それからこの世界で一番要素の多い『学戦都市アスタリスク』と今季アニメ第二期絶賛放送中の『この素晴らしい世界に祝福を!』からキャラが一人ずつ登場します!
マイ・ナツメ嬢の恐ろしい所業(笑)によって倒れた我らが主人公武内出雲那。 彼はその後しばらくの間生死の境を彷徨い──
「うぷっ……まだ口の中がヒリヒリして気持ち悪りぃぜ……」
なんとか生還して九死に一生を得ていた。 楽しい昼食の時間がとんだ災難になったものだ。(笑)
「本当にゴメンね出雲那、本当に美味しかったから良かれと思って……」
「すまないと思ってんだったら別にいい。 次やったら許さねぇけど……うっぷ!」
「ったく【マイ・ナツメスペシャル】とはよく言ったものだぜ。 あんなの世界広しと言っても食えるのはマイしかいねーだろ……てか居てたまるかよ」
口を押さえて気分悪そうに歩く出雲那に罪悪感を感じてマイは謝罪をする。 出雲那は次やったら許さないと釘を刺してマイを許し、善吉はマイが食べていたデスディナーを思い出してそう口にした。
昼食を終えた出雲那達は現在、当初の予定通りタッグ戦の練習を行う為に学園の摸擬戦場を目指してぞろぞろと歩いていた。 出雲那より軽傷(?)だったスティングとローグも先程言った通り出雲那と一輝のペアと決闘をする為に同行している。
青学の摸擬戦場は学園の敷地内の北東にある楕円形のスタジアムである。 スクエア内ではソーサラーキューブさえ所持していれば基本的にどこでも決闘を行う事ができるのだが、四大学園の敷地内では原則的に摸擬戦場以外では決闘を行う事は禁止されている。(今朝の出雲那達とクレア達の決闘は校門前だったのでギリギリ敷地外) 戦闘の被害による学園施設の破損を防ぐ為だ。 《三大源力》を持った超人達はいとも簡単に建物を倒壊させ、大地を砕き地形を変える事ができる。 そういう規則ができるのも当然と言えるであろう。
「ステラ、柊さん、ここが青学の摸擬戦場【ドラグーンスタジアム】だよ」
「へぇ~、見た感じなかなか立派な摸擬戦場じゃないの」
「そうね、全世界の戦士候補生が集まるスクエアの学園が保有する訓練施設なだけあって、結構な建設費が使われているみたいね」
学園敷地内の大通りを通り、二体の竜の石像が出迎えるスタジアムの正面ゲートにたどり着くと一輝が来るのが初めてであるステラと明日香にスタジアムの名前を教えた。 ステラは今まで知る限りの他の摸擬戦場と比べて規模が大きいスタジアムに関心を示し、明日香はスタジアムの周囲に建っている竜の石像や三大源力に大きな耐性がある特殊強化ガラス張りの外壁を見て建設するのに使った費用の予想を口にする。
自動開閉式の正面ゲートを潜り、スタジアムのエントランスに入ると円形のカウンターで四方八方から来客に対応する事ができる総合案内受付が正面に見える。 総合案内の周囲には無数のベンチが設置されている待合所になっており、受付の順番待ちをしたり、知り合いとの待ち合わせや休憩など、様々な利用目的でベンチに腰を掛ける学生達があちこちにいる。
「さーて、どこに居やがるんだアイツ?」
「善吉、何きょろきょろしているんだ?」
「ここで俺のタッグパートナーと待ち合わせしているから探しているんだよ。 悪りーけど先に受付を済まして来てくれ。 たぶんそこらへんのベンチの上で寝てんだろーし、アイツを見つけたらすぐに行くからよ」
「ああ彼ね? 確かに鳳凰四武祭に向けての決闘なのにタッグパートナーがいないんじゃ練習にならないわね」
「私達も一緒に探してあげるよ、この待合所は結構広いから手分けして探した方が早いだろうし」
「そうだな。 摸擬戦場の使用申請はオレと一輝でやってくるから、お前等は探してこいよ」
「そ、そうか。 すまねぇなみんな」
