短編小説   作:重複

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WEBの話。
パレードの最中に…




デスナイト 帰る・1

華やかなパレードが続く。

そんな中にあって、異様な静けさに包まれた中を、上の開いた馬車に続く百名ほどの黒い鎧を纏った集団。

 

暴力的な棘の突き出た、磨き抜かれた黒い鎧。

顔を隠す仮面。

質の良さそうなマント。

見事な鞘に収まった状態でありながらも、力を感じさせる魔法の剣。

 

一対一で向き合えば恐ろしさに体が竦んでしまうだろう存在だが、多くの人の中、華やかなパレードという状態、浮かれた雰囲気という多少浮ついた気分がそうさせたのか、あるいは単なる事故か。

 

つんと、マントが何かに引かれる。

 

デスナイト。

その正体はアンデッドであり、本来なら生者を憎む存在である。

 

しかし、このパレードに参加しているデスナイトはオーバーロードたるアインズが、上位アンデッド作成によって生み出した存在である。

その知能はけして低いものではなく、更にアインズの従者として自らに課されたものを理解してもいる。

 

現在の状態として、正しい行動は何か。

マントが何かに引っかかったとしても、このパレードの為に用意されたマントの強度はそこらの豪華なだけの布地のような脆弱さはない。

このまま引いても問題はないだろう。

しかしそれはデスナイトの都合だ。

マントに引っかかった存在。

それが帝都に住むものの所有物、つまり何らかの財産であった場合、それらを破損させる事は現在パレードの主役たる主人の評判を貶めるきっかけになりはしないだろうか。

主人より与えられた今回の使命は、主人の武威をこの帝都に住む者達に示すことだ。

それは悪名ではない。

 

故にデスナイトは立ち止まり、自らのマントに引っかかった「もの」を確認する為に振り返る。

 

マントに引っかかった「もの」。

それは「物」ではなく「者」だった。

まだ幼い、という言葉も追いつかないような赤子とも幼児とも言えそうな人間の子供だった。

 

立ち止まったデスナイトに気付いた、パレードの進行の警備をしていた軽装の鎧を着た者が慌てて近づいてくる。

幼子を抱き上げ、しっかりとマントを掴んだ手を放させようとしている。

しかしデスナイトに怯えた為か、知らない大人に抱き上げられた為か、その手はなかなか離れようとしない。

そして通りの奥から女の悲鳴が上がる。

抱き上げられた為に、子供の姿が見えたのか、母親らしき女性が人混みをかき分け近づこうとしている。

だが、密集した人垣を前に中中進めないでいる。

おそらく、子供は人々の足元をぬってパレードの傍まで這いだしてきたのだろう。

 

なかなか近づけない女とマントを放そうとしない子供に、警備の者の苛立った気配が強くなる。

子供をきちんと管理出来ない母親と、警備の目をかいくぐってデスナイトを足止めした子供に気が立っているのだろう。

更にデスナイトに怯え、デスナイトの、ひいては辺境候の不興を買う事をおそれているという事もあるのだが。

 

デスナイトは警備の者から子供をすくいあげると、その長身を生かして人々の上から女に向けて差し出す。

自分の知る女が間近になった事でか、子供がマントを手放し女へと両手を伸ばす。

子供をほぼ頭上で受け取った母親とおぼしき女は、しっかりと抱きかかえると頭を下げて人混みに消えて行く。

「ちゃんと面倒をみていろ!」

警備の者の声がその後を追う。

そして、警備の者はデスナイトに向かい合うと深々と頭を下げた。

「警備が行き届かず、ご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ありません」

ここで辺境候の配下の不興を買い、何かしらの処分を怖れるが故の態度だ。

 

言葉を話す事の出来ないデスナイトに「告げ口」という行為は出来ないのだが。

 

デスナイトは軽く手を振り問題ない事を伝えると、パレードの進む方向を眺める。

辺境候の一団は随分と先へ進んでしまっている。

かといって走って追いかけるという手段は選べない。

他の進行者の迷惑であろうし、更に辺境候の配下として見目の良い行動ではないだろう。

 

自らを生み出した、アインズ・ウール・ゴウンの名を僅かなりと傷つける行動は避けなければならない。

現状として出来るのは、他のパレードの参加者の邪魔にならないように目的地まで大人しく進行することだろう。

慌ただしく駆け回るような無様な姿、他の参加者を蔑ろにするような行為は好ましいものではないと判断する。

 

そして、デスナイトは歩き出す。

 

この後の、面倒事など予想出来るはずもないまま。

 

 

 

 

 

デスナイトが主人に追いつく事は出来なかった。

 

パレードに参加した者全てを帝城に収容することは、人数の問題以上に警備の問題で出来ない。

よって、それぞれの貴族の管理する地区に振り分けられる。

しかし、まだ帝都に拠点の無いアインズは自らも含めたパレードに参加したものたちと、ナザリックへとさっさと帰還してしまったのだ。

他の貴族とさして面識が無い事や、ぼろが出るのを怖れたなど理由は様々だが、最大の理由がパレードで衆目に晒されたのが恥ずかしかったというのは間違いがないのだが。

 

結果、デスナイトは帝城に一人佇んでいる状態となっている。

 

「迷子」では無い。

断じて無い。

 

なぜなら、デスナイトは自らの召喚者と確かな繋がりがあり、主人が何処にいるのか把握している。

更に主人からの命令は距離に関わらず、受け取る事が可能だ。

故にデスナイトは「迷子」では無い。

 

 

 

ただの「おいてきぼり」だ。




あんなにたくさんいたら、一体くらいはぐれても分からないよね。
と考えていました。

書籍でも多すぎて把握しきれないと十一巻にあったので、ならいいかな、と。
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