The music of mind for twintail .   作:紅鮭

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1960年代頃までは大きな胸はコンプレックスの対象になることがあったが、1970年代頃からは洋装が完全に定着したこともあって、大きな胸がコンプレックスになることは少なくなっている。
逆に現在では女性は貧乳に対してコンプレックスを抱くケースが増え、バストアップを努める女性か増えてきているが、バストの成長期の10代半ば、過酷な受験勉強、インスタント食品などの偏食、運動不足などのアンバランスな生活を送ると女性ホルモンの分泌が阻害されバストの成長が止まってしまうから注意が必要だ。

響輔「でも、愛香さんはそんな不健康な生活送ってないと思うよ?」



クレッシェンド/禁じられた称賛

 アルティメギルの秘密基地

 

 GW(ゴールデンウィーク)の頃、エレメリアンは侵略活動を停止していた。

 

 何故ならリヴァイアギルディとクラーケギルディの部隊が合流し、元いた部隊と統一―――よそから集まってきた者たちを交え、新たな部隊を再編成する。

 その際の地位や役割を決める時にその問題が起こったのだ。

 現在、各部隊の要人、代表者達を集結させて大会議室で熱い討論を繰り広げていた。

 その議論の論題こそ、問題の原因であった。

 

 巨乳属性(ラージバスト)貧乳属性(スモールバスト)

 

 この対極の属性ゆえに主張は平行線を辿り、対立に次ぐ対立で部隊は真っ二つに割れてしまったのだ。

 どちらが上でどちらが下なのか。

 皆、やれ自分たちが上だやれお前らが下だと互いの主張を繰り返している。

 その勢いは今や元いた部隊のメンバーをも巻き込む事態となっている。

 そのせいでこのGW期間、出撃すらままならなかったほどだ。

 

 

「お主たちもいい加減あきれ果てていよう。この世界の巨乳属性(ラージバスト)の少なさに呆れ果てているであろう!自らの身体に(やいば)を入れ、偽りの胸で満足しようとする浅はかさな女子がこの世界は多すぎる!そんな付け焼き刃だからこそ、巨乳属性(ラージバスト)が生まれぬのだ!!」

「だが貧乳属性スモールバストは違う!小さいからこそ誇りが生まれるのではないか!?」

「ならばそれはこちらも同じだ!偽りがはびこるからこそ、本物の存在とその価値が希少になる!美しくなれる! 若かりし頃にしか見せれない、一瞬の火花のような煌めきが巨乳属性(ラージバスト)にはある!」

「偽物がはびこるからこそ、荒地に咲く一輪の花のように、自然(ナチュラル)な純粋たる巨乳属性(ラージバスト)のほうが可憐に映えるのではないか!?」

 

 

 一歩も譲らぬ両者の対立。

 厳つい顔をした怪人たちが男子中学生のレベルの話題でここまで論じ合う光景を見たら、はたして侵略される側の人間はどう思うのだろうか?

 

「ここに巨乳属性(ラージバスト)の素晴らしさを示した一枚の写真がある!これを見よ!」

 

 リヴァイアギルディの部下が大型モニターに一枚の写真を写した。

 写真には登校中の女子大学生が映っていた。

 その胸元はたわわに実った乳房が淫らにある。

 

「おおっ…!」

「なんと下品な乳をしている女だ!」

 

 何人かのエレメリアンは感嘆の声を上げ、クラーケギルディの部下のひとりがヤジを飛ばした。

 

「ふん…!馬鹿の一つ覚えのようにただ胸の大きさのことで語る前に、これを見たまえ!」

 

 すると写真のある部分の拡大を行った。アップされたのは、女子学生のたすき掛けにしていた鞄のベルト部分だった。そこにはベルトがたすき掛けとなり、胸に食い込んだせいで巨乳が沈み、女子学生の胸の大きさが一層強調されている。

 

