短編小説   作:重複

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異形種動物園

【異形種動物園】

 

アインズはあんぐりと口を開けた。

 

何故、昔の自分のネーミングセンス皆無を自覚していなかった頃のギルド名候補が、こうして燦然と文字に起こされて目の前に晒されているのか。

 

◆◆◆

 

『異形種動物園』

 

「いいんじゃないかな」

 

こっそりと呟いた。

 

彼は、悪くない名前だと思ったのだ。

確かにこのクラン「ナインズ・オウン・ゴール」の名から変わる名前とすると、微妙かもしれない。

このメンバーでのギルド名には「アインズ・ウール・ゴウン」の方が、ふさわしいだろう。

 

しかし、自分が何かに使ってみたい、と思うような響きがあった。

 

そこで――

 

「モモンガさん。その名前、何か機会があったら使ってもいいかな」

 

◆◆◆

 

ささやかな希望だった。

 

拘りがあって、不利益を承知でアバターに選んだ「異形種」。

既に絶滅してしまった動物も多く、リアルでは碌に機能していない所が殆どの「動物園」。

 

どちらも、自分には思い入れのある言葉なのだ。

 

 

ひっそりと、小さなギルドを立ち上げた。

 

構成員は三人だけ。

 

自分(ブルー・プラネット)と、ヘロヘロ。

そして面白がった、るし★ふぁー。

 

このギルドは有る意味、趣味だけを詰め込んだギルドだ。

 

小さな地下都市がギルド拠点。

ランクは最下位。

 

というか、売りに出されていた拠点だ。

しかも買い手が誰も付かずに、ほぼ最安値という不人気物件。

POPするモンスターは、維持費の少ないモンスターである事が唯一の利点と言ってもよいほどだ。

 

見つけることも困難なほど不便な立地の上、落としてもろくなうま味も無いような弱小ギルド拠点。

NPC作成ポイントは最低値の七百。

 

それを課金の傭兵NPCで補う。

POPは極力抑える。

作成するNPCは召喚を主体にした構成で作る。

異形種で、外見が現実に存在した昆虫や動植物に極力類似しているものを優先した。

 

 

さらに――

 

「いや、このギルド武器おかしいでしょ」

「普通、やりませんよね」

「いいじゃないですか、奇をてらってて受けるでしょ」

 

ゴーレムなのはいいだろう。

 

しかし――

 

「ゴキブリ型のゴーレムで、希少金属でコーティングした上に、AI組み込んで自立自走で逃げ回るって……」

「壊されなければいいんですよ」

「いや、武器としてそれってどうよ」

「どうせギルド武器なんて、誰も使わないじゃないですか」

 

動くものを感知すると、ひたすら逃げるのだ。

ギルド拠点における「アリアドネ」の制限も手伝って、この地下都市は穴だらけになっていた。

 

もはや何処にいるかも、マーカーで確認しなければ把握出来ないギルド武器とはなんなのか。

 

「趣味ですよ、趣味。思いっきり凝らなくちゃ損ですよ」

 

◆◆◆

 

まあ、召喚したNPCは一定時間の経過で自然消滅するか、戦闘終了で消えるのだから、維持費はさほど掛からない。

 

維持費としてそれなりの量の金貨を宝物庫(経費入れ)に入れておけば、そうそう破産(拠点喪失)にはならないだろう。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「いやー!!! 無理!無理!無理!無理!無理ったら無理ーー!!」

 

シャルティアの悲鳴が響きわたる。

 

「このおばかーー!!状況考えなさいよーー!!」

 

 

ゴキブリの群に範囲魔法を叩き込んだところ、爆風に乗ってシャルティアの顔めがけて大量に飛んできたらしい。

そしてそれを回避する為に、シャルティアが取った手段が「転移門(ゲート)」だったのだが、逃げたその先で、すぐに「転移門(ゲート)」が閉まるはずもなく、大量のゴキブリが津波のごとく溢れだしてきたのだ。

 

これにより、守護者の半数が脱落した。

シャルティア、アルベド、アウラである。

 

消滅時間までゴキブリを吐き出し続けるかと思われた転移門(ゲート)は、マーレのアースサージによって逆流させ包み込まれ閉ざされている。

 

転移門(ゲート)から溢れたゴキブリは、デミウルゴスの召喚した大量の低位の悪魔によって、地道に潰されている。

 

なにしろ、恐怖公の眷族無限召喚を例とするなら、この召喚されたゴキブリは「共食いができる(死んでも消えない)」可能性があるのだ。

きちんと一掃しておかなければならない。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

最終決戦・恐怖公、出陣。

 

物量対物量対決。

 

パターン①

 

「他人とは思えん」

「心の友」

「兄弟の契りを」

 

仲良くなる。

 

「ナザリックへ招待しよう」

 

「来るな、来るなあああ!!」×3

 

パターン②

 

周りの被害が大きすぎるので、一時停戦。(見渡す限りのゴキブリの死屍累々)

 

「やるな」

「そちらこそ」

「さあ、決着を」

 

「もう、争いはやめてー!!」×3

 

 

 

 




「燃え上がる三眼」の件で、ギルドメンバーを増やせなくなった。
とあるので、ギルドの掛け持ちは可能なのかと思いました。



コキュートスが「心の友」と呼んでいたかと思うので、恐怖公も正面対決が好きかもしれない。物量ですが。
7巻でも、一応「眷族の腹に収まってください」と「おことわり」してからワーカーを食べているし。

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