受付を出雲那と一輝、そして探し人である善吉のタッグパートナーと面識がない明日香とステラの四人に任せて、残りのメンバーで善吉のタッグパートナーを手分けして探す事にした。
円形でかなりの広さがあり摸擬戦場を利用する学生達で込み込みしているエントランスの中にいる個人を探すとなると一人ではかなり苦労するだろうが、複数で手分けをすれば大して時間は掛からないだろう。
「すー、すー。 むにゃむにゃ……」
「ようやく見つけたぜ……こんなところで気持ちよさそうに眠りやがって……」
「あはは……なんか気持ちよさそうで起こすのに気が引けるね」
探し始めてから五分後、善吉とマイが太陽の日差しがよく当たるガラス張りの外壁の近くにあるベンチの上……ではなく、その下に潜ってまるで猫のように丸まってスヤスヤと寝ている善吉のタッグパートナーである小柄で癖毛のある紫の髪をしている少年を見つけた。 待ち合わせをしている筈なのにかなり見つけ難い場所で探すのに苦労した人の気も知らないで呑気にぐっすりと寝ている少年を見て、善吉は愚痴をこぼしマイは苦笑いをしながら自分の蟀谷を人差し指で掻いてそう言う。
マイの言った通り気持ちよさそうに寝ている少年を起こすのは気が引けるのだが、いつまでも眺めているわけにはいかないので少年を起こす事にした。
「トニー! こんなところで寝てんじゃねぇ! とっとと起きやがれ!!」
「むにゃ? ……ん~、後五年~」
「「いや、長ぇ(い)よ! それだと学園卒業しちゃうだろーが(よ)!?」」
善吉は寝ている少年──《トニー・フィルウィン》を怒鳴るようにして起こそうとするが、トニーが寝言でふざけた事を要求して一向に起きようとしないので、善吉とマイはツッコミを入れた。 二人は息がピッタリだった。
「いい加減に起きろよこの居眠り小僧! みんな待たせてんだよ!!」
「トニー、眠いだろうけどそういうわけだから我慢して起きてくれないかな?」
「むにゃ? 抱き枕~」
「ひゃんっ♥ どこに抱き付いてんの!? 私の胸は抱き枕じゃないよ!」
「ん? ……あ、マイ、それに善吉も……おはよ~」
「「もう昼だよ!」」
トニーは身を屈めて顔を覗き込んで声を掛けてくるマイの豊満な乳房を寝ぼけて抱き枕と勘違いをして抱き付いたりするなどをして二人を困らせるが、何とか目を覚ました。 幾らマイが巨乳だからと言って抱き枕として機能してしまう程小柄な体型であるトニーは、あどけない童顔に据わった眼を小さな手で擦ってお惚けの表情で善吉とマイに朝の挨拶をしたが、見ての通り既に昼なので二人はツッコンだ。
「善吉、マイ、こんなところにいたのか。 トニーの奴は見つかったか?」
「摸擬戦場の使用申請は貰ってきたよ。 十一番摸擬戦場だけど二人先客がいるみたいで、他は相当混雑しているから共同で使ってくださいってさ」
「新入生や編入生の【学生戦士証明】の発行には一日掛かるからアタシとアスカはまだ訓練施設を使用できないってどういう事よ? 久しぶりにイッキと楽しく戦えると思ったのに!」
「まあまあステラちゃん。 同行者として黒鉄君達と一緒に中には入れるみたいだから、今日はおとなしく見学しましょう」
「いくら探しても見つからないと思ったらベンチの下にいたのか……」
「まったく、本当に猫みたいに自由奔放な子ね……」
「おっ、いたいた! 相変わらずトニーはちっこいな。 本当に中等生かって思うぜ? なあ?」
「興味ないな」
そうこうしているうちに仲間達が続々と集まって来た。 トニーと面識が無い明日香とステラに出雲那達はトニーの紹介を簡単に済ませると(幼児体型のトニーが中等部二年生だということに二人は驚いていたが)、一行はトニーを連れて使用許可を貰った第十一番摸擬戦場に向かうのだった。
「へぇ~、フィルウィン君は
「そうだよ~。 【魔力のボールをぶつけて弱くする】事ができるんだ」
「コラッ! 無闇やたらと自分の能力を人に話してんじゃねーよ!」