「どうだ、この食い込みは! 貧乳ではあり得ぬ谷間は! 左右に別れた乳の有り様…これぞ天地の創造、古代大陸を隔てたスーパープルームともいえる素晴らしき光景!巨乳属性(ラージバスト)は進化の証。世界開闢は巨乳属性(ラージバスト)にあるのだ!!」

「そしてこの左右の胸の美しさこそ、左右に分かれるツインテールの根源と同じではないのか!?」

 

 一気に貧乳属性(スモールバスト)を畳みかけようとする巨乳属性(ラージバスト)軍団。

 

「笑止、何が進化の証だ。くだらん」

「ならば貧乳属性(スモールバスト)は時代遅れと言いたいのか!?」

「胸にぶら下げた駄肉など年老いれば干し肉同然となるのが必定だろうに!」

 

 クラーケギルディの部下も負けじと一枚の写真をモニターに表示させた。そこには笑顔でスクール水着を纏う幼女の姿が映った。

 

「どうだこの密着具合は!?スク水との調和は!?下品な巨乳属性ラージバストには決して出来ん、貧乳属性スモールバストだからこその魅力は!?」

「貧乳だからこそ、このようにスク水が映えるのだ!スク水だけではない、メイド服、学生服…スレンダーだからこそ、貧しいからこそ、それらが美しく見えるのではないか!?」

貧乳属性(スモールバスト)こそ、幼き日を忘れぬ永遠の美学であり、幼い可愛さの象徴であるツインテールとベストマッチするのだ!」

 

 その主張は、数多の服装フェチの属性力を持つ怪人たちの目の色を変えた。

 

「貴様ぁ!そう言ってドラグギルディやタイガギルディの部隊の者をこちら側に引き込もうという魂胆か!意地汚し!誠に意地汚し!!」

「馬鹿め!貴様の頭と胸には豆腐が詰まっているのか!私はいかなる属性力も最後は貧乳属性(スモールバスト)に結実するのだと伝えたいのだ!大地が平らなのも、大空がどこまでも広がっているのも、水平線の彼方があれだけ平坦なのも、全ては平面を…すなわち貧乳を表しているからではないのか!!空を飛ぶ小鳥も死ぬときは大地へと還る――つまり貧乳とは、どんな万物すらも還す、最終地点のことを言う!!」

「そんなたわ言、このデュラハンギルディの遺作であるテイルファングの蝋人形を前にしてもほざけるのか!!」

「テイルファングこそツインテールと巨乳の象徴であり、巨乳属性(ラージバスト)の美の化身である!!」

「はん!解せんな。そんな邪教の偶像の何が良い」

「そんな置物にありがたがるくらいなら古びた埴輪の方がまだマシだ」

「誰だ!今埴輪の方がマシだといった奴ァ!!ブチ殺してやる!!」

 

 両者の怒りは遂に爆発し、一部で卓を乗り越え、武器を持ち、暴徒となり果てる者まで出始めた。

 それを皮切りに巨乳だ貧乳だと、もはやただの喧嘩となり、会議は荒れに荒れる。

 

「静まれい!!」

 

 硬質のテーブルに叩き割り、一喝するクラーケギルディ。

 途端、水を打ったように静まり返る一同、取っ組み合いをしていた者は気まずそうに離れる。

 

「このままでは拉致が明かぬ。一体何日、こうやって終わりのない言い争いをすれば気が済むのだ?昨日に至ってはエロゲのキャラを会議に持ち出して、双方醜い罵り合いをした挙句、その内の一人が男の娘キャラだったではないか!!もはや巨乳貧乳の問題ですらない、貴様らは異性の乳すら見抜けない程愚かで未熟なのか!?」

 

 クラーケギルディの触手の1本1本が怒りのあまりビンと張りつめていた。

 騎士道を重んじるクラーケギルディが感情を露わにして叫ばなければならないほど、事態は深刻だった。

 

「…このままでは侵略もままならぬぞ。やむをえんが、部隊の統一は一度白紙に戻し、個々での侵略を行うしかないな」

 

