馬鹿じゃねぇの!馬っ鹿じゃねぇの!?五千字以下で今年最後の投稿が戦闘シーン無しのだらだら会話してるだけとか馬鹿じゃねぇの!って言わないで下さい。作者もそう思います。
この小説を書き始めて一年経ちますがまだ一巻が終わってくれません(泣)。ここまで読んでくださった読者の皆様なら既にお察ししていると思いますが、この作品において戦闘シーンは食後のデザートのような物だと思って下さい。作者はそう割り切りましたOTL。
では、肩肘張らずにお読みください。
「ご苦労さん。…おぉ、馬が二頭も!」
砦の門を潜ると労いもそこそこにナーガは荷馬車へと駆け寄り、俺も返事を返さずすれ違う。
そのままハリガンの下へ行くと、
「そなたは吾等を驚かせてばかりいるな」
腕を組み、睨み付けながら皮肉を投げ付けてきた。
「…答えろ。普段カサンドラ軍が砦を攻めるとき、大盾を持った兵士はいるか?」
それには応じず用件を口にする。
「なんじゃ?藪から棒に「さっさと答えろ」っ、お主は………。あぁ、おるぞ」
「数は?」
「大体二十程だ。何故その様なことを聞く?」
これで確信する。奴等はこの砦を“落とす気がない”。
狙いはこちらの消耗か。
(何故そんな回りくどい事をする?)
あの二百が尖兵隊とするなら、その本隊は倍近くの数がいるはずだ。
別の狙いがあるのか。
「カイム。問いに答えたのだからそなたも答えよ。何故、その様なことを聞いた?」
思案に耽っていると、苛立ちを隠そうともせずにハリガンが問い返してきた。
「奴等、此処を落とす気が無いぞ」
「…何?」
「へぇ、そりゃどういった了見だ?」
ナーガが馬から離れて話に入ってきた。
「……盾兵がいなかったからな」
「盾兵?」
「人間共は吾等と戦う時、大盾を使ってこちらの魔法を防ぐのだ」
「あー……あぁ、確かにあんな隠れる場所も無い坂じゃそうするしかないな」
得心がいったようにナーガが相槌を返した。
「理解が早くて助かる。…それで、本当にいなかったのか?」
ハリガンが再度聞いてくる。
「盾は、幾つか残っていた荷馬車の内の一台に5つほど積まれていただけでした」
答えたのはアイスだった。気付くと他の魔女達も全員こちらに集まっていた。
「“とりあえず持ってきた”だけって感じだな…。となると、次はカイムが言ってた本隊が来るか」
ナーガの言葉に魔女達が動揺して騒ぎ始めるが、
「静まれ。その事についてもお主から直接聞きたかった。奴等の本隊がいる確証はあるのか?」
ハリガンがそれを制して俺に問い質してきた。
「…殺した指揮官がそう言いながら兵士を逃がしていたからな。逃げて行く奴等の方向にも一貫性があった。間違いなくいる」
「次から次へと……」
俺の答えに頭を抑え、呻くようにハリガンは声を洩らした。
「早く他の皆を集めなきゃ!」
「そ、そうですよ!急いで他の砦から応援を呼ばないと!」
「大丈夫大丈夫。そんなに焦らなくても良いと思うぞ」
焦る風使いと、怯えて増援を呼ぼうとしているノノエルという名の魔女にひらひらと手を振りながらナーガはそう返した。
「何でですか!?本隊ってことはさっき下にいた人数よりも多いって事ですよ!幾らなんでも私達だけでは無理です!」
軽く恐慌状態になっているのか、鬱陶しく喚いているノノエルに、いつものように気楽な顔をしてナーガは言葉を紡ぐ。
「今までの話し聞いてただろ?カサンドラは此処を落とす気が無いんだ。本隊で来たって精々こっちを調子付かせない為の威嚇と小競り合い程度さ」
目だけは剣のような鋭さと、氷のような冷やかさを宿しているが。
「何で、そう言い切れるのよ?」
今度は風使いが噛み付いた。
「落ち着いて考えてみろ。簡単な話だぞ?あいつ等には自分達を守る為の盾が無い。砦を攻め落とす為にも絶対に必用なのに、だ。カイムに殺された奴等だって二百もいたのに持ってきてたのはたった五つ。本隊がまぁ…、仮に倍の四百いるとして普段来るのが百だろ?四つの部隊に同じく五つあったとしてもたった二十だ、全然足らん。もし盾を必用数揃えていたなら、そのまま全兵力で
と、ナーガは締め括った。
「……むぅ」
口を尖らせ睨み付けてはいるが、反論は上がらなかった。
「まぁ、盾が無くとも損害を無視して突っ込んでくる可能性は無くはないだろうが、そんなのは
「では、すぐにカサンドラ軍が攻めて来ることはないのだな?」
