短編小説   作:重複

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いろいろ妄想が入っています。


とあるプレイヤーたちの後悔

◆◆◆6人の最後の一人◆◆◆

 

「失敗したな」

 

この世界に転移してきてから、後悔することしきりだ。

 

こんな世界に転移するなど想像もできなかったのだから、当たり前と言えば当たり前なのだが、どうしても「こうしていれば良かった」と思ってしまうことは多い。

 

 

たとえば、ゲームの「キャラクター」だ。

 

ユグドラシルというゲームでは、プレイヤーは三つの基本種族から選んでキャラクターを作る。

 

「人間種・亜人種・異形種」の三種族だ。

 

どうしてもユグドラシルでは「人間種」を選ぶプレイヤーが多数を占める。

 

人間種は種族レベルが無い代わりに、職業レベルが多数積めることで強キャラを作りやすい。

 

何よりも見た目が良い。

 

異形種を選ぶと、外見を人間種に似せることは不可能に近いうえに、異形種の外見は総じて悍ましいので、どうしてもキワモノ好きやら物好きやらくらいしか異形種を選ばない。

 

しかしこの世界に生きるのなら、せめて長命の種族を選ぶべきだったのかもしれないと考えてしまうのだ。

 

自分以外の仲間は総じて一般的な人間をキャラクターとしていたために、百年を越えて生きている者はいない。

 

戦いで命を落とす者もいれば、寿命としてもすでに生きたとされるキャラクターの外見分の年齢は差し引かれるのだから、この世界で生きた年数はさらに短い。

 

 

そしてNPC。

 

ユグドラシルというゲームにおいて、城以上の本拠地を所有するギルドの特典の一つに、NPCを自作する権利というものが存在する。

 

最低で700。

最高で3000のポイントをNPCのレベルに振り分けることが可能となるのだ。

 

といっても、よほど変わったギルドでもない限り、大抵のギルド拠点NPCはお飾りのようなものとなる。

 

なぜならギルドの構成員の数は、大抵が百人ほどにもなるのが普通だ。

 

少数ではギルドとして弱く、維持管理することも難しい。

 

人数二桁前半という少人数ギルドで上位とかいう、ふざけたギルドも存在するが、基本ギルドの規模や順位は構成員の数に左右されるものだ。

 

なにしろユグドラシルというゲームは、未知を探索するという制作の意図にしろ、戦闘という分野にしろ、数が多い方が圧倒的に有利だからだ。

 

そして、ユグドラシルという自由度を誇るゲームに浸っているプレイヤーに一からNPCを自作する権利を与えられて、自分が作れないなどという状況を容認できるプレイヤーは少数派だったからだ。

 

とくに「ユグドラシル」というゲームでは、プレイヤーは二キャラ目を作成することはできない仕様だ。

 

であるならば、NPCを自分の趣味で一から作りたいという者も一定数存在する。

 

 

誰だって自分の考えたNPCを作成してみたいだろう。

 

それを効率重視として、700ポイントなら100レベルNPCを七人。

 

などと割り切れるものではない。

 

ユグドラシルは「ゲーム」なのだ。

 

楽しめないなどもったいない。

 

NPCを作成したいギルド構成員それぞれにレベルを振り分ければ、個々のポイントは微々たるものだ。

 

交渉やゲーム内の金品によって他の構成員からポイントを譲ってもらう者や、複数人で作ることでレベルを増やす者もいる。

 

中には、兄弟、チームなどの設定で複数のNPCを作りたがる者もいた。

 

 

さらに異形種キャラクターは外装をどれほどいじっても、悍ましさを消すことができない。

 

ならば外見重視のNPCを、と奮起する者もいる。

 

自分とは異なる性別・種族・職業と、ガチビルドもロマンビルドもNPCの作成に凝るのだ。

 

完成度はまちまちであれど、「自分のNPC」を作ることに拘る者は多い。

 

そもそもNPCはギルド内から出られないし、AIで動くために細かな戦闘は不可能だ。

 

表情も張り付けたパターンから動くことはない。

 

