更なるバーサーカーを――と聖杯に願いかけて、彼女は素敵な考えを思いつく。
そして荒んだ笑みを浮かべながら、魔女は望んだのだ。
自らと同じ、復讐者の到来を。
――目覚めなさい。
聞こえる。聴こえる。
天使の歌声が。悪魔の甘言が。
――悪しき行いを尊ぶ者よ。善き行いを憎む者よ。
吹き抜ける旋風。駆け抜ける電光。
虫唾の走る温もりが剥がれ落ち、透き通り冴え渡る冷たい闇がほとばしる。
閃光。再び暗転。愛しき声は徐々に近づく。
聞こえる。ああ、聴こえる。
声の主よ、まだ見ぬ我が主よ。
――私の声を聞け。我が憎悪を知れ! 誓いを此処に。我は常世総ての善を討つ者、常世総ての悪を敷く者。
我が全てを捧げよう。持ちえるもの全てを差し出そう。
怨嗟の滲む声の主よ。復讐にとらわれる我が同類よ。
だからどうか―――。
――貴方が復讐を望むのなら。我が復讐を称えるのなら!
声が弾けた。
極寒の冷気が肌に触れ、灼熱の視線が心臓を穿つ。
目を見開く。
ああ、やはり、聞こえる。聴こえたのだ、あなたの声が。
「――私のそばで、傅け! アヴェンジャー!!」
ならば応えよう、麗しき我が主。この名この身体をもって、我が意に従い応じよう。
欲望に塗れるこの身を望むのならば、俺はあなたの願いを叶えよう。
我は復讐を望む者。我は渇望を抱く者。
あなたの傷を俺が癒そう。あなたの絶望を俺が讃えよう。
「サーヴァント、アヴェンジャー。召喚に応じ参上した」
だからどうか―――あなたを、俺にくれ。
1
詠唱は本来のものより大幅に省略され、捏造され、改造されたまがい物ではあったが、それこそ俺を呼ぶには相応しいものだ。歪で奇怪なものこそ俺に似合う。だからこそ召喚に応じたのだし、だからこそ応じることが出来たのである。
――アヴェンジャーの側面たる俺を呼ぶのに、最も相応しい形の詠唱、工程、回路、魔力の密度。本来存在しないそれらの要素は、存在そのものが不確定である俺へのパスを繋げるために、強引に創りだされたものだ。比較的近い場所に感じ取れる高密度の魔力の塊、おそらくは先程から流入してくる知識にある聖杯という願望器が、所有者の願いに沿って俺へと通ずる最適解を導き出したのだろう。
つまりは俺を望んだのだ。復讐者たるこの俺を。目の前の、我が主が。
「――よろしい。貴方の忠義の姿勢に感服しました。さあ、私の手を取りなさい、アヴェンジャー」
皮肉げに目元を歪め、荒んだ笑みを浮かべた少女は、跪く俺に手を差し伸べた。
ほっそりとした指、月明かりのように白い肌。プラチナブロンドの髪が流れ、その内におさまった端正な顔が歪んでいる。
身に纏うは黒い装束。禍々しい意匠は怨念が籠もり、憎悪の声が溢れ出ている。
邪悪に染まった旗を立て、彼女は艶然とそこに佇んでいた。
「身に余る光栄だ、マスター」
応じ、俺は差し出されたその手を取る。
なるべく彼女に負担をかけないように――そう思い、足の力のみで立つつもりだったが、その前に彼女に引っ張りあげられた。
儚ささえ感じさせる線の細いかんばせを憎々しげに歪め、彼女は苛立ちも顕に俺へ苦言を呈した。
「貴方、いま私を気遣おうとしたでしょう? 私は確かに貴方に気遣いを望むけれど、あからさまなものは余計です。そういうのは私に気づかれないまま、最大限の礼節の中に隠して行うものだわ。まあ、それはそれでムカつくんですが」
