムに出雲那は不機嫌なジト目を合わせて問い質してみたところ、実に簡潔な説明が返ってきたので呆ける事しかできない。 昨日決闘した時には連れていなかったのでシグナムがアギトを拾ったというのが真実ならば、出雲那達が異界を攻略している最中か、或いは出雲那が初めての異界攻略に疲れ果てて眠っている間に、二人は出会っていた事になるだろうが……。

 

「へへんっ、お前には関係ねーよっ! 何はともあれ、アタシはシグナムを相棒(ロード)と認めたんだ。 なら、魔導融合機(アタシ)は共に行くのが道理ってもんだろ!」

 

「《魔導融合機(ユニゾンデバイス)》──第二次遭遇期以前に存在したとある魔導機関が開発したとされる、姿と意志を与えられた魔装錬金武装。 融合適性のある魔導士(ウィザード)との“融合(ユニゾン)”を可能とし、自身の身に宿る魔力と術者の魔力を融け合わせる事で術者の魔力量を大幅に増幅させられる上、融合した魔導融合機の意識が膨大な魔力の管制・補助を行う事によって驚異的な感応速度を得る事ができるのだけれど、融合適性を持つ魔導士の絶対数は少なく、その適正と相性が低い術者と融合すれば暴走状態に陥る可能性もあった為、過去に開発された魔導融合機の八割は適正と相性の合う魔導士が見つからず、《第七機関》などの研究機関に魔導科学研究の実験サンプルとして提供したり、出来が悪ければ廃棄処分されたりしたらしいわ。 つまり、拾ったという事はアギトちゃんは──」

 

「どこかの研究所から逃げ出して来たか、或いは昔に捨てられたレア物ってところだろ? わざわざ優等生な説明ありがとうよ、柊!」

 

疑問も解消できたところで、そろそろ決闘(デュエル)を始めるとしよう。

 

「さあアギト、私とお前の初陣だ! 来いっ!!」

 

「おうよ、やってやる!」

 

「「ユニゾン・イン!」」

 

アギトがシグナムの中へと融けて、永遠のライバル(一方通行な思い込み)を決闘にて打ち倒すべく流離の烈火の将の身体は紅蓮の光を放ち、己の内に融けて混じわった《烈火の剣精》の魔力(チカラ)が彼女の姿に変化を齎した。

 

紅蓮の光が収束し、そこに姿を現したのはまさに烈火の精霊騎士を思わせる威風へと変貌を遂げた彼女であった。 防護服の外套は消失し、彼女の豊満で引き締まった上半身を余す事無く強調させる青紫色の軽服に同色のリボンが薄桃色に変色した頭髪を束ねており、長い丈の白腰帯が陣風に揺らめく様は元々の凛々しさと清涼感を益々顕著に感じさせるが、特に注目すべきは背に顕れた二対四枚の魔力翼だろう。 その揺らめく紅蓮の翼は幻想的で炎の精霊を連想させる。 魔力量も威圧感も普段とはケタ違いに感じ取れる。

 

「どうだ武内、驚いたか? これがアギトと融合を果たした、私の新たなる姿だ!」

 

「ほ~う、こりゃあまた随分とセクシィーな格好になったじゃねぇか。 そんなにデカいバストラインをオレみたいな男に平気で見せつけて、痴女に目覚めたのか? でも、その程度の露出じゃまだまだだな。 フェイト先輩の真ソニックフォームなんてワガママバストが強調されているどころかエロいケツが丸出し──」

 

「武内君? 決闘をやるのなら早く始めたらどうなの? そんなくだらない事を喋っている時間なんて無いでしょう?」

 

「い″い″っ!? ひひ、柊? な……何でそんなに冷ややかな目をして笑ってるんだ? その顔、凄ぇ怖ぇんだけど!?」

 

「ウフフ。 私の事はいいから、さっさと始めてとっとと終わらせてちょうだい。 私、編入二日目で遅刻なんてしたくないから。 フフフ……」

 

「わわわ、分かったからその眼でこっちに笑顔向けてくるのやめろよ? マジで怖ぇから!」

 