基本、こだわるのは外見であり、性能や装備は二の次となる。

 

それにギルド拠点の防衛に使うなら、NPCの数は多い方が都合が良いということもある。

 

多くのNPCを投入することで、侵入してきたプレイヤーのMPやアイテムを消費させることを優先させる戦法は多い。

 

それにレベルが低いNPCであれば、復活費用も安く済むのだ。

 

 

 

そういった感情面と効率面から、100レベルのNPCだけを複数作成して配置するギルドは多くはならない。

 

そもそもNPCは相当に凝った作りをしたとしても、結局は倒され踏破される障害物の一つにすぎない。

 

レイドボスのような異常なHPを持たせることは不可能であり、プレイヤーが持つことのできないような武器を装着することも特殊な職業に就くこともできない。

 

NPCとは、プレイヤーの劣化版であるというのが基本だ。

 

たとえ100レベルのNPCを作っても、その戦力は通常のプレイヤーより劣るのが常なのだ。

 

NPCはAIで動くので臨機応変な対応に欠ける。

そのため、壁役か罠程度の役割しかない。

それに装備もプレイヤー重視で装備するために、NPCの装備は二級品や三級品、あるいは低レベル帯であることが多い。

 

プレイヤーですら持つことが難しい神器級(ゴッズ)アイテムをNPCに装備させるなど狂気の沙汰だ。

 

 

ここにNPCを作成する技術もNPCの能力を左右する要素となる。

当然、装備させる武器防具によってもだ。

 

結果、ギルドの自作NPCは「ギルドの雰囲気作り」となっていることが多くなるのだ。

 

 

さらに、ギルド拠点を落とすことによってしかなれない特別な職業などもある。

 

つまりギルド拠点を所持するということは、拠点を誰かに攻撃されることと同義となる。

 

この場合公式のダンジョンと異なり、人数制限というものが存在しない。

 

公式のダンジョンが基本最大人数が三六人(レギオン)での攻略となるのに対し、ギルド拠点の攻略に上限はないのだ。

 

ゆえに、プレイヤー・NPCを含めた1500人によるギルド拠点侵攻ということも起こる。

 

これを撃退するなど、違法行為を疑われて当然だ。

 

「違法ではない」と公式が発表したが、ならばどれだけの金額を課金しているのかという話だ。

 

それだけの金額をたかがゲームにつぎ込めるだけの金がある奴らは違うと、話題になったものだ。

 

 

それでも、こんな事態になると知っていれば、もう少しレベルの高いNPCを作っていた。

あるいは、もう少し役に立つ技能を持たせていただろう。

 

種族特性やスキルの豊富なNPCや、鍛冶などの特性があるNPCなどだ。

 

ユグドラシルというゲームでは、そんな特殊技能など「お遊び」「無駄」以外の何者でもなかったのだ。

 

鍛冶をするなら、生産系のプレイヤーに頼んだ方がいい。

 

繰り返すが、NPCはプレイヤーの劣化版でしかないのだから。

 

ギルド拠点のNPCに重きを置くなど、本来なら馬鹿げた行為だった。

 

それをこんな形で後悔するとは、夢にも思わないのが普通だろう。

 

ギルドは異なれど、チームを組んでいた六人と共にゲームのアバターの姿で異世界へ転移するなんて、普通は思わない。

 

 

 

 

そして、「異世界転移」という事態を甘く見ていた自分が情けない。

 

100年間上手くいっていたから、油断や慢心があったのかもしれない。

 

こんなざまでは、後を託していった仲間たちに申し訳が立たない。

 

本当は九人でギルドを作りたかった。

 

きっと凄いギルドになる。

色々なことができるギルドになる。

 

そう思われた。

 

でも三人の反対で、ギルドは作れなかった。

 

だから、ギルドは違えど六人でチームを組んだ。

 

ドリームチームと呼ばれ、勝利確実と言われたワールドディザスターを多数揃える傭兵ギルドにさえ勝った。

 

それが悪かったのだろうか。

ゲームとはいえ、力に驕っていたのかもしれない。

 