雑談しながら歩いて行く武内出雲那一行は緩やかにカーブを描く通路を進んで行く。 通路の内側の壁には窓ガラスと中に入る為の扉が先の先まで無数に並んでいて、そこを覗くとスタジアムの中にある多数の摸擬戦場の様子を見る事ができる。 それはここがスタジアム内の観客スタンドの下で摸擬戦場の内壁のすぐ向こう側だからだ。
スタジアム内の摸擬戦場は“
それぞれのバトルフィールドには番号が付けられている。 青学の学生達は受付で使用申請をもらい、指定された番号のバトルフィールドを使用して摸擬戦という名の決闘を行い、日夜汗水流して修練に励むのである。
「ふ~ん、どいつもこいつもなかなかいい動きをしているけれど、ここから見えている限りじゃアタシやアスカの敵じゃないわね。 ……ねぇイッキ、アタシいちいち弱い奴と決闘するのは遠慮したいの。 だから、こう……学園のみんなの強さが判るような……」
「……ひょっとして“学園序列”?」
「そう、それよ! 学園序列とかそういうのって、どうなっているの? これからの為に聞いておきたいんだけど?」
窓の向こう側で決闘をする青学の学生達を見て、ソイツ等と自分が戦うとなると物足りないなと思ったステラは隣を歩く一輝に学園内で強い奴を見分ける為の目安みたいなものはあるのかを聞こうとしたら上手く言葉が出ずに口籠ってしまい、そこで聞かれた本人が助け船を出して事を得たので改めて聞いた。
「残念だけど序列制度とかそういうのはスクエアの四大学園には無いんだ。 昔はあったみたいだけど、そういうものがあると上下関係の優劣感で生徒達に背徳感情が生まれて学園内で深刻な抗争を起こしたりするから廃止したんだってさ……でも、四武祭で勝ち上がれる程の実力者なら大体みんな“二つ名”を持っているから、新入生や編入生はともかく在学生なら大体強い人は判ると思うよ」
「そうだな……例えば出雲那と一輝はさっき学食で言った通り昨年の《鳳凰四武祭》でベスト4に勝ち残ってスクエアの運営委員会から《瞬雷》と《無冠の剣王》と言う二つ名を貰っている。 スティングとローグは近年の鳳凰四武祭上位陣の常連で、《白竜》と《影竜》の二つ名を持っているな」
「リィン、貴方も去年の《王竜四武祭》でベスト16に入って《灰色の騎士》の二つ名を貰っているでしょ? それからマイも去年の《獣王四武祭》のシングル戦で、当時聖ルシフェルの期待の
「そういやそんな事もあったよね~。 マイも大人しそうな顔をしてなかなかやる。 やっぱりおっきなオッパイは伊達じゃないね~」
「あはは、そう言われるとちょっと照れるな……って胸は関係無いよ!?」
一輝が言うには、昔は序列制度があったが今は廃止されたらしく、スクエアの学生の強さの目安は《四武祭》で上位に入ると付けられる“二つ名”があるかどうかで判断するみたいであり、リィンとアリサが自分達の中の二つ名持ちを挙げて、その中に意外にもあまり強くなさそうなマイの名が挙がった事でトニーがお惚けた表情でマイを褒め、マイは褒められた事で頬を朱らめて照れたが、トニーが何故かマイの巨乳を理由にしたのでマイはツッコミを入れた。
「まあそんな感じで色んな奴が居るが、“青学最強”と言ったら真っ先に挙がるのは……やっぱり《雷切》の二つ名を持つ刀華さんかな?」
「そうか? 俺は《
「中等部の《
「いいやこのオレ、スティング・ユークリフだね! オレが最強だ!!」
「先日、東堂先輩に挑んでフルボッコにされていたのは、どこのどいつだったろうな……」
「グッ!? 余計な事言うんじゃねーよローグ!」
しばらく歩きながら会話しているうちに何故か“青学最強は誰なのか”という議論に変わり、騒がしく雑談しているうちに出雲那達は自分達が使用する第十一番摸擬戦場に通じる扉の前に来ていた。
「さて、二人先客がいると聞いたが、どんな奴等が来てんだろうな……っと!」
