問題児に紅茶、淹れてみました(休載)   作:ヘイ!タクシー!

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受験終わるまでは投稿遅くなると思います。


26話 魔王討伐したらしいですよ?

 8000万の死者。その功績を聞いてサンドラの顔が蒼白になった。

 

「そんなに!?………それだけあれば、神霊への転生も」

「無理よ」

「無理です」

 

 キッパリ否定されたサンドラ。近寄る無銘がしょんぼりしたサンドラを撫でた。

 

「最強種以外が神霊になるためには"一定数以上の信仰"が必要です。いくら死の数を増やし収集しようと、神霊にはなれません」

「………」

「確かに恐怖をもって奉られる神仏はいますが………医学が発展した世界で、黒死病が成り上がるための恐怖も信仰も足りなかった」

 

 黒ウサギはペストを見た。

 

「だから貴女はーーーーー」

「違うわ」

「…………はい?」

「私が神霊になったのは完成された形骸を使って………とか言いたいんでしょ?残念。私は呼び出されたただけよ。"幻想魔導書群"を率いた魔王にね………」

 

 黒ウサギが推測していた話と別に進んでいき呆気にとられる。わかっていない無銘とサンドラも黙って続きに耳を傾けた。

 

「かの魔王は"8000万の死の功績を持つ悪魔"ではなく、"8000万の悪霊群"代表の私を死神に据えれば、神霊として開花すると思ったんでしょうね」

「………まさか」

「そう。私は黒死病の死者の代表にして、最初の感染者。それが"黒死斑の魔王"よ」

 

 ____________________

 

「はぁー………。皆が命懸けで戦っているのに思うところはあるが………こうも何もないと暇だ」

 

 白夜叉は未だ黒い風の球体の中に閉じ込められていた。

 ギフトカードに何かしら入っているから色々と困ることはないが、とにかく白夜叉は暇だった。

 白夜叉か戦っている者達に考えを巡らせていると、彼女の視界が急にノイズかかる。

 

 ーーーザッザザーーーーー

 

「なんだ?」

 

 ーーーーザッザザザザーーーーーーーーーー

 ーーーーーザザザザッッザザザザーーーーーーー

 

 ノイズがどんどん激しくなり、世界がノイズで埋め尽くされる

 

 ザザザザザザザザザザザザザザザーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 酷いノイズの映像を見ている気分になっていた白夜叉だが、急に視界が戻る。

 ノイズが少し走っているが大分クリアになった。

 しかし、彼女が見ている光景は黒い風と、バルコニーではなかった。

 

 古びた木の家に、藁のベッド。視線は高くなり、ある少女を見下ろしていた。

 少女は赤い髪に、くすんだ白いワンピースを着ていて、尻餅を付いていた。

 身体は病的なまでに痩せ細り、黒いアザのような斑点が肌を露出している部分から少し見えた。見る人が診れば黒死病の症状だと気づくかもしれない。

 その少女は自分を見上げて怯えていた。正確には、手に持っている剣を見て怯えていた。

 

「………こ、殺さないで………!」

 

 少女は剣を持つ人物から離れようと後ずさる。

 だが、白夜叉の意思関係なく身体は動き、無情にも彼女にゆっくり迫る。

 

「いや………死にたくない……!だれか、誰か助けて………!!」

「悪いがこの村の者達は全員殺した。君を助ける者は誰もいない」

「……………なんで」

「……………」

「……何でこんなことするの?………私達が何をしたというの?」

「………今の世界では黒死病は防げない。それだけだ。恨むなとは言わないし、許しも乞わない」

 

 そう言ってその身体の人物は持っている剣を振り上げた。

 逃げようにも身体が思うように動かないのだろう。赤い髪の少女は酷く緩慢な動きで床を這っている。

 

「もし、生まれ変わっても私を覚えているなら私を殺しにこい。もし覚えていないなら……君の来世に幸あらん事を願う」

「いやっ!いやぁぁぁ!!いッ………………」

 

 そう言ってその者は剣を振り下ろし、無様に逃げながら涙を流す少女の首を飛ばした。彼女の身体は発火し、最後はモノ言わぬ灰と化した。

 

「……………すまない。本当に……すまない………」

 

 残ったのは風で飛ぶ灰と懺悔を繰り返す者のみだった。

 

 ザザザザザザザザザザザザザザーーーーーザザザザザザザッッーーーーーーーー

 

 

 

 白夜叉の視界が戻る。

 

「……………今のは………エミヤの過去か?」

 