ナーガの言葉に魔女達が聞き入っている最中、ハリガンが疑問を口にした。
それに対してナーガは目を瞑り「んー」と短く唸ったあと目と口を開いた。
「いきなり二百の部隊を潰されてかなり警戒しているはずだ。その上、逃げ帰ってきた奴等から話を聞いて部隊を再編成、物見も出して情報の正誤と統括もするだろうから………早くて二日後位かね?」
「…分かった。それだけ時間があるのなら、こちらも十分準備が整えられる。皆、ご苦労だった。ディー、カイムを水場に案内して返り血を落とさせよ。クゥ、リンネ、リンナは念のため引き続き朝まで監視を。他の娘達はそれぞれ休んでよい」
僅かに思案したあと、ハリガンはそう結論付けて、それぞれに指示を出す。
「カイムさん、こっち」
ディーが先頭を行き、近くの水場まで案内を始めようとして、
「そうそう、カイム!」
ナーガが俺を呼び止めた。振り返ると先程にはない真面目面をしたナーガが俺を見ている。
「どうしても聞きたい事があるんだが…」
そう言って親指で後にいる荷馬車を指して、
「馬って、あんなにでかかったか?」
などと言い出した。なんだそれは。
「言いたいことは分かる。俺も変なことを言っているとは思っている。だが、何でか自分の中で一致しないんだよ。馬ってのはもっとこう……、小さかった印象があるんだ。なぁカイム、この馬でかいよな?」
顔を顰めていると、どうにも釈然としない様子で聞いてくるので仕方なく二頭の馬へ視線を向ける。
肉付きを見るに駄馬では無いが、名馬と言える程でも無い。体格もそこそこで、どう贔屓目に見積もっても良馬程度である。
「…普通だな」
俺の言葉に「そうか…」と溢しつつも、納得出来ないのかまだ首を捻っている。
今度こそ視線を切ろうとして、
「血を洗い落としたら開いた傷も治療しとけよ?膿んだら辛いぞ」
反射的に睨み返す。余計なことを。
「心配して言ってんだからそうカッカするなよ。隠したきゃ歩き方にも気をつけな」
周りで目を見開いて俺に視線を送る魔女達を他所に、ナーガは苦笑しながら肩を竦めている。
「……湯と布を用意しておくか。後、針と糸もな。血を落としたらさっさと居館に戻って来よ」
ハリガンは呆れ顔でそう言い捨てると、ナーガと他の魔女達を伴い居館へと踵を返した。
「あ、あの、カイムさん?は、早く行こうよ…」
顔を顰めている俺に怯えているのか、軽く引け腰になっているディーが言葉を詰まらせながら促してくる。
「…案内しろ」
ディーにそう返し、今度こそ水場へと足を向けた。
一方、時を同じくしてカサンドラ陣営では怒号が響き渡っていた。
「貴様もう一度申してみよ!そんな妄言が通ると思っているのか!」
「アクレイム、少し落ち着け」
「しかしライバッハ殿!「いいから、判断は俺がする」……分かりました」
若手である第五中隊長のアクレイムをなだめながら今一度ミゲルへと問い返した。
「話を折ってすまなかったなミゲル。もう一度、一字一句誤らずに述べてくれ。
そう促すとミゲルは会議場に来た時と同じ、苦渋と困惑を綯い交ぜにした顔のまま重く口を開いた。
「では…、あらためて報告致します。我々第二中隊は夜明けの作戦実行の為、何時ものように斜面の麓で夜営地を構築、休息を取っていました。そこへ、魔女の砦から来たと思しき一人の男に奇襲を受け、彼の者の猛攻を前に反撃することも出来ず……撤退を余儀なくされました。その折にクリフ副官は戦死、ヴィトール中隊長は撤退の指揮を私に任せ、殿としてあの場所に留まったままであります」
「警備兵は何をしていた?」
確実に自分にも跳ね返ってくる聞きづらい質問を口にする。
「それは………」
言い淀むミゲルへ左右に座っている
「……この中で過去、砦攻略戦で警備を怠った兵士を“公”に罰した者は名乗り出ろ」
誰からも声は上がらなかった。
「…と、言う事だ。仮に俺を含めて此処にいる誰かがヴィトール殿と変わっていても、結果は変わらんだろうさ」
アクレイムが歯を食い縛りながら下を向く。他の面子も気まずそうに顔を歪めて視線を彷徨わせていた。
「警備に関しては間違いなくこちらの落ち度だ。殺し合いをしている以上、全てにおいて余程の事でない限り絶対は無い。知らず知らずの内に俺達が間抜けに成り下がっていただけの笑い話だ………。で、一人で奇襲してきたその男については?」