 ここでリヴァイアギルディが割って入った。

 それは云わば苦渋の決断であり、そのすることでしかこの争いを終わらせる方法が無かったのも事実である。このままではツインテイルズと戦う前に内輪もめで部隊が壊滅してしまう。だからそれを防ぐためにもこの争いを無理矢理にでも止めなければならなかった。

 断腸の思いであったが一部隊の長として、リヴァイアギルディはそれを決断はしなくてはならなかった。

 

「しかし、リヴァイアギルディ様…お言葉ですが、2つの部隊の総力を結集しなければツインテイルズを倒せません!多少時間がかかっても話し合いで解決を…」

「だが、このまま座していても事態は何も変わらぬのも事実。リヴァイアギルディ、その案を呑もう。貴様の言う通り、侵略は個々で行うものとする」

「ク、クラーケギルディ様…」

 

 クラーケギルディが部下の発言を遮り、リヴァイアギルディの意見を取り入れた。

 

「俺の腹心たるバッファローギルディがああも惨たらしくやられたのだ。ツインテイルズの実力はとうに承知済みだ。皆、足がすくんでも仕方あるまい…もっとも、あ奴があそこまで腑抜けだったことに俺は苛立ちを隠せないがな!!」

 

 辛辣にバッファローギルディを冒涜するリヴァイアギルディであったが、本心は違うということは誰もが理解している。その証拠に、彼の股間から伸びる一本の触手が悲しみに震え、濡れていた。

 普段はいがみ合うクラーケギルディもその部下も、惨殺された猛牛の戦士を思い、目を伏せた。

と、ここで――

 

「た、大変です!」

 

 会場内に一体のエレメリアンが血相を変えて駈け込んで来た。

 

「何事だ? ただ今会議中であることは承知の上で…」

「そ、それどころではないのです!!ダ、ダークグラスパー様が、近々この部隊の視察に来られるとの連絡が…!!」

「何だと!?」

 

 真っ先に反応したのはリヴァイアギルディだった。

 悲しみに暮れていた顔から戦士の顔へと戻る。そして遅れて、他の面子や部下たちも反応する。

 その反応は明らかに怯えと畏怖が混じっていた。

 

「…到着はいつになると?」

「ち、近々伺うとしか…」

「そうか」

 

 クラーケギルディは冷静に振る舞うが、それでも焦りの色は隠せなかった。

 

「ぬう…奴が来るとはな…度重なる失態についに我々も見咎められたか…」

「ええ、地獄の処刑人…噂には聞いていましたが…」

 

 リヴァイアギルディとクラーケギルディの顔に苦渋の表情が浮かぶ。

――ダークグラスパー。

 

 

 アルティメギルに所属する者ならば誰もが噂だけでも一度は聞いたことのある人物の名だ。

 

 

 部隊を持たず、アルティメギルでは異例ともいえる単独行動を認められている。

 首領の勅命を受け並行世界を渡る闇の戦士。

 その使命は組織の反逆者の処刑。

 本名は誰も知らず、いつしかその戦士を示すコードネームだけが広まっていった。

 

「通称、地獄の処刑人。ダークグラスパー…」

 

 そう呟いたクラーケギルディだが、彼はダークグラスパーという存在をその異名のような物騒な存在ではないという風に考えていた。

 アルティメギル内に処刑人などといったそんな物騒な存在があるとは思えない。

 ダークグラスパーという存在は精々、慣れあいや緩みがちな部隊の気を引き締める為の監視役な存在ではないかというのがクラーケギルディの認識であった。

 処刑人などという物騒な肩書きも云わば我々への威嚇。

 物騒な肩書きで周りが勝手に怯えてくれるのを狙ってなのだろう、きっと。

 しかし、そんな処刑人様がこちらに伺うという事実はあまりいい状況ではない。首領が地球侵略に拱いている我々のことを好ましく思っていないのは確実だ。

 

 

