短編小説   作:重複

14 / 46
特典小説と十一巻から妄想。


十三英雄は・・・

「やっと、やっとだ」

わくわくと踊ってしまう気持ちを抑える事は不可能だ。

ようやく第十位階の魔法を覚えたのだ。

この魔法から考えると、自分は七十レベル台に突入したと考えられるだろう。

このまま行けば、もっと強力な魔法が覚えられると期待が高まる。

 

「いいなあ。俺も早く高位の魔法を覚えたいよ」

同じプレイヤーだが、戦闘の参加が遅かった彼がぼやく。

「すぐに覚えられるよ。基本君は前衛だから、経験値が入るの早そうじゃないか」

「だといいけどね」

 

お互いに、その内覚える事は確定しているのだ。

 

「今度、でかい範囲魔法を使いたいんだよね」

「ああ、それで今回の魔法か」

「そう! 自然の避難所(ネイチャーズ・シェルター)! 超位魔法でも一撃は堪える、優れ物ですよ! これで味方の被害を考えずに一掃が可能です!」

「天上の剣(ソード・オブ・ダモクレス)は無理じゃなかったっけ?」

「大丈夫ですよ。俺の範囲魔法、まだそこまで強力じゃないですから」

「次の戦闘で使うのか?」

「はい、前衛よろしくお願いします。そばに自然の避難所作っておくんで、伝言(メッセージ)いれたら範囲魔法の発動前に隠れてくださいね」

「……一度実験してみないか? 何かあっても困るだろう? 俺たちの中には、まだ第八位階以上の復活魔法が使える奴がいないんだし」

「ああ、そうですね。どっかの砂漠地帯で試しておきましょうか」

 

自然の避難所を発動させ、大地に出来た防空壕に生卵を置く。

見た目の分厚さと異なり、軽い扉を閉める。

 

「さて、実験です」

 

二人で離れたところから、自然の避難所に向けて、範囲魔法を打ち込む。

広範囲にわたり焦土と化した中を歩き、自然の避難所の扉を開く。

卵は置いた場所から動くこともなく、元の場所に鎮座していた。

その生卵を持ち上げる。

熱くもなっていない。

こん、と叩いて割ると生の状態で黄身が出てきた。

卵の中身の状態にも、変化は無いようだ。

 

「じゃあ、今度は中にいてください。もう一度打ち込みますから」

「お手柔らかに」

 

二度目の範囲魔法を打ち込む。

外から見る限り、異常は見あたらない。

急いで駆け寄り、扉を開いて中を覗き込む。

 

「大丈夫ですか?」

「ああ、終わってたのか。特に問題は無いみたいだな」

「じゃあ、本番もこれでいきますね」

「了解だ」

 

次に戦う相手はドラゴンだ。

どのくらいの強敵になるか、楽しみだ。

 

そしてーー

 

「範囲魔法、行きます! 発動まで二十秒です! 急いで!」

 

今回使う範囲魔法は、超位魔法ではないので、発動までの時間は短い。

前衛でドラゴンの相手を一人でしていた彼が、一度ノックバックの要領で距離をとる。

 

五秒

 

そのまま一目散に後退する。

 

十秒

 

岩陰に隠して作っておいた自然の避難所に到着する。

ドラゴンも追ってきているので、範囲魔法の目標は自然の避難所の手前だ。

 

十五秒

 

扉を開けて中に入る。

 

 

入る。

 

入らない。

 

「何やってんの?!」

「開かない!!」

 

二十秒

 

範囲魔法が、扉の前に立つ彼と追ってきたドラゴンの上に降り注ぐ。

 

言葉も出ない。

 

彼とドラゴンを消し炭にした跡に、無傷な自然の避難所がぽつんと建っている。

 

「そんな」

 

慟哭。

その言葉の意味を正しく理解した。

 

たった一人の同郷。

たった一人の仲間。

たった一人の理解者。

たった一人の共犯者。

 

一緒に帰ろうと約束した相手。

 

殺した

 

息ができない。

当たり前だ。

呼吸が止まっている。

心臓が止まっている。

自分の剣が、自分の血で染まっていく。

 

ああ、衝動的ってこういうこと……

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。