短編小説   作:重複

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特典小説を読んで、ウルベルトがもしかしたらこんな風に考えたのかな、と想像。

1巻幕間のデミウルゴスの台詞から想像。


ウルベルト デミウルゴス

ああ、最低だ。

なんて最低な奴だ。

 

ユグドラシルというゲームの中で「ウルベルト・アイレン・オードル」と名乗っている男はひたすらに悪態を吐き続けた。

 

恥じろ!悔いろ!思い上がりも甚だしい!

 

 

ああ

 

 

俺って最低だ…

 

今日の出来事を振り返る。

新しくギルドマスターになったモモンガと話していて打ちのめされた。

どこかで自分は侮っていたのだろう。

 

自分よりも不幸なはずがない。

自分より大変なはずがない。 ーーーと。

 

自分の身の上を話せば、自分に同情する程度の育ちだろう、と。

小卒だと言えば、自分もだと答えた。

 

ーーーまあ、そのくらい、いくらでもいるだろう。

 

負け組だと言った。

 

ーーーもっと酷い人よりましだと言った。

 

父も母も帰ってこなかったと言った。

 

ーーー朝起きたら、母親が冷たくなって倒れていた、と返事がきた。

 

自分は父の顔も母の顔も覚えている。

しかしモモンガは母親の事しか言わなかった。

両親は亡くなっていると言っていたのに。

 

ーーーつまり父親は物心つく前に亡くしていたということ。

 

父も母も帰ってこなかったって。

父と母、両親の思い出があると言いたいのか。

 

会社のせいで。

自分の好物作ろうとして倒れてた。休んでくれたらまだ生きていたのかも。

 

自分のせいと自分を責めているかもしれない相手に、母親の死に様話させるって、どんな人非人だよ。

 

何がしたかったんだ。

不幸自慢かよ、くそだな、俺って。

 

小卒ってだけでも大変で、更に片親で父親の事を覚えていないらしくて、自分のせいで母親が過労死したかもって話させて…

 

話さないのは、話すほど大した事じゃないって決めつけて、話すのすら辛いかもって考えもしないで自分の不幸話すとか…

 

 

 

うわー、 最低。

 

 

 

決めた。

 

モモンガさんに迷惑をかけないように、負担になるような事は極力避けよう。

モモンガさんが「そうですね」って俺の考えを受け入れられるように理論的にいこう。

 

 

俺のNPCは――

 

 

 

 

悪魔だから

 

冷酷で

残酷で

計算高くて

狡猾で

理論的で

 

・・・・・・

 

忠義に厚くて

仲間想いで

気が利いて

 

裏切るなんて絶対しない

 

 

 

味方にはすごくいい奴で・・・・・・

 

 

 

 

 

あれ、もう設定書き込めないぞ。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「偉大なる支配者の後継はあるべきだろう?」

 

本心であり、本心ではない言葉だ。

デミウルゴスは考える。

 

もしアインズがこの地を、ナザリック地下大墳墓を不要と判断した時、あの慈悲深い支配者が自らの子等を置いて行くことはないだろう、と。

 

「りある」という場所がどのような所なのか、デミウルゴスは知らない。

ただ、他の至高の方々が、この素晴らしいナザリックを捨ててまで優先する場所なことは確かなのだろう。

 

それほどまでに素晴らしい場所なのか。

それほどまでに価値のある場所なのか。

それほどまでに意義のある場所なのか。

 

このナザリック地下大墳墓の全てよりも。

 

存在を見たこともない物との比較はできない。

 

だからデミウルゴスには、「りある」は想像の範疇の存在でしかない。

 

それでも、アインズが残ったのだから。

慈悲深い最後の方が残ったくらいには、価値があるはずなのだ。

 

だったら、

もしかしたら、

 

アインズに複数の子供たちが産まれたなら、その中からもしかしたら、一人くらいはこのナザリックを選んでくれる存在が出てくるかもしれないではないか。

 

このナザリックに残ると仰ってくださる方がいるかもしれない。

 

もちろん最善は、アインズ自身がこのまま支配者として君臨してくれた方がいい。

その為の努力を惜しむ事など、あり得ない。

 

しかし、最悪をも想定しておくべきだ。

 

四一人中、たった一人しか残らなかったのだ。

その事実を、現実を、きちんと受け入れなければならない。

一人でも残られて良かった。

しかしそれは、永遠に続くと保証された事ではないのだから。




分けたかったけど、一つが800字くらいずつだったので、一緒にしました。

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