やはり戦闘シーンを入れると執筆時間が通常の倍以上かかってしまいます。
書いていく内に話が原作からズレ始めたのでタグを追加しました。
そして、ここからはずっとナーガのター
朝日の光が世界を照らして空を青く染めきった頃、カサンドラ軍の本隊は姿を現した。
「…来たな。ハリガン、向こうの数と兵装は?」
ナーガの問いに遠眼鏡から目を離さずハリガンは口を開いた。
「少し待て。………やはり最初の倍程はいるな。四つの部隊が縦に並んで真っ直ぐこちらに向かって来ておる。最前は長槍に大盾。その後ろに弓を持った奴等が編成されていて、残りは……予備の人員と荷物持ちだな」
「良し、ここまでは予想通り。リンナ、伝達を頼む。『変更は無し、手筈通りにいく』と伝えてくれ」
「はい」
リンナは返事を返すと目を瞑り、己の片割れに今の情報を伝えている。
この双子の魔法は五感の【強化】と【共有】。今回の様な伝令を始め、斥候や偵察等に置いても重宝できる能力だとナーガは高評していた。
それはそうだろう。
「俺達も」そうだったが、双子のみという制限は付くものの、片方が見聞きしたモノ、又は経験した事柄を即座にもう片方へ知らせる事ができるのだ。
応用すれば今のように“伝令を走らせる”時間をも省略させられる。
戦場において、その情報伝達の速さは選択肢の数へと繋がり、それが勝敗を決することも少なくはない。
「ところで、作った柵は本当に“あれ”で良かったのか?時間が無かったとはいえ、もう少し何とかできたとは思うが…」
「“あれ”で良いんだよ。確かに下手をすればあいつ等の命を必要以上に危険にさらす事になるかもしれんが、上手くいけば“一撃でこの戦を終わらせる事が出来る”」
仲間が心配なのか僅に不安を顔と声に出しているハリガンとは真逆に、ナーガは自信に溢れた顔で返答すると下を眺めていた。
後詰めとして望楼に待機しているのは俺を含めてハリガン、ナーガ、レラ、リンナ、ディー、セレナ、エレオノーザの八人で残りは全て斜面の配置場所で待機している。
「さて、っと…じゃあハリガン、【先鋒】は任せたぞ」
こちらがあれこれと話している間にカサンドラ軍は斜面の麓近くまで迫っていた。
「あぁ、任された。…『ハリガン・ハリウェイ・ハインドラが命ずる。起てよ、木偶。吾が力を以てその命に替えよ』」
ハリガンの呪文と共に【
「……隊長」
「おーおー、これはまた…」
シリーエスと共に苦笑とも呆れとも取れない声が口から溢れた。
偵察隊からの情報で聞いてはいたが、実際に見てみるとその違和感は拭えない。
これが傭兵崩れの盗賊団退治や隣国との小競り合いならそうでもないのだが、
手を貸している男の指示ではあろうが後にも先にもこんな“戦術的な”行動を取った魔女を俺は知らない。
こう言っては何だが魔女共の戦い方はある意味“原始的”である。
即ち、【魔法】による【力押し】だ。
例えば木の巨人の進撃による蹂躙戦。
例えば風や火による広範囲の遠距離戦。
例えば常軌を逸した怪力による近距離戦。
戦う距離や状況に応じて奴等も魔法を使い分けてくるが逆に言えばそれだけだ。俺達がやるような
それでも今日まで魔女を滅ぼせなかったのは軍隊の動きが制限される
「それにしても随分急拵えで作ったみたいだな」
砦から斜面中腹まで防護柵を作った事には驚いたが、その出来は遠目から見ても粗末な物であり、柵の他には丸太で作られた大きめの【矢避けの盾】が疎らに配置されているだけだった。
「その様ですね。数はありますが柵も盾も形や大きさが安定していません。………ですが」
「あぁ、
視線の先には砦攻略の最初の障害である木の巨人が鎮座していた。
普段なら俺達が斜面を登り始めてから出てくるのだが、今回は一番手前の柵の前で待ち構えている。
そして斜面の麓に着いた時、木の巨人はゆっくりと動き出した。
それと同時に俺も大きく息を吸い込むと、
「…全隊戦闘準備ぃ!調子に乗ってる異端者共に!カサンドラの強さを思い知らせてやれぇ!」
『おおおぉぉぉぉぉぉー!』
鬨の声と共に迫り来る巨人へと進撃した。
「陣形を組め!此度の戦力は我々が上だ!恐れず進めぇ!」
ライバッハの号令を受けて先鋒を務める第五中隊長のアクレイムは己の部隊へと令を発した。
鬨の声を上げていた兵士達は速やかに行動に移る。
七十名からなる槍兵は
「総員、弓を持て!矢を番えろ!…行くぞ!」
第五中隊が動き出したのを見て、二番手に位置する第三中隊長ホラーツも動き始める。
百名全てが弓兵で構成されたホラーツ率いる第三中隊は令に従って構えを解いたまま弓矢を番える。
そして第五中隊との距離を4ヤルド(約10メートル)程空けてると、後ろに控える第一中隊、第四中隊を伴い前進を開始した。
「全隊、止まれ!」
再びライバッハの号令で木の巨人との距離が22ヤルド(約60メートル)までに縮まると、軍隊は進撃の足を止める。
第五中隊の槍兵は踏ん張れる様に重心を下げると長槍を木の巨人へと向け、
「構えぇ!」
第三中隊はホラーツの令で弓矢を構えた。
下からの射撃なので射程距離が幾らか短くなっているが、
木の巨人が近づき、弓兵は弓を引き絞る。
「外すなよ!」
━━━有効射程距離まであと
「まだだ!まだ引き付けろ!」
━━━あと
「まだだぞ!」
━━━あと
「まだ!」
━━━
「はな「ぐげ!」「がっ!」「だばぁ!」!?」
ホラーツが一斉射の令を発するのと同時に数人の弓兵が頭や体から血を噴き出して倒れた。
(何だ!?何処から!?)
