短編小説   作:重複

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ジルクニフが悟った笑みを浮かべる状況を考える。

「陛下、こちらの案件のお目通しをお願い致します」

きちんと清書された書類が渡される。

渡してきた相手の顔は、人間であって人間でない。

生きた人間のものではなく、死んだ人間の顔。つまり骨、骸骨だ。

相手はエルダーリッチと呼ばれる存在で、この帝城に何体か働いている内の一人だ。

アインズ・ウール・ゴウン魔導国の属国となったバハルス帝国へ本国である魔導国より出向している形だ。

基本的な国の運営方針は魔導国から出されているが、細かな部分の自治は任されている。

人間種、亜人種、異形種の区別なく、魔導国の一臣民としての国の在り方をきめるのだ。

よって、奴隷となっていた者、特に権利を保障されていなかった、他国からの流民奴隷や人間以外のエルフなどの奴隷を解放しなければならなかったのだ。

 

こんな事になるなら、さっさとエルフも含めて奴隷を解放しておくのだった。

そうすれば、うまくすればあのダークエルフの双子への恩が売れたかもしれないし、これから一臣民となる元奴隷たちのジルクニフへの心証も良くなっていたことだろう。

 

その他細々とした取り決めや政策の案が出されているのだが…

その案を読む度にジルクニフは悟った笑みを浮かべる事となる。

魔導王の英知については、人の身として遠く及ばずかなわないと知った。

しかし、その配下の出す案件についても、自分の考えつかない政策を多数出されてしまえば、優秀と誇ってきた今までの自分に対する自信と自尊心が、がりがりと削られていく気分だった。

優秀な自分がトップにいる、故に頭も体も獅子の国と誇っていた。

しかし、魔導国には優秀な者が魔導王一人ではなく、配下に複数どころか、多数存在するのだ。

それらが、お互いに相談し切磋琢磨して、よりよい案をとジルクニフに提出してくるのだ。

 

「俺、いらなくないか?」

 

 

優秀な者たちを集めてから改革をすればよかった。

などと、粛正後には思ったものだ。

文官一人当たりの仕事が増えた時も、無能にも無能なりの使い道があったと考える事もあった。

ある程度の能力があれば事足りる、運営能力を持った人材が育ってほしいとも思っていた。

しかし、自分より格上に自分のする事をなくされるという事態は想定していなかったのだ。

自分は優秀であるが故に、次世代以降の皇帝が自分ほど優秀でなくともやっていける国造りを目指していた。

しかし優秀だと思っていた自分は、魔導国からやってきたエルダーリッチとあまり変わらないのではないか。

自分が優秀だと思っていたのは間違いで、人間種が愚かで、他種族には自分は掃いて捨てるほどいる程度なのではないか。

魔導国が冒険者に「未知を既知とせよ」と檄を飛ばし、その方針を知る為に魔導国から情報をもらえば、ジルクニフは竜王国がビーストマンに襲われていた事も、その先に人を食料とするビーストマンの国がある事も知らなかった。

更に大陸中央六大国は全て亜人か異形の国だという。

魔導王アインズ・ウール・ゴウンは王国にありながら、人間種の国の先まで見据えていたのかと、その視野の広さに恐れ入り、己の視野の狭さを恥いるばかりだ。

ビーストマンの身体能力は、人間の成人男性を三とした場合、ビーストマンは三十だという。

単純計算が許されるなら、国民一人一人が難度三十であり、騎士程度の力を持つ事になる。

しかも、帝国で扱っている扇風機や冷蔵庫等は、ミノタウロスの国から知識としてきたものだ。

つまり、頭も悪くないという事だ。

今更ながらに、よく人間種が滅んでいないものだと感心する状況だ。

ここまでの世界情勢を知れば、もはや

「魔導国の属国になって良かったんじゃないか?」

と考えてしまうのもやむなしであろう。

過去、魔導国に対して何らかの対応をとろうとした自分を思い起こせば

「馬鹿な事をしていたなぁ」と思わずにはいられないジルクニフだった。

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