短編小説   作:重複

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14巻・小話 ラナー・ジルクニフ

ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフ

 

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「やっと死んでくれた」

 

心から嬉しそうに、いや本心からの喜びのままに、ラナーは呟いた。

 

ブレイン・アングラウス。

 

邪魔で邪魔で仕方がない存在だった。

 

クライムが二番目に親しいと感じる存在。

 

クライムには自分(特別)だけでいいのだ。

親しい者など不要な存在だ。

 

出会いからして最悪だった。

 

ガゼフ・ストロノーフのように、お互いの立場や周囲の状況に配慮して距離を保つこともない。

 

クライムに親身になった。

 

なりすぎた。

 

ブレインがいなければ、ゲヘナの時にクライムは死に、自分が看病できただろう。

魔導国との戦争で死んでいれば、戦後に王宮でクライムの側にいることもなく、周囲の悪意をクライムは直に受けてさらに孤立し、自分にもっと依存させることができただろう。

王宮に勤める騎士たちとの確執も、ブレインがいなければもっと煽れてクライムは王国の騎士たちに悪い感情しかもてなくなっていただろう。

 

あらゆる面で邪魔でしかなかった存在を排除できたことは、本当に喜ばしいことだ。

 

父の無能ぶりも

兄の無駄なあがきも

国を憂う者の行動も

 

すべてはこの時を迎えるためのものにすぎない。

 

王国は消え、自分は表舞台から消える。

 

あとは、クライムと二人っきり。

 

ずっとずっと願い続け、行動し続けたのだ。

 

「ああ、努力が報われて夢が叶うって素晴らしいことよね」

 

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ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス

 

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王国が魔導国に滅ぼされたと聞いたジルクニフが最初に考えたことは、「そこまでするか」だった。

 

王国がここまで完膚無きまでに叩き潰されるとは、ジルクニフの想定外だったのだ。

 

もう少し穏当にことを済ませるかと考えていた自分を「甘い」と罵りたい気分だ。

 

あの魔導王が王国に対して良い感情を持っているはずなどないのだから。

 

親友であるペ・リユロの受けた被害を鑑みれば、ある意味当然の帰結だろう。

 

亜人とはいえ、クアゴアの一族は八万という数を一万にまで減らされたのだ。

 

王国の民は都市単位で僅かながらに残っているらしいが、おそらくクアゴアの一族並に減らされたことだろう。

 

正しく魔導王は「人間、亜人の区別無く」対応したのだ。

 

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ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフ

「クライムと親しい」「クライムが気に掛ける対象」など、ラナーによって死刑確定な気がするのです。

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ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス

10巻風に言うなら「なぜクアゴアの時にその台詞が出てこないのだ」でしょうか。

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14巻のその後みたいな話です。

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