インフィニット・ストラトス 慟哭の白銀少女 作:アブソリュート
今回は疑問になっている部分がわかるものがいくつかわかると思いますので
どうぞ楽しんでください!
「はあ、はあ……」
私、六条エリスは姉の織斑千冬と一緒に剣の鍛練をしていた。朝4時から現在の時刻6時になろうとしていたところまでやっていた。
本来こんな時間から道場を借りることなどできないのだが姉の権限により使わせてもらっている。剣道といえば防具を着けてやるのが一般的だろう。普通防具を着けずにやれば怪我をする可能性が出てくるからだ。まして普通の人なら防具を着けずにするなどしないだろう。
だが、今行われている鍛練は剣道とかけ離れているものだった。両者共々防具を身に纏わずこれから通うところの格好をしている。何故、ジャージや体操着でやらなかというと姉曰く普段着で対処が出来ないようでは強くは成れないということらしいが真実は定かではない。
制服とは元々勉強に相応しい格好で挑むものとして作られている。なので運動するのには適していない服装だ。それにも関わらずにもだ。動きにくくて仕方がない。
防具を身に着けずやるのには理由がある。まず私達がやっているものは『剣道』ではない。『剣術』であるからだ。剣道とは活人剣だ。これは多くの意味があるが大抵は己の心を強くする意味合いが大きい。
だが、私達がやっているものはそんな生温いものではない。お互いどちらかが死ぬか生きるかそんなことをしている。しかし、そうは言っても本当に殺し合うわけではない。それはお互い理解している。あくまでも実戦に近いことを行っていた。
「どうしたエリス?貴様はこの程度なのか?」
「はぁ、はぁ……ま、まだ、やれる」
震える体に叱咤をおくり足を立たせようと力を入れるが上手く入らない。そんな光景を見ていた姉は私の足に追い打ちをかけんばかりか蹴りを放つ。
ドコンッ!!
「くうっ!」
「口は正直じゃないが体は正直者だな」
「あ、くう……!」
姉は今度は腹に目掛けて蹴りを放つ。それをまともに食らった私は道場の床にひれ伏す形になる。
「どうした、早く立て。もしこれが私ではなかったらお前は殺されているぞ」
「ぐうっ……ううっ!」
床に転がっている竹刀に手を伸ばしたところを姉の足によって妨げられる。ぎりぎりと徐々に力が入れられ痛みが襲うが必死に耐える。
「あっ、があっ……!」
「お前が憎んでいる相手は2000発以上のミサイルを撃ち落とし戦車や戦闘機相手に無傷で勝ったやつだぞ。しかも誰も殺さずにな」
姉の足の力が増す。上から私を見下ろしながら挑発をしてくる。
―――そうだ。私は誓ったじゃないか。アイツをこの手で殺すと。
「―――オオ」
―――忘れるな。
「―――オオ、オオオオ」
―――あの時に味わった想いを。
「オオオオオオオオオォォォォォォォォォ!!!!」
叫べ、吠えろ!私はどんなことがあってもアイツを殺すと家族に誓ったではないか!