勝利を確約すると名高かった彼らのプライドを傷つけてしまったのかもしれない。

 

もしかしたら、彼らはまだここがゲームの中だと思っているのかもしれない。

 

一撃で一体出現用レイドボスのHPさえ大幅に減らす彼らの圧倒的な高火力「大災厄」は、たった一人になった自分には荷が勝ちすぎたということだ。

 

「ワールドディザスター」の職業は、その職業を修めている者を殺すことで会得する。

 

だから最悪、どんな手段であれ相手を殺すことさえできれば、どんな種族でも職業でも会得することが可能ということだ。

 

だが、それでも大量のMPを消費する関係上、魔法職に重きをおいたビルド構成になる。

 

しかし「それだけ」とも言える。

 

「ワールドディザスター」の職業取得に対象プレイヤーの殺し方の指定は無いのだから。

 

 

 

「ワールドディザスター」の職業を限界まで極めれば、ユグドラシル最大火力とも言える「大災厄」を得ることができるのだ。

 

100レベルであろうと、即死か瀕死は免れない高火力。

 

それが八人もいれば、この世界で最強を誇れるだろう。

 

「大災厄」は超位魔法を越える火力を持ちながら、超位魔法ほどの長い発動時間も無い。

最大MPの60%という消費から一度の戦闘で一人一回が限度だが、広範囲でもあるために、複数を巻き込んでの殲滅が可能だ。

しかも二人いれば、大抵の敵は殴殺できるだろう。

 

だからこそ、叶うなら人間の味方をしてほしかった。

 

どれほどに「同族」と思えなくなろうとも、やはり感情移入してしまうのは人間なのだ。

 

異形種や亜人種になろうと、自分たちの「人間だった記憶」は、どうしても自分たちの行動のもととなるのだから。

 

 

 

 

◆◆◆8人で争った中の一人◆◆◆

 

失敗した。

 

そう思わずにはいられない。

 

どれほど力があろうとも、やはり自分たちは「人間の感性」を失えなかったのだ。

 

異形の種族を同族とは思えない。

美醜の理解どころか、表情さえ碌に読みとれない。

 

やはり「美しい」とか「可愛い」と感じるのは、「人間種」に対してなのだ。

 

だから種族変更をしようとしたが、残念ながら人数分の種族変更アイテムは無く、さらには望んだ種族へのアイテムとなるとさらに限られてしまう。

 

となれば話し合いで解決しないならば、力ずくの奪い合いとなるのは必然だ。

 

世界を席巻した「ワールドディザスター」の職業を失うとしても、種族変更を望んでしまったのだ。

 

種族を変えるという行為は、「ユグドラシル」というゲームの中であっても安易に選べない難関だ。

 

自分に合った職業を選んだり適合した武器を作るには何度も実験を繰り返す必要があり、それは死亡を繰り返すことと同義となるからだ。

 

種族変更はそれらの努力を全て消して、一からやり直すこととなる。

 

職業に有利な種族や、カルマ値に影響を受ける魔法やスキルもある。

 

それら全てをリセットするのだ。

 

人生のやり直しと言っても過言ではないはずだ。

 

それでもギルド拠点のNPCたちは、姿や種族が変わっても自分たちを主人と仰ぎ尽くしてくれる。

 

これがなかったら、魔神と呼ばれたNPCたちの討伐の際、ギルド拠点からアイテムや装備を持ち出すこともかなわなかっただろう。

 

NPCたちはよくあるギルドの例にもれずあまり強くないが、装備だけは良い物を与えてある。

 

なにしろ種族変更に伴い職業構成も変わってしまったために、以前の主装備を使えなくなったからだ。

 

転移してから300年、ギルド拠点の維持には金がかかる。

使えない武器を持ち歩いてアイテムボックスを圧迫するより、金目の物を採集するためにスペースを空けておいた方が効率が良い。

 

ギルド拠点といえば、どうして今頃になってNPCらしき存在が魔神なんて総称で暴れ回り始めたのだろうか。

 

