短編小説   作:重複

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竜王国 女王の憂鬱

竜王国、その頂点たる女王ドラウディロン・オーリウクルス。

 

彼女は滅ぼされてしまったリ・エスティーゼ王国を思った。

 

「仕方のないことなのだろうな」

 

実のところ、どうして王国が滅ぼされたのか、ドラウディロンにはわからない。

 

いや、そもそも何故王国が魔導国の旗を掲げた隊商を襲うなどという、魔導国に宣戦布告ととられても仕方のないような暴挙を行ったのかが謎だ。

 

王国はすでに一度帝国と同盟を組んだ魔導国に敗北している。

 

しかもほぼ一方的な大敗だったはずだ。

 

だというのに襲った集団は、野盗などの賊でもなく、生活に困窮した平民たちでもなく、他領の領主が率いる武装集団だったという、耳を疑う事態なのだ。

 

もはや、王国は魔導国に宣戦布告をさせたかったのではないかと疑うような行為だ。

 

王国には魔導国に勝つ秘策があったとでもいうのだろうか。

 

それこそ、自分(ドラウディロン)のような生まれながらの異能(タレント)のような切り札があったのか。

 

あるいは新たに手に入れたか、はたまた誰かに提示(唆)されたのか。

 

 

 

 

だが、自らの生まれながらの異能(タレント)の発動条件を思えば、おそらく王国の民のほとんどを生かしておくことのできない「何か」があったのだろうと推察できる。

 

ドラゴンひいては竜王と呼ばれる存在は傲慢だ。

 

いや、ある意味では人間的と言うべきか。

 

人間が蟻などの虫を踏みつぶしても罪悪感など感じないように、彼らは人間が死んでもなんら痛痒も感じることはない。

 

他種族への関心の低さは折り紙付きである。

 

曾祖父にあたる竜王が自分と話したのも、自分(ドラウディロン)が「始原の魔法」を使えるからであって、それ以上の感情はないのだろう。

 

でなければ、この国がビーストマンに蹂躙されていることに何も行動を起こさないはずがない。

 

もともとドラゴンという種族には家族愛など無いに等しいらしい。

 

子供を作るのは子孫を残すためであって、愛情を注いで育てるためではない。

 

それどころか、縄張りが重なれば自分の親兄弟子供であろうとも排除するのが普通だ。

 

さらに言えば曾祖父である竜王が人間と子をなしたのは、人間に肩入れするためではなく、自分たちの手札を増やすためだろう。

ならば、曾祖父が人間以外の他の種族との間に子を作っていないという保証も無い。

 

 

そんな存在がリ・エスティーゼ王国のそばにいる。

 

「白金の竜王」がどんな存在であり、どのような考えで行動する存在かは知らないが、国を統べる立場であるなら魔導国に対して良い感情は持っていないだろう。

 

 

無論、これは「もし」の話だ。

 

自分にそれを確認する方法など無い。

 

だが「もし」自分と同じような生まれながらの異能(タレント)や、そういった性能を持つアイテム、さらにはそんな「始原の魔法」を有する「真なる竜王」が存在していたとしたら。

 

そして、そんな力を王国が魔導国に対して使用する可能性があったなら。

 

魔導国は王国を滅ぼさざるを得ないだろう。

 

白金の竜王のような「始原の魔法」を行使しようとするなら、自分のような他人の魂を犠牲(生け贄)にする魔法なら、自分では百万は必要だ。

 

相手が強大な魔導国であるなら、一撃では足りないだろう。

その度毎に魂が磨り潰されて消費されていくのだ。

 

「接続した魂」

 

つまりは自分と何らかの契約や制約などの繋がりがある存在。

基本的に生け贄とはそれを望む者の物であることが必要だ。

 

そうでなければ、自分とて「始原の魔法」を使うことをここまで渋りはしない。

 

正しくこれは「最後の手段」なのだ。

 

そして、そんな制限でもなければ、この世界はこのような異能を持つ(他者を犠牲にする)者の天下だっただろう。

 

 

 

そして、もし魔導国がそんな可能性を知ったなら、王国は滅ぼされる以外の道は無い。

 

自分のように他人の魂を使うことで使用可能ならば、使われれば王国の民は死に絶え、その標的となった魔導国も同様に死に絶えるだろう。

 