「了解した」
俺の応えに鼻を鳴らし、頬を引きつらせるようにして笑みを浮かべると、彼女はすぐに一転して眉を寄せ、忌々しげな顔を取り戻した。
「思ってたより首が疲れる身長してるわね。まったく……見下ろされるってのはどれだけされても気に食わないもんだわ。なんとかして縮めないの?」
いやはや無茶難題を押し付ける。確かに俺であればやろうと思えば出来ないこともないが、召喚したばかりの彼女にそんな事実は知る由もないだろう。大抵が生涯を終え運命を定められた存在である英霊に対しとんだ物言いである。
単純に俺の背丈がお気に召さないと。気に食わないものへのただの当たり。湧き出た感情のままに口を滑らす無垢さは愚かとしか言いようがないが、その愚かしさも愛おしい。
――内心で舌なめずりをする。
思っていた以上に、この少女が魅せる表情は甘美だ。ああ、なんと麗しい。
そのおとがいに手を添えたい。その唇に指を這わせ、その頬を舌で舐めあげたい。
どんな味がするだろうか。ああ、主よ―――一刻も早く、あなたを俺のものにしたい。
「あなたが望むなら縮んでやろうか」
「はぁ……? え、貴方、本当に縮めるの?」
口を開き目を見開き、彼女は間抜けな顔を晒す。憎しみに彩られたその美貌が、俺の言葉で驚愕に染まっている。せり上がる黒い感情を飲み下し、俺はくつくつと笑った。
麗しき我が主。俺はあなたの復讐を喝采しよう。あなたの絶望を栄光に変えよう。
ゆえにこそ俺の力はあなたのものだ。あなたの望みは俺の望みだ。
なればこそ――いつか、俺の望みをあなたの望みにしてみせよう。
「――――」
真の意味で、あなたを俺のものにする。
自然な動作で彼女の肩に手を添えて、その柔らかさを堪能しながら退室と案内を促す。怪訝な顔の彼女はそれでも皮肉げに口の端を釣り上げ、新たな配下に自身の戦力を自慢したいようである。
俺もまた口の端を釣り上げ、彼女の言葉に相槌を打ちながら、部屋の隅で目を細めるローブの男は視界に入れない。
入れてしまえば最後――湧き上がる嘲笑を、俺は隠し切れないだろうから。
2
ジャンヌ・ダルク。フランスにおける救国の聖女。護ろうとした国に裏切られ、哀れな末路を辿った女――聖杯の「知識」はそう俺に知らせてくる。
その信念は穢れなく、啓示を受けた村娘は生涯清き精神をたもったという。
ならば、復讐を望む我が主、目の前の黒い少女は誰なのか。
彼女自身の出した答えがこの光景であり、各地で暴虐を尽くす下僕たちなのだろう。
「生前、それぞれの悪徳で名を馳せた反英雄。あるいは一途に駆けた尊きバカ共。曲がった思想、歪んだ信念、滑稽な思い込みに狂った愚か者たち……まるで私。なら、復讐を望むこの私に、これ以上の配下はいないでしょう?」
目元を歪ませ楽しげに語る少女の声に打ち震えながら、俺は立ち上る黒煙と燃え盛る炎に歓喜した。
――ああ、なんと愉快な情景か。
繁栄を誇ったフランス、数多の犠牲の上に成り立つ血塗られた栄光の国。その華やかな町並みは跡形もなく破壊され、かつて見捨てた一介の村娘に足蹴にされている。
美しきものがすべからく汚泥を塗られ、高尚なものが等しく蹂躙されるこの景色。
なんと笑える醜態か。なんと痛快な惨状か!
