そしてこの話のラスト、出雲那に悲劇が訪れます……。
青竜学園の東側にある体育館の隣には青学の生徒達が食事をする為の大食堂がある。
最大約千五百人が一度に食事を取る事ができる広さがあるこの学生食堂の内装は穏やかな空をイメージした空色で塗装されており、日々修練に励む青学の生徒達の安らぎの場である。
「イッキ、あーん♪」
「あーん……うん、美味しい♪ ステラ、また一段と腕を上げたね」
「でしょ♪ イッキの為に朝四時に起きて愛情込めて作ったんだから、当たり前よ♪」
「そんな朝早くから僕の為に? ……ありがとうステラ」
雲のような白い模様が壁や天井の所々に描かれた眼にも良い空色の空間……の筈なのだが、この日この昼は一部桃色の空間が形成されていた……。
「じゃあお返し、あーん♪」
「あーん……うん、さすがアタシね! 花嫁修業の成果はバッチリ出ているわね♪」
「それもあるだろうけど、やっぱりステラの愛情が沢山籠められているから凄く美味しいんだろうね♡」
「嬉しいわイッキ……でもそれ以上に、きっと貴方が食べさせてくれたから何倍にも美味しく感じられたのよ♡」
「ステラ……」
「イッキ……」
その桃色の空間の中で幸せそうに手を握り合って見つめ合う二人の男女──黒鉄一輝とステラ・ヴァーミリオンは二人共に整った顔をした美男美女であるが故に、この光景は思春期真っ盛りで恋人いない歴=年齢な学生達には目に毒だ。 今の彼等を遠くから視界に入れてしまっただけでも口から砂糖を吐いてブラックアウトしてしまう事だろう……なので──
「──うがぁぁぁあああああああああああっ!!! てめぇ等いい加減にしろーーーーーーーっ!!!」
同じテーブルの席に座って食事をしている奴等はとても我慢できるものではない。(笑) 目の前の桃色の空間を数分間至近距離で目にして数分間意識を保った猛者──人吉善吉は遂に我慢の限界を迎えて大声で怒声を上げたのだった。
「うっさいわね! 黙って食事しなさいよアンタ!」
「善吉君、食事中に大声で叫ぶのは感心しないよ。 少し周りの迷惑を考えた方がいいんじゃないかな?」
「DA★MA★REバカップル共! 人の眼前でイチャイチャイチャイチャと!! いい加減にしやがれ!! 辛口のカレー食ってんのにメイプルシュガーの味がするわっ!!!」
「善吉、塩飴あるけど食うか?」
「おっとサンキュ! 気が利くな出雲那……あむ」
「……武内君……それってコーヒー用の角砂糖じゃ……」
「あ、間違えたw」
「ぶぅぅーーーーーーーーーーーっ!!?」
「「鬼畜だ(ね)……」」
いきなり目の前で怒声を上げた善吉に対して抗議する一輝とステラ……お前等が言うなと納得のいかない善吉が怒りの感情をぶちまけると、隣にいる出雲那がスープを飲みながら小さな白い塊を善吉に差し出し、口の中が激甘で吐きそうだった善吉はそれをありがたく受け取って口の中に放り込む。 すると口の中が焼けるような痛みを発したと思ったらステラの隣にいる明日香が気まずそうに出雲那に間違いを指摘する声が聴こえてきた事によってこれが甘味の過剰摂取によって舌の神経がバカになっている事に気が付き、反射的に口の中の白い塊を噴き出した。 それを見たリィンとアリサはワザと善吉に角砂糖を渡した出雲那に呆れ半分恐怖を覚えて顔を青くしていた。
十人程座れる大きな円形のテーブルを囲んで楽しく愉快に食事をする出雲那達。 何で彼等はこんなところで昼食を取っているのかというと、数分前に本校舎のエントランスでの騒ぎを治めた出雲那達はステラの強引な申し出によって明日香とステラも放課後の用事に同行する事となり、丁度お昼時という事もあって学生食堂で昼食を取る事にしたのであった。
この学生食堂は食券式で様々な料理を提供してくれるのだが、ステラが久々に会った恋人の一輝の為に朝から作った手作り弁当(重箱)を持って来ていて、それを出雲那達の目の前で一輝とステラはイチャイチャと食べさせ合って桃色空間を形成し、周囲に無数の口から砂糖を吐いた屍を量産していたのである。(笑)