出雲那が扉を開けて一行はぞろぞろと摸擬戦場内に入室する。 目の前にあるバトルフィールド上では、彼等から見て手前の方にいる大柄でガッシリとした体躯の青年が自身の巨体にも劣らない大型の戦斧をどっしりと構えて立ち、そこから20m程奥の位置に剣を構えて立っている女子生徒と睨み合って対峙し、緊迫した雰囲気を醸し出している。 どうやら彼等が話にあった先客の様だ。 バトルフィールド中央の真上には既にソーサラーキューブが駆動していて、バトルフィールドをソーサラーフィールドが包み込んでいた。
「ん? 誰だ。 ここは今見ての通り使用しt──って、てめぇ等は!?」
「ようっ、レスター! 先客ってのは、お前等だったんだな」
大柄な青年は後方の出入り口から誰かが入室して来た気配を感じて振り向き、この摸擬戦場は今は自分達が使用しているからという理由で来訪者達を追い返そうとするが、出雲那達の顔触れを見て言葉を詰まらせる。 出雲那はそんなのお構いなしに大柄な青年に気さくに右手を上げて声を掛けた。
「てめぇ等何しに来やがったんだ? ここは今見て分かる通りオレ達が使用している。 決闘するなら他を当たれ」
「受付のねえちゃんが他は混雑してるからお前等と共同で使えってよ。 せっかくだから一緒にやろうぜ」
「……ちっ! 仕方ねぇな、後で相手してやるから今はそこで見てろ」
「武内君、もしかして彼は知り合いなの?」
「ああ、ヴァーミリオンと同じ高等部一年の《レスター・マクフェイル》だ。 《
「アタシと同学年!? このオッサンが!?」
「誰がオッサンだ誰がっ!? オレ様はまだ十五だ!!」
改めて出雲那達を追い返そうとするレスターだったが、出雲那がここへ来た理由を簡単に説明すると舌打ちをして仕方なく共同で使用する事を認めて対峙している女子生徒の方を向き、明日香が出雲那にレスターとの関係を尋ねると出雲那はレスターについて説明をしてステラが自分と同学年だと聞いて驚愕し、ステラが不快な事を口にしたのでレスターは再び出雲那達の方を振り向いて文句を言って怒鳴った。 確かにレスターは厳つい面構えな所為で若干老けて見えるから高等部一年生と聞かされて驚くのも仕方がないだろう。(笑)
「……おいレスター、いつまで余所見をしているつもりだ?」
出雲那達の所為で気を散らしているレスターに、対峙している女子生徒が痺れを切らして威勢のいい毅然とした声を掛けてきた。
「気を散らすな、戦いは一瞬でも敵に隙を見せれば命取りだぞ。 こっちを見ろ。 そのケダモノのような目で私を見ろ!」
「ん? ……ああ、悪ぃな」
女子生徒は射貫くような鋭い目線でレスターを睨み、毅然とした真剣な表情で剣を正眼に構えてそう言葉を発する。 あまりに真剣な声で言って来るのでレスターは無視した事を軽く謝罪して彼女と向き合った。
──あの立ち振る舞い、なかなかの覇気を感じるわ。 マクフェイル君も相当な実力者みたいだけど、彼女もかなりの実力を持っているみたいね……。
毅然とした姿勢、騎士のような勇猛さを感じさせる雰囲気、野外から吹く微風がポニーテールに纏めた金髪を揺らし、その鋭く碧い双眸が相手を捉えて離さない……そんな女子生徒の計り知れない実力を目算した明日香はこれから行われる決闘はかなりハイレベルなものになりそうだと予想して息を呑む。
「……始まるわよ」
『DUEL standby』
ステラも同じ事を思っていたのか真剣な表情でバトルフィールド上の二人に注目している。 ソーサラーキューブから機械音が発せられ、緊迫した空気が更に重くなっていく。
『3・2・1──』
レスターと女子生徒がそれぞれが持つ得物を構えて【気力】を昂らせる中、明日香はふと気になる事があった──
──こんな緊迫した空気の中なのに……何で武内君達は、みんな白々しそうに眼を細めてあの女子を見ているの?
