問題児に紅茶、淹れてみました(休載)   作:ヘイ!タクシー!

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30話で三巻開始………良いですね。
でも、章の最初ほどめんどくさい話はないと嘆いております。
一、二章でも思いましたが話の土台を書くのがこれほどダルいとは………!!
最初はなんでもめんどくさい


十三番目の太陽を撃て
30話 新しい仲間が増えたそうですよ?


 ーーーー"黒死斑の魔王"との戦いから一ヶ月ほど経った頃。

 

 十六夜達は今後の活動方針を話し合うため、本拠の大広間に集まっていた。

 大広間の中心に置かれた長机には、上座からジン=ラッセル、右側に十六夜、飛鳥、耀の順で座り、左側にはエミヤ、レティシア、黒ウサギ。その横に子供達の年長組筆頭に撰ばれた狐娘のリリが座っている。

 本来なら"ノーネーム"では会議の際、コミュニティの席次順に上座から横一列に並ぶのが礼式であるが、前々から机の位置を変えていた。

 

 また、リーダーから左右に近い席に十六夜とエミヤが座っているのは理由がある。

 二人は水源の確保(エミヤは場の仲裁)に加え、十六夜は神格保持者を一人で倒した功績と、作戦を考える参謀の役割を担った。エミヤは同士の奪還に、"サウザントアイズ"とコミュニティ間の関係を強め、あの事件以降"ノーネーム"の安定した財政収入を担っていた。

このため今の序列が出来上がった。

 

 その席順に飛鳥はやや不満そうに、エミヤは居心地悪そうに座っていた。

 そしてリーダーであり旗頭であるジンだが、ガチガチに緊張していた。

 

「どうした?俺より良い位置に座ってるのに、気分悪そうじゃねーか」

「だ、だって旗本の席ですよ? 緊張して当たり前じゃないですか!僕はまだ戦果を挙げてないんですよ?」

 

 ローブの袖を握り反論するジン。

 それを聞いたエミヤも言葉を告げた。

 

「それを言えば私もこの席が嫌なんだが………替わってくれないかレティシア?」

「何を言う。お前はこのメンバーの中でも一、二を争う功績を残してるじゃないか。その席は私なんかには恐れ多くて座れんよ」

「君、古参の一人じゃないか………」

 

 そんな二人を他所に、十六夜はジンの発言を聞いてゲンナリする。

 

「あのなぁ御チビ。お前はこのコミュニティの旗頭であり名刺代わりだ。俺達の戦果は全て"ジン=ラッセル"の名前に集約されて広がっている。そのお前が上座にいないでどーすんだよ。………一人勝手に噂になってる姫様がいるが」

 

 そう言って十六夜は前に座るエミヤにジト目を送った。エミヤはそれに気付きすぐに目を逸らすと、発言しようとする黒ウサギが見えた。

 

「十六夜さんの言う通りです!事実、この一ヶ月で"ノーネーム"に届いたギフトゲームの招待状は、半分はジン坊っちゃんの名前で届いております!」

 残り半分はなんだと言いたいが、格好が付かないため無視して進める。余談だが、"サウザントアイズ"宛に送らないコミュニティが悪いのだ。

 

 ジャジャンと黒ウサギが見せたのは五枚の招待状。驚くべきことに、三枚は参加者扱いではなく貴賓客として送られてきた。旗印を持たない"ノーネーム"にとって破格の待遇だ。

 黒ウサギは大事そうに招待状を抱き締めた。

「苦節三年………とうとう我らにも招待状が………!それもジン坊っちゃんの名前で、です!だからジン坊っちゃんは堂々と胸を張って上座にお座りください!」

 

 しかしジンは先程よりさらに思い詰めたように俯く。

 それを見た飛鳥は急かすように会話に横槍を入れた。

 

「それで? 今日集まったのはどんな話し合いなのかしら?」

「あ………す、すいません。そうでしたね。ゴホン……今日はその招待状について説明する為に集まっていただきました。黒ウサギ?」

「わかりました」

 

 黒ウサギがジンに呼ばれて立ち上がり、話を始めた。

 

「皆さんも知っての通り、一ヶ月ほど前に戦った魔王が推定五桁だったため、かなりの報酬が出ました。それに伴い、農園もメルンとディーンのお陰で1/4ほど復興が進み、農園に設ける備蓄も揃いました。そこで今度は一般の物と違う特殊栽培の特区を設けようかと思うのです」

「特区?」

「YES! 主に霊草・霊樹を栽培する土地ですね。例えばーーーー」

BLACK★RABBIT EATER(ブラック★ラビット イーター)だね」

「YEs…ってなんですかエミヤさんそれ!?ピンポイントで黒ウサギを狙った嫌がらせですか!!」

「それいいなお姫様。採用だ!」

「画期的ね」

「うん。とても実用的」

「良い発音だったな」

「な訳ありますかこのお馬鹿様方!!」

 

 うがーッ!!とウサ耳を立てて怒る黒ウサギ。その光景を見てエミヤは小さく、「え?あるのに………」と呟いた。因みに彼女は"サウザントアイズ"でその苗を見た。

 レティシアにのみそれが聞こえたが、話が進まないと思い、十六夜達に率直に告げた。

 

「つまり、私達は特区にふさわしい苗や牧畜を手に入れればいいのだ。」

「牧畜って、山羊や牛のような?」

「そうだ。都合のいいことに、南側の"龍角を持つ鷲獅子(ドラコ・グライフ)"連盟から収穫祭の招待状が届いている。連盟主催とあって収穫物の持ち寄りやギフトゲームも多い」

「珍しいものや面白いゲームがいっぱいあると白夜叉も言ってたよ」

 

 なるほど、と頷く問題児達。

 それらの会話を一通り観察していたジンは発言した。

 