「震える。――震えるぞ、我が主よ。俺の心が叫んでいる。これこそが俺の望んだ死の到来。我が道の先にある到達点のひとつ! 聴こえるぞ、報復に悶える屑どもの嘆き! 怒り! 苦しみ! ――素晴らしい。素晴らしいぞ、竜の魔女よ。あなたはどこまで俺を喜ばせるのだ。恋に落ちてまだ短いが、早々に惚れなおしたぞマスター!」
「そうでしょう。ええ、そうでしょう! 貴方ならこの素晴らしさを理解できると思っていました。『あれほどの裏切りにあったのなら、復讐に走っても仕方がない』――誰もが私の生涯を知ってそうこぼす。ならば、私の復讐は世界に肯定されたものなのです。なのに偽善に浸る馬鹿な者たちはそれを理解しない。燃え上がる義憤は自分の身を焦がすのに、それをどうして望まれ、どうして背負ってやる必要があるのです? 有象無象に犠牲を強要されるのなら、そんなものは焼き尽くしてしまえばいい。愚かな私は死ぬまでそんな簡単なことに気が付かなかった。ならば私が、死を迎えたことで生まれ変わったこの私が! 成し遂げた復讐に、喝采を望むのも必然でしょう!」
「くははははははは! そのとおりだ! そのとおりだよジャンヌ・ダルク、堕ちた聖女よ! あなたの復讐は賞賛されるべきものだ! 渇望されるべきものだ! それでこそあなたは報われる。それでこそあなたは満たされる! 信念は邪悪。矜持は堕落。欲望こそが俺たちに根づいた原初の感情、達成すべき一なる鼓動なのだから! それでもあなたを阻むものがいるのなら、俺は自分の復讐にかけて誓おう。俺の望みにかけて誓おう! この俺が、このアヴェンジャーが――あなたの復讐を、喝采すると!!」
哄笑とともに紡ぐ俺の宣誓を聞いた瞬間、魔女の口は耳まで裂けた。
極寒の覇気が肌を刺し、灼熱の視線が喉を貫く。
瞳と瞳が交錯し、悪意と利害が絡み合う。
誓いはここに成った。後退し跪いた俺を見下ろし、彼女は最後の洗礼を俺に与える。
邪悪なる笑みを湛えて。悪辣なる眼光を宿して。
黒竜の咆哮と黒煙渦巻く故国を背に、恩讐の主は宣言した。
「―――よろしい。貴方の喝采を認め、望むままに欲しましょう。私もまた誓います。煮えたぎる私の憎悪にかけて、必ず貴方の認める復讐を遂げると!!」
3
「ところで妙な違和感があるんだけど、貴方、さっき何か変なことを言わなかった?」
「――いいや? 特におかしなことを口走った覚えはないが」
「…………? そう、ならいいんだけど」
首をかしげながらも的確になされた説明で、俺は現在の戦況をほぼ完全に把握した。
善に傾いたもうひとりのジャンヌと、それに与する未知の勢力。内訳は大盾を構えるデミ・サーヴァントにそのマスター、新たに現れたマリー・アントワネットと、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトらしき音楽を操る英霊、他に存在するかは不明瞭。そして、ばらけたバーサーカーたちの能力とその行方。
魔女の話が終わると同時、組んでいた腕を解いて俺は立ち上がった。
「ならば俺が今やるべきことはひとつだな」
「ええ、私から命じましょう。――疲弊した敵勢力の所在と人員の実態を把握し、隙を見て叩きなさい。返り討ちにあうなどという無様は許しません。貴方の復讐を彼らに知らしめてやることです」
「ああ、了解した。おそらくそれが現状俺の最も役に立てる仕事だろう。完璧な采配だ、マスター」
目を閉じ、彼女の鈴のように涼やかでいて、汚物のように吐き捨てられる声を楽しみながら話していると、不意にそこにからかうような気配が混じる。
目を開けると、口の端だけでなく目元まで愉快げに歪ませた魔女が眼前に立っている。やや色が抜け、黒煙の上がるフランスによく映える、神秘的なまでに美しい白金の髪を片手で払い、彼女は口を開いた。
表情こそ変えないものの、さらさらと流れる柔らかそうな髪の躍動に目を奪われ、もし背後から抱きしめた彼女の頭に顔を埋め、その柔らかさと芳醇な香りを堪能しながら、羞恥に震える形の良い耳朶の裏や、染みひとつない色白のうなじに舌を這わせることが出来たなら――と、そんな想像に耽っていた俺は、続く彼女の言葉に反射的に声を上げざるを得なかった。