『LET's GO AHEAD!』
「「うぉぉおおおおぉぉおおおぉおおおおおっ!!」」
明日香が感じた懸念の正体がわからぬままレスターと女子生徒の決闘が始まり、お互い雄叫びをあげながら一気に距離を詰めて全力で得物を振るいぶつけ合う。 火花が飛び散るチカラとチカラの正面衝突だ。 互いの得物の刃が接触して鍔競り合い状態になる。
「ぐおぉぉおおおおぉおおっ!!」
「ふぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬっ!!」
腕にチカラを加えて押し込もうとするレスターと足に踏ん張りを効かせて押し返さんと踏ん張る女子生徒。 体格差で言えば断然レスターに軍配が上がるのだが彼等は【
「はあぁっ!!」
「くっ!」
女子生徒の剣がレスターの戦斧型煌式武装──《ヴァルディッシュ=レオ》を外側に弾き出した。 巨体を持つレスターが細腕の女子に押し負けたというのにそれを見ていた出雲那達は当然だと言わんばかりに無反応だ。 第一次遭遇の落星雨により《三大源力》が人類に齎された事によって、現在は小さな女の子が大のプロレスラーを投げ飛ばすなんて出来事など珍しくない時代だからだ。
──これでマクフェイル君の胴が大きく空いたわね。 このままあの人が隙だらけになったマクフェイル君の胴に剣を振り抜けば、気力次第だけど決定的なダメージが入る筈。 勝負は視えたわね。
女子生徒の剣が隙だらけになったレスターの胴を狙って振るわれるのを見て、明日香は女子生徒の勝利を確信する。 彼女の思った通り防御に回した気力の量次第ではダメージを軽減する事が出来るのだが、これだけ無防備になった胴に剣がクリーンヒットすれば幾ら頑丈なレスターと言えども一溜りも無いだろう。 轟遠の烈斧これで万事休すか?
「もらったぁぁああぁぁあああああっ!!!」
スカッ! ……そんな擬音が鳴ったと錯覚してしまうかの様に、女子生徒が振るった剣はレスターの胴の手前の空を斬った……。
「「……へ?」」
外した。 ミスッた。 スカッた。 素人でも決められそうな絶好の好機を、彼女は盛大に逃した。 あまりにも素人以下の失敗だったのでこれで勝負は決まったと思っていた明日香とステラは呆けて思わず間の抜けた声を出してしまう。
盛大に剣を空振りした為に今度は女子生徒の方に大きく隙が出来る……そして──
「ぶっ潰れろっ!!」
「がふっ!」
「「「「「「「「「あ」」」」」」」」」
「「…………」」
無慈悲にも振り上げられていたレスターのヴァルディッシュ=レオが女子生徒の脳天に振り下ろされ、気持ちが良い程いい音が鳴り、女子生徒は俯せに床に叩き付けられてそのままピクリとも動かなくなり、出雲那達在校生組は緊張感の無い声をハモらせ、明日香とステラはあまりにも頓痴気な光景を目の当たりにして絶句していた。
なんとも言えない沈黙が場を支配した。 木枯らしが吹き、カラスが飛んで来て鳴いているような錯覚を感じてしまう。 出雲那は手で自分の後頭部を掻いて気を紛らわし、一輝とマイは苦笑いをしながら人差し指で自分の蟀谷を掻き、リィンとスティングは片眉と口の片端を小刻みに吊り上げて何だこれ的な微妙な表情をして、善吉とアリサはだらしなく口を開け眼を細めて呆れた表情をして、ローグは腕を組み眼を瞑って他人のフリを敢行し、トニーはのほほんとしている……何だ、このカオス?
