短編小説   作:重複

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文字数が足りないので、詰め合わせです。

1、NPC VS 番外席次
2、無銘なる呪文書(ネームレス・スペルブック)
3、フールーダと、ヘジンマール
4、レエブン侯



一発ネタ

1、NPC VS 番外席次

 

一発ネタ。前後不問でお願いします。

 

NPCがこんなに強いわけがない

 

「うそだ!お前たちがNPCだなんて…!」

番外席次の知識として、NPCとはぷれいやーより弱く、僕のような存在として記憶している。

なのに、目の前にいる存在は、ぷれいやーと同等と言われる自分を圧倒しているのだ。

「フン、愚かでありんすねぇ。井の中の蛙とはよくいったものでありんす」

「そうそう。だいたい至高の御方々が、ただのぷれいやーと同じな訳ないじゃない」

「至高の御方々は、千五百人のぷれいやーを相手に四十一人で圧勝した方々です。ぷれいやーにも格というものが存在するのですよ」

「格ノ違イヲ理解セズ、戦略・戦術ノ妙ヲ知ラヌトハ、愚カナコトダ」

一対一でかなわない、更に同等と思われる存在が複数いる。

更にその上には、ぷれいやー(神)の中でも上位とされる存在が君臨しているという。

 

「うそだ」

 

 

 

「え~」

いやいや、まさかの高評価。というより、そこまで出来る訳ないでしょ。

ていうかデミウルゴスまで、こんな風に考えてたの?

ナザリック地下大墳墓やらワールドアイテム四十一人揃ってたからとか、いろいろあるからの結果だし…

 

え~、ひょっとして、こいつらの上から目線って俺たち(千五百人返り討ち)のせいですか?

俺(至高の御方)がいれば、なんとかなると思ってないか、これ。

精神安定より、精神の安寧が欲しいです。

 

 

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2、無銘なる呪文書(ネームレス・スペルブック)

 

不可解さに首を傾げる。

無銘なる呪文書(ネームレス・スペルブック)に記載されている超位魔法に、不自然さを感じたからだ。

今現在、この呪文書によって確認出来る超位魔法は、己が使用した物を除けば、一つしか載っていないのだ。

これはどういう事なのか。

考えられる可能性は、自分より以前のプレイヤーが使用した超位魔法が一つしか無いという事なのか、あるいは自分と重複した魔法を使用していたのか、だ。

しかし、100レベルカンストプレイヤーが、超位魔法を一つしか修めていないなどということがありえるだろうか。

どう考えても、ありえないとしか結論は出なかった。

であるなら、超位魔法を使うような事態に遭遇した事が一度しかなかったか、それとも他の超位魔法に使いどころが無かったか。

 

出来る事なら、他のプレイヤーがどのような活動を行ったのか、詳細に調べたいものだ。

経験値消費型の超位魔法は、レベルアップの方法が確立されるまで使用する予定は無い。

他のプレイヤーがどのような結果を迎えたか、知ることが出来れば、自分の調べる手段ももう少し楽が出来るのだろう。

 

 

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3、フールーダと、ヘジンマール

 

その日、フロスト・ドラゴンのヘジンマールはこの世の天国を見た。

 

本だ。

見渡す限り、いや、見果てぬほどの広さの部屋に、本がこれでもかと言わんばかりに、その存在を主張している。

右を見ても左を見ても、さらに上を見上げても本しか視界に入ってこない。

本だけの、いや、本の為の部屋なのだ。

部屋と言うには少々、いや、かなりの広さだが。

 

「私がかつて仲間と集めた本だ。この世界の一般的な文字で書かれていない為、お前が読むことは出来ないが、問題の無い物を選んで、おいおい翻訳した物を出す予定だ。」

 

自らの主人の言葉に心と体が震えてくる。

知識は力だ。

武器だ。

こんなにも本を大切にする主人の偉大さが、よく分かる。

 

「この世界には、翻訳の魔法があるという。あいにく私はそれを修めていない。司書たちに翻訳させてはいるが、少々手が足りない。お前がその魔法を修めて、この世界の言葉に書きおこせ」

 

書物に出会い、知識を得る快感に目覚めたヘジンマールにとって、それは最高の職場だった。

 

ただ、それにはまず翻訳の魔法を学ばなければならない。

そして魔法を学ぶには教師役が必要だ。

よって・・・

 

「お待ちしておりました。先生」

「うむ、今日もお互いに頑張ろう」

 

知識欲に取り付かれた一人と一匹。

人間・フールーダとドラゴン・ヘジンマールは、種族の垣根を越えて、互いに勉学に励む仲間となった。

 

「わしもアインズ様に弟子入りした身。いうなれば、そなたはわしの弟弟子じゃ。年もわしの方が上だろうしな」

「人間にはいろんな人がいるんですねえ」

 

おそらくレベルも近く、同じ主人を仰ぐ者同士。

そして知識への渇望。

 

ヘジンマールの仕事が休みの日に合わせて、転移魔法でやって来るフールーダと二人、今日も知識欲を満たすために勉強をすることに余念がなかった。

 

 

「まずい。魔法キチが増えた」

 

 

解散状態の魔術師組合長「入れてくれ~!!」

 

 

======

 

 