使用されることでどちらも死滅するしか無いなら、魔導国からすれば王国の民に死んでもらうしか方法がない。

 

なにしろ他国への支援物資、しかも国の旗を掲げての隊商を「通行を許可している国」の貴族が襲うような国なのだ。

貴族以外の民など、あっさりと消耗品のように使い潰す判断をするかもしれない。

 

国王がその判断をしなくても、どこかの貴族がその手段を使うかもしれない。

 

そうなれば魔導国にできる対抗手段は王国の民をできるだけ秘密裏に削り潰して「使用不可能」にするだけだ。

 

 

こんな風に考えてしまうのは、王国への魔導国の対応があまりにも他国と乖離しているからだ。

 

そもそも王国が魔導国に負けたのは先の通り初めてでは無い。

 

その最初の戦いの際には三国の要所とはいえ、都市一つで手を打っているのだ。

 

その戦後の対応からすれば、今回の魔導国の対応は苛烈に過ぎる。

 

だからこそ、魔導国の対応に理由を求めてしまうのだろう。

 

そしてもし自分が考えたような事情があったとしたならば、魔導国はそれを公表することはできないだろう。

 

そんな魔法や手段があると公言すれば、今後の戦争どころか小さな諍いであっても相手を生かしておく訳にはいかなくなる可能性が出てくる。

 

最悪、戦争とは軍と軍の戦いではなく、お互いの民の殲滅戦となりかねないのだから。

 

そして自分(ドラウディロン)も、そんな手段(異能)を有していると知られれば、他国どころか自国の民からも疎まれ命を狙われかねない危険がある。

 

国のために死ぬなど御免だ、この国から逃げてでも生き延びたい、と考える者は必ずいるだろう。

 

その時に、自分が竜王国の民であるが故に「接続された魂(使用可能な生け贄)」になると知ったとき、大元の自分を何とかしようとする可能性は0では無いのだ。

 

だからこそ、自分は腹心とも言える宰相にすら、自らの始原の魔法の詳細を話してはいない。

 

 

 

所詮、妄想だ。

 

既に王国は滅んでしまった。

 

残った国は王国を他山の石として、これからの参考にするべきだろう。

 

なにしろ王国は魔導国へ「逆らったから」滅ぼされたのではない。

 

基本、魔導国は他国へ要求も強制もせず、むしろ他国へ積極的に支援、救助を行っているのだ。

 

そんな友好的な国へ略奪などという蛮行を行えばどうなるか、という見本となったのだ。

 

結局、近隣のほとんどの国は王国を見限った。

 

これから魔導国と戦争をする国など現れるのだろうか。

 

 

もし現れるとしたら、国ではなく魔導国に対して恨みなどを持つ個人か集団。

 

国として戦うには、あまりにも被害が大き過ぎる。

 

あるいは、王国のように魔導国にとって許容できない「何か」がある国だろうか。

 

 

とりあえずは、自国が魔導国に目を付けられないように、注意すべきだろう。

 

やっと復興の目途が立ったのだ。

 

騒動はごめんだ。

 




「接続された魂」
原作9巻 幕間より



「自分にできることは他の者にもできるかもしれない」

そうドラウディロンが考えれば、こんなことを考えるかもしれないという妄想です。

彼女の力自体、「白金の竜王の真似事」というような考え方だったので、自分と同じ様な「始原の魔法」持ちか「生まれながらの異能(タレント)」持ちがいる可能性を考えるかもしれない、というもしもです。

原作中では、七彩の竜王が「人間と子供を作った」とはあっても「他の種族で作っていない」とは書かれていないので、いないとは限らないとも思っています。

それに「亡国」では悟がプレイヤーと知ると問答無用で攻撃を仕掛けてきたらしいので、プレイヤーに対して温厚でもなく、プレイヤーを殺す為なら手段も選ばないかもしれません。

なにしろケイテニアス山の頂にいた竜王は、プレイヤーに対抗するための手段として周辺国を滅ぼしています。

作中で悟が調べさせた描写として確か3。キーノの国を入れれば4。

国の住民だけでなく、家畜から野生動物まで全て。

まだ調べていないという国を含めれば、10以上かもしれません。

この世界、容赦がないなと思いました。
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