「…俺たちにのんびりと構えていられる時間はない、か。クラーケギルディよ、ここは我々でのみ出向き、直接ツインテイルズの手の内を見てみるか?」

「ほう? 貴様にしては良い案だなリヴァイアギルディ。小手調べという訳か…異論はない」

 

 

 巨乳と貧乳、どちらか上でどちらが下か。決着はつかずに遺恨だけが残る結果となったが、ダークグラスパーの来日を前に、いがみ合いを続けるのは得策ではないだろう。

 会議は部隊の長2人が協力して出陣する、ということで一応の解決となった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 アルティメギルは時空移動の際、移動艇を用いる。

 そして今、現在進行形で移動をしている一団がいた。

 

「なんだこの声優……棒読みにも程があるな」

 

 この一室でパソコンに向かい合ってぶつぶつと呟く一人の少女。

 パソコンに繋がれているヘッドホンからは淫らな喘ぎ声とBGMが漏れている。

 

「だけど……フヒヒ、や、やっぱりこのメーカーのエロゲは何回やってもいい…」

 

 薄笑いを浮かべながら、少女はマウスをクリックする作業に戻った。

 地獄の処刑人、ダークグラスパー。

 ただ今地球に向けて移動中である。

 

「んぐんぐんぐんぐんぐ…………ぷっはあ!グェーップ!」

 

 そのダークグラスパーのすぐ隣で2リットルのペットボトルから直接コーラを飲み干す者がいた。

 口を離して大きく息を吐き、下品にゲップをする。

 

「いやぁ、おいしいなあ、もう!くくく、やっぱおやつはいただきものに限るなぁ~」

 

 手の甲で満足気に口を拭うと空のペットボトルをダークグラスパーの手の届く台の上にトンと静かに置いた。

 

「お!こんなところにまだエクレアとプリンが」

 

 その者は無遠慮に冷蔵庫を開けるとまだ隠してあったおやつに手を伸ばす。

 

「いただくわね、グ~ラちゃん♡」

 

 その者はダークグラスパーに声をかけると返事を聞く間もなく、エクレアをパクパクと平らげるとプリンを容器ごとバリバリと食べて颯爽と部屋を出ていった。

 

「あれぇ!?コーラがもうない!!?」

 

 ダークグラスパーがコーラを継ぎ足そうとペットボトル持ち上げ、そんな素っ頓狂な声を上げた。

 

「エクレアもプリンもなくなっている」

 

 もしやと思い冷蔵庫の中を確認すると自分の秘蔵おやつがいつの間にか消えていたのだ。

 

「どういう事?」

 

 ダークグラスパーは気のせいかと思った。

 この部屋には自分と1台のロボしか入ってこない。

 エレメリアンの可能性を考慮したが、その考えはすぐに消えた。精神生命体であるエレメリアンは摂食しない。一体、どこへ消えたのか?まるで狐につままれたような感覚をダークグラスパーは覚えた。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 長かった連休もようやく終わり、いつも通りの生活が戻ってきた。

総二家の地下室では愛香にとって、待ちに待った瞬間が訪れていた。

 

「ついに…ついに完成したんですね、巨乳ブレスが!」

「テイルブレスだ愛香」

 

 総二が冷静な訂正を入れるが、愛香には目の前に置かれている新たなテイルブレスにしか眼中になく、総二の声は届かなかった。

 

「さあ愛香さん。どうぞ、これが第3のテイルブレスです!」

 

 愛香は嬉々として自分の腕にある青色のブレスを外し、真新しい、黄色のブレスをつけた。

 

「変身の方法は前使っていたブレスと同じですから安心してください」

「分かったわ…いくわよ!」

「あ、ああ…」

「あたしは巨乳に変わるわよ!」

「わかったよ!」

 

 ちょっとくどかったが総二はこんなにはしゃいでいる愛香の姿を見るのは久しぶりだったが、それと同時に嫌な予感が胸を走った。『可能性に殺される』…嫌な言葉が頭に浮かぶ。

 

「テイルオンッ!!」

 

 力強く発したその言葉に反応して、愛香の体はを光で包まれ―――なかった。

 