 自分に心当たりの無い記憶だった。そして、魂の繋がりから不安定な魔力を確認していた。

 思うところは幾らでもある。しかし、今の光景を思い返した白夜叉は妙な胸騒ぎを覚えた。

 

「エミヤ………どうか無事ていてくれッ………!」

 

 ____________________

 

「私達の"主催者権限"………死の時代に生きた全ての人の怨嗟を叶える権利………黒死病を世界中に蔓延させて飢餓や貧困を呼んだ諸悪の根源ーーーーー怠惰な太陽に復讐する権利が私達にある!誰にも邪魔はさせないわ!!」

 

 そう宣言したペストが己の霊格を解放し、黒い風が吹き荒れる。

 黒ウサギは風で煽られた髪を後ろにかき上げながら言った。

 

「太陽に復讐とは随分と大きく出ましたね。神霊一匹程度ではどうにもなりませんよ?」

「出来る出来ないは貴女が決めることではなくて、私が決めることよ?」

『………………………』

「ど、どうするの?」

「どうもしませんよサンドラ様。全力をもって倒

『いや、黒ウサギ君。ここは私に譲って他のメンバーの手助けに行ってくれ』

「「えっ?」」

「あら?」

 

 黒ウサギが戦闘続行しようと構えたが、その前に手を翳して彼女を止めたのは無銘だった。

 唐突の決闘宣言に唖然とした三人。そんな彼女達を置いて無銘はペストのいる屋根の上に飛び乗った。

 

『黒死病の魔王。一度、君と一対一でお相手したい。デートのお誘い、引き受けてくれるかな?』

「ええ………と言いたいところだけど残念。流石に部下の一人に神格を与えているとは言え、あの二人まで参加してしまったら分が悪いわ。ノーサンキューよ」

『そっか。なら、強制的にしてもらうよ』

 

 そう無銘が宣言すると、知らない間に浮いていた剣が彼らの立つ家々に突き刺さり爆発した。

 

「なッ!!?」

「今のは!?」

「ゲームで見た彼のギフト!」

 

 その光景を見た黒ウサギは十六夜とのゲームを思い出し、サンドラは造物主のゲームを思い浮かべた。

 いつの間にか空中に存在し発射される剣。今のところ全容が掴めず、ペストも念力に似たギフトとしか思い浮かべられずにいる謎のギフト。

 それによって爆発したエミヤ製の剣は、屋根と無人の家を破壊し、爆発と煙で四人の視界を覆う。

 

I am the bone of my sword(身体は剣で出来ている).

 

 Unknown to Death(ただの一度も敗走なく).

 

 Nor known to Life(ただの一度も理解されない)). 』

 

 声が響き、無銘の霊格が膨大に膨れ上がる。

 その英雄と同等の霊格を肌で感じた三人は、見えない空間の中で警戒する。

 

「くっ………なにをする気か知らないけどこんな煙!」

 

 ペストが風を起こそうとする前に、無銘はまだ空中に残っていた剣を爆発させ、爆音の中そのギフト名を告げる。

 

 

『"unlimited blade works(無限の剣製)."』

 

 青い炎の爆風が起き、黒ウサギとサンドラの視界が晴れると、残りの二人が消えていた。

 

「あれ!?あの二人は!?」

「うそ?"主催者権限"でこの地から離れられないはず………………。サンドラ様、もしかしたらここから離れた街の何処かにいるかもしれません。だから私達は無銘様の言に従って行動すべきかと」

 

 サンドラは二人が突然いなくなった事に困惑し、黒ウサギは"境界を操る"系のギフトと考え、サンドラに意見を述べた。

 

「でも………良いのかしら?………"サウザントアイズ"の客人を一人で戦わせて何かあったら………」

「多分、心配には及ばないと思いますよ。かの騎士はあの剣技に"境界を操る"ギフトを持っていると推測出来ます。それほどのギフト持ちなら大事には至らないかと………」

 

 そう言って黒ウサギは先程二人がいた空間を見つめた。

 

 ____________________

 

 青い風が吹き上げたと思ったら、視界には荒野と、墓標の様に突き刺さる剣群、空に見える巨大な歯車で構成された世界に変わっていた。

 周りには夥しい程の名剣類の数々が存在を主張していた。

 

「…………な、何なのよここは!?それにこの剣達………そもそも私の主催者権限で違う土地に移動できないはずじゃ!!?」

『ここは私の心象世界だよ。現実の空間を絞り拡張させた私の世界。つまり、私達は一歩も動いていないから安心して欲しい』

 

