短編小説   作:重複

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WEBの話。
学園編の頃に考えた話です。



デミウルゴスの経済観

「ふむ」

 

デミウルゴスは自分が調べたこの世界の生産技術の特異性を考察する。

 

この世界では、香辛料や塩などは魔法によって生み出されている。

確かに農作業や田園などの手間暇を掛けずに、既に完成した調味料が手に入るとなれば、栽培、精製という手段をわざわざ選ぶ理由がない。

 

こういった魔法は生活の端々に使われている。

まさしく生活に密着した、生活する上で欠かす事の出来ない魔法だ。

 

ナザリックに属する者は、この世界に存在するこういった第0位階魔法、あるいは生活魔法と呼ばれるものを使うことが出来ない。

それはこの位階がユグドラシルでは存在しないものだからだ。

 

しかしそれでは問題がある。

ナザリックに所属する者は、基本的に飲食不要の種族か、マジックアイテムを装備している。

だがそれはあくまでも「基本的には」であり、ナザリックの自給自足で賄っている者も存在する。

更にフールーダを始めとした、新規参入の者の存在には当然当てはまらない。

 

吸血鬼となったブレインは例外だが、リザードマンやエルフの元奴隷達、ドライアドにトリエント。更に人間の娘がメイドとして九人、シャルティアの「おもちゃ」からアインズの預かりになったーーあれは家畜なのかペットなのか明確な立場は不明だがーー元貴族の三姉妹がいる。

これからも新たにナザリックに住む者が増えていくのは必定だろう。

 

加えて、ナザリックに住まなくとも、これからアインズの領地となる土地に住む人間の管理。

これはローブルの家畜達のように、共食いをさせる訳にはいかない。

飢えて数が減り、アインズの統治能力を疑われるような事態は避けるべきだろう。

 

家畜はアインズの偉大さをなにかしらと比較しなければ、理解する事など出来ない下等な生き物だ。

 

アインズの統治こそ自らの幸福であり、自らアインズの支配を望むように管理ーー飼育ーーしていくのが望ましい。

 

それに昔アインズの言っていた「優秀そうな者がいたら、いずれ手中に収めたい」という内容にも添う。

 

アインズが「優れた支配者」と知れば、自らの才覚に自信のある者は、我先にとアインズの足元に平伏するだろう。

 

現在は人間のみがその対象だが、アインズにはコレクターとして収集癖があると、デミウルゴスは理解している。

リザードマンの村を襲撃した際にも、白いリザードマンを「レア」と呼び、生かしておくように指示を受けた事は記憶に新しい。

 

この先も種族を問わず、アインズが収集しようとする「コレクション」があるだろう。

当然それらの生活環境も含めて考えなければならない。

 

白いリザードマンを「生かして」おく決定がなされた事を思えば、それらには「衣食住」が必要となる。

 

特に「食」は欠かす事の出来ない、最優先事項だ。

 

支配に「飴と鞭」と言われるように、飢えは最大の敵だ。

 

 

 

 

逃げる気すら失うほど飢えさせるのも統治の一つの方法だが、それでは優秀な者は集まらないだろうし、アインズの言うように敵を作りかねない。

敵になったとしてもナザリックに何の痛痒も与えないだろうが、アインズの希望する「英雄としての名声」にはならない。

 

ここが匙加減の難しさだろう。

 

 

 

 

ローブルの家畜達の中に魔法を使える者がいたら、優先的に生活魔法、特に生産系を覚えさせるのも一つの方法かもしれない。

 

「魔法使い」と呼ばれるのは、第一位階魔法を拾得した者からで、第0位階魔法の使い手は「魔法使い」の括りに入らない。

だとすれば、平民、あるいは奴隷の中に第0位階魔法なら使えるという存在がいるかもしれない。

 

だとすれば程度の低い第一位階魔法などより、生活魔法による「調味料生産機」として飼ってしまっても良いだろう。

 

帝国国民の奴隷は、扱いが厳しく定められているのなら、他国から「輸入」してしまえばよいのだ。

 

この世界特有の、産業技術の獲得は必要だ。

効果的なのは、技術の独占だ。

農耕などによらない技術ならば、最悪その魔法を使える者を浚ってしまうなり殺してしまうなりしてしまえば、可能となる。

 

もっともそこまでする必要はないだろう。

 

望ましいのは、さらなる技術改革だ。

 

ありとあらゆる物が魔法で生産可能となれば、労力の必要性は減る一方となる。

 

そうなれば、重労働が必要な事や、繊細な技術は不要となる。

 

 

魔法を覚えさせるなら、幼いうちからの方が良いと、フールーダの知識からも判断できる。

 

魔法学院の卒業生の習得出来る魔法が、第一位階か第二位階という低レベルでしかない事はこの際、置いておく。

吟味すべきは、魔法学園に入学するまでにどれだけの費用を魔法訓練に充てることができたかによる、という事だ。

この「費用」とは、単純に金銭の額では無く、師事できる相手を持つ為の経費と考えるべきだろう。

 

ならば幼いうちから魔法の訓練を行い、使える者と使えない者の振り分けが必要となるだろう。

 

魔法が使えるようになった者なら、生産の代替えとして、皮の剥ぎ取り回数を減らしても良い。

 

皮の替わりに食料の生産を担ってもらうのだ。

 

 

それに

 

 

どうやら、幼い方がより良い羊皮紙が取れる。

これに魔力を上乗せすれば、更に良い羊皮紙が取れるようになるかもしれない。

羊皮紙の質を上げる実験としても、よいだろう。

 

「試してみたい事が山積みだ。楽しくて仕方がないね」

 

 




この辺の設定って、書籍でも変わらないのでしょうか。

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