短編小説   作:重複

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デミウルゴス ナザリック至上

後継

 

 

「偉大なる支配者の後継はあるべきだろう?」

 

本心であり、本心ではない言葉だ。

デミウルゴスは考える。

 

もしアインズがこの地を、ナザリック地下大墳墓を不要と判断した時、あの慈悲深い支配者が自らの子等を置いて行くことはないだろう、と。

 

「りある」という場所がどのような所なのか、デミウルゴスは知らない。

ただ、他の至高の御方々が、この素晴らしいナザリックを捨ててまで優先する場所であることは確かなのだろう。

 

それほどまでに素晴らしい場所なのか。

それほどまでに価値のある場所なのか。

それほどまでに意義のある場所なのか。

 

このナザリック地下大墳墓の全てよりも。

 

存在を見たこともない物との比較はできない。

 

だからデミウルゴスには、「りある」は想像の範疇の存在でしかない。

 

それでも、アインズが残ったのだから。

慈悲深い最後の方が残ったくらいには、価値があるはずなのだ。

 

だったら、

もしかしたら、

 

アインズに複数の子供たちが産まれたなら、その中から一人くらいはこのナザリックを選んでくれる存在が出てくるかもしれないではないか。

 

このナザリックに残ると仰ってくださる方(後継者)が、いるかもしれない。

 

もちろん最善は、アインズ自身がこのまま支配者として君臨してくれた方がいい。

その為の努力を惜しむ事など、あり得ない。

 

しかし、最悪をも想定しておくべきだ。

 

四一人中、たった一人しか残らなかったのだ。

その事実を、現実を、きちんと受け入れなければならない。

一人でも残られて良かった。

しかしそれは、永遠に続くと保証された事ではないのだから。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

繁殖

 

 

「ふむ」

 

デミウルゴスは思考する。

この地に最初に来た時に考えた、戦力の増強方法。

 

自分たちの子供がどの程度役に立つか。

 

この近郊の国々は、人間がほとんどだ。

まれに森妖精(エルフ)や、そのハーフがいる程度で、他の人間種は最近国交を結んだ山小人(ドワーフ)くらいだ。

話によれば闇妖精(ダークエルフ)も存在するらしいが、近隣諸国には存在しないようだ。

 

ザイトルクワエの討伐の際にナザリックへ所属し、第六階層でリンゴ農家をしているドライアードのピニスン・ポール・ぺルリアによれば、ザイトルクワエが出現し森を荒らす前までは、闇妖精がトブの大森林に居をかまえていたそうだが、現在では確認できていない。

この世界にいるなら、探し出して問題のなさそうな闇妖精の女を捕まえて、マーレにあてがって試してみたいものだが、これはマーレの意志を尊重すべきだろう。

なにより、最近はマーレもアインズ様からのご寵愛もありうる。

やはり、まっさらな子供に余計な手垢は付けない方が良いだろう。

 

現状として、可能性が高いのはセバスだろう。

異形種と人間では子を成す事はできないと、この世界では常識とされている。

だが、竜王国の女王のように、ドラゴンと人間という本来は異形種のはずの間に子をもうけている例もあるのだ。

竜人という存在が、どのあたりまで可能な範囲を有しているかという確認の意味でも、是非ツアレとの間に肉体関係が発生してほしいところだ。

 

子供が自分たちの能力を多少でも引き継ぐなら、ナザリックの役に立つだろう。

最低でも、五十レベル以上が望ましい。

 

ただ、自分たち守護者は生まれた瞬間から百レベルという完成された状態で存在しているのに対し、子供は育成という手順を取らなければならないだろうと予想される。

 

その上で、どこまでレベルを伸ばす事ができるのかを確かめなければならない。

試行錯誤を繰り返すだろう事を考えれば、試す対象は多ければ多いほど良い。

 

いっそ自分たちではなく配下の者に、どの種族となら子ができるのかの実験だけでもさせるべきだろうか。

 

「繁殖実験として、八本指に所属していた人間の女に、いろいろな種族と交配させてみますか。人間と交配可能な種族の割り出し。次に森妖精は・・・ あの森妖精のメイドはさすがに使えませんから、たしか餓食狐蟲王の所に半森妖精(ハーフエルフ)の女がいましたね」

 

簡単には殺さず、生かして苦痛を与える事を優先された、至高の御方の逆鱗に触れた愚か者たちの一人だ。

 

「あれを少し借りて使えれば、もう少し範囲が絞れますか」

 

半分でも森妖精との交配の、試作段階程度の結果は出せるだろう。

 

「数百人に実験をして、生まれる可能性は一割あるかないかでしょうか。その中から使い物になる子供が一人でも出れば、御の字でしょうかね」

 

所詮は実験だ。

本番となる自分たちの子供の段階までの、確率の確認である。

 

まず、どの種族同士なら子がなせるのかの確認。

さらにこの世界の種族と、ナザリックに所属する者との、交配可能範囲の差があるかどうかの確認。

次に、子供のレベル上限の確認。

これは、親となる者のレベルに添うのかどうかも、確認しなければならない。

 

レベルの違う親の子は、どちらの親の影響を受けるのか。

レベルに左右されるのか。

または、父親母親の差で変わるのか。

親のレベルを引き継ぐのか、あるいはレベルが上がるのか下がるのか。

はたまた、突然変異のような存在もありうるのか。

百レベル同士の子は、百レベルになりうるのか。

 

とにかく確認しない事には、わからない事が多すぎる。

かといって、自分たち守護者レベルが、いちいち確認のために行為などしてはいられない。

 

シモベたちに役割を振り分ける方が、効率的だろう。

なかには、人間などとの行為に、嫌な思いをさせてしまう者もいるかもしれないが。

 

「ナザリックの為だと、我慢してもらうしかないですね」

 

自分としても、人間ごときを相手にするなどごめん被りたい事態だが、ナザリックの強化という目的に最短距離の方法であることは否めない。

 

確率の高い種族を振り分けておく事は、大事な選別だ。

 

「やれやれ、手が足りないことだ」

 

 




パンフレットで、ドラゴンが人間と子を作るのは変態だそうで。
ナザリックも人間は下等生物扱いだから、嫌がりそうだな。




セバスが変態になってしまうのか?

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