「ごめんなさいね、ステラちゃんの我儘であなた達に迷惑を掛けてしまって……」
「ううん、全然構わないわよ。 気にしないで」
「寧ろ新しい学園の仲間の役に立てて光栄だと思っている。 何かあったら、これからも遠慮なく言ってくれ」
「ふふ、そう言ってくれると助かるわ。 ありがとう」
友人を恋人に会わせる為とはいえ出雲那達に迷惑をかけてしまった事を謝る明日香にアリサとリィンは気にしなくていいからもっと頼ってほしいと言い、明日香はそれに対してお礼を述べた。 さっきまで少々余所余所しい喋り方をしていた明日香であったが、話している内に大分打ち解けたみたいだ。
「……でも大丈夫だったのかしら? ステラちゃんは全く気にしていないみたいだったけど、仮にも一国の皇女が公衆の前で堂々と恋人と抱きしめ合っていたなんて、スキャンダルになるんじゃ……」
明日香の言う事も尤もだ。 普通なら一国の王族が身分の違う異性と交際していただなんて国際問題にもなりかねないだろう……そう、普通なら。
「それなら心配はいらねーんじゃね? スクエアは身分よりも戦闘の実力がものをいう都市だからな。 めだかちゃ……黒神めだかや東堂先輩が誰かと交際していたんなら大スキャンダルになるけど、皇族だろーが世界最高峰クラスの霊力を持った伐刀者だろーが、まだ実績一つ残していない新入りのヴァーミリオンがどうこうしようと、その場で騒ぎにはなるけど大したニュースにはならねーだろうからな」
「ついでに言っておくと外から修行の為に来てる王族がスクエアの四大学園に結構いるから、あまり珍しくねぇしな。 おまけにそいつ等、かなり自由気ままに生活してるみてぇだし」
「そうそう、この前南エリア商業地区にあるジャンクフード店で聖ルシフェルの《
「確か《リーゼルタニア》の王女だったな、そいつ……そういやオレもこの間、北エリアセンター街のゲーセンでナイツニクスにいる《ルシス王国》の王子がダチらしき金髪を連れてシューティングゲームやってんの見かけたな……」
「へー……だけど一番フリーダムだと思ったのは、一週間前に西エリアのショッピングモールで彼氏らしき野郎と堂々とデートしてたヴァイスファングにいる《グーデンブルグ王国》の第三王女だな。 彼氏の腕に抱きついてイチャイチャしながら歩いてやがったから、あれは身分とか関係なしに目に付いたぜ……」
さっきから出雲那に嵌められて砂糖を食わせられた善吉が腹を立てて嵌めた張本人と座りながら取っ組み合いをしていたが、明日香の質問を聞いて二人は取っ組み合いを止めて思い出したかのように話した。 どうやらスクエアには数多くの王族が生活に溶け込んでいて、ビックリする程
「そ、そうなの……なら問題なさそうね……」
明日香は二人の話を聞いて、やっぱりここは変わった場所ねと言っているかのように顔を引き攣らせて無理矢理納得する。 そもそも外部のマスコミやジャーナリストなどの情報メディア関係の人間は四武祭の取材でしかスクエアに入る事ができない決まりがあるので、四武祭の期間にボロを出さなければ問題は無いだろう。
「ったく。 中等部ん時毎晩毎晩コソコソと何を熱心に書いてんのかと思ったら、恋人と文通してやがったとはな……お前等一体いつから付き合い始めたんだ?」
「あ、それ私も興味あるわね♪ どうなの?」
出雲那は肩肘をテーブルに着いてパスタを食いながら一言呟いて一輝とステラに二人の馴れ初めについて聞き、アリサが興味津々でそれに同意した。
「ははは、別に隠してたわけじゃないんだけどね……あの時僕は十一歳だったかなぁ。 僕はその頃、剣の修行の一環として帝国ヤマト各地の道場を周って道場破りをしていたんだ。 その道中で、腕試し目的で帝国ヤマトに来国していたステラと出会ってさ……その……色々あって決闘する事になって……」