「あれ…?」

 

 当の愛香は目をしばたたかせている。その反応を見ると、ますます嫌な予感が広がる。

 

「テ、テイルオン!テイルオン!」

 

 愛香は何度も変身する時と同じように叫ぶがブレスはうんともすんとも言わない。

 失敗しているというより、ブレスその物が反応していないみたいだった。

 

「どうなっているの!!これ!!何で変身できないの!?トゥアール……このギア失敗作じゃないの!?」

 

 遂に愛香は癇癪を起こし、腕のブレスを振ったり壁に叩きつけたりしたが無論反応はなし。

 製作者の前でよくもまああんな乱暴に…と、総二は内心漏らす。

 

「いえ、そんなはずはありません。変身はできるはずです!」

「じゃあ何でできないのよぉ…!!」

 

 巨乳になれると希望を抱いていた愛香。

 その希望が理不尽にも奪われてしまい、落ち込んだ愛香は泣きながら蹲った。

 まさしく愛香は『可能性に殺された』のだ。

 …ああ、とうとう、とうとう恐れていたことが起こってしまった。

 愛香が落ち着きを取り戻し、この製作期間中目の前の憎き敵にやられてきた屈辱の数々を思い出した時、ここは凄惨な殺戮現場に変わる。

 総二は常人の0.7倍くらい詰まっている自分の脳味噌をフル回転させ、愛香が心の底から納得できる理由を早急に弁護する。

 

「なあ…トゥアール。もしかして、最初に使ったブレス以外は使えないってオチじゃないよな?」

「いえ、それはありえませんよ!確かに敵に奪われて悪用されないようにセーフティは組み込んであります。が、そもそもテイルギアは世界最高峰クラスのツインテール属性がなければ使えない装備なんです。本人以外使えなくするような機能はつけていませんよ」

「それ本当なんでしょうねぇトゥアール!?もし嘘だったら…!」

 

 愛香の眼が蛇のように下から睨み上げてくる。

 

「私がこの状況で嘘を言うと思いますか!?そんなことしたら私、愛香さんに殺されちゃいますよ!」

 

 至極もっともである。

 

「あ、そうだ。総二様も使ってみますか?巨乳ブレス」

 

 もうその呼び名で定着しているのな。

 総二は少しだけ迷い、自分の右腕にある、真紅に輝くブレスをしばらく見つめる。

 

「俺は…いいや。こいつでいい」

 

 総二はトゥアールに自分のブレスを見せる。総二は愛香が何故変身できない理由に思い当たった気がした。

 

「…いいんですか?」

「ああ。俺のブレスは、最初からこれだからさ。今更替えるなんてできないよ」

 

 総二の脳裏には幾度となく助けてくれた、あの憧れのの女性の姿がよぎった。

 そして彼女の腰からセコンドみたいにアドバイスし、時にはその周りを飛び回り、冗談をかましたりするコウモリ。

 そしてこれはそんな彼女の隣で初めてテイルレッドとして戦った証となるブレス。

 

「愛香、お前が変身できない理由がなんとなく分かる気がする」

「え?」

「お前はさ、きっと無意識の内に新しいギアじゃなくて、テイルブルーのギアじゃなきゃ駄目だって思っているんだよ。だから、その新しいギアを使えないんじゃないか?」

 

 このひと月、数々の戦いの中で総二と愛香はこのブレスと共に戦い、その中で総二の中には不思議な愛着を抱いていた。

 いまさら手放そうだなんて考えたこともない。

 

「――相棒だ。こいつの代わりはないし、ただの変身道具でもない。テイルファングといつもベルトにぶら下がっているキバットの仲みたいに、そう感じる何かがあったんだ。そしてそれはきっと愛香も同じなんじゃないか?」

 

 

 例え、憎き敵(トゥアール)が開発したブレスでも、総二たちはそれでここまで戦って来れた。

 世界を守りたい、そうトゥアールの一途な思いが赤と青色のギアには備わっていると総二は伝えた。

 