あまりの事にホラーツの声は途切れ、倒れた弓兵を中心に動揺が広がった。
完全に虚を突かれ、一呼吸程、第三中隊の動きが止まる。
「ぶへ!」
「ぎゃ!」
それが致命となった。
更に二人倒れる。今度こそホラーツの目に原因が写った。
「魔女だと!?」
手前の柵の辺りに幾つか設置されている矢避けの盾から数人の魔女がこちらに向かって礫を投げつけていた。
いくら斜面の上を取っているといっても55ヤルド(約150メートル)近く離れているのである。普通ならそんな距離を投げただけでは当てるどころか届きすらしない。
だが、魔女共はそんな常識など知らないとばかりに長弓の矢のごとく
その現実に更に一呼吸程、頭が混乱する。
━━━そして目の前の巨人へ意識が戻り
「(しまった!)怯むな!目標、木の巨人!放てぇ!」
思わぬ奇襲に期を逸してしまい、木の巨人を第五中隊へ近づけすぎてしまった。あの距離では味方を巻き込んでしまう為、二射三射が放てない。
それでも一矢報いようと矢を放つが、
「『息吹け風よ荒べ風よ堅牢なる壁と生りて迫る悪意を阻め』」
突如、木の巨人の前に風が吹くと嵐のごとく荒れ狂い、殆どの矢を反らしてしまった。運良く当たった矢も二割弱にすら届かない。
ユウキの風魔法である。
「流石ユウキ!ドンピシャだったぜ!」
矢避けの盾から半身を出してケイがはしゃぐ様にユウキに賛辞を送ると、他の魔女達も同じように彼女を褒め称えた。
それに対してユウキは盾の裏側に背を預け、「ふぅ」と一息つくと、
「当たり前よ…って言いたいけど運が良かっただけ。あんな距離で【あれ】使うの初めてだもん」
そんな風に口を開いた。賛辞への照れや成功した安堵により目や口元が僅に緩んでいる。
「その運も実力の内よ。リンネ、ナーガさんから新しい指示は来た?」
そう言ってユウキに微笑んだ後、今回前線での指揮を任されているアイスはリンネに確認をとる。
「ううん、特にないよ。このままで良いみたい」
リンネの返答にアイスは頷くと仲間達へ声を掛けた。
「皆、まだ戦いはこれからだから気を抜かないで。ケイ、クゥ、あまり彼等を“殺し過ぎない様にね”?」
「わかっ(てるって!)た」
僅に緩んだ空気を締め直すと、自分と同じく投石を行っている二人に注意を促した。そして、アイスは盾から顔を覗かせる。
視線の先では木偶人形がカサンドラ軍の兵士に襲い掛かっていた。
まず、初戦を制したのは魔女だった。
(くそ!やられた!)