「おだてるのは敵の首級をとってからにしなさい。あまりに軽くて寒々しい賛辞は生前でもう聞き飽きました。私が欲しいのは優秀な部下と、確かな実績です。貴方は確かに思想と感性は素晴らしいですが、召喚されたばかりで功績などまだ無いのですから、くれぐれも慢心はしないように」
「――ほう?」
反射的に上げた声には先刻の彼女と同じく愉快げな色が込められ、半ば自動的に彼女を見つめる両の目が細められる。無意識の内に釣り上げられた口の端は、我ながらなかなかに不敵な笑みに仕上がっている。この時点で俺は、己の不覚と敗北を悟った。
ぴくん、と彼女の肩が微かに反応を示す。楽しそうに歪められていた口許はますます歪み、こじんまりとした鼻を鳴らす小さな顔は満足気な様相を呈している。確かに童女のように無邪気で、思わず頬に手を添え口内を蹂躙してやりたくなるような魅力的な顔だが、この状況においては浮かべさせてはいけなかったものだ。
眼前の無垢なる復讐者は挑発的な言葉で俺に発破をかけ、企みが成功したと信じ込んでいる。情けないことに虚構に溺れ己のコントロールに手をぬかった俺はまんまと誘いに乗ってしまったため、実際その思い込みは真実に近い。
だからこそいけないのだ。俺は確かにあの少女に惹かれ、その心を満たしたいと願ってはいるが、愚物のように手玉に取られるのは願い下げである。それは俺の客観的評価を著しく害すものであるし、何より俺は優位に立って相手を弄びたい質だ。今回の一件は大きな失敗であるといえるだろう。今後、大いに気をつける必要がある。
とはいえ――。
「マスターは俺の力に疑いを抱いているご様子。ならば此度の任における活躍で、俺の価値をおおいにあなたに知らしめてやろう。同じ思想を共有する同志としてだけではなく、絶対に取り逃してはいけない己の右腕に足る存在なのだと。恋人との逢瀬に胸を膨らませる淑女の如く、華々しい俺の凱旋をここで待ち焦がれているといい」
「ふふ……。ええ、楽しみにしています」
大言を吐く俺の態度に稚児をあやすかのような微笑を浮かべる竜の魔女は、まんまと己の術中にはめてやったと完全に自らの上位を信じこんだことだろう。己の言葉と行動で多くの民を救い、率い、また奮い立たせてきた在りし日の聖女としての彼女の記憶に、有象無象と同じ成功例のひとつとして刻まれたことだろう。御機嫌は大変よろしい御様子である。
それでいい。過ぎてしまった時間は戻らないし、確定した事実は覆せない。まんまと落とし穴にかかってしまったのならば、上から顔を覗かせる下手人に歯ぎしりするのではなく、土に囲まれ過ごしやすい気温を保つその快適さを楽しむべきだ。
そのためにわざわざとことんまで道化を演じたのである。こと此処に至っては現状を逆手に取るべし。己の勝利を信じきった麗しき我が主の聖女の如き微笑みを、中天を泳ぐ人魚を目にした一介の村娘のように、呆けた顔に変えてやろう。
神々しき美と苛烈な復讐の炎を宿す魔女の間抜けな姿を想像し、己の欲望がむくむくと首をもたげるのを自覚する。思わず口の端が醜く歪みかけるのを自制しながら、俺は来たる愉悦に思いを馳せた。
4
だからこそ俺は笑うのだ。にんまりと口が裂けるほど。強靭な喉が乾くほど。
俺の手から解放され、どさりと床に落ちた黒髪の男の素性を認め、彼女はまず目玉が飛び出るのではないかというほど目を見開き、次いで豆鉄砲を食らった鳩のようにだらしなく口を開けた。これ以上なく唖然とした表情を浮かべる竜の魔女に、俺の哄笑は留まるところを知らない。
驚愕。呆然。そして半信半疑。余裕綽々の薄ら笑いを間抜けな半笑いに変え、何が何やらという風情で凍りついている彼女の姿に、やはり俺の嘲笑は止まらない。
そうして城に響き続ける俺の笑い声に、ようやくのことで魔女の震えた叫びが加わった。
「い、いくらなんでも早すぎでしょぉおおっ!!」
ああ、なんと愛らしい姿なのだろうか。これまで常に爛々と妖しく輝いていた彼女の瞳に、なんとも幼稚な色が混ざる。わななく唇から紡がれる動揺の独白が心地よくてたまらない。