色々って何があったんだ? 頬を朱らめて少し恥ずかしそうに語る一輝を見てそう思い気になった出雲那達だったが、一輝の隣でステラが“聞いたらタダじゃおかない”と言っているかのように笑っていない視線の笑顔で自分等を牽制していたので、心の中に思い止める事にした。
「結果は一応僕が勝ったんだけど、その時彼女が僕について行くと言って聞かなくてさ。 それで一緒に修行して周っているうちに……お互いに好意を抱いていたみたいで……」
「……ある日、デバートを占拠したテロリストと戦って大怪我を負ったイッキが病院で目覚めた時にいきなり『僕は……ステラが好きだ』って告白してきて……それで……恋人同士になったの」
段々と恥ずかしくなってきて赤裸々に口止もりそうに語る一輝、最後にもじもじと顔を朱らめているステラの口から二人が恋人同士になった経緯が語られたのだった。 昔の思い出を語るのがよっぽど照れくさくて恥ずかしかったのだろう、二人の頭の上から湯気が出ている。
「「「「「…………」」」」」
明日香を含めて何と言ったらいいのかわからなそうに黙り込む出雲那達。 そりゃあ十一歳という幼さでテロリストと戦ったなんて聞かされたら誰だって呆気にとられるだろう。 当然の反応だ……。
「……ま、ツッコミたいところはすげぇあるが、それは置いといて……要するに、ヴァーミリオンは一輝を溺愛していて一輝と同じ学園に通う為にわざわざ青学に編入して来たってわけか……よかったじゃねぇか一輝、そんな重箱に豪華な昼飯作って来てくれるようないい彼女を持ててよ……あむ!」
パスタをフォークに巻きながら一輝に皮肉のようにそう言い、フォークに巻いたパスタを口に運ぶ出雲那。 彼も彼女いない歴=年齢の条件に当てはまる男なので嫉妬しているようにも聞こえるが、言っている事は的外れではない。 ステラ程強大な霊力を持つ伐刀者なら、ここ三年間四武祭常勝の名門ナイツニクス学園にだって簡単に編入できた筈だ。 なのに彼女は一輝と共に学園生活を送る為にわざわざ青竜学園に来たのだ、溺愛という表現は的を射ている。
「ははは、当たり前だよ。 ステラは最高の彼女さ。 僕は幸せ者だと思うよ♪」
「まあ、イッキったら♡ ……ところで、アンタのその昼食……なんか凄いわね。 赤々しくて眼が痛いって言うか……」
一輝とステラは出雲那に煽られた事によって再びイチャ付きそうになったが、ステラは昼食の事を言われて先程から気になっていた事を出雲那に言った。
彼の目の前に置かれた赤一色の昼食──トマトスープにトマトサラダ、トマトジュースに焼きトマト、そしてメインディッシュとしてトマトソースパスタ……トマト尽くしの昼食メニューを出雲那は今食している。
「あ~、やっぱ初めて見る奴はツッコムよなぁ」
「出雲那君、トマト大好きだもんね……」
ステラの発言を聞いて仕方ないと言う善吉と一輝。 中等部からの友人である一輝達はもう慣れているようだが、彼等の発言からして出雲那はほぼ毎日昼食はトマト尽くしのメニューのようだ……。
「へっ! 美味いもの食って何が悪いってんだ? トマトは凄ぇぞ。 低カロリーで超美味い、ビタミンCとEを含んでいて生活習慣病予防や老化抑制にもなる、煮て良し! 焼いて良し! ケチャップなどの調味料にしても良し! 作れる料理のレパートリーも豊富だ♪」
日本語名【
「この赤さだ! この赤さと美味さがオレの心と魂を昂らせる! まだまだオレは戦士として上を目指せるぜっ!! ふはははははははっ!!!」
大好物なトマトの話をして気分良くなった出雲那はトマトジュースが入っているコップを手に取って立ち上がり、テンションMAXで高笑いをし、そのままトマトジュースを一気飲みした。 出雲那はトマトの事になるとおかしくなるようだ。 彼のトマトによる豹変っぷりを初めて見る明日香とステラはドン引きしていて、一輝達は苦笑している。