 そう言って無銘。つまりエミヤは兜と甲冑を消し去り、普段の赤い外套に腰マント、上下は黒のタートルネックにスカートといった格好に戻った。

 

「さて、ペスト。残り時間ゆっくりと私とのランデブーを楽しもうじゃないか」

 

 エミヤは、ペストを見て悲しげに冗談を告げた。

 

 ____________________

 

 十六夜と飛鳥がペストの配下の悪魔達を倒した後、"ノーネーム"のメンバーと黒ウサギとサンドラは合流して戦況を報告していた。

 

「おい黒ウサギ。駄騎士と魔王様はどこに行きやがったんだ?勝利条件は一つ満たしたがこれで終わりなのか?」

「Yes。一つ満たしたので負けた時のペナルティを受けることはありません。後は制限時間を待つか………無銘様がペストを倒すかで終わります」

「それでその騎士様は何処に行ったのかしら?」

「それが………わかりません。少なくともこの街にいることは確かなのですが………」

 

 そう言って質問を返す度にしょんぼりしていく黒ウサギ。

 他のメンバーもこれ以上わからない事を聞くのは不毛だと思い聞くのを止めた。

 

 それから10分程経っただろうか。参加者には、もうゲームが終わったと楽観視する者。緊張の糸が切れて気を失う者などが続出した。

 "ノーネーム"のジンや飛鳥も気を抜いており、十六夜も治療系のコミュニティに怪我を診てもらっていた。

 その中で、フロアマスターであるサンドラと、黒ウサギ、レティシアはハラハラしながらも結果を待っていた。

 すると、唐突にそれも終わりを告げた。

 

『ギフトゲーム名"The PIED PIPER of HAMELIN"

 

 ・勝者、プレイヤー側:ホスト指定ゲームマスター 太陽の運行者 星霊 白夜叉

 

 勝利条件が全て満たされました。』

 

 そう書かれた"ギアスロール"が街中にバラまかれた。

 

 ____________________

 

 

 ゲームが終了して一日後

 

 街は魔王討伐の成功によりどこもお祭り騒ぎになっていた。はしゃぐ者、踊る者、暴食いする者、一日中酒を飲み酔っぱらう者。

 そんな喧騒の街の高台。"サウザントアイズ"支店の客室で、エミヤと白夜叉は相対していた。

 

「エミヤよ。まずはフロアマスターとしてお礼を述べよう。今回、魔王討伐を担ってくれて助かった。ありがとう」

「なに、大したことはしてないよ。多分だけど、黒ウサギのインドラの槍でもペストは殺せただろう。その役割を私が横から獲っただけだよ」

「それでもだ。おんしらのお陰で、魔王の被害で出た死者は0。私は何も出来なかったのによくやってくれた」

「君は魔力を供給してくれたから、何もしてない訳では無いと思うけどね。まあ、お礼は受け取るよ」

 

 白夜叉は頭を下げてお礼を述べ、エミヤは礼儀に反すると思い、その礼を受け取った。

 白夜叉は頭を上げる。が、少し気になることもあり話は続いた。

 

「…………それでだが、おんしに聞きたいことがある。……………ペストはどうなった?」

「隷属権を得てこの中に封印されているよ」

 

 エミヤは、ギフトカードから取り出した黒い指輪を白夜叉に手渡した。

 エミヤがゲームを終了させた時に彼女の前に現れた"黒死病の魔王"の隷属の証である。

 白夜叉はそれを受け取り眺めた後、エミヤに視線を向ける。

 

「なるほど、確かに隷属されておるようだの…………おんしはペストを殺したのか?」

「……………なぜそんなことを聞くの?」

「いや、どうやって打倒したのか気になってな。神霊を倒す一撃は、殆どがその者を殺す一撃ーーーーー星を割る程の一撃で無ければ倒せん。だからどうやったのかと思ってな」

 

 白夜叉はエミヤの顔を伺うように見て言った。エミヤはそれを見て疑問に思う所があったが、構わず告げた。

 

「…………そっか。まあ、甘いと思われるかもしれないけど殺さなかったよ。ある剣を使って気絶させただけだならね」

「…………なに?神霊を殺さずに意識を刈り取るギフトだと?………………そんなものがあるのか?意識を刈り取るだけのギフトでは、最強種である神霊の意識を奪えるとは思えん」

 

 ホッとした白夜叉だが、倒した方法に疑問が残り、それはあり得ないと断定した。

 

「私もその程度で神霊を倒せるとは思ってないよ………………私の奥の手、と考えてくれれば良い。まあ、読んで字の如く諸刃の剣ではあったけどね」

 