「えええ、嘘でしょ……たしかに首を取れとは言ったけど、でも、でも、いいの? 因縁の決着、ほんとにこんな簡単についちゃっていいもんなの……? ど、どうしたらいいのかしら、この場合。そっ、そうだジル! ねえジル! ちょっと来て、ねぇ早く! 聞きたいことがあるんだけど!!」
来てと言いながら、自分でぱたぱたと何処かへ駆け去っていく彼女の後ろ姿を見送り、ひとしきり嗤った俺は深く息を吐いた。
自分の言動の矛盾具合に気づかないほど大混乱している姿には、俺と出会ってからずっと彼女が振りまいていた覇気も、威厳も、神々しさも、邪悪さも鋭さも見当たらない。無垢で哀れで、己の許容量を超えた出来事に直面すれば慌てふためく以外に何も出来ないただの童女だ。
それが彼女の本質のひとつであることに、もはや疑いの余地はない。
気高く美しく、禍々しい復讐心と自信に満ち溢れていた魔女としての姿もいいが、この俺の挙動によっていとも容易く動揺し、醜態の限りを晒す姿もまたいいものだ。そして自分の滑稽な振る舞いを思い出し、羞恥と屈辱に悶絶する未来の彼女の姿も想像するだに扇情的である。
――喉を鳴らす。
混乱の極致にあって漏れ出た彼女の言のひとつに、夢見ていた復讐劇のフィナーレの焼却があった。端々に童女の気配を醸し出す彼女には、どうやらロマンチストの気もあるらしい。
俺は眼下に伏す、気を失ったままの異邦の青年を見やる。
彼を見て彼女自身が察したとおり、彼女はもはや、思い描いていた理想の結末を迎えることはない。自分の知らぬ間にすべては終わり、何の感慨もなく、呆気なく己の復讐の大きな山は過ぎ去ったのだと、そう思っていることだろう。だからこそ狼狽したのだし、だからこそ無意識に助けを求めたのだ。
だが安心して欲しい。俺は心のなかで囁きかける。直接伝えることこそしなかったものの、その狼狽は見当違いだ。俺は彼を連れて帰りはしたものの、
俺は彼の勢力を殲滅したわけではない。彼ひとりを攫ってきただけだ。もちろん攫う際にひととおり蹴散らしはしたが、それでも誰一人消滅はしていないだろう。最後まで俺に追いすがってきたあの大盾の少女の形相を考慮に入れるまでもなく、確実に彼女らはこの青年を奪還しに来る。なにせこの青年は人類史の命運を分ける重要な存在、人類最後のマスターなのだから。人理保障機関を名乗る勢力として、カルデアはこの事態を見過ごせない。
故に安心して欲しい。俺は心のなかで囁きかける。あなたの理想は潰えたが、代わりに俺の理想の可能性が芽生えた。俺の理想が叶えば、あなたは俺の腕の中で、あなたの望むままに、あらゆる復讐の結末を見ることができるのだから―――。
――俺はゆっくりと自分の唇を舌でなぞり、僅かでも乾きを癒すために喉を鳴らした。
まだだ――まだ早い。今はまだ、彼女の心の拠り所はあのジル・ド・レェにある。彼女を真に俺のものにするには、今はまだ、彼女の心に占める俺の領域は矮小にすぎる。いつの日か、彼女が問題に直面したとき、真っ先に俺に頼るようになるまでは、まだこの欲望を表に出してはいけない。
俺は復讐者だ。俺の復讐は世界への復讐――ひいては世界に抗う俺の抱く、全ての欲望の結実。
大いなる欲望の達成のために、俺は欲望を抑えるのだ。いつか実現させる欲望のため。未来に成す復讐のため。
大いなる欲望が叶った後でなら、その礎となったあらゆる小さな欲望など、いくらでも達成することができるのだから。
我は復讐を望む者。我は渇望を抱く者。
麗しき堕ちた聖女よ。自らが何者であるかも知らない、哀れで可愛らしい竜の魔女よ。
あなたの傷を俺が癒そう。あなたの絶望を俺が讃えよう。
そしていつの日か――――あなたを、俺のものにする。
FGOの目指した2017年記念&邪ンヌLV100ALLスキルマ達成記念!!
達成した時期がバラバラなので個別に上げたかったのですが、流石にそんなに書けませんでした( ̄▽ ̄;)
続きの構想も主人公の正体も一応考えてあるんですけど、時間かかっちゃいそうなので短編でひっそりと…
読んでくださった皆様、昨年はお疲れ様でした。遅ればせながら、あけましておめでとうございます。
よいお年を!!