プレイヤーのいないギルド拠点でも転移してきて、NPCたちが暴走しているのか。

あるいは、ギルド拠点を攻略すると、拠点は攻略者の物になるが、配置されたNPCは攻略者に敵対するから、誰かがギルド拠点を攻略したのか。

または、ギルド武器を破壊して拠点が消失したことで、NPCが残ったのか。

それとも、ギルド武器を盗まれでもして、NPCが犯人捜しついでの破壊工作をしているのか。

 

この異世界ではNPCは独立した思考を持つから、ある意味「ユグドラシル」の常識は当てにできないのが面倒だ。

 

そもそもNPCがギルド拠点から出られるなんて、最初は考えもしなかったことが懐かしいほどだ。

 

だから、こんな風に魔神(NPC)が暴れ回ったりしなければ、自分だって「魔神討伐の集団」の中に身を置くなんてことをしなくて済んだ。

 

 

返す返すも失敗した。

 

まさか魔神討伐のパーティーの中に、竜王が紛れ込んでいたなんて気付かなかった。

 

自分(八欲王)を殺そうとするのは理解できるが、なぜリーダー(プレイヤー)まで殺そうとするのか。

 

まさか「疑わしきは罰せよ」というタイプなのだろうか。

 

もしかしたら、自分たち(プレイヤー同士)が殺し合ったことになるのだろうか。

 

歴史は強者(生き残り)によって語られる。

 

これからこの異世界へ来るプレイヤーに正しい情報が伝わるかはわからないが、上手くやってほしいものだ。

 

異世界とは世界が異なるだけで、そこに住む存在の思惑が入り乱れるということは変わらないのだから。

 

誰だって自分が正しいと思うことがあれば、それに沿った行動をする。

 

鼠を可愛がっていれば、猫を駆逐しようとするかもしれない。

病気が蔓延すれば、それが数減らしの自然淘汰だとしても、克服しようとするだろう。

 

誰だって自分に都合が良い世界が欲しい。

 

ぶつかるのは善悪ではなく利害なのだから。

 

この世界で「人間を存続させる」ことは、自然に逆らう行為だ。

 

プレイヤーやユグドラシルの力を使っても、大陸の中央に人間の国が存在しないことがその証左だ。

 

きっと色々な問題に直面するだろう。

 

プレイヤーであっても、殺されることはあるのだから。

 




一応、八欲王はギルド拠点が明確に残っているようなので、他にも生き残りがいそうだと思っています。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

一応の理由

6人のワールドチャンピオン

◆WEB「設定」で、「ワールドチャンピオンだけでギルドを作らないかという話が出たとき3人の反対があって頓挫した」とある。
◆6人のワールドチャンピオンの「ドリームチーム」が、傭兵ギルドを壊滅させたとある。

6人ではギルドの定員に足りなかったのかも、と想像。
6人でチームを作るくらいに仲が良かったのなら、最終日にも集まるかもと予想。


十三英雄の中に八欲王

◆フールーダが「十三英雄のみが幾つか持ち出すことを許された」と回想している。

デケムの父親が八欲王なら、十三英雄として浮遊都市から自分のアイテムだから持ち出せたという理由になるかもしれないと想像。



ギルド拠点NPCのレベル

◆イビルアイが守護者最弱のデミウルゴスを「魔神より強い」「魔神王とでもいうつもりか」などと表現している。

魔神(NPC)に100レベルはいないのかも。

◆フールーダが「桁の違う魔法の武具を装着した」と回想している。

桁の違う強さは持っていないのではないか。

◆ネイアが「難度100が人間が倒せる限界」と習っている。
◆デスナイト推定難度100、ソウルイーター推定難度100から150。

NPCは30レベル以上で、そんなに強くないのでは。

◆イビルアイが「種族の垣根を越えた戦い」と言っている。

多数の国が被害を受けるほど、魔神(NPC)の数が多かったのでは。
メイドNPCではないけれど、1レベルのNPCで侵入者のアイテムを一つ削れるなら効率が良いと考えたり、一人で何体もNPCを作りたいギルドメンバーもいたかも。

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