 そう言ってエミヤはタートルネックの襟部分を引っ張り、首下の肌を白夜叉に見せる。そこには包帯が巻かれており血が滲んでいるのが見えた。

 

「なっ………………おんし正気か!?」

「まあ、しょうがな「そんな手当てで乙女の肌に傷が残ったらどうするのだ!!?」………はっ?」

 

 白夜叉は焦ったように近づき、エミヤの服を脱がしにかかる。

 

「おんし、この服の下にもまだ傷があるのだろう!?見せてみろ!!私が傷一つ残らないよう全て治してやる!脱げッッ!!!」

「えっ、ちょっ………白夜叉?」

「ええい、もたもたするな!」

 

 そう言って白夜叉は抵抗しようとしたエミヤを押し倒し、彼女の両手を頭上で抑える。片手で外套のボタンを外し、手刀でタートルネックを左右に切り裂く。その中からエミヤの大きな山とそれを覆う紫色の布、傷を覆う包帯が現れた。

 

「まって!流石に誰か入ってくるかもしれない部屋でこんなッ!!」

「グフフフ………………一つ一つ丁寧に治してやるから覚悟しろよエミヤ」

「やめっ………」

「さあ!余すところなくその身を

「白夜叉。入るぞ」

 

 白夜叉が全てを脱がしにかかろうとすると、世界の修正が働いたのだろう。

 襖が開き、そこからレティシアと例の割烹着の店員が入ってきた。二人の視界に写ったのは、顔を真っ赤にし涙目で両手を抑えられた半裸の美少女と、襲いかかる美幼女もしくは上司。そんな光景が飛び込んできた。

 

「なっ………」

「エミヤ!」

 

 店員は赤面し、レティシアは乗っかっている白夜叉をぶっ飛ばしエミヤを助け起こした。

 

「ブバッ!」

「………れてぃしぁ………」

「エミヤ………こんな………」

 

 レティシアはエミヤの肌を見て絶句した。肩や腹に包帯が巻かれており、包帯からは何ヵ所か血が滲んでいる部分も見える。普段なら扇情的に見える格好も、今はとても痛々しい。

 

「お前………こんな大怪我をして………。正体を隠すためとは言え何故私にも言わなかった!」

 

 レティシアはエミヤ向かって泣き叫ぶ様に言う。それを聞いた彼女は困った顔をレティシアに向けた。その表情を見て、更に激情する。

 

「お前の考えも理解している!だけど……………なぜ魔王に一人で挑んだ!!私がその報告を聞いてどれ程心配したか………案の定こんな大怪我までして…………何故私をッ!!」

 

 彼女は堪らず目に涙を溜めてエミヤにすがり付く。

 何故私は魔王本人と戦わなかったのか、あの時自分がエミヤの傍にいれば、等と後悔するように言葉を吐いた。

 

「………ごめんね」

「っ!………私がどんな気持ちでお前の帰りを待っていたと思っている!ゲームが終わっても姿を現さないしっ!………………私がどれだけッ………!」

「………ありがとうレティシア」

 

 エミヤはすがり付くレティシアを抱き寄せて、安心させるように、自分は大丈夫だと証明するように彼女を強く抱き締めた。

 

「………もう無茶はしないと誓えエミヤ」

「それは………出来ない相談だね。私は死んでも直らない性格だから」

「では、無茶をする時は必ず私の傍にいろ。でなければ許さん」

 

 そう言ってレティシアは睨むが、目の下に隈を作った涙目の睨みでは全く迫力が無かった。エミヤはそんな彼女に苦笑してしまう。

 

「それは…………後がとても怖いね。出来る限りは善処するよ」

「………まあ、許してやる。約束だぞ」

「ええ、約束だよ」

 

 金髪と銀髪の少女が見つめ合っている光景はとても絵になるが、その雰囲気をぶち壊した白夜叉。

 

「おいおんしら。私を吹っ飛ばした挙げ句放置とは良い度胸だな」

「む?………ああ、忘れてたよ白夜叉」

「…………黒ウサギといいおんしらといい、最近私の扱いが酷くないか!?というかもっと敬え!私はフロアマスターだぞ!?東側最強だぞ!?」

 

 涙目で手を上げて抗議する白夜叉。

 威厳も何も無い、幼い少女が体を使って怒る表現に、先程の事も忘れて微笑ましさを感じてしまうエミヤだった。

 




戦闘シーン結構飛ばしたから速攻で終わってしまった………。という訳でアンダーウッド前までもうちょい入れます。
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