 

「だからさ、そのブレスは本当に託すべき人物に使わせるべきなんじゃないかって思うんだ」

「総二様…でも愛香さんは、それを使わないと巨乳になれないんですよ…?」

 

 すると愛香は納得したのか、涙を拭いて立ち上がった。

 

「ううん、もういいわトゥアール。多分ね、最初っからあたしは間違えていたのよ。新しいブレスにくら替えしてしまえば、簡単に巨乳になれるとか…そう思うのがそもそも浅はかだったのよね」

 

 総二の言う通りだ、そう言わんばかりに愛香は晴れやかな顔をしていた。

 

「気軽に着せ替えできるような、そんな軽いもんじゃないのよね、テイルギアって。あんたが言う通り、コイツは意志を乗せて動くデバイス…心に嘘をついて動かせるものじゃないのよ、きっと」

 

 黄色のブレスを外し、テーブルに置く。けど、愛香には未練はなさそうだった。そんな愛香にトゥアールは意を決したように告白する。

 

「愛香さん…私、あなたに復讐するつもりだったんです。本当は身体変化の属性力とのハイブリット機能を備えたギアなんて、机上の理論でした。意気揚々と使って全然胸が大きくならない愛香さんを指さして笑おうと思ってました…!」

「それはあたしも同じよトゥアール。目的のものさえいただいてしまえば、散々こき使っていた仕返しに致死ギリギリまで延々血祭りにあげようって思っていたんだから…」

「愛香さん…」

「トゥアール…」

 

 総二は悟った。

 

 

 ――人生って何が起こるかわからないな。

 ――ほんの少し道筋がズレていたら、驚くほど残酷なトゥルー・エンディングがあったことに。

 

 

 総二が何も言えなくなってしまったその時、けたたましいアラートが鳴り響いた。そして、このタイミングで出現してくれたアルティメギルに感謝したくなった。

 

「敵か!?」

 

 すぐさまトゥアールはモニターを確認し、スイッチを切り替え顔が険しくなる。

 

「ええ! 都心にエレメリアン2体出現です! しかも…もの凄い力の属性力です!!」

「なに!?」

「ええ、総二様が戦ったドラグギルディと同格か…あるいはそれ以上の反応を示しています!」

 

 それはあの死闘を思い出せば絶望的な報告のはずだった。…けれど、何故か今の総二は負ける気がしなかった。

 

「そうか! なら尚更、ほっとくわけにはいかない!」

「ええ、そうね総二!」

「「テイルオン!!」」

 

 総二と愛香はトゥアールに見守られながら、基地の通路を走る。

 ―――そうさ、これが俺たちなんだ。

 新たなテイルブレスは残念ながら戦力にはならず、愛香の胸は大きくしてくれなかったけど、俺たちの決意は大きくしてくれた。今日確かめあったその思いは、間違いなくかけがえのない、得る価値があったものだ。

 身体の奥底からほとばしるような思いを感じながら、光のゲートに飛び込み、現場へと駆けつけ…。

 

 

「この摩天楼を颯爽と闊歩する、ツインテールで巨乳の女子はおらぬか!」

「違う! 我らはツインテールで貧乳の女子を求めなければならぬのだ!」

 

 

 …盛大にずっこけた。

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□

 

 

「今日の体脂肪率は?」

「えっと…――26%」

「ふはははははっ!このGW(ゴールデンウィーク)、ご飯、パン、麺類を全て糸コンニャクに代用した甲斐があったものよな」

「って言うかテナお姉ちゃん、あんま太ってないと思うんだけど」

 

 目標の体脂肪率になってすっかりご満悦なテナー様。

 

 

~~♪!! ~~♪♪♪♪!!! ~~♪!!