女性に関する下ネタを複数の女性が居る前で全く躊躇せず発言するデリカシー皆無な出雲那に向けられた明日香の視線は絶対零度の氷の如く凍てついており、それが表面に浮かばせた満面の笑顔と相俟って何か得体の知れない迫力と威圧感があった。 何事にも無謀と言えるくらい勇猛果敢に立ち向かえる出雲那ですらもその有無を言わせない恐怖に一瞬で畏れ慄き、畏縮しながら彼女に許しを請うような残念な姿を曝してしまっている程なので、皆も気になる女子の前では下ネタ発言は控えるようにしましょう☆

 

さあ、気を取り直して──

 

「戯れはそこまでにして、そろそろ決闘(デュエル)を始めるぞ? こっちはこのチカラで早く貴様と戦いたくて、身体中が今にも火照りきってしまいそうな程に、胸が疼いて疼いて仕方がないんだ!」

 

『へっ! シグナムはこう言っているけれど、尻尾を巻いて逃げ出すんなら今の内だぜ!!』

 

『3・2・1──』

 

「ほざけよ、誰がテメェら相手に逃げるかっての! 例えどんな姿になって掛かって来ようが、いつだって勝つのはオレだ!!」

 

『──LET's GO AHEAD!』

 

決闘開始!

 

「朝のホームルームの始まりまで時間もあまりないし、十秒でケリを着けてやらぁっ!!」

 

「来い、我が永遠のライバル、武内出雲那ッ! 今日こそは今までの雪辱を晴らさせてもらう! 故に、勝つのは私だッ!!」

 

気合い十分。 腰に帯刀した黄旋丸を手に、雷光纏いて烈火の精霊騎士へと突撃して行く出雲那。 ソーサラーフィールド外で決闘を見守る明日香はこの戦いの行方よりも、遅刻と異界探索に関してのこれからの事の方が心配に思って頭痛を患うように額に手を当てていた。

 

──こんな調子で彼を頼りにしても、本当に大丈夫なのかしら……?

 

前途多難過ぎて非常に不安であった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……一方、その頃青学では。

 

「きゃあぁぁっ!?」

 

「何? 突風!?」

 

高等部と中等部の校舎を繋いでいる一階の渡り廊下に闊歩して歩く生徒達の間を縫うようにして、出雲那の親友にしてルームメイトである黒髪の男子生徒──黒鉄一輝が疾風の如く駆けていた。 その精悍さと爽やかさを併せ持つ印象の顔付きには今、誰が見ても明らかな焦燥が浮かんでいて、その証拠に側を自分が全力疾走で通り過ぎた事による猛烈な風圧によって制服のスカートが捲れ上がり穿いている下着を外気に晒してしまっている女子生徒達が咄嗟に上げた甲高い悲鳴すらも全く耳に入っていない様子だ。

 

──あれから一晩経って、柊さんを探しに別れて行った出雲那君は未だに戻ってきていない……昨日、ハラオウンさん達が生徒会室に来訪して出雲那君に事情聴取を行った時に話をしていた、出雲那君がこの間の深夜に顕れて殺されかけたっていう謎の化物の件もあるし、いよいよあの後の彼の身に何か良くない出来事が降りかかった可能性が出てきたね。

 

当然、その理由は別れてから一晩経っても寮の部屋に帰って来ていない親友が心配で居ても立っても居られないからで、平時の彼ならば疾走しながらでも可能とする道行く他人への配慮が大変疎かになってしまっている(それでも、この人混みの間を激突せずに疾走できているのは、さすが《無冠の剣王(アナザーワン)》と言えなくもないが……)程である。

 

──急いでこの事を東堂さんに知らせに行かないと! 彼女の言いつけを破った事で、後で彼女からキツイおしおきをされるだろう出雲那君は気の毒に思うけれど、事は一刻を争うかもしれない行方不明な彼の事を思うと、もうそんな事を言っていられる場合じゃない。 ステラ達にも登校したらすぐに生徒会室に来るよう連絡しておいたし、僕も一秒でも早く──

 