ミゲルは思い出すように僅かに俯いた後、言葉を紡いだ。
「年は二十代、焦げ茶色の髪にまるで戦場の最前線から帰ってきたようなボロボロの衣服、身に付けていたのは
「そいつ、名乗り上げなんかはしていたか?」
「…私は聞き及んでおりません」
「彼と共に逃げ帰ってきた者達の証言では、カイム・カールレオンと名乗っていたそうです」
今晩の当直に当たっていた第六中隊長のエックハルトがそう補足した。
「カイム・カールレオン………この名前に聞き覚えのある者は?」
見渡すが全員が首を横に降っていた。カイムという名前自体、探せば見つかるかもしれない程度には珍しい名前である。
「偽名でしょうか?」
「可能性としては無くはない。だが、腕利きの密偵や暗殺者で無い限り容姿や風貌までは偽れん。二百人を正面から単騎で相手取って退けるような奴が全くの無名であるはずがない」
この手の話は国内外の騎士や兵士、傭兵を問わず風のように速く、渡り鳥のように広く伝播する。例え得たいの知れぬ凄腕の暗殺者であっても、
一人二人思い当たる者もいなくは無いが、それ等がいるのは大陸の中央の方だ。こんな辺境に来る理由がない。
「襲撃に魔女はいなかったのか?」
第三中隊長のホラーツがミゲルに問いかけた。
「私は終始見かけておりません。ですが襲撃直後、幾つかのテントや物資が燃やされていたのを考慮するに、先制だけ仕掛けて物陰に隠れたか、砦に引き返したのではと愚考致します」
「全く見ていないのか?男への援護もなく?」
「私が見た限りでは…」
それを機に暫しの間、会議場に議論と仮説が飛び交った。
「ところで、そのカイムとやらはお前から見てどれ程の使い手だった?」
その最中、第四中隊長のイグナーツがふと思い出したようにミゲルへと話を振った。
「……凄まじいの一言に着きます。まるで単騎で軍勢と戦う事を前提としている様な戦い方でした。剣の腕も私ごときでは数合も持ちはしないでしょう。下手をすれば奴個人の武力はジュエルジェードに届くやもしれません」
「ジュエルジェードときたか…」
旧教会が誇る最高戦力【八八旅団】の旅団長。“あの”化物と同格か。いや、逆に納得はゆく。
(【本命】が来るまでの間、魔女共を疲弊させるだけの簡単な任務だった筈なんだがなぁ…)
内心でそう愚痴り、気持ちを切り替えるため溜め息を吐き出した。
「ミゲル、ご苦労だった。お前も疲れているだろう?もう休んでいい」
粗方意見も出し尽くしたところでミゲルへ退室を促した。「失礼します」と敬礼をして会議場から出ていくミゲルを見送った後、今回
「エックハルト、少しでも情報が欲しい。夜が開けたら偵察隊を出せ。細心の注意を払わせろよ。第二中隊の生き残りは使い物にならんから治療が終わり次第エイン砦まで送ってやれ」
「はっ」
「ホラーツ、イグナーツ、アクレイム、一時的に部隊を再編成する。出来るだけ早く各自所持する兵科と、その人数を記した書類を提出しろ」
『はっ』
「第二中隊の弔い合戦でありますか?」
戦意高揚にアクレイムが聞いてくる。
「馬鹿を言え、盾が足りん。
そう返し全員を退席させる。
(決行は二日後、日が出ている間だけ。…問題は例の男や魔女共が出てきた場合だな)
一人会議場に残り今後について思い耽る。
翌日、偵察隊からの報告で素っ頓狂な声をあげるとも知らずに。
今回もオリキャラ(モブ)がオンパレードです。
以下、このような感じです。
第一中隊長 兼 臨時大隊長ライバッハ(原作)
第一中隊副官シリーエス(原作)
第二中隊長ヴィトール(モブ)戦死
第二中隊臨時副官クリフ(モブ)戦死
第二中隊副官 兼 臨時補佐ミゲル(モブ)
第三中隊長ホラーツ(モブ)
第四中隊長イグナーツ(モブ)
第五中隊長アクレイム(原作)
第六中隊長エックハルト(モブ)
一巻の内容では、もうこれ以上モブキャラは出ないのでご安心下さい。プロットでは二人ほどだったんですが………本当にどうしてこうなった(泣)。
残りの年内は全て、書いてきた文章の追記修正になると思います。気が向いたら年明けにでも一章一節から読み直して頂ければ幸いです。
読者の皆様この一年間ありがとうございました。
来年からもチマチマ書いて行きますので今後とも「堕ちてきた元契約者は何を刻むのか」をよろしくお願いいたします。
では、また来年お会いしましょう。