肉体はメキメキと音を鳴らし骨が軋む。踏まれていた足を振り払い立ち上がる。
「はぁ、はぁ……があっ!!」
立ち上がったものは良いが体が思うように動かずにいた。すると姉が私に声をかける。
「……今日は終わりだ」
「なっ、私はまだ―――」
「ここは学校だぞ。私達はそれぞれやることがあるだろう?」
「くっ……!」
ここで終わらせられたことに不満に思いながらも姉の言っていることが正しいため反論できずにいた。今日も勝てなかったことが悔しく唇を噛み締める。
「わかったか?ならいい。いつものやるぞ」
「……はい」
私は制服を脱ぎ姉の前に身体の傷を見せる。すると姉は愛用の応急セットで傷の手当てをしていく。腫れている部分にはコールドスプレーを使って冷やし擦りむけている傷には消毒液を塗ったあとガーゼをのせテープで固定する。
「―――っ!!」
「すまん。痛かったか?」
「ん……平気」
姉は普段横暴かつ暴言などを吐いてばかりだが根は優しいのだ。鍛練もそうだがあんな雰囲気だが終わった後は必ずのように手当てをしてくれる。
「……………」
「……………」
お互い無言で道場には外の鳥の鳴き声しか聞こえない。だが、そんな空間がいやではないと思っている私だった。
「……お前は」
「……姉さん?」
姉さんは何かを言おうとするが途中で口を閉ざす。何を言っているのか聞こえなかった私は姉さんに聞き返すがなんでもないと言って応急セットを片付けだす。
「さて、これから私は食堂に行くとしよう。……エリスはどうする?」
「うーん……。私は教室で寝ようかな」
「はぁ……。また朝食べないのか?」
「だって……」
あんまりお腹が空いてなんだもん。兄さんは朝食べろって言ってくるけど鍛練した後にご飯ってちょっと……。それに空腹の方が眼が覚めていいから。
「……まあ倒れるようなことがなければ一向に構わんがな」
「じゃあ、行こ?」
「ああ、そうだな」
そして私達はそれぞれ向かうべき場所へと向かいだすのであった。
「全く……なんだっていうんだ?」
朝起きたらすでにエリスはいなかったし、箒を誘って食事していたところに三人の女子が来てから箒は不機嫌になるし……訳がわからん。ちなみに千冬姉が寮長だって知ったのが三人の内一人が言っていたからだ。あれはびっくりしたな。
「千冬姉が寮長か……」
もはや寮じゃなくて監獄の間違いじゃ……おっと、これ以上考えているとまた怒られるな。
「ん……?」
そんなことを考えてながら歩いていると目的の教室にたどり着く。教室のなかに入るとエリスが机の上ですやすやと眠っている。
「すぅ……すぅ……」
「……よっぽど昨日の疲れが残っているんだな」
昔からそうだがエリスは必ずのように寝ている気がする。いつも朝一緒に行こうとしてもすでにいないことが多々あった。でも、学校に行くとこうして寝ているのだ。嫌われているのかと思ったこともあるがそうではないらしい。
詳しい理由は聞かされていない。だけどエリスにはエリスなりに何かあるんだろうと思いそのことにはあまり追及しなかった。
「……こうして見ると可愛いな」
確かにいつも可愛いけど寝顔はまた別だと思う。無垢な子どものように無防備な姿はなかなか良いと俺は思う。まあ、言ったら何か言われるのは目に見えているから言わないが。
「おっと、そろそろ時間だ」
授業の始まりのチャイムが鳴る。するとそれと同時に山田先生と千冬姉がやってくる。
「では、これより授業を開始する」
千冬姉が授業の号令をかける。するとクラスが一気に静かになる。
来週には俺とセシリアの試合がある。少しでも多くISの操縦について知らないといけない。
(まあ頑張って勉強すればなんとかなるだろう)
―――結論から言おう。なんともなりそうにない。二時間目が終わった時点で、俺は早くもグロッキーだった。
(……やばいな)
昨日はエリスのカンニングペーパーでなんとか凌いだが今日は予習をしてないうえにエリスから紙を貰っていないので全くついていけない。
「すぅ……すぅ……」
……まだ寝てんのかよ。起きた方が良いと思うぞ。
「……………」
千冬姉はエリスを見ながら指をポキポキと鳴らしている。横で授業をしている山田先生は音が鳴る度にビクビクしている。頼むから起きてくれ。でないと俺まで被害が来るんだが……。
「と、というわけで、ISは宇宙での作業を想定して作られているので、操縦者の全身を特殊なエネルギーバリアーで、つ、包んでいます。ま、また、生体機能も補助する役割があり、ISに操縦者の肉体を安定した状態へと保ちます。これには心拍数、脈拍、呼吸量、発汗量 、脳内エンドルフィンなどがあげられ――」
「先生、それって大丈夫なんですか?なんか、体のなかをいじられてるみたいでちょっと……」
クラスメイトの一人がやや不安げな面持ちで尋ねる。確かに、今の話を聞けば普通思うよな。山田先生はうーんと唸り声を上げる。すると何か思い付いた顔をする。
「そんなに難しく考えることはありませんよ。そうですね、例えばみなさんはブラジャーをしていますよね。あれはサポートこそすれ、それで人体に悪影響が出るということはないわけです。もちろん、自分にあったサイズのものを選ばないと、形崩れしてしまいますが―――」
ふと、俺と目が合う。そこで一回きょとんとした山田先生は、数秒置いてからボッと赤くなった。
「え、えっと、いや、その、お、織斑くんはしていませんよね。わ、わからないですね、この例え。あは、あははは……」
その山田先生のごまかし笑いはなんとなく教室中に微妙な雰囲気を漂わせた。俺よりもむしろ女子が意識しているみたいで、腕組みをするフリで胸を隠そうとしていた。
ちなみに今更女子の下着を見て騒いだりしない。昔から千冬姉やエリスの下着を洗濯してきたのだ。でも千冬姉と違ってエリスは自分の下着は自分で洗濯すると言ってやってたな。それに比べて千冬姉は……。
すこーんっ!!