額に汗を滲ませながら人通りが少なくなった曲がり角を速度を落とす事なく曲がろうとした、その時。 一輝の剣士としての感覚の鋭さからか、曲がり角の先に()()()()()を不意に感じ取る。

 

「──っ!?」

 

直後に、曲がり角の死角から小柄な体躯の女子生徒が走って飛び出して来た。 危ない! このまま両者が激突すれば、幾ら《三大源力》というチカラを持った戦士候補生と言えども惨事は免れないだろう。 女子生徒の方も一輝の存在に気が付いたようで驚くように見開いた眼を疾走で自分に向かって来ている一輝に向けているが、今更慌てて速度を緩めてももう遅い。

 

「くっ! こうなったら──っ!!」

 

一輝はやむを得ず脳の制御(リミッター)を解放する。 今は不要な世界の色を意識的に排除して、その分の容量(キャパシティー)を身体能力向上にまわし、足捌きを利用した無理矢理な方向転換によって、右への回避を試みた。

 

常人なら不可能な体捌きだが、伐刀者(ブレイザー)として有るべき【霊力】を一度の身体強化にしか使えない程度の極小の量しか持っていなかったが為に武術の研鑽のみで《無冠の剣王》と称される程の域に至った黒鉄一輝という男ならば、それでこの窮地を回避する事など造作も無い事だろう。 一瞬とはいえ脳の制御を外しての極限の行動だった為に頭に電流が走るような痛みが襲ったが、それだけの事など激突してしまう事で目の前の女子生徒に掛けてしまうだろう被害と迷惑を思えば安いものだ──そう安堵しかけた一輝だったが、何故か身を捻って回避した先にはその女子生徒の可愛らしい顔が……。

 

「ちょっ!?」

 

「えっ!?」

 

これには照魔鏡の如き洞察眼を持つとされる一輝も流石に想定外の事象だったようだ。 どうやら、この女子生徒は相当優れている星脈世代(ジェネステラ)だったようで、その並外れた身体能力と反射神経をもってあちらもまた緊急回避を試みていたのだ……不幸な事に、一輝が回避しようとした方向に重なるコースで。

 

「くっ! ──うぉぉぉおおおっ!!」

 

「きゃっ!?」

 

今度こそ激突するかと思われたが、ここで一輝が男の気合いを見せてくれた。 激突に備えて足を踏ん張った女子生徒が急激に減速を掛けた事によって体勢を後ろに崩したのを速度の緩急と反射的に切り返す曲がり(カット)によって鋭く回り込み、同時に転倒しかけていた女子生徒の背中を腕で支え、更には彼女に掛かる反動を軽減させるべくそのままその小さな身体を横抱きにしてから足に踏ん張りを利かせてブレーキを掛け、靴底を磨り減らして疾走の勢いを見事に殺してみせた。

 

「はぁ、はぁ……ふぅ、なんとか止まったか」

 

乱れた息を整えて自分の世界の色を元に戻す事で、激突の惨事は無事に回避できたのだった。 お見事!

 

「ああ、あのぅ……」

 

「あ……ごめん。 大丈夫? どこか怪我はしていないかい?」

 

「あ、はい……大丈夫、です……」

 

「そうか、それはよかった。 僕の不注意の所為で君みたいな女の子に怪我をさせてしまったら、どうしようか……と……っ!?」

 

今度こそ安堵の色を浮かべた一輝の腕に抱きかかえられたまま気恥ずかしそうに頬を朱く染めている女子生徒が恐る恐る呼びかけてくる。 一輝はその声によって彼女に迷惑を掛けてしまった事を思い出し、すぐさま自分の腕の中で自分の顔を見上げてきている女子生徒の眼に視線を合わせて謝罪を言うが、動揺混じりの優しい微笑みで礼を返してくれた彼女のこの可愛らしい顔は……何処かで見覚えがあった。

 

「君は……」

 