 

 

『来たよ!エレメリアンだ』

「よぉし、キバット!」

「おっしゃあ!キバっていくぜ!」

 

 絶好調に駆け出すテナー。

 

「ガブッ」

「テイル・アップ!!」

 

 キャッスルドランから射出され、着地したテイルファング。

 そのすぐ隣でテイルレッドとテイルブルーはヘッドスライディングするかのようにずっこけていた。

 

「ん?どうした?着地失敗したか?」

 

 テイルファングはずっこけた二人を心配そうに見やる。

 

「…何よ、なんなのよ。何で最近のあいつら、乳ばっかりこだわっているの!?」

 

 道路にめり込んだ顔を上げながら、テイルブルーはテイルファングに向かってそう叫んだ。

 

「はぁ~……あのような奴等の戯言にいちいち動揺するとは……まだまだよな。いい加減慣れろ」

「慣れてたまるかぁ!あたしは乳を力に変えて戦う全ての存在が許せないのよおおおおおおおお!!」

「別に乳がデカいのはその本人の意思では……――」

『テナー、もうやめよう。これ以上はブルーさんの火に油を注ぐようなもんだから』

「フッ、たしかに」

 

 

 テイルブルーは余裕綽々なテイルファングの胸をキッ! と睨むと不機嫌そうに倒れているテイルレッドを起こして敵の前に立った。

 

 

「ふっ…ついに現れたな、ツインテイルズ!!」

 

 

 そして2体のエレメリアンはツインテイルズの登場に気付いたのか、正面から向かい合った。海竜型の怪人に海洋型の怪人。

 

 

『テナー、アイツらすごく強い音響だ。デュラハンギルディと同じかそれ以上かもしれない』

「そうか、だが関係ない。いつも通り速攻で倒しにいくぞ」

「(あれはリヴァイアギルディとクラーケギルディ。ドラグギルディにデュラハンギルディが相次いで倒されたとなっちゃあ当然だが、犬猿の仲の二人が同時出動なんて…)」

 

 

 戦いの舞台は都心ビル群の大型プラザホール前。

 大勢の人がまだ周りにいる。大規模な攻撃は避けたいところだ。

 

 

「こ…これが噂に聞くテイルレッド、テイルファング。実物のテイルファングはあの蝋人形とは比べ物にならんツインテールに巨乳、そしてテイルレッドもなんという素晴らしいツインテールを持っているのだ…!!惜しい、実に惜しい!後数年遅ければ、2人のたわわに実った果実が揺れる光景が見れたものの…!」

 

 海竜型の怪人はテイルレッドとテイルファングを見ながら全身のヒレを震わせ、べた褒めする。

 すると横にいたイカののエレメリアンが怒号を上げた。

 

「妄言はそこまでにしろ!テイルレッドの美しさは既に完成されている!髪の造形に手を加えよう等、それは破壊をいもたらす傲慢!それに残りの一人のツインテイ、ル、ズ…も……」

 

 何故かイカの怪物のようなエレメリアンは急に口を閉ざしてしまった。その視線はツインテイルズ最後の刺客、テイルブルーへと向けられている。

 ブルーはこめかみに青筋を浮かべながらも、そういうことねといったリアクションを取っている。

 

「はいはい分かっているわよ、分かっているのよ。テイルレッドテイルレッド、テイルファングテイルファングね。あたしだって分かるんだからね。あたしは――」

 

 だが次の瞬間、そのエレメリアンは音もなく自暴自棄なテイルブルーの眼前へと接近してきた。

 

「ブルーっ!!!」

「「「!?」」」

 

 テイルブルーが見せたほんの一瞬の隙をついて接近、いきなりテイルブルーの目の前で跪き、まるで王に忠誠を誓う騎士のような態度で片膝をついて礼をした。

 

「…なんと、なんと……美しい……」

「「は?」」

 

 テイルレッド、テイルファングが呆れた声を出すが、イカの怪人は続ける。

 

「美しい…なんと美しいのだ!麗しき貴方と敵として出会ってしまうとは…何という悲劇か!ああ神よ、何故こうもあなたは運命を弄ぶのですか!?」

 