「ようっ! 相席いいか?」
「相変わらずやかましい連中だな、どうでもいいが……」
場が混沌としてきた時に、金髪で学生服のボタンを全開にしている陽気な印象の男子生徒と黒髪で学生服の上から黒い外套を羽織っているクールな印象の男子生徒が昼食を乗せたトレイを持って出雲那達に相席を求めて来た。 それによって出雲那は高笑いを止める。
「双竜コンビじゃねーか。 珍しいな、お前等が昼メシを食堂で食うなんてよ」
「へへっ、青い空の下で食うメシは最高だがオレ達だってたまには食堂を利用する事だってあるんだぜ。 なあ?」
「べつに。 ただ、今朝出雲那と一輝がクレア先輩達と戦りあっている隙にコッソリと横を通り抜けて持ち物検査を避けた事がクレア先輩達にバレたから、鉢合わせしないように食堂で食う事にしただけだろう」
「ちょっ!? お前それを言うなって!」
二人は他愛の無い談笑をしながら出雲那と反対側の善吉の隣の席に座って昼食をテーブルの上に置いた。 突然やって来た二人が誰だかわからないステラと明日香は少し困惑する。
「な、何なのこいつ等?」
「皆の知り合いみたいだけど、紹介してもらってもよろしいかしら?」
「ああそうだね、紹介するよ。 この二人は僕達と同じ高等部二年生でB組の生徒なんだ。 金髪の方が《スティング・ユークリフ》君、黒髪の方が《ローグ・チェーニ》君。 二人は《
「よろしくな! いやー、こりゃあまたなかなかの別嬪さん達じゃねーか、なあ?」
「興味ないな」
初対面のステラと明日香に二人を紹介する一輝。 スティングが彼女達に気さくに挨拶をして彼女達が美人である事をローグに同意を求めるが冷めた口調で返された。
「へぇ~、鳳凰四武祭ってこの春行われるタッグ戦の大会でしょ? 帰りのホームルームで担任の先生が言っていたわ」
「そう、スクエアの四大学園の学生にとっての一大イベントである闘技大会《四武祭》の一つ。 優勝すれば莫大な賞金と
「一度でも優勝すれば将来安泰っつーわけだ♪ 今年の鳳凰四武祭はオレ達がいただくぜ!」
話を聞いたステラが興味深そうにそう言って、ローグが鳳凰四武祭について捕捉をし、スティングが上に拳を掲げて優勝宣言をした。 そこでスティングの優勝宣言が聞き捨てならなかった出雲那が対抗心剥き出しで横槍を入れる。
「おっとそうは行くかよ! 今年の鳳凰四武祭を取るのはオレと一輝だぜ!」
「へへっ、おもしれぇ。 オレとローグの双竜コンビにケンカ売るとは、いい度胸じゃねーか!」
「それはこっちのセリフだベスト8止まりが。 オレと一輝は昨年ベスト4だぜ、テメェ等より上だ!」
「んだと!」
火花を散らして口喧嘩をする出雲那とスティング。 実は出雲那と一輝も昨年の鳳凰四武祭に出場していて、なんと準決勝まで勝ち進んでいたのである。 しかもベスト4に残った青学のタッグは彼等だけだ。 つまり出雲那と一輝はその大会で青学最優秀の成績を納めたのだ。 その影響で出雲那は《
なので先程の騒動で恋人がいる事が発覚してスキャンダルになる危険性があるのはステラより寧ろ一輝の方であったのだが、運がいい事に周りに集まって来た野次馬達は全員ステラに意識が向いていて一輝の顔が見られる前に事が収まったので大事にはならなかったようだ。
「それは事実だろう、いちいち目くじらを立てる事ではない」
「おい、お前悔しくないのかよローグ!」
「記録だけの戦績など興味ないな。 出雲那達と直接戦り合って負けたわけでもあるまいし。 ならオレ達が出雲那達より弱いという証明にはならないだろう?」
「あ、そういやそーだな」
自分が対抗心を燃やしているのに冷めた口調で話の腰を折って来るパートナーに腹を立てるスティングであったが、ローグが言った事に納得したのでアッサリ怒りは冷めた。