彼女が身に纏っている薄紺色のセーラー服は青学の中等部生のもの。 気弱そうな印象がする大きな瞳はクリクリとしていて可愛らしいが、その奥には白金(プラチナ)のように強靭な意志が秘められていて、二結びにした銀色の長髪がその輝きを一際に際立たせている。 中等部生という歳相応の少女の背丈だが、冬物の制服の上から見ても判る程にスタイルが引き締まっていて、特に目を惹くのはその細くて小柄な体躯に反して制服の胸元を豊かに盛り上げている柔らかそうなマシュマロと表現すべきものだろう。 それはステラやマイ程の領域には流石にまだ及んでいないようだが、明日香やアリサのものに匹敵できる大きさで、しかも歳的に将来性があるのが素晴らしい。 しなやかな細い腰に視線を落として見れば彼女の得物らしき刀のような物が鞘に納刀した状態で差してある事から、彼女は剣士……それも、相当凄腕の……。

 

記憶力に自信のある人は一輝達が昨日の昼に青学の敷地内にある【ドラグーンスタジアム】内の摸擬戦場に通じる通路を歩く暇つぶしに“青学最強の学生戦士”の話題で盛り上がっていたのを憶えているだろうか? その際に一輝が挙げたのは“《疾風刃雷(しっぷうじんらい)》の二つ名を持った中等生の剣士”であったのも……そう、彼女こそが──

 

「青竜学園中等部生最強の剣士──《刀藤(とうどう)綺凜(きりん)》……さん?」

 

銀綺の輝きを放つ可憐なる美少女剣士が今、物語に交差した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「アギトは拾った」……これがやりたかったんだ。 許してください。(土下座)

アギト「アホかこのボケナスーーーーッ!!」

あぎゃぁぁああーーーっ!? 焼け死ぬ! 唐揚げになって死んじゃうぅぅーーーっ!!

アギト「ったく、アタシとシグナムの出会いをそんな蟹頭デュ◯リストのカードのような適当なものにしてんじゃねーっつうんだよ!!」

スイマセンスイマセン、生まれてきてゴメンナサイ!

綺凜「ア……アギトさん。 そそ、そんなに火炎放射を出したら此処一帯が火の海になってしまいそうですから、できればそのくらいで止めておいた方が……」

アギト「……それもそうだな。 ちょっと燃やし足りねーけど、今日のところはこのぐらいで勘弁してやるか」

あちちっ。 ふーっ! 死ぬかと思った……てな訳で、今話初登場した《烈火の剣精》で知られる『魔法少女リリカルなのはStrikerS』の《アギト》。

それから今章『銀綺の一刀と復讐の幻弾編』の【表】のメインヒロインという大役を担う事になった『学戦都市アスタリスク』の《刀藤綺凜》ちゃんに、早速このあとがきに来てもらいましたっ!!

綺凜「はうっ!? わ、わたしなんかが今章のメインヒロイン……ですか? そそそ、そんな、出来ませn……い、いえ! 非常に光栄ですが! あ、あのぅ……わたしなんかが、そんな大役を果たせるかどうか……そのぅ……(もじもじ)」

アギト「もじもじする必要なんかねぇぞ、綺凜。 章限定のメインヒロインなんてもの、そのデケェ乳を張って堂々としてれば、意外と簡単にできるモンなんだからさ。 もっと気楽にやりゃあいいんだよッ!」

綺凜「ふ……ふええぇっ!? ちちち、乳ってアギトさん! あわわわっ──はにゅう~……」

アギト「下ネタ聞かさせた恥ずかしさのあまりに気を失いやがったよコイツ……ったく、どんだけ初心(ウブ)なんだよ……」

はははッ! その初心さも彼女の魅力の一つでしょう、皆さん? この綺凜ちゃんが今章の騒動を引き起こすのです!

また、【表】があるからには、【裏】もまたあり。 今章のストーリーを飾るヒロインは綺凜ちゃんに加えてもう一人登場するのですが、それはまた少し先の話となります。

と言っても、あくまでも主人公のヒロインは明日香なので、彼女達が出雲那にフラグを立てる事は無いでしょうがね。

アギト「てかお前、今回下ネタが多過ぎるわァァァアアアーーーッ!!」

あぎゃぁぁぁああーーーッ!? そ、それでは《疾風刃雷》刀藤綺凜を中心とした今章のストーリーにご期待ください! あちちっ! では、サラダバーーーッ!!


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