「え~っと、なんだか微妙な決着になって微妙な空気になってしまったみたいだけど……とりあえずこれでこの決闘は決着……という事でいいのかしら?」
「そ、そうね。 あの人、倒れたままちっとも動かないみたいだし……」
明日香はなんとか微妙な空気を押しきってこの場にいる皆に決闘が終了したのかと尋ね、彼女と同じ編入生であるステラは明日香に同意する。 間抜けな格好で俯せに倒れている女子生徒は未だに全く動く気配は無い。 ソーサラーフィールドの影響下で全てのダメージが非殺傷ダメージになっているから恐らく命に別状は無いだろうが、強力なレスターの腕力で振り下ろされた戦斧がおもいきり脳天にクリーンヒットしたのだ、終わったと思うのが普通の反応だろう。 ……だと言うのに、未だにソーサラーキューブは決闘の勝利者を告げず、レスターも倒れ伏した女子生徒の1m前でヴァルディッシュ=レオを構えたまま女子生徒を見下ろして臨戦態勢を解かず、混沌としていた出雲那達も今は倒れ伏す女子生徒を固唾を呑んで見守っていた。 当然、明日香とステラはそれを見て変だと感じる。
「え? どうかしたのみんな?」
「何いきなり神妙な空気になってんのよ? 勝負はもう着いt──」
その時だった。 間抜けな格好で倒れている女子生徒の指先がピクリと動き──
「くうぅぅーーーーーんっ!!」
「「ええぇーーーーーーーっ!!?」」
何故か自分の身体を抱きしめる格好で立ち上がり、その場で異常に変な絶叫をしたので、明日香とステラは思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。
ハッキリ言って異常だ、女子生徒のその絶叫は何だか喜んでいるように感じたからだ。 立ち上がった彼女は頬を朱らめて激しく息遣いをしながら剣を構え、まるで欲情しているかのようにとろけた眼をして口を開いた。
「良いーーーっ! レスター、相変わらずお前の一撃は凄まじいな! 思わず
「ちっ! やっぱりくたばってなかったか、この変態女騎士が……」
「んあっ♥」
「喘ぎ声をあげてんじゃねぇっ!」
「……何なのこれ?」
「どうなってんのよ、あの女、頭おかしいんじゃないの……」
「あの人は《ダクネス》先輩……高等部三年でレスターのタッグパートナーなんだけどよ……困った事にあの人は重度の“ドM”だったりするんだよな……」
「あの人見た目は凛々しくて勇敢で凄く強そうな女騎士なんだけど……実は剣の腕は剣を握ったばかりの小さな女の子にも完敗する程で、相手に攻撃が全く当たらないみたいなんだ……」
「「……」」
バトルフィールド上で繰り広げられる茶番を見てドン引きし、善吉とマイの説明を聞いて絶句する明日香とステラ。 ドMで剣が当たらないとか騎士として無能もいいところではないのだろうか……そうこうしている内にダクネスのテンションもレスターの怒りのボルテージも上昇して行く。
「くたばりやがれ年中欲情女っ!!」
「ぐふっ! ……ふふふ、今のは効いたぞレスター……だがこれだけでは足りないぞ! もっとだ! もっと私を楽しませろ! そしてその凶刃で私の身体を甚振りつつ身に着けている学生服を徐々に引き裂いて私を扇情的な姿にして辱め、そして『ぐふふふ、身に染みたかよダクネス、これがてめぇとオレとの実力の差だ。 理解したんならオレ様に跪け、この雌豚が!』と私を屈服させ、『わかったんならオレ様に敬意を見せてもらわねぇとなぁ。 クックックッ。ならオレの靴を舐めろ、この負け犬が!』と、公衆の面前で私に服従プレイをs──」
──ブチッ!