「方針については一通り説明は終わりました。……ですが、一つ問題があります」

「問題?」

「はい。この収穫祭ですが、二十日間ほど開催される予定で、前夜祭を含めれば二十五日。約一ヶ月行われることとなります。この規模のゲームはそう無いですし、出来れば最後まで参加したいのですが、コミュニティの主力が長期間不在なのはよくありません」

 

 そう言って一度メンバーを見回してまた話始めた。

 

「黒ウサギは"箱庭の貴族"として、レティシア様は"箱庭の騎士"として、エミヤさんは"銀の鍛冶"として呼ばれているので本拠に残れません。なので三人から御二人、せめて御一人は残って欲しい――――」

 

「「「嫌だ」」」

 

 即答だった。

 その光景に若干気圧されるジンだったが、これだけは譲れなかった。

 コミュニティが力を付け始めた今だからこそ、"フォレス・ガロ"のような子供達を拐う犯罪組織や、天災の魔王からコミュニティを守る戦力を残さないといけなかった。

 それを理解していたレティシアはジンに続きを話すよう促す。

 

「そのための妥協案があるのだろう?」

「は、はい。………でしたら日数を絞らせてください」

「というと?」

「前夜祭を二人、オープニングセレモニーからの一週間を三人、残りの日数を二人が参加する、というのはどうでしょうか?」

「………それだと一人だけ全部参加できるってこと?どうやって決めるの?」

 

 耀がそう聞き、口ごもるジン。本来なら席次順で決めるのだが、それを三人に言うのも躊躇われる。

 ジンが考えあぐねていると、十六夜が提案した。

 

「ゲームで決めようぜ。前夜祭までの期間で最も戦果を挙げたものが優先的に日数を決められる」

 

 それはとてもわかりやすく、何より不満もあがらない。行きたければ権利を勝ち取れ、という彼の挑発に飛鳥と耀は承諾した。

 

 ____________________

 

 結果だけ言えば、十六夜の圧勝であった。

 

 彼は白夜叉に頼んで、問題児達が箱庭にやってきて早々に十六夜が倒そうとした蛇神ーーーー白雪の隷属を正式なゲームで勝ち取り仲間にした。

 それに加えて、外門の利権証である"地域支配者"の権利を白夜叉から授かった。

 

 外門利権証とは、“地域支配者”が“階層支配者”の提示するギフトゲームをクリアすることで与えられ、箱庭の外門に存在する様々な権益を取得できる特殊な“契約書類”。外門同士を繋ぐ“境界門”の起動や広報目的のコーディネートなどを一任できる権利である。

 

 他の二人もかなり必死で戦果を挙げようとした。

 飛鳥は牧畜として高価な山羊を十頭手に入れた。耀は以前北で一度対決した《ウィル・オ・ウィスプ》からの招待を受け、ゲームに見事勝利。炎を蓄積できるキャンドルホルダーを獲得した。

 

 しかしそれを差し引いても十六夜の戦果が一番大きいだろう。これによって勝者は十六夜となった。

 

 ____________________

 

 その夜、外利権を得た黒ウサギがテンションを上げて小さな宴を設けたのである。加えて今回の料理は全て黒ウサギが用意した。

 余談であるが、黒ウサギの手伝いを行おうとしたエミヤは、満面の悪意なき笑みで自分が全てやりたいと黒ウサギに言われてしまい、レティシアの胸の中で泣いた。

 

 

 宴を終えた夜、三毛猫は眠った耀に抱きしめられていた。

 

 ――――三毛猫。私はあんまり凄くないね。

 

 耀は寂しそうな声でそう言っていた。

 彼女はここ最近特に悩んでいた。自身がここ一番で活躍出来ないことに。十六夜とエミヤが水を用意し、飛鳥が土を蘇らせた農地に、彼女だけが関われていないことを。己の弱さを、思い悩んでいた。

 

 だから、今回の勝負で誰よりも勝ちたかった。

 そう彼女は言った。

 

 一日でも長く南の収穫祭に参加して、多くの幻獣と友達になり力をつけると同時に、農地のための種や苗を獲得して、自分は《ノーネーム》の一員であると皆に認めて欲しかったのか。

 それもまた違う、と彼女は言った。

 

 彼女はただ安心したかった。今回の勝負で一番になることで、自分は足手まといではなく立派な主力の一人だと自分自身に認めさせたかった。

 

 それでも、結果は負けてしまった。

 当初の目的である収穫祭の参加日数は最大を獲得出来た。でも、()()()()()()()()()()()()でさえ一番にはなれなかった。

 それが悔しい、と彼女は言った。

 

 そう言葉を漏らす耀を見て、三毛猫はあの時の姿に似ていると思ってしまった。

 今の、動物達に劣らない能力を得て強くなり、同時に優しさを持った彼女ではない。

 昔の彼女。歩くことさえ出来なかった初めて出会った頃の彼女。今の耀はまるでその頃の姿に似ていると。

 

 だからこそ三毛猫は思ってしまった。奴が許せないと。

 

 __________

 

 翌朝。出発の時刻。

 何故かヘアバンドを頭に乗せた十六夜が蛇神・白雪と共に彼女達を見送る側にいた。

 というのも昨日の夜、彼が入浴中にヘッドフォンが無くなってしまったらしい。それを探すために彼は残ると言ったのである。

 

「十六夜………本当にいいの?」

「まっ、仕方ねーよ。ヘッドホンが無いと俺も落ち着かねーしな。その代わり、俺の分まで前夜祭楽しんでこいよ?」

「わかった。十六夜の代わりに頑張ってくる。行ってきます」

 

 耀は十六夜に微笑み、六人は本拠を後にした。

 

 




白雪さんが出てこない……だと!?
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