「へへっ、言われてみるとオレ達は優勝したナイツニクスの《白舞の姫将》と《不動空斬》に負けたけど、アンタ等が負けたのは準優勝だったヴァイスファングの《
「何勝ち誇ったような面でニヤニヤしてこっちを見てやがる。 結局テメェ等も負けた事には変わりねぇじゃねぇか!」
「全然違うね! オレ達が負けたのは優勝者、アンタ等が負けたのはオレ達を負かした奴等に負けた準優勝者、格が違うんだよ格が!」
「それこそ記録だけの戦績だろうが! テメェ等がオレと一輝より強ぇ証明にはならねぇよ!!」
「だったらこの後やるか!? オレとローグ、アンタと一輝とでタッグ決闘をよぉっ!!」
「上等だ……おい、
「くだらないな」
「ははは……」
醜い争いを続ける出雲那とスティングにローグは呆れ、一輝は苦笑いをする。
「……ねぇ、ちょっといいかしら?」
そんな混沌とした中で何が不満だったのか、ステラがムッとした表情で会話に入ってきた。
「イズナだっけ? 悪いけど今年からアタシがイッキのパートナーとして鳳凰四武祭に出場するから、出場するなら他を当たってちょうだい」
「ちょっ、ステラ!?」
「あ″?」
唐突にステラが一輝の片腕に抱き付いて自身の豊満な乳房を押し付けながら、出雲那に向かって自分が一輝と組むからタッグを解消しろと要求してきたので、出雲那の額に青筋が浮かんだ。 自分のタッグパートナーを横から掻っ攫おうと言うのだから癇に障ったのだ。
「何言ってんだ、テメェふざけるなよ? オレと一輝は中等部の頃からずっとタッグを組んで戦ってきたんだ!」
「アタシはアンタがイッキと知り合う前からイッキの彼女なのよ。 恋人同士がペアを組むのは当然じゃない?」
「オレ達は昨年のベスト4で青学最優秀の実績を出しているんだぜ? つまり青学最強タッグだ! 今更タッグを解消するわけねぇだろ!」
「い、出雲那君、ステラ、ちょっと落ち着いて……」
一輝のタッグパートナーの座を巡って言い争いをする出雲那とステラ。 困った一輝はなんとか二人を落ち着けようとするが──
「聞き捨てならねーな出雲那! 青学最強タッグだぁ? それはオレ達双竜コンビを倒してから名乗りやがれ!」
「誰が一輝のパートナーになろうが興味ないが、直接戦り合ってもいないのに格下扱いされるのは心外だ、取り消せ」
「ああ、もう!」
出雲那の【青学最強タッグ】発言によってスティングとローグも口論に参戦し、四人で騒ぎだしたので場が更に混沌と化した為に一輝は頭を抱えた。 あまりにもやかましいので周りで食事をしている生徒達が鬱陶しそうに彼等を睨みつけている。
「まったく、ステラちゃんが短気なのはいつもの事だけど、武内君達もかなり沸点が低いみたいね……」
「はぁ、ごめんね明日香。 ウチのおバカ達はいっつもこうなのよ」
「気にしなくていいわ、私はこういうのステラちゃんで慣れているから……それにしても、さっきからマイさんの姿が見当たらないのだけど……え、アリサさん? ……何これ?」
明日香が言い争って騒ぎ立て周りに迷惑をかけるバカ共を腕を組んでジト目で見て呆れ、アリサが溜息を吐いて明日香に謝罪するのだが、明日香は友人であるステラが毎回騒動を起こすから慣れているので平気だと言い、食堂に来てからマイがどこかにいなくなった事が気になっている事を口に出して呟く。 すると突然アリサとリィンと善吉が顔を真っ青にして鼻栓を取り出して自らの鼻に詰め、その後アリサがスペアの鼻栓を取り出してそれを無言で明日香に渡した。
明日香はその行動の意味が解らないので困惑する。 顔を青くして俯いているアリサにどういう事か聞こうとしたが……その時──
「いつもゴメンみんな。 ちょっと作ってもらうのに手間取っちゃって☆」
今までどこかに行っていたマイがようやくやって来た…………強烈な異臭を放つ紫色の何かが乗ったトレイを持って。
「「「「う″っ!」」」」
「「「げっ!?」」」
「「……」」