レスターはヴァルディッシュ=レオによる怒りの轟撃を次々とダクネスに叩き付け続ける。 しかし中途半端な威力の攻撃はドM女騎士の劣情を煽るだけであり、ダクネスは欲情のあまり観戦している出雲那達もドン引きするような妄想を口走って暴走し始め、それがレスターの怒りを頂点に達しさせた。
「いい加減にしやがれ!! この筋金入りのド変態がぁぁあああああああっ!!!」
レスターが練り上げた気力が大きく振り上げたヴァルディッシュ=レオの光刃を二倍近くに膨れ上がらせ、それを興奮しながら暴走する変態騎士の脳天に振り下ろされた。
「んぁぁぁああああああーーーーーーーっ!!!」
憤怒と共に振り下ろされた巨大戦斧は変態を再び地に沈めた。 派手な轟音が鳴り響き核兵器の爆発にも耐え得るバトルフィールドに亀裂が入る程の威力だった。
この一撃はレスター・マクフェイルの必殺技《ブラストメネア》であり、これは多くの星脈世代が好んで使用する“煌式武装”と呼ばれる武具の核である《マナダイト》に練り上げた気力を注ぎ込むことによって一時的に煌式武装の出力を高める《
そんなダイヤモンドですら砕きそうな一撃を脳天に叩き落されたダクネスはイッた……逝ったではなく、
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……ふざけやがって。 はぁっ、はぁっ、さすがの変態もこれをくらっt「ああっ、この全身の骨を粉砕するような火力、なんというご褒美だ♥」……この変態が……」
そして変態は再び立ち上がった。 非殺傷ダメージとはいえブラストメネアをモロにくらったのにこの変態はピンピンしていて、身体を火照らせながら顔を引き攣らせるレスターに劣情の目を向けている……。
初めてこの光景を目にする明日香とステラは勿論、偶にこの光景を見る事のある出雲那達でさえ、ダクネスの変態的奇行と規格外の耐久力の前に絶句していた。
「じょ、冗談よね? 流星闘技をまともに受けて立ち上がった……」
「言い忘れてたぜ。 ダクネス先輩は攻撃が当たらない代わりに防御力と耐久力が異常に高いんだった……」
「去年《
「しゅ、集束魔法をくらって発情って、どんだけよ!?」
ダクネスの防御力は呆れる程恐るべきものだった。 それも下手をしたら青学どころか四大学園一かもしれないくらいの……これも真性のドMが成せる業か……。
「とっととくたばりやがれ! このド変態がっ!!」
「んあっ! 良いっ♥ 公衆の面前で痛めつけられているだけでも精一杯なのに、その上罵倒まで……っ! お、お前は一体、こんなに私を喜ばせてどうするつもりなのだ!?」
「どうしもしねぇよ! このド変態!! いい加減沈めよ、沈めぇぇええええええっ!!!」
「んぁぁああああああああああんっ!!!」
怒り心頭で激昂するレスターは罵倒しながら狂うようにヴァルディッシュ=レオの轟撃を変態女騎士に浴びせまくり、ダクネスは斧撃のラッシュをモロにくらい続けて狂喜乱舞し、観戦する出雲那達は異常過ぎる光景の前にひたすら唖然とする。
それから約三十分後、ブラストメネアを通算十三発程放ったところでダクネスはようやく気絶し(まるで事後の様に身体を火照らせて満足そうなアヘ顔で
……大丈夫かコレ?
え~、という事でみんな大好きオッサンこと『学戦都市アスタリスク』の《レスター・マクフェイル》。
そして今季アニメの『この素晴らしい世界に祝福を!』第二期で絶賛暴走中の【ダスティネス・フォード・ララティーナお嬢様】こと、ドMクルセイダー《ダクネス》の登場です!
レスター「誰がオッサンだ!? オレはこれでも高一だ!」
ダクネス「ララティーナお嬢様と呼ぶなぁっ! せめて汚らしい雌豚と呼べ!」
いやーだって某笑顔動画でアスタリスクが一週間限定の無料配信されている時に、みんなオッサンオッサンって大人気だったし(笑)……って、ダクネスのそれは最早罵倒じゃんか!? 本当に筋金入りのド変態だな。
レスター「くっ、人が老け顔だからって好き放題言いやがって……」
ダクネス「ド・ヘ・ン・タ・イ! ……んんっ♥」
え~、二人はサブキャラなので出雲那達と行動を共にするわけではありませんが、同じ学園の仲間なので出番は割と多めだと思います……たぶん。
レスター「たぶんかよ!」
ダクネス「ド変態……ふふふっ♥」
……変態はそっとしておきましょう……それではまた次回!
レスター「無責任に終わらすなぁっ! この変態をどうにかしてから行きやがれぇぇえええええっ!!!」