短編小説   作:重複

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ソリュシャンのシャルティアの慰め方

階層を移動する。

普段自分がいるナザリック地下大墳墓第九階層から上へと移動する。

第三階層。

守護者シャルティア・ブラッドフォールンの治める階層だ。

 

「シャルティア様。ソリュシャンです。」

 

戦闘メイドが一人、ソリュシャン・イプシロンは、階層守護者シャルティア・ブラッドフォールンが嫌いではない。

というより、気に入っていると言ってよいだろう。

確かに幼い言動と、洗脳されたとはいえ「アインズ・ウール・ゴウン」に反旗を翻したという事態は許容できるものではない。

しかし、それがあったからこそ今の警戒態勢が構築されたとも言える。

それに、シャルティアの発言がソリュシャンの琴線に触れたこともある。

シャルティアは自分たちを同じ存在と言ったのだ。

「役職による上下関係はあれど、同じ至高の存在に仕える自分たちに差はない」と。

 

この発言は同じ至高の存在に仕える者として、非常に嬉しい発言だったのだ。

その後のセバスの、至高の存在の私財を私用で使う事を強要した挙げ句、厄介ごとを招いた事に比べれば、シャルティアの失態は、ソリュシャンにはまだ許容範囲だったのだ。

 

しかも、シャルティアはその洗脳の間の記憶が欠落しているという。

覚えていれば、同じ失敗をしないように努めることも可能だろう。

しかしシャルティアには、それもできない。

そんな状態に陥った経緯も、その状態を作り出した敵対者のことも何も覚えていないのだ。

 

ただ、洗脳された事だけが事実としてシャルティアを責める。

罪の意識しか与えられていないのだ。

 

しかしこれは敵の強大さを示すものだろう。

事実、それ以降警戒は強化され、宝物殿から世界アイテムを持ち出すほどの事態となったのだから。

 

しかしシャルティアは、ただただ罪の重さに堪えるしかない。

それはあんまりではないだろうか。

 

ささやかな気分転換になればいいと思った。

 

洗脳前後の記憶を失ったシャルティアは、自分と交わした約束も覚えてはいない。

たいした約束でもない。

守らなければならないほど、重要なものでもない。

 

ただ自分は覚えていて、その約束を楽しみにしていたのも事実なのだ。

 

「シャルティア様。遊びませんか?」

 

シャルティアに転移門を開いてもらい、戴き物を置いてある部屋から連れてくる。

 

外の世界の普通の人間は、第七階層や第五階層を、無事に通り抜けられないので、苦肉の策だ。

 

アインズから下賜された人間は五人。

 

屈強な壮年の男。

これならすぐに死なないから、長く遊べるだろう。

胸の大きな若く美しい女。

きっとシャルティアの好みに近いはずだ。

どことなくユリに似ている女を選んだのは内緒だ。

無垢な者は無理だったが、幼い者は選べた。

十歳ほどの少年少女を一人ずつ。

さらに五歳ほどの少女だ。

シャルティアが幼い少女もよいと言っていたからだ。

 

「シャルティア様。遊びましょう」

 

これからの遊びが、シャルティアの気分を少しでも紛らせてくれればいい。

その方が、自分も楽しいはずだ。

自分たちは至高の存在に仕える仲間なのだから。

 

老若男女の上げる悲鳴はきっと喜ばしいものだろう。

ナザリックの役に立って死ねるのだから。




ナザリックの遊びは怖い

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