 そしてそのエレメリアンはミュージカル風の台詞を息継ぎなしで喋ると、腰に携えた剣を抜き、刃に手を添えてテイルブルーへと差し出した。

 

「私の名はクラーケギルディ。我が剣を貴方に捧げたい…愛しの(プリンセス)よ」

「おいやめておけ、スルメ。無闇にその女に手を出せば槍を投げられるぞ」

「だまれ、胸デブ女」

 

 

 

「は?」

――ピシッ

 

 

 

 その言葉に金色の眼を瞠目させ、固まった。

 そして――

 

「くっく……――」

 

 さもおかしそうにテイルファングが笑い出した。

 

「あ、あはは、あははははははははははっ!はァァァアアアアははははっ!!」

 

 甲高い哄笑と共に魔皇力が雷撃の如く溢れ出し、一旦区切りがつくと張り付いた笑顔に憤怒の念を宿した瞳をこちらに向けて言い放つ。

 

「――――今までさまざまなあだ名を付けられた事はあったが、『胸デブ女』とは初めてだ。よし、貴様の戒名を教えろ。丁重に葬り、墓標に刻んでくれる」

「黙れ!貴様のような脂身など、彼女の美しさの前では大いに霞む。私は彼女の――テイルブルーの美しさに魅せられてしまった。テイルブルー、どうか私の愛を受け取ってくれませんか?」

「ええええ!?」

 

 流石のテイルブルーも困惑していた。テイルファングを押しのけての急な告白にいささか戸惑う様子であった。

 だが、それも仕方ないだろう。何しろテイルブルーに対するエレメリアンの反応は大体2つのパターンに限られるからだ。『怯えられるか』か『馬鹿にされるか』のどちらかしかない。そしてそのどちらかの反応を見せた奴は惨たらしく惨殺されるか、殺される一歩手前まで追い込まれる。

 だがこのひと月で判明しかけていた法則が今、目の前で崩れたのだ。目の前のエレメリアンはテイルファングを蔑み、テイルブルーを敬い、剣を差し出した。これぞまさに忠誠を誓うポーズ、騎士が守るべき主に向けるポーズではないか。

 

「さあ、愛しの(プリンセス)!わが想いを受け取ってください!」

「ちょ、ちょっと待って! いきなり、そん、なの、困る…私たち、敵同士だし……」

 

 テイルブルーは普段俺に見せるような不機嫌で恐ろしいな顔をどこかに吹き飛ばしてしまったかのように狼狽しきっている。テイルレッドにはトゥアールからの通信が大音量でながれてくる。

 

【見ましたか総二様、これが女です!女の本性です!口でどんなに綺麗事を抜かそうが、他の男にちょっと甘い言葉をかけられればそっちにころっといく!愛香さんこそまさしくビッチなんです、さあ、元気よく幻滅しましょう!!】

 

 公然の場での告白に最初は戸惑っていたが、テイルブルーも花も恥らう乙女に違いない。好きだの美しいだの言われて嬉しくないわけがない。その恥ずかしさで顔が茹でダコのように真っ赤になってしまっている。だがこの反応を見て、クラーケギルディは照れているのだと誤解したのか、駄目だしの一打をかました。

 

 

「私は心奪われたのです……!最高の貧乳(スモールバスト)を持つ、麗しき姫プリンセス、 あなたに!!!」

「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………は?」

 

 テイルブルーは完全に虚を突かれた反応をし、茹でダコのように真っ赤だった顔がスッと元に戻った。

 

「ツインテールは貧乳こそ相応しい…生涯をかけた私の想いが今成就したのです!最大のツインテール属性を持つ貴方が、よもやこれほどまで美しく光り輝く貧乳をも備えていらっしゃるとは!歓喜にて身体が震えておりまする!!」

 

 遠巻きに大勢のギャラリーに見守られている中この公開処刑はあんまりだとテイルレッドは思った。

そしてちらっとテイルファングの方を見る。

 

 

「ううっ……ううう……あううぅぅっ…」

 

 

 口元に手をやり、泣いていた。

 

 

 

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