「お前は本当に学習能力がないな」
……なんでバレるんだ?
「一度自分の顔を見てみろ。よくわかるぞ」
失礼な。毎朝顔を洗うとき鏡で見ているさ。特におかしいところはなかったんだけどな。
「ええと……授業を続けてもいいでしょうか?」
「むっ、すまない。続けてくれ」
千冬姉がそう言うと山田先生ははいと返事を返し授業を再開する。
「そ、それともう一つ大事なことは、ISにも意識に似たようなものがあり、お互いの対話―――つ、つまり一緒に過ごした時間でわかり合うというか、ええと、操縦時間に比例して、IS側も操縦者の特性を理解しようとします」
へぇ……。そんなこんなが出来るなんてな。すごいな。
「それによって相互的に理解し、より性能を引き出せることになるわけです。ISは道具ではなく、あくまでパートナーとして認識してください」
すかさず、女子が挙手をする。
「先生ー、それって彼氏彼女のような感じですかー?」
「そ、それはですね……。うぅ、私、彼氏がいなかったので……」
どよーんと暗くなる山田先生。挙手した女子はしまったという顔をしている。……おそらく今の発言は地雷のようだ。
「先生ー、ファイトです!」
「いつかできますよ!」
「そうですよ!」
「……そう思っている内に三十が過ぎ――」
「うぅ……どうせ、私なんかに、彼氏が……」
おい、最後の人。いくらなんでも可哀想だろ……。
キーンコーンカーンコーン。
「つ、次の時間では空中におけるIS基本制動をやりますからね~!」
うわーんと泣きながら真耶は教室を出ていく。千冬は溜め息をつきながら山田先生の跡を追っていくのであった。
「……………」
私は授業中ずっと寝ていようかと考えていたのだが山田先生が授業で話していたISとはパートナーという言葉を聞いて眼が覚めてしまった。表向きでは寝ているフリをしていたが実際はずっと起きていた。それに気づいていた姉さんは私に制裁を加えてこなかったのだ。
(……パートナー、か)
私は首につけている白色チョーカーを指でなぞる。そして、いつの日か姉が言っていたことを思い出す。
『いいか、よく聞け。これが今後お前のパートナーとも言えるモノだ』
『……これがIS』
手に渡された白色のチョーカー。それを見つめ思う。
(これが……私の力となるもの。そして―――)
―――家族を死なせた原因となるもの。
『……………』
『……憎いか?』
『―――ッ!!ええ、憎いわ』
こんなものに本当は頼りたくなんかない。だが、この世界ではISが一番なのだ。ただの小娘が力を得るためにはこれしか方法がないのだ。
『お前はISを憎む資格がある。だからどれだけ憎んでも私は口出しはしない。だが――』
『……だが?』
『そいつのことは何があっても信じろ。決して道具として扱うな。己の分身だと思え』
『……ISには意識みたいなものがあるから?』
『そうだ。そいつと共に過ごし、戦い、対話をしろ。何より大事なのは理解することだ』
『……そうすれば強くなれるの?』
『ああ、いつかお前の期待に応えてくれるモノになるだろう』
『――わかった。これからよろしくね――』
――『フェンリル』
コメントお待ちしておりま~す!