アクレイムは内心でそう愚痴りながら顔を歪める。まさか木の巨人の他に魔女まで出張っているとは思わなかった。
しかし、よくよく考えれば防護柵の他にも矢避けの盾という隠れる為の大きな【遮蔽物】まで作られているのだ。
後ろの弓兵隊の前に盾兵を配置することも出来たはずなのにと、必要以上に目の前の
「槍兵突撃!これ以上あのデカブツを前に進ませるな!」
『おおぉぉぉー!』
アクレイムの号令に
木の巨人も迎え撃つ為の両腕を振り上げるが、その巨体のせいか動きは緩慢である。腕を振り下ろすよりも先に三十五もの長槍がその全身を刺し穿った。
一度に大量の鉄を射し込まれた事により魔力の循環が一瞬途絶え、その間木の巨人の動きが停止する。
「押し返せぇ!」
アクレイムの令に兵士達は手足に更に力を込めるが、停止から復帰した木の巨人は腕を振り下ろした。
己を穿っている槍の柄をへし折りながら手前にいる槍兵を叩き潰す。
密集していた為、逃げることもできなかった数名の槍兵は柔らかい果実を潰した様な音と共に圧死する。また、その時の衝撃により周りにいた兵士達も土煙と共に吹き飛び、前方の陣形は瓦解した。
「ゲホッゲホ、畜生………がっ!?はっ、放かぱぁ!?」
土煙の中、吹き飛ばされて起き上がろうとしていた槍兵の一人を木の巨人は片手で捕らえるとそのまま握り潰した。そして、その死体を後方に残っている兵士達へと投げつける。
投げつけられた槍兵がまた数名吹き飛んだ。それによって怯んだ兵士達を今度は横から薙ぎ払おうと木の巨人は腕を振りかぶる。
「お前等どけぇ!」
腕が振るわれる瞬間、三名の盾兵が木の巨人と槍兵の間に割って入ってきた。
木の巨人の腕が当たる直前、盾兵達は大楯を重ね合わせ、歯を食い縛り、手足に全身全霊の力を込める。直後、途轍もない衝撃が全身を襲う。
「━━━━━━!」
骨が芯から軋み、肉と血管の千切れる音を聞きながら体ごと吹き飛びそうになる意識を彼等は必死に繋ぎ止めた。
大楯がひしゃげ、地面を1ヤルド(2.7メートル)程抉りながら後退するも、盾兵達は攻撃を受け止めた。
木の巨人は、ならば槍兵の時の様に上から叩き潰そうともう片方の腕を振り上げようとして、
「させるかよ!」
残っていた槍兵達がその腕に長槍を突き立てた。
全身ではなく腕一本に集中して槍を穿たれた為、魔力の循環が完全に断たれた腕は力無く落ちる。
「足を狙うぞ!私に続け!」
追撃とばかりにアクレイムが先陣を切って木の巨人に肉薄すると、己の剣を足に突き入れた。
「今だ!隊長に続けぇー!」
好機と捉えた兵士達もアクレイムに続く。
ある者は持っている剣やナイフを、
ある者は折れた槍の穂先を、
ある者は地面に刺さっていた矢を、
そして、木の巨人の体が地面へと叩きつけられた。
「よくやったアクレイム!…構えぇ!」
ホラーツが号令を掛ける。魔女達が邪魔をしようと礫を放るが、弓兵達の前に展開した盾兵によってそれは阻まれた。
「総員退避!」
アクレイムの指示に兵士達は急いで木の巨人から離れる。負傷している仲間に肩を貸し、動けない同志を担ぎながら。
「放てぇ!」
放たれた矢の雨は今度こそ
「…やった、やったぞ!」
一人の兵士のその言葉を皮切りにカサンドラ軍に勝鬨の声が上がる。
「まだ気を抜くな!あそこにいる魔女共も追い払うぞ!ホラーツ、アクレイム、負傷者を下がらせろ」
ライバッハの声がそれをかき消し指示を出すと、下がってきた兵士達と入れ替わりで補充兵を送る。
「後は魔女共だけだ!盾兵、前へ!」
「殺られた仲間の仇をとるぞ!矢を番がえ!前進!」
指示を受けたホラーツとアクレイムもまた戦術を対魔女へと変えた。
一方、魔女達も木偶人形の停止を見た後、それぞれ言葉を交じ合わせていた。
「姉様の、木偶人形、動かなくなった」
「もう少し削れるかと思ったけど、そう上手くは行かないものね」
クゥの言葉にアイスは少し残念そう言葉を返す。
「いい感じに調子に乗ってるわね。…上等よ!」
「おいユウキ、張り切るのは良いけど程々にな?」
勝鬨を上げているカサンドラ軍を見て闘志を燃やすユウキをケイは呆れながら戒める。
「ここからが本番ですね。…だ、だだっ大丈夫でしょうか?」
「まぁ、成るように成るんじゃない?………っと、皆、ナーガさんから指示が来たよ!」
消極的なノノエルに対して楽天的な答えを返したリンネは仲間に新たな指示を知らせた。
魔女とカサンドラ軍の戦いは次の局面へと移ってゆく。
『よし』
その最中、上と下からこれまでの戦況を観察していた
『ここまでは想定通り』
異口同音でそう呟いた。
ンだといつから錯覚していた?
ナーガ「!?」
と言うわけでカサンドラのターンでした。
俺tueeeもそこそこ好きなんですが、やっぱり敵も魅力的に書きたいよね?ってことでこんな有り様になりました。
作中で1/10でも表現出来て読者様に伝わっていれば嬉しいのですが…。
tueeeを期待していた読者の皆様にここでお詫び申しあげます。
この後は、九節のケイの口調を全面的に直します。明日の夕方迄には直っているは………ず?
出てきた木偶人形なのですがイメージとしては大きさはDODのゴーレムと同じか一回り小さく、オーガの様な体型をしていると思って下さい。
では、また次回お会いしましょう。