Webでは死者の本を渡されたフールーダは、その場で読解の魔法で読み始めたのですが、書籍では「非常に効率の悪い読解の魔法で少しずつ読み解く」と言っているので、書籍では翻訳も大変そうです。

 

 

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4、レエブン侯

 

エリアス・ブラント・デイル・レエブン。

リ・エスティーゼ王国の侯爵であり、六大貴族の一人にして、エ・レエブン領主。

そして妻と五歳になる息子を溺愛する、愛妻家にして「超」が付く親馬鹿な人物である。

 

そのレエブン侯は、現在頭を抱えていた。

あの恐ろしい「カッツェ平野の大虐殺」から幸運にも逃げ帰ることが出来た。

そこまではいい。

しかし、あの魔導王の治める魔導国は、自分の領地から近いとは言えないが、遠くもない立地だ。

そして今、自分がどのように行動すべきか、大変な悩みとなって、レエブン侯を押しつぶしそうになっていた。

現在の王国は、混乱の最中にある。

特に当主や後継者、さらには一族全てが死んだ貴族も多く、その混乱は筆舌に尽くし難い。

 

 

王国軍左翼は、魔導王の魔法で全滅。

それにより左翼を形成していたボウロロープ侯は死亡した。

 

あらゆる貴族。派閥や規模に関わりなく、混乱しているのだ。

そんな中、あの魔導国から使者が来た。

今回は表面上は何事も無く帰国したらしいが、今後国交を開くとなれば、礼儀を知らぬ貴族がどのような問題を起こすか知れたものではない。

むしろ、その無礼をもって、魔導国の侵攻の引き金になるのではないか、あるいは魔導国がそれを誘発させ、侵略の糸口にしようと画策しているのではないかと、心配の種は尽きない。

なまじ、視野が広く可能性を考えられ、さらにあの「カッツェ平野の大虐殺」を直に体験している為に、あらゆる悪夢とも言える悪い想像が翼を広げて膨らんでいく。

王国貴族の愚かさ馬鹿さ加減を知り尽くしているレエブン侯には、これからの王国の未来に夢も希望もありはしない。

あの戦場で考えたように、この国を捨てて逃げる事も考えた。

しかし、どう考えても逃げきれる可能性が低く、実行に移す気にはなれなかった。

そもそも逃げてどこへ行くというのか。

王国に未来はなく、帝国は属国となるという。

法国は人間種以外を認めない国だ。

魔導国に睨まれないという方がありえないだろう。

 

ではどこへ行く?

 

評議国。

都市国家連合。

竜王国。

聖王国。

 

どこも安全とは言い難い。

 

ぶるりと体が震える。

 

すでにあのカッツェ平野の戦場から遠く離れた自領にいるにもかかわらず、ふとした瞬間にあの時の恐怖が甦るのだ。

周りを見回し、外に何の異変も無い事を確認してしまう。

 

自分も本当の意味で、戦場というものを認識できていなかったのだろう。

ここ数年にわたる帝国との戦争。

あれは出来レースだった。

貴族には死者も負傷者も出ず、死ぬのは前線に配置した平民達。

最初の一撃さえ凌げば、それでおしまい。

あとはかかった戦費に四苦八苦するだけ。

命の危険など、今まで本当の意味で感じた事は無かったのだ。

 

初めて本当の意味での死の恐怖を知った。

あらがいがたい死が身近にある事を知った。

初めて平民達と同じ境遇になった。

死ぬのは平民ではない。

弱い者が死ぬのだ。

今までは、貴族と平民という強者と弱者だった。

ここにきて、人外と人間という強者と弱者になったのだ。

そしてそれは、本当はずっと前からあった脅威なのだ。

人間の弱さは、冒険者がモンスターを狩ってやっと維持できる程度だ。

強大なモンスターが人間の領域に出現すれば、それだけで人間は危機に陥る。

 

エ・ランテルの吸血鬼ホニョペニョコしかり。

王都での悪魔ヤルダバオトしかり。

 

そして今回の魔導王アインズ・ウール・ゴウン。

 

あらゆる悪夢を想像して、なお足りない死の体現者。

 

刃向かう事こそ、愚かの極みだ。

死にあらがう術などあるはずがない。

 

「本当にどうしたらいいんだ」

 

自分の考えを全て晒して相談できる相手などいない。

ザナックは国を第一に考えるだろう。

ラナーは得体が知れない。

ガゼフは死に、復活もないという。

妻に相談するには、内容が重すぎる。

 

八方塞がりだ。

 

いっそ自分に何らかの価値があれば、話に聞くガゼフのように、魔導国から勧誘があったのだろうか。

 

今の自分なら、喜んで飛びついてしまいそうだ。

 

この神経を削り落とされ、擦り潰されるような日々から解放されるのなら、多少の境遇の変化は許容範囲だ。

妻と子と命の不安無く暮らせるなら、膝を屈する相手がかの魔導国であっても問題無いのではないだろうか。

 

レエブン侯が、ブレイン・アングラウスのように極度の恐怖から逃げる為に死を選択しないのは、なによりも妻と子を残す事にこそ、恐怖を覚えるからだ。

 

それでも…

 

「本当にどうすればいいんだ」

 

答えの出ない問答を今日も繰り返す。




レエブン侯のストレスは胃に来るのか、頭に来るのか。
私気になります。(なんか新刊出たそうで)

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