マイが来た瞬間に喧しかった場が一気に静まり返り、バカ共による言い争いも止まった。 一輝と善吉とリィンとアリサは来てしまったかと呻き声を上げ、立ち上がって言い争いをして鼻栓をしていなかった出雲那とスティングとローグは異臭を嗅いでしまって声を上げ、明日香とステラはマイが持っている紫色の何かを見て絶句してしまった。
「アアアンタ何なのよそれぇぇええっ!!?」
「これ? 私の昼食【マイ・ナツメスペシャル】だよ♪」
「昼食っ!? 嘘よ! こんな食べ物あってたまるもんですか!!!」
「「────」」
「ローグ!? スティング!? 気をしっかり持て!! 死ぬなぁっ!!!」
マイは機嫌良さそうに笑顔で空いた席に座り、テーブルの上に紫色の何かが乗ったトレイを置く。 それをステラはこの世の物とは思えないような目線で見て指さし、声を荒げて叫んだ。 するとマイが超笑顔でこれは食べ物だと衝撃の発言をしたのでステラは全力全開でそれを否定する。 周りを見てみるとスティングとローグが泡を吹き目を回して倒れてしまっている。 マイが食べ物だと言った物体から発せられる異臭を嗅いで耐えられずに気絶したのだ。 善吉が二人を現世に繋ぎ止める為に必死になって声をかけている。
「それじゃあ、いっただっきまーすっ♪」
「……」
そして、マイはその紫色の何かをスプーンで掬って食べ始めた。 彼女が気泡がボコボコと鳴っている紫色のソースが掛かった物体をまるで限定販売されたスイーツを頬張る女子高生のように幸せそうに食べている姿を見て、明日香は顔を引き攣らせている。
「ア、アリサさん……その……マイさんって……ひょっとして……」
「たぶん貴方が思っている通りよ。 マイはね……凄く悪食なの……」
明日香は思い切って思っている事をアリサに聞いてみる。 返って来た返答は思った通りのものであり彼女はまあ好みは人それぞれでしょうと心の中で必死に自分に言い聞かせた。
【マイ・ナツメスペシャル】……それは味覚がおかしいマイの為だけに作られた特製定食だ。 様々な食材を混ぜ合わせ【ルーンボトル】という名の薬品を丸ごと投入してできたそれは、まさに物体X……いや“デスディナー”と呼べる代物だろう。 周りに飛び散った紫色のソースから「アオ……アオ……」と鳴くウネウネした何かが精製されているので凄く奇妙だ。
因みにこの【マイ・ナツメスペシャル】は、ここの食堂の厨房の裏でこれを作る為だけにアルバイトをしている女子高生によって製作されているらしいが、詳しい詳細は不明である……。
「ん~美味しい~♪」
「……これを見ると新学期が始まったって実感するぜ……そんな想像を絶するモンを幸せそうに食いやがって」
「ん? 出雲那も食べてみる?」
「は?」
「はい、どうぞ♪」
「んぐっ!!!?」
「「「「「「あ」」」」」」
ここで悲劇が起きた。 幸せそうにデスディナーを食べ続けるマイに呆れた表情で近づいた出雲那に対して、勘違いをしたマイがスプーン一匙のデスディナーを不意討ちで出雲那の口の中に放り込むという暴挙に打って出たのである。 そして──
「ぐごあ$#びご@☆※&ぶべじっ──」
出雲那は解読不能な言語で悲鳴をあげて……死んでしまった。(笑)
「「「「「「い、出雲那(イズナ)(武内君)(君)ーーーーーーーーっ!!!」」」」」」
出雲那の死(笑)を目の当たりにして絶叫する仲間達。 果たして出雲那の運命や如何にっ!?
おお~出雲那よ、死んでしまうとは情けない。(笑)
スティング「いや、実際に死んだわけじゃねーだろ。 なぁ?」
ローグ「興味ないな」
スティング「ひでーなお前……」
まあまあ……というわけで『FAIRYTAIL』より《
二人は原作初登場時十九歳なのですが、この世界では今は十六歳、高等部二年生です。
スティング「ご都合主義感半端ねーな」
ローグ「興味ないな」
世界が違うから問題